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570 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:44:08 ID:NWqJVb6T
 ガンガンという音が響いてくる。
 うるさい。
 何なんだ、人ん家の玄関を乱暴に叩きやがって。せめて呼び鈴押せよ。いや、迷惑度は呼び鈴のほうが高いか?
 俺は布団から体を起こすと、寝巻きのまま着替えもせずドンドンという音を立てている玄関に向かう。
 来客か? だとしたら俺の名前を呼ぶはずだ。宅配便? だとしたら呼び鈴鳴らすだろうし、「宅配便でーす」のような感じのことを告げるはずだ。
 となると……宗教勧誘か新聞か? もしそんなことで俺の安息の時間をかき乱したなら、俺は決して許しはしない。ドアを即閉めてやった後、ネットにお前らの悪口、というか事実を書き込んでやる。覚悟しやがれ!
 俺はそんな陰湿な思考をしつつ、玄関ドアについている魚眼レンズを覗いた。が、真っ暗で何も見えない。誰もいない?
 とりあえずドアを開けてみる。すると何か硬いものにぶつかる感覚と、ガン、という音とともに「痛っ!」という可愛らしい声が聞こえてきた。
 恐る恐るドアを引いてみると、そこにはデコを抑えた、黒いトンガリ帽子とマントを羽織った、顔が見えないから断言は出来ないが、多分少女がうつむいて立っていた。おそらくうつむいているのは俺の所為。
「うわっ!」
 つい驚きが声に出てしまう。誰もいないかと思って開いたのにこんなおかしな格好した少女がいたら普通驚くとは思う。
というか、冷静になって考えてみれば人がいないなら真っ暗じゃなくて外の景色が見えるはずだ。多分この少女がドアにかなり近付いていたので、この帽子がちょうど魚眼レンズをふさいでしまっていたから真っ暗になっていたのだろう。
「だ、大丈夫?」
 結構強く開いたからな。そこそこのダメージだろう。
 俺はとりあえず少女に声をかける。事情を聞くのは後だ。
「は、はい」
 少女の声は若干かすんでいる。両手をデコからどかすと、確かに目の端には涙の粒があった。
 ……というか、涙とかそういう以前に、なんだこの確定少女の可愛さは。
 パッチリと開かれた目に、すっと整った鼻。そして柔らかそうな唇! ほのかに朱がさした頬と潤んだ瞳のコンボはまさしく反則! ドアぶつけてよかった! さらにボブカットの黒髪が黒の衣装とあいまってどこかミステリアスな雰囲気を出していて最高だ!
 と、いかん、あまりの可愛さにテンションが明らかにおかしくなってしまった。しかし、本当に五年後が楽しみな逸材である。
 しかし、こんなおかしな格好をした美少女に俺は一切の覚えはないのだが。
 ハッ! もしかしてこの子は魔界からの使者で、実は俺が魔王の血を引く唯一の存在とかで、魔王が崩御したため俺が時期魔王に就任することになって、そのことを伝えに来たとか!? 
うはーーーーー!! 俺始まった! 始まったよ! もしかして魔界にはこんな可愛い子がゴロゴロ!? うひょー! ハーレム作っちゃうぜえええええええええ!!
 ……ねーよ。アニメの見すぎだカス。
「あ、あの」
「は、はい!!」
 いかん、妄想にふけっていて目の前の景色を認知していなかった。
 少女に声をかけられたことで俺は正気に返る。
「とりっくおあとりーと!」
 少女は先端に星を模した――厳密に星を模しているのなら五角形などではなく円であるべきなのだがそれは置いておいて――構造物のついた長さ三十センチほどの棒でビシッと俺を指しながら、とても可愛らしい声でそう言った。
 トリックオア……なんだって?
 俺はしばし静止し、少女の言った言葉の意味を考えてみる。そして十秒ほどの思案の後、ようやく今日はハロウィンだった、という事実に突き当たる。
 ああ、ハロウィンだから、こんな安アパートにまで回って菓子を掻き集めているというわけか。……この西洋かぶれめ! 非国民め!
日本にハロウィンを祝う風習など存在しない! なんでもかんでも祝えばいいってもんじゃねーぞ! マスゴミに踊らされるな! 自分の脳で考えて判断して行動しろ!
