769 :もう何も信じない 第13話A ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/07(火) 17:20:36 ID:EAh51zIu
ザクッ――――
「うそ…だろ…?おいっ、光!しっかりしろ!光っ!!」
「あ…あゆむ…ごめん……ね…?」
「光っ!待ってろ、今救急車を呼ぶから!」
「ごめん、ね……お兄ちゃん。」
「……晶?あきらっ!やめろ!光を…殺さないでくれ……!!」
―――救急車が通ります。道を開けてください。救急車が――――
「患者の血液型は!?」
血液型……光が晶なら、俺と同じはずだ。
「RHマイナスのA型です!俺と同じはずです!」
「よし…採血だ!すぐに確認を!」
血液型は、一致した。RHマイナスなんてそうそうある血液型じゃない。
これでほぼ証明されたわけだ。
光は、晶だった。
でもそんなことは今はいい。とにかく……助かってくれ。
病院に着いてすぐ、光は手術室に運ばれた。
「佐橋……きっと、三神は大丈夫だ。信じるんだ。」
「……すまない、右京。」
「ほら、飲め。」
右京は、コーヒーの缶を差し出した。でも…
「…悪い。吐き気がするんだ。今は飲めない。」
「そうか…。無理はするなよ。」
限界の、さらに限界まで血を抜いた俺の顔色は、きっと最悪だ。
看護師からもらったスポーツドリンクも、とうに吐いてしまった。
光が助かるなら、俺はなんでも差し出す。だから神様、どうか光を…つれていかないでくれ。
770 :もう何も信じない 第13話A ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/07(火) 17:21:15 ID:EAh51zIu
ガシャン!ウィィィ………ン
手術室の扉が開く。
「せんせいっ!!光は!」
頼む…頼むから…!
「手術は成功です。ただ、意識が戻るまでは、まだしばらく………」
そこまでで充分だった。
俺は安堵し……意識を手放した。
12時間後――――
目を覚ました俺は、光の病室に来ていた。
まだ光は、眠っていたが。
「光…どうしてだ…?何で死のうとした……?俺たちが兄妹だからか?俺は…それでも構わなかったんだ……
なあ…目を覚ませよ…いつもみたいに笑ってくれよ……」
俺は、光に優しくキスをし、部屋をあとにした。
それから4日間、俺は光の病室に通い続けていた。。
しかし、ただ眠り続ける光ともはや何も言う気力すらない俺しかいない部屋には、いつも外の雨音だけが響いていた。
771 :もう何も信じない 第13話A ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/07(火) 17:21:51 ID:EAh51zIu
一週間後、それは訪れた。
「………っ?」
「…光?目が覚めたのか!?」
「ん…おはよう。
お 兄 ち ゃ ん ? 」
―――背筋が凍りついた。
「……?おい光?なんの冗談だ…よせよ……。」
「ごめんね、お兄ちゃん。光は、もういないよ?」
「……うそだろ?」
「本当だよ。あんな雌猫、もう要らないもの。だから消しちゃった。」
「………!」
そんな…光が…消え…た……?
「だいじょうぶ。これからは私がいっぱい愛してあげるから…ね?あはははっ……」
バンッ!
たまらず、俺は病室を飛び出した。どこでもいい。どこか独りになれるところへ行きたかった。
だから俺は、その足で屋上に向かった。
それから、泣いた。ただひたすら、泣いた。胸から込み上げてくる悔しさと、喪失感と。
ありったけの殺意を抱いて。
………ふざけるな。その体は光のものだ。
その顔で微笑むな。
その声で喋りかけるな。
その手で触れるな。
それは、光のものだ。お前のものじゃない。お前が光のなかにいるなんて、絶対許さない。
だから―――
「光…待っててくれ。やることができたんだ…。終わったら、すぐに迎えに行くよ……」
俺は……晶を殺す。
772 :もう何も信じない 第13話A ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/07(火) 17:23:01 ID:EAh51zIu
ガラッ―――
「おかえり、お兄ちゃん。」
「…………あきら。」
「ふふっ…お兄ちゃん、大好きよ…。」
「………。」
「お兄ちゃんに抱かれたことを思い出すと…今でもどきどきするの……
私の大事なとこも、もうこんなにぐっしょりだよ?あ…退院までなんて待てないよ…はやくぅ…はやく抱いてよ…お兄ちゃん…」
「……ああ。」
俺は、丁寧に晶の服を脱がす。
唇からはじまり、徐々に全身を愛撫していく。
「あ、はっ…お兄ちゃん…きもちいいよ……はやく…きて……」
俺は、ただ黙って晶を貫く。
「あ…んっ!お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!もっとぉ!すき…!すきぃ…!だいすきぃぃ!」
「………っ!」
俺は、つい口からこぼれそうになった言葉をこらえた。
「あぁぁぁっ!もう、だめ!いくっ!いっちゃうぅっ!お兄ちゃあんっ!」
―――今だ。
「愛してるよ、光。」
そして俺は、光を死に追いやった銀色のナイフで、晶の心臓を貫く。
「っ…ふぁっ……私は…あき、らだよ……?」
俺は、止めを刺す。
「好きだ…光。」
ナイフを回し、肉をえぐる。ぐりゅっ、と生々しい音がした。
「…ふふっ……お兄ちゃんった、らぁ……仕方ない…んだから……あはっ………ああははははははははっ………くはっ……」
「…もう邪魔はさせない……晶、お前は独りで逝け。」
ドサッ―――
晶は、事切れた。
そして俺は、"光"の骸に口づけを落とす。
「今度こそ…永遠に愛し合おう……だいじょうぶ、もう独りになんかさせないさ。
俺が…ずーっとそばにいるよ。たとえ…地獄だろうと……。」
そして俺は、自らの体にナイフを突き刺す。刹那、視界が赤に染まった――――
773 :もう何も信じない 第13話A ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/10/07(火) 17:23:58 ID:EAh51zIu
俺は、死にゆくなかで一筋の光をみた。暖かく、優しいひかりを。
もう俺にはその光しかみえない。
でも、それだけで充分だ。
光―――愛してるよ。ずっと一緒だ。
―――True end―――
最終更新:2008年10月08日 21:25