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747 :もう何も信じない 第11話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/06(月) 14:56:34 ID:4otcPJil
あの日、私は父さんを殺した。だって、お兄ちゃんを傷つけようとしたんだもの。当然の報いよ。
そして、お兄ちゃんを奪おうとした雌猫……三神 光も。
見られちゃったのもあったけど、もともと始末するつもりだったし、手間が省けたわ。

でも、お兄ちゃんに見られたのは失敗だったかな?ううん、かえって好都合だったかもしれない。
だって、実の妹じゃ愛してくれないでしょう?
私はずっと、もしかしたら一緒に生まれたときから好きになってたのに、お兄ちゃんにとって私は、ただの妹に過ぎなかった。
だったら、私が光に……他人になれば愛してくれる。だから、私は"三神 光"になった。
お兄ちゃんには「晶は死んだ」とふきこんだ。
親戚も、ずっと会ってなかったから、私たちの顔なんか分かりやしない。私は、三神光だと言い張った。

結果、私はショックで記憶が混乱しているんだと思われた。でも晶だとはばれなかった。お兄ちゃんが否定したからだ。
それからは、本物の三神夫妻に引き取られ、三神 光として育った。

今思い返してみればよくうまくいったものだと思う。三神夫妻は、私が晶だと気づいていたみたいだけど、私が殺したとは思っていなかったみたい。
お兄ちゃんは、事件のことはきれいに忘れていた。妹は死に、父親は女と逃げたと都合よく思い込んでいたみたいね。

でも、ひとつだけ誤算があった。まさか光が…私の作ったキャラクターが一人歩きするなんて。
おかげで私は心の奥底で眠りにつかざるを得なかった。

それでも、光はよくやってくれた。お兄ちゃんと、私の体を使って愛し合ってくれた。
もうお兄ちゃんは私なしではいられない。だから、もう用済み。

綺麗さっぱり、今度こそ消してあげるわ、光。




「…ぁ……歩…僕は……僕が……」

そうよ、あなたがお兄ちゃんの大事なものを奪ったの。

「もう……僕は……君のそばには…いられない……」

ええ、そうね。あなたはもう要らないの。
だから、心置きなく、消えちゃってね?今までご苦労様。ふふ……あははははははははっ!




目が覚めると、光の姿がなかった。家中探してみたが、どこにも見当たらない。

「お客様のお掛けになった電話は、電波が…………」

携帯にも出ない。
おかしい。今までこんなことはなかった。近場に出かけるなら、電源を切る必要なんてない。何があったんだ?

俺はコートを羽織り、光を探すべく外に向かう。と同時に、電話で右京にも協力を仰ぐ。

「右京か!?光が…光がいなくなったんだ!」
「落ち着け佐橋!…とにかく、俺も探すから、一旦どこかで落ち合おう。」
「すまない!」


俺たちは、近所の喫茶店の前で落ち合った。こんな朝早くにすまないな、右京。

「佐橋!三神はいったい!?」
「……わからない。こんなこと、初めてなんだ。いつもは俺に声をかけてから出かけてた…。最近に至っては、ずっと俺から離れなかったくらいなのに………!」
「とにかく、探そう……!」


748 :もう何も信じない 第11話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/06(月) 14:57:24 ID:4otcPJil
学校、礼ねぇさんの家、駅、コンビニ……とにかく心当たりがあるところはすべて回ったが、結局光は見つからなかった。
もう日が沈む。こんなに長い間離れてるなんて……嫌な予感がする。まさか、何かの事件に巻き込まれでもしたのか…?
いやだ、光…頼むから無事でいてくれ。

自分でもここまで取り乱すとは思わなかった。
今まで、光には俺が必要で、俺がいなきゃだめだと思ってた。だがそうじゃなかった。

本当は、俺の方だったんだ。あまりに光といる時間が幸せすぎて。
今まで生きてきた中で一番幸せで、気付かなかったんだ。

お前を失ってしまったら、俺はもう生きていけない。そこまで溺れていたんだ。
依存していたのは、むしろ俺だったんだ。

「頼む……光。帰ってきてくれ……」


そのとき、俺の脳裏にあるひとつの光景が浮かび上がる。
そこは、海岸だった。人気のない砂浜、その真ん中に光はいた。その手にはナイフが握られている。

それだけで充分だった。俺は、光の元へ向けて全力で走り出す。

「おい佐橋!どうしたってんだ!」
「わかったんだ!光の居所が!」
「――まさか、視えたのか?だとしたら…三神が危ない!」
「ああ!急ぐぞ!」
「待て、佐橋!」
「?」

すると、佐橋は携帯を取りだし、電話をかけた。
「姉さん?実は……そうか、ありがとう。…佐橋!そこの大通りまで!」


749 :もう何も信じない 第11話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/06(月) 14:58:09 ID:4otcPJil


大通りに着いてから3分が経った。右京…一体何を?

「ここでどうするんだ!?」
「いいから!そろそろ来るはずだ。」

すると、一台のバイクが轟音をたてて近づいてきた。何やら、見覚えのあるシルエットだな……

「右京、お待たせ!」

……左京先輩?

「ありがとう、姉さん。佐橋、後ろに乗っていけ!」
「どういうことだ!?これは……」
「あとで話す!今はとにかく三神の所へ!」

確かに、今はそれどころじゃない。

「…すまない、恩にきる!」
「行きましょう、佐橋くん!光ちゃんはどこに!?」
「海にいます!たぶん、隣町の。」
「……少し遠いわね。飛ばすわよ。」

―――あっという間に右京が見えなくなった。メーターは………見ないでおこう。

先輩の話によると、バイクは趣味のひとつで、18になったらすぐ大型二輪の免許を取得するつもりだとか。
相変わらずぶっとんだ人だ。
そもそもそんな短期間で免許とれるっけ、とかは言わないことにした。

だって、左京先輩のおかげでこうして大分早く目的の場所に着くことができたんだから。

「行って、佐橋くん!」
「先輩、ありがとう!」


俺はバイクから降り、そして光のもとへ駆け出す。


この時はまだ気づかなかったんだ。いや、この期に及んでなお気づかないふりをしていたのかもしれない。

これが、全ての終わりの、破滅の始まりだということに。