 俺は脳内でどこか的外れなツッコミを高速で展開する。が、無論口に出したりはしない。こんないたいけな少女にこんな罵声を浴びせるのはあまりにも酷に思われたからだ。これが男だったりしたら思いっきりにらんで罵っていたことだろう。可愛いは正義!
「お菓子……ねえ」


571 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:46:20 ID:NWqJVb6T
 トリックオアトリート。つまり「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ、てへっ」ってことだ。なんという恐喝。でもこの少女にならいたずらされるのも悪くな……悪いに決まってんだろ。俺はロリの趣味はないんだ。
 ならば菓子を与えて追っ払うしかないが、家に菓子なんていうそんな非経済かつ無駄なものはない。お兄さんには金がないんだ! パソコン買う金はあるがな! 出せそうなものは作り置きのカレーくらいしかない。先生、カレーはおやつに入りますか!
「か、カレーならあるけど」
「カレー? もしかしてカレーがお菓子に分類されるとでも思ってるんですか?」
 おほう! なんとクールなツッコミか。お兄さん傷心! 先生によると、やはりカレーはおやつには入らないそうだ。つーかカレーを一体どうやって持ち帰らせる気だよ。
マントにでもかけるか? それなんて嫌がらせだよ。警察呼ばれるよ。まあ俺みたいな人間失格者がこんな国家によって保護さるるべき天使と会話してる時点で、人によっては十分通報モノだと思うだろうけどね!
「お菓子、ないんですね」
 ゾクリとするくらい、少女の声が冷たくなった。帽子の広い鍔に隠れて、表情が伺えないのがより一層恐怖を助長する。
 お前どんだけ菓子好きなんだよ! このスイーツめ! 括弧と笑を付けてやろうか!
 こんなバカなことを考える余裕もまだあったが、俺は内心かなりビビっていた。可愛らしい容姿を持つ少女なだけに、シリアスになったときのギャップはでかい。
「そ、そういうことだから」
 いたずらをされてはたまらん、と俺はドアを閉めた。が、締め切る前に少女はスルリと玄関に滑り込んだ。予想外の行為と素早さに、俺はまんまと少女に俺の城、いや、絶対守護楽園サンクチュアリ! という名のボロアパートへの進入を許してしまった。
どのくらいボロいかというと、幽霊がビビッて近寄らないくらいボロい。なんということだ。これでこの少女がちょっと大きな声を上げようものなら、きっと公僕が一ダースも飛んできて、俺は未成年者略取の疑いで手が後ろに回り、「
刑事さん……なんで俺、こんなことになっちゃたのかな」とか言いながら熱々のカツ丼を顔面に押し付けられ、独房でスタンドの光と刑事の禿頭のコンボによりで蒸し焼きにされてしまうんだ!
 完全に支離滅裂な思考で頭が埋め尽くされる。しかし彼女は冷静そのもの、といった様子で、マントから目と口がギザギザに切り取られた橙色のかぼちゃを取り出した。
ヘタがあるべき部分からは、見事な導火線が伸びていた。ハロウィン定番のキャラクター(?)、ウィル・オー・ウィスプをともすジャックさんのランタンである。
 ウィル・オー・ウィスプはあくまで種火程度のはずだろ! 爆発とか種火ともいたずらともスケールが違うだろうが!
 俺は完全に恐怖し、思わず後ずさる。しかしここは玄関。そしてこんな古アパートにバリアフリーが施されているわけもない。玄関の縁の段差に足を引っ掛けて、そのまま仰向けで転倒してしまった。
「お菓子がないなら、いたずらしちゃいますね」
 少女、いや美少女は俺のそんな様子を見てクスリと微笑み、かぼちゃの顔を俺の顔に向け、頭の導火線を引き抜いた。
 やられる!
