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865 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:10:13 ID:95E+WFMg
第四話『二人の景色・融和』


ナギは歩いていた。ただひたすら、無心に、愛する母の居る揺りかごに向かって。
「おーい」
脳内では、何の思考も働いては居ない。
「おーい、ナギさーん!」
脚を動かす。ルーティンワークに過ぎなかった。
「新手のいじめかなー? 野々村ナギさん?」
ほっぺたをつねられたところで、やっと追跡者の存在に気付いた。
「なんだ、お前は」
「もうっ、西又イロリ、華の十七歳。職業は高校二年生、将来的には鷹野千歳のお嫁さんの鷹野イロリ! 近年まれに見る良妻なんだから、忘れないでよね!」
「ああ、そういうやつもいたな。何もかもが懐かしい」
「十五分前に別れたばっかりだから! ……まあいいとして、ナギさんほっぺたやわらかいね、うらやましい」
「何を言っているんだお前」
「はっ……ほっぺたの柔らかさにごまかされるところだった……。罠ね!?」
「いや、お前が馬鹿なだけだろ」
「……馬鹿とはなによ。ちょっとお茶目なだけじゃない。ほら、賢すぎる女よりちょっと馬鹿な女のほうが安心するっていうでしょ。だから私も、ちーちゃんにかわいいっていってもらえるように、キャラ作りよ」
「そういう馬鹿っぽい負け惜しみを考える奴が馬鹿なんだろうが」
「うわー。正論だからむかつくなー」
「勝手にむかついていろ」
ナギは顔を背け、再び歩みをはじめた。
とてとてとイロリも後ろにつきまとう。


866 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:10:43 ID:4ulifI0Q
「……」
「おい、お前」
「……なにかな。ナギさん?」
「うっとーしいぞ。ついてくるな。嫌がらせか」
「本題、話していい?」
「お前が勝手に脱線しまくった挙げ句のことだろうが。責任転嫁するな」
「うん、じゃあ本題話すね」
会話が微妙にかみ合わない。ナギにフラストレーションが溜まってくる。
「ナギさんは、私の味方? それとも……」
イロリは微笑んだまま続けた。
「……敵?」
「……ああ、そういう話か」
「うん。そういう話」
「なら、さっきも言ったろう。私はお前を応援してやろうと思っている。別にできることはそう多くないが、少なくとも邪魔はしないつもりだ」
「……それ、嘘だよね?」
「……」
ナギはイロリの目を始めてまともに見る。
よどみなく黒光りした瞳。何の邪念も無い。複雑さの全く無い目だ。その中には、たったひとつの感情しかない。
「――愛、か」
「え……」
「西又イロリ。お前は未来を信じているらしいな。目を見れば分かる」
「……そうだね。私は信じてるよ。私とちーちゃんの、幸せな未来」
「そうか。それは良いことだな」
「だから、あなたは邪魔なの――だって、あなたもちーちゃんのこと、好きでしょ?」
「そうだな。そう思うのも不思議じゃないかもしれないな……だが」



867 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:11:16 ID:4ulifI0Q
「だが、何?」
「お前は弱い。それで千歳の一番になりたいなどと思っているなら、とんだ思い上がりだ」
「なっ……」
「私が千歳に好意を、ねぇ……。未来など信じていない私には、その気持ちがどんなものかも分からないな。だが、もしそうだとしたら……もしそうだとしても、だ……」
「……」
「お前には何の関係もない話だろう?」
「!?」
イロリの表情が変わる。怒り。
「関係ないって何よ! 私はちーちゃんの一番になりたいの! ちーちゃんの隣でなら、笑顔でいられるの! 本当の、私だけの未来に……笑顔で……!」
「未来を信じているなら、つらいことも乗り越えられる」
「え……?」
「千歳が私に昔言った言葉だ。お前の知らない時期の千歳がな」
「ちーちゃんが、ナギさんに……?」
「私は未来を信じてはいない。だから、障害を乗り越えて一番になることなど、できない。だが、お前なら……」
「私なら……?」
「お前なら、できるはずだ。私にできないことでもな。……さて、ついたぞ」
「え?」
「私の家だ。門限なんかに問題が無ければ、飯くらいは食わせてやる。なんなら、泊まっていくか?」
「……うん」



