265 :主人公補正 ◆wzYAo8XQT. :2008/10/22(水) 00:15:38 ID:FVtWq7kL
「主人公補正って知ってる?」
 俺は唐突に優にそんなことを尋ねられた。
「なんだ、藪から棒に」
「主人公補正ってのは、主人公はたとえどんな朴念仁だろうと可愛い女の子に愛されたりするってことだよ」
 そういいながら彼女は俺に抱きつき、首に腕を回す。
「へえ」
「私は緋色くんのことだーいすき! だって緋色くんは私の人生の主人公なんだもん!」
 そう話す彼女の表情はまるで年端も行かぬ幼子のように無垢だ。
「お前の人生の主人公はお前だろう。それになんだ、それじゃまるで俺が朴念仁だと言っているようなもんじゃないか」
「そう言ってるのに……気づかないんだから。だから朴念仁なのよ」
「何か言ったか?」
「何も」
 主人公補正か。じゃあ俺がもう時間の感覚が無くなるくらい長期にわたって彼女に監禁されているのに、いまだに俺の体に何の異常もないことも主人公補正なんだろうか。
 もう何回目になるだろうか、彼女の大きく膨らんだ腹部を見て、そう思った。
最終更新:2008年10月22日 00:38