 かぼちゃの目と口から噴き出した煙を見て、俺は死を確信した。なんてことだ! ああああよ、しんでしまうとはなさけない! そんなクソッたれな王様の台詞が脳裏をよぎったのを最後に、俺の思考は停止した。おい走馬灯よ、話が違うぜ……。

 ガンガンという痛みが響いてくる。
 頭が痛い。あの世でも身体感覚はあるのだろうか。
 そんなことを思いながら、恐る恐る薄目を開ける。
 まず目に入ったのは木の天井。
 やたら暗いことから、今が太陽が沈みきった後の時間だということが分かる。ずっと目を閉じていたため、闇に目が慣れていなければおそらくまったく何も見えなく暗さだ。


572 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:47:20 ID:NWqJVb6T
 そして次に目に入ったのは床に乱雑に置かれた――ばらまかれたわけではない。他人から見たら散らかり放題に見えるだろうが、俺にとってはこれがデフォルトなのだ。
別に俺以外の人間の入ることのない家だ、別に構うまい?――紙やビニール袋、食べたまま放置された食器類。
 ここまでは何の異常もない、平時の俺の部屋の光景だった。あの世ってのが気を利かせてくれて普段と変わらぬ状況を再現してくれているのか、それとも、というかやはり、というか俺は普通に生きていて、なぜか布団の上に安置されているのか。
 そもそも、俺はあのかぼちゃから煙が噴き出してきたのははっきりと見たが、爆発したのを見たわけではない。まあ爆発なんて見たら死んでるだろうけどさ。
となると、あの煙は催眠ガスか何かと考えるほうがつじつまは合う。……どうして少女がそんなものを持っていて、なぜ俺は昏倒させられたのか、という説明を無視すれば、の話だが。
「あ、目が覚めたんですね」
 あの少女の声が聞こえてきた。これで確信できた。俺はまだ生きている。
「おい、いったいこれはどういう……」
 そこまでいって起き上がりかけて、俺は初めて気づいた。俺の両手は畳に突き刺された棒と手錠によって固定されている。足も同様だ。「刑事さん……俺、なんでこんなことになっちゃったのかな」が冗談ではなく事実として起こってしまった。
 いや、事実ではない。刑事が俺を逮捕したのであれば拘置所の床に、あの少女と一緒ではなく、俺一人で転がっているはずなのだから。
 というかどうすんだよ、ここ賃貸物件だぞ!? いくら古いからといって、「ある日突然地面から四本の柱が伸びてきて……」なんて言い訳が通用するとはとても思えん。
「うふふ、とっても素敵でしょう、それ。ホントはクリスマスにサンタクロース姿で乗り込もうと思っていたんですけど、ハロウィンでもなんとかなるんじゃないか、と思っちゃったらもういてもたってもいられなくなっちゃって……。
でもよかった。うまくいって。もし失敗したらどうしよう、って、胸が張り裂けそうだったんですからね」
 彼女はどこかおどけるような、責めるような調子でそう言った。
 これが素敵とは、いい趣味してんな。同じ目に合わせてやろうか。ロリっ娘地獄の監禁調教! ……うへへ、俺のほうがよっぽどいい趣味してるぜ。
 そもそもクリスマスとかハロウィンとか、彼女が何が言いたいのかがいまいちよく分からない。
 唐突な状況。かみ合わない会話。もしかしてこれが巷で話題のいわゆるヤンデレという奴なのだろうか。ええい、俺はクーデレ派なんだ! クーデレこそ至高! ヤンデレなんて興味ないんだ! 流血沙汰なんてごめんだぜ!
「なんで、こんなことをした?」
 悲しきかな、いまや俺の生殺与奪はすべてこのいたいけな少女に握られている状態だ。俺は媚び諂わないながらも、言葉を選びながら彼女に尋ねた。
 返答に彼女の意識をそらさせながら、俺は状況を確認するために首を起こして彼女の声のするほうを見る。すると俺の目に映ったのは、闇に浮かび上がるむき出しの彼女の白い肢体だった。
 彼女の体は本当に白くて美しく、まるで光を発しているようですらあった。どこか生者離れした、静物染みた白さと美しさ。目をそらしたくない。触れてみたい。そんな欲望が頭を擡げる。
ああ! 床に詰まれた本が邪魔で女の子の大事な部分がよく見えん! 糞、誰だこんなに散らかしやがった奴は! 俺だった!!
 待て! 落ち着け俺! 紳士の方ですらYesロリータ、Noタッチ! だ。紳士ですらない俺がこんなガキに欲情してどうする!