868 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:11:47 ID:4ulifI0Q
「まさか、ナギに新しい友達ができるなんてねー。ほら、イロリちゃん、たくさん食べて♪」
「は、はい……」
もう何杯目になるかも分からない白米をかきこむ。横目に見ると、ナギはイロリが今まで食べた量の数倍をすでにたいらげていた。
ナギの母、頼さんはその光景をみてうふふと笑う。
「ナギ、良く食べるでしょ?」
「そうですね……」
「本能に従うタイプなのよ。我が子ながら、良い子に育ったと思うわ」
「そ、そうですか」
ナギはその間も無言で食べつづける。
本能に従うことがそんなにいいことなのだろうか。イロリは疑問に思う。
「良い事よ」
「えっ?」
心を見透かしたように、頼さんはイロリに語りかけた。
「楽に生きるって、こういうこと」
楽に生きる? それって、いいことかな?
イロリには、やはり分からない。
「じきに分かるわ。大人になってもわからない人はいるけどね」
頼さんはふっと笑った。ナギのイジワルな笑いと良く似ていた。やはり親子だった。



869 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:12:30 ID:4ulifI0Q
「お前、帰らなくていいのか」
「うん。家には誰も、いないし」
「家族は、どうしたんだ?」
「ちょっとね……別居中っていうのかな」
イロリとナギは、そのまま一緒に風呂に入っていた。
「……ナギさん」
「なんだ」
「ちょっと、うらやましいな」
「なにがだ」
「ちーちゃんがいて、優しい学校の仲間達がいて、綺麗なお母さんがいて。うらやましい」
「……そう、だろうな」
「でも、これからは私もそう。それが私の望んだ未来。私の勝ち取った現実。だから……」
「……」
ばちゃ。
「つめたーっ!! これ水じゃない! なにすんのよー!!!!!」
「お前があまりにもマヌケ面だったから、ひきしめてやった」
「なっ……」
「お前、もう幸せの隣にいるだろ」
「え……?」
「邪魔者なんて、お前のココロの中にしかいない。お前と千歳の間に阻むものなんて本当はない。約束は、心が生み出すんだ。お前だって、そう知ってるだろうに。お前達二人の約束だ。私には関係ない」
「……」



870 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:13:10 ID:4ulifI0Q
「私や、他の女が千歳を好きになろうが、お前達の間に立てるわけがないんだ。お前が今考えるべきは、千歳が何人の女に心を惹かれてしまおうが、お前が一番になるということ」
「一番に……」
「障害は乗り越えていけ。お前が上回るべきだろう。障害物競走で障害を排除する奴はルール違反なんだよ。勝ちたいなら、身体を鍛える。私はそんなことしたことがないが、お前なら……できるだろう?」
「……そっか。ありがとね」
「なにがだ」
「本当は最初からわかってたんだ。でも、不安になった。だって、ちーちゃんは優しくて、宇宙一カッコイイ男の子だから」
「(それは無理があると思うが)」
「だから、ちーちゃんの魅力に惑わされた女の子達が、ちーちゃんを奪い去っちゃうんじゃないかって、不安だったの……そしたら、ちーちゃんの心のなかから私が消えちゃうんじゃないかって……」
「……でも、お前は未来を信じているんだろう。なら、くよくよしているヒマはない。本当に良い女になるんだな」
「……うん!」
イロリは力強く頷いた。
「ちーちゃんの一番になりたい! ちーちゃんのお嫁さんになりたい! そのために、私……」
「ああ」
「ナギさんに勝つ!」
「……は?」
「私、わかったよ。ナギさんは凄いって。ちーちゃんの一番近くにいるのは、ナギさんでしょ? それだけじゃない、今まで話してて、勝てないなって思った。私より魅力ある」
「そんなことは……って、お前なにを!?」
イロリはナギを後ろから抱きすくめ、胸を掴んでいた。
「すごい……つるつるだ。その手の人にはたまらないね……」
起伏がほとんど無い。若干膨らみかけ程度の胸をもみ始める。
「でも、やっぱり女の子だね……。すっごい柔らかい」
「お前……馬鹿、さわるな。お前のでかいブツでも自分で揉んでろ」
「ひゃ、ナギさん!」