 必死に葛藤し、何とか意識を彼女の体から引き離す。部屋は彼女の乱雑に脱がれた服以外に増えたものは見当たらない。おそらく今俺を拘束しているこれらの道具はマントに隠してあったのだろう。


573 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:47:57 ID:NWqJVb6T
「ごめんなさい、こんなことをする子は嫌いですか? どうしても気持ちが抑えきれなくなっちゃったんです。ホント、あたしって駄目な子ですよね……。でも安心してください! すぐにあなたを私なしでは生きていけないようにしてあげますから」
 そう言って彼女はくねくねと恥ずかしげに身をよじらせる。
 うーん、彼女の返答を聞いても、いまいち理由がよく分からない。何せ俺は彼女に対して一切の心当たりがないのだ。こんな可愛い子と面識があったら、例え子供でも忘れるわけがない。
「あの、もしかして人違いじゃない?」
 人違いでこんな目にあっているのならそれはそれでえらい話だが、とりあえず彼女にそう尋ねてみた。
 失敗だった。俺はいわゆる地雷という奴を寸分違わず正確に踏み貫いてしまったらしい。
「ふざけないで!」
 彼女は突然激昂し、俺の上に飛び掛った。
 思ったより衝撃は少なく、俺は内臓破裂の憂き目に会わずに済んだ。しかし、俺はようやく、俺自身も服を脱がされ、全裸にされている、ということを彼女の肌の感触で気づかされた。
「ふ、ふざけてません!」
 俺は慌てて否定する。全紳士の皆様! これは不可抗力でございます! 私めにはどうしようもなかったのであります!! ですから私めは無罪なのであります!
「あ、ああああなたもしかして本当に私のことがわ、わわ分からないっての!?」
 彼女は激しく取り乱している。細い腕で俺の肩を掴み、揺さぶる。なんて滑らかな肌だろう。
「わ、分かりません!」
 彼女の勢いに押され、俺は取り繕うこともせず、正直に答えた。
 その返答がよっぽどショックだったのだろう。彼女はピタッととまったかと思うと、仰向けに俺の上に倒れた。
ああ、俺の息子が彼女の背中に密着して! 彼女の滑らかな背中に圧迫された所為で、我が股間に鎮座している邪気棒――ダークネススティック――が膨張を開始してしまった。鎮まれ……鎮まれ俺の邪気棒よ……。
「ホントに……ホントに私のこと、覚えてないの?」
 彼女は明らかに泣いているようだった。こんな美少女を泣かせてしまったというのは、俺に過失がなくても罪悪感を感じる。
「毎日……毎日すれ違っていたのに……毎日あなたに会うことだけを楽しみに生きていたのに……」
 毎日すれ違っていた? そんなバカな。何せ俺は自宅を守る使途。休みがちの学校に行く以外は人のまったくいない夜中に食料の買出しやゴミ出しに出かけるほかに一切の外出を行っていないのに、毎日すれ違っているわけがない。
「ほ、ホントに分からないの? 私、毎朝あなたのことを眺めていたって言うのに!」
「……ごめんなさい、分かりません」
「バスからあなたの部屋の窓越し私の視線、感じなかったって言うの?」
 ……ちょっと待て。


574 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:49:40 ID:NWqJVb6T
「今なんていった?」
「だから、私の視線が――」
「その前」
「バスからのあなたの部屋の窓越しの――」
「そこおおおおおおお!! 毎日会っていたってバスの中から見ていただけかよ! 分かるかよ! まさか家から一歩も出ずに見ず知らずの人間と毎日会うことができるとか考えもしねーよ!
 つーか俺ほとんど常にカーテン閉めっぱなしで、開けてることすら滅多にねーよ! ふざけてるにもほどがあるだろ!」
 思わず怒鳴る。しかし、俺に非はないだろう?
 が、正論だの何だのが通じる相手ではなかったのが俺の不幸だ。
「なんで分かってくれなかったんですか? 私はちゃんと分かっていたんですよ? その他大勢に混ざっていても、窓越しでも、カーテンが閉まっていても、あたしは一目であなたのことを見つけることが出来ます。それなのに……それなのに!」
 彼女は体を起こすと、そのまま俺の口にキスをした。
 そのまま唇を舌でねじ開けられ、舌をねじ込まれる。
 なんとか拒否しようと首をそらすも、俺の首のふりに彼女も合わせてきて、それを拒むことが出来ない。
 どれだけの時間、くちづけをしていただろうか、息が詰まるような長い時間の後、彼女は頬を紅潮させ、うっとりとした表情で俺から唇を離した。彼女の舌と俺の舌の間に銀の橋が架かる。
「は、初めてだったのに……もうお婿に行けない!」
「ホントに!? あたしも初めてだったの! 嬉しいなぁ」
 愛想を尽かさせようと空気を読まずに冗談を言ったのに、まったくの逆効果だ。
「……まだ今なら引き返せるぞ。お前が俺の両手両足の手錠を解いて、服を着てそのまま帰るなら見逃してやる。だからもうこんなことはやめろ」
「やめるくらいなら、最初からこんなことしません、私だって、これが犯罪行為だってことくらい分かってます。でも、あなたのことを思うと、抑えられなかったんです」
「……お前は俺のことなんて何も知らないだろ。ただバスからほんの一瞬見ていただけだ。悪いことは言わない、もうやめるんだ。俺は人の下だぞ」
「うふふ、あたしがそんな考え無しの子に見えるなんて、ちょっとショックだなあ。あたしはただ見た目だけで人のことをここまで好きになったりなんかしません。
初めて見たあの日、なんとか人ごみからあなたを見つけ出して、そのままずっと後をつけたんです。そしたら毎日バスで前を通る家に住んでいたって分かって! あたし、これは絶対に運命だって確信したんですよ。
それからあなたのパソコンの情報を見せていただいて、どんなものが好きなのか調べたりとか、買い物の様子を観察させていただいて、
どんなものが好みなのか調べたりとか、ゴミを回収させていただいて、一体どんなものを買っているのか調べたりとか、ちゃんとしたんですよ?
 そしたらますます好きになっちゃったんです。合鍵を作れなかったのはあたしの及ばぬところだったと反省していますが、でも、ちゃんとあなたの趣味も分かるし、あなたの好みも分かります。あたしには、あなたを幸せにしてあげられる自身があります!」
 気が遠くなった。おいおい、一体何してやがる。アパートの共同回線がこんな形で裏目に出ることとなるとは、夢にも思わなかった。
 というか、一目見ただけでこんな行動に出てる時点で、十分好きになりすぎてるというか、狂っているというか。そもそも、俺を詳しく知ってなおさら好きになるとか、脳に致命的な障害を持っているとしか思えん。
 俺は彼女の体温を感じているのに、寒気を感じた。邪気棒も、先ほどよりもしょんぼりとしている。
「だから、あたしは引き返すつもりなんてこれっぽっちもないんです。だって、あなたが好きだから」
 彼女はそう言って、俺の邪気棒に手を伸ばした。
「ちょ、待てまずいってそれは!」
 彼女の思惑を理解した俺は慌てて彼女と止める。
 彼女はおそらくこのまま既成事実を作る気だ。そうなっては俺がいくら言葉を並べ立てようとヤムチャほどの価値もない。
この国の司法はただでさえ女性に甘いのだ、この天使を救うためなら、俺みたいなゴミ虫の一匹や二匹、なんの逡巡もなく平気で牢屋でも火山の火口にでも放り込もう。
 逆レイプ、ダメ! ゼッタイ!


575 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:50:13 ID:NWqJVb6T
 しかし俺の邪気棒は彼女の愛撫の前にあっさりと陥落した。彼女の細く柔らかく、ひんやりと冷たい手の前に、俺の理性はあまりにも無力だった。邪気棒は邪気を先端ににじませながら、起き上がって天を睨んでいた。ええい、それでも貴様それでもワシの息子か! 情けない!
「早まるな、君にはまだ未来がある!」
「はい、あなたと一緒に過ごす未来です。そのために、今やらなきゃならないんです」
 あああああああ。ダメだ、彼女のフィルターを通したら、どんな言葉も彼女の行動を肯定するものになってしまう!