871 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:13:54 ID:4ulifI0Q
ナギは反撃とばかりに反転して、イロリの胸を掴んだ。ナギとは違い、ボリュームがあり、激しい自己主張をしていた。
「くそっ……何が魅力あるだ。嫌味にしか聞こえんぞ。この魔乳が」
「ひゃ、ちょ、だめぇ……胸感じやすいのぉ……」
「知るか。先に仕掛けたのはお前だ」
「そんな……もぉ!」
イロリはナギの胸から片手を離し、下に向かわせた。
「おい! そこは……!」
「すっご……こっちもつるつるだ……。ごくり……」
「この、お前ロリコンか!?」
「違うよ。仮にロリコンだとしても、ロリコンという名の紳士だよ」
「くそ、お前……こうなればお前のも……」
「ひあっぁ!!! ナギさん!!!」
「お前にイかされるくらいなら、先に……!」
互いに性感帯を刺激しあう二人。
なんとも馬鹿らしい勝負である。これで勝ち負けを決めてなんになるのだろうか。それはもはや当人達にすらわかっていないだろう。



872 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:14:24 ID:4ulifI0Q
「ふぁ……あぁん! ……も、もうぅ!」
「くっ……イロリお前、慣れてるな……」
「ひあああ!!! ナ、ナギさんもぉ!!」
互いにグッドオナニストであることを認めあう。
重ね重ねいうが、この勝負の趣旨は作者にすらわからない。
「だ、だめぇ、イっちゃう、イっちゃうぅ!!」
「くっ、私も、もう、だめだ……」
「はぁ、はぁ……一緒に、いってみるぅ……?」
「はぁ……あ、ああ……今回は……ひき、わけに……」
互いに絶頂に上り詰めようとしていた。
――そのときだった。
がらっ。
「石鹸少なくなってるから、これ使って……あら?」
「あ……」
「か、母さん……これは……」
「あらあら、本当に、仲が良いのね」
頼さんはにやりと笑った。



873 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:14:55 ID:4ulifI0Q
風呂を上がり、ナギとイロリは寝ることにした。
ナギの部屋は大惨事であり客人には公開できないと頼さんはイロリに説明し、寝室を用意した。
イロリはそこで寝ることになる。
が、ナギが寝室に帰ろうとしたとき、イロリが呼び止め、強制的にナギを同じベッドに入れた。
こういう経緯で、二人は同じベッドに寝そべっている。
「おい……」
「なに?」
「お前のせいだぞ。母さんにレズだと思われたらどうすんだ」
「な、なによぅ。ナギちゃんだって、途中からはノリノリだったじゃない」
「あれはお前が仕掛けたんだ。仕方が無いだろう」
「本当にそっちの気が無いなら、本気で抵抗するはずだけど?」
「……ああ悪かったな。私はバイなんだよ」
「へー。気が合うねー。私もだよー」
「それは分かる。……というか、お前千歳が好きなんだろ。私にこんなことして、浮気とかじゃないのか?」
「そんなつもりさらさらないよ。男の人には軽々しく触れたりしないし……ナギちゃんのこと、友達として好きになったからだよ」
「友達、ねぇ」
イロリの友達観は若干ずれている。女同士なら、こういうことをしても大丈夫らしい。
結婚を前提にお友達とか千歳にほざいたところを思い返すと、もうこういう人間なのだとなっとくできる。


874 :ワイヤード 第四話  ◆.DrVLAlxBI :2008/10/12(日) 00:15:30 ID:4ulifI0Q
「それに……キスはとってあるよ。私はちーちゃんにしか絶対キスしないから。……実を言うと、もうちーちゃんとのファーストキス、すませてあるんだ」
「へぇ、興味深いな」
「幼稚園のころ、ちーちゃんがお昼寝してるとき、こっそりねー」
「はっ、そんなことか」
「ナギちゃんは……」
「?」
「ナギちゃんは、ちーちゃんともう、キスした?」
「……なにをいっているんだ、お前。何か勘違いしているようだが、私と千歳は、お前の思っているような関係じゃ……」
「またうそついた」
「!」
「私、ナギちゃんのことは好きだけど、嘘ついたら嫌い。ナギちゃん、ちーちゃんのこと好きでしょ。分かるよ。ちーちゃんも、ナギちゃんのこと見てるもん。ちーちゃんのこと、本気で好きだから、わかるもん……くやしいけど、今の私じゃナギちゃんに勝てないよ……」
「……分かったよ。正直に話してやる。私と千歳の、昔の思い出でも、聞いてみるがいい」
「うん……聞かせて、ナギちゃんに、勝ちたいから」
そうして、ナギは昔話を始めた。