 少女は腰を浮かせると、俺の邪気棒の真上に据えた。彼女の局部は俺も彼女も触れてもいないのに、すでにテラテラと濡れていた。
「毎日この日のことを思って一人で慰めてたけど、こんなに大きいの、入りきるかな……」
 頬を一層紅潮させ、そう呟いたかと思うと、彼女は腰を一気に落とし、俺の邪気棒に貫かれた。
「ああああああああああ!!」
 悲鳴とも嬌声とも付かない声を上げ、体を仰け反らせた。
 同時に、俺の邪気棒に衝撃と強い快感が走る。
 接合部からは、彼女の白い肌との対比で、かすかに黒いものが見えた。
「もしかして、初めてだったとか?」
 俺は状況的には正しいが、脈絡的にはすっ飛んだことを彼女に尋ねる。
「はい……初めてはあなたで、って決めてましたから……」
 なんとか搾り出すように、少女はそう答えた。
 なんともったいないことを。また地球上から貴重な処女が喪われたというのか! ……いや、別にこの場合はいいんじゃないか? 俺から見たら、だが。
 彼女は荒い息をしたまま、俺の上にしな垂れかかってきた。ちなみに、繋がったままである。
 ああもうダメだ、可愛すぎる。こんな状況で、自分を抑えられるはずがないだろう。
 幸いにも、というか、これが彼女の狙いだったのかは分からないが、拘束されているのは両手両足のみ。つまり胴部はある程度動かすことが出来るのだ。
「動くぞ」
 俺はそう告げると、腰を上下に動かし始める。
「あっ! まだダメです、まだ動いちゃあああああ!!」
 彼女は俺を止めようとするが、後半は言葉にならなかった。中はかなりきつい。きっと痛いのだろう。だが、止まりたくない。それに、彼女のほうからこんなことをしてきたんだ、俺に罪はないさ。
 俺は夢中で腰を打ちつけ続ける。彼女は息も絶え絶えで、悲鳴ともあえぎ声ともつかぬ声を上げている。彼女のよだれで、俺の右肩付近がベチャベチャになってきた。
 次第に彼女の声は獣染みたものになっていき、眼の焦点が合わなくなっていく。ときおり不意に締め付けが強くなり、ひときわ大きな悲鳴を上げ、ガクガクと崩れ落ちそうになる。おそらく、そのたびにイッているのだろう。一体何回イッているのか、数える気も起きないほどだ。
 一方の俺の邪気棒は一人プレイによって鍛え上げられていたので、すぐに邪気を発するようなことはなかった。しかし、この五感に訴えてくる攻撃は強烈で、ほどなくして俺も絶頂を迎えた。
 しかし、彼女の中に邪気を放っても、俺の邪気棒はまったく衰える様子を見せず、精神のほうも、虚脱感も腰の疲労も感じずに、すぐに注挿運動を再開してしまう。手を使えないのがもどかしくてしょうがない。
 そうして俺達は、カーテンを通して強い光が差し込み、俺が意識を保てなくなる時間まで、互いの体を貪りあった。


576 :Trick or! ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/11/04(火) 23:50:46 ID:NWqJVb6T



 これは俺の腰折れたかも分からんね。
 腰に走る激痛で目を覚ました俺は、まずそんなことを考えた。同時に、この痛みで、今までのことが夢ではなかったことを嫌でも自覚させられる。
「おはよう、あなた」
 ゆっくりと右を向くと、少女が幸せそうな顔をして添い寝していた。
 俺は俺の両手足の手錠が外されていたことに気づく。
「だって、もう必要ないですよね。もう逃げられませんよ」
 俺がそのことを彼女に言うと、彼女は手をいとおしそうに腹部に伸ばし、笑顔でそう言った。
 やっちまった。
 さあっと血の気が引いていくのがはっきりと分かる。彼女の体温で暑い位のはずなのに、歯の根が合わず、ガチガチと歯が鳴り始める。
「寒いんですか? なら、私の体で暖めてあげます」
 そう言うと彼女はただでさえ密着状態である体をさらに密着させ、俺に痛いほどの力で抱きついてきた。こんな少女の細腕なのに、俺の力ではどう頑張っても解けそうにない。
「うふふ、もう絶対に離しません」
 そういとおしげに言う彼女を見て、俺は自分の今後の人生がどうなるか確定したことを理解した。

 その後?
 監禁フラグや心中フラグを何とか回避し、幾千の修羅場と死線を潜り抜け、ずっと二人で幸せ……に暮らしましたとさ。