ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
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2022-02-13T15:06:56+09:00
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『彼女にNOと言わせる方法』 第七話
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862: ◆lSx6T.AFVo :2021/06/09(水) 16:36:50 ID:fDGdApDk
「男らしいとは、どういうことなのか。まずは、その定義からハッキリさせようじゃないか」
夏期講習、午前の部を終えたばかりの昼休み。
メインで使っている四年二組の教室から、三つほど離れた埃っぽい空き教室の中、僕は授業用の指し棒を手のひらにポンポンと打ち付けながら授業を開始する。
普段なら決して許されないであろう、教壇に立って教鞭をとるという教職者にしか許されない行為に興奮する気持ちを抑えつつ、雄弁な口調で講義を続ける。
「近藤くん、キミは男らしいとはどう心得るかね?」
唯一の生徒である近藤くんは、筆箱とノートの配置を終えると、ゆっくりと顔を上げる。
そうですね……と、少し思案した後、
「まず、運動神経がいいという要素は不可欠だと考えます。体育や運動会などで、八面六臂の活躍ができる男子は、間違いなく男らしいと評されるでしょう」
「ほお……鋭い。実に鋭い視点ではあるが、足りない。足りないなぁ」
僕のもったいぶった口調に、彼の眉が怪訝そうに上がる。
「して、どういう意味でしょう?」
「考えてもみたまえ。たしかに、運動会のリレーでアンカーを走るような男子は一目置かれる。トップでゴールすれば、クラスのヒーロー待ったなしだろう。けれど、それはあくまで子どもの時だけじゃないかね。大人になった時、足が速いという要素が、果たしてどれだけの意味を持つというのだろう。いい年した大人が、俺って足が速いんだぜ! ってアピールしたところで、得られるのは尊敬ではなく、失笑ではないかね」
「た……たしかに!」
目からウロコといった様子で、筆箱から鉛筆を取り出すと、あわただしくノートに要約を書きつけていく。さながら、宗教的指導者の語録をまとめる信者といった様子だった。もしくは今風にいえば、オンラインサロンの主催者とそのメンバーといったところか。
「では、運動神経は男らしさの必要条件ではないと」
くるりと鉛筆を回し、嬉々とした表情で確認をとってくる。彼の残念すぎる運動神経を思えば、これほどポジティブな情報もないだろう。
「いかにも!」
僕は指し棒を最大限まで伸ばして、近藤くんの鼻先に向かって突き出す。すると、彼はウッとのけぞり手中の鉛筆をノートの上
2022-02-13T15:06:56+09:00
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『きょうだい忌譚』 はじまり
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842: はじまり :2021/04/13(火) 18:27:54 ID:QE9nDRzM
きょうだいのあり方は千差万別だ。
我が半身かのように切っても切れない関係性のきょうだいもいれば、互いに凶器で切りつけ合うような関係性のきょうだいもいる。目を合わせることもしないきょうだいもいれば、目を合わせることすら恐れているきょうだいもいる。
僕はおもう。
なぜ、こんなにもバラバラなのだろうか。
たしかに、同じ血を分けた者同士だからといって、何から何まで同じというわけではない。いくら外側は似通っていようとも、その内側まで似通っているとは限らない。
されど不思議なもので、内側の差異が関係性に影響を与えない場合もある。
白と黒のように正反対の性格であっても仲のいいきょうだいはいるし、鏡を写し合わせたように相似していても仲の悪いきょうだいもいる。
では、きょうだいの関係性を決定づける要因とは何なのか。
僕は、あの日からずっと考えていた。
それこそ、死ぬほどのおもいをして考え続けていた。
今でこそ坂道を転がり落ちるような、悪化の一途をたどっているが、答えさえ見つかれば、今の状況を変えられるのかもしれないという、かすかな希望があったからだ。
僕たちも、いつかはありふれたきょうだいになれるはず。それなりに好き合っていて、それなりに憎み合っている、ふつうのきょうだいになれるはず。
そう信じていた。
でも、最近は、徐々にその熱意が失われつつある。
もっとハッキリ言ってしまえば、どうでもよくなってきている。
なぜなら、僕はこれっぽっちも後悔していないと気付いたからだ。
過去を振り返って、「あの時、ああしていればよかった」と悔やむことは誰にだってあるだろう。
だけど、それは自分が違う行動をしていれば、違う結果を生むことができたと確信できている場合だ。
たとえるなら、通り魔に恋人を殺された日を振り返って、「あの時、外へ遊びに行こうと彼女を誘わなければ」と悔やむような。
しかし、僕の場合は違う。
ばかげた妄想になるが、仮に、僕が神さまから、過去に戻ることができる能力を与えられたとしよう。しかもその能力は、あらゆる時間帯に、何度だって戻ることができる、とても便利なものだとする。
そんな能力があれば、悔やむ者なら誰
2021-04-18T18:07:04+09:00
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『きょうだい忌譚』 1
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2791.html
843: 1 :2021/04/13(火) 18:31:40 ID:QE9nDRzM
佳乃(よしの)は、瞳の少女だった。
「瞳のキレイな女の子ね」
初めて佳乃と会う人は、みんな決まってこう言った。
小さな顔の中に収まっている彼女の瞳は、いつも濡れたように黒く光っていて、人を惹き付ける怪しげな魔力を宿していた。対面すれば、花の蜜に吸い寄せられる蝶のように、自然と意識が持っていかれてしまい、瞳にとらわれすぎて会話の内容をほとんど記憶していないということすらまれにあった。
しかし、魔力とは言っても、ミステリアスな雰囲気などは全くなくて、むしろ人懐っこさを感じさせる爛々とした光だった。
なので、佳乃の周囲にはいつも人がいた。
公園に遊びに行けば、いつの間にか知らない子たちと鬼ごっこをしていたし、親戚の集まりでも子どもたちの中心にいることが多かった。
どちらかといえば内気で人見知りだった僕とは対称的に、彼女は小さな頃から、その社交的な性格を存分に発揮し、大人相手にも物怖じせず話しかけていった。愛嬌があって可愛がられやすかったので、よくお菓子などをもらっていたし、お年玉の金額も僕より高かった。
『素直で明るくて優しい子』
それが、僕のふたつ年の離れた妹である佳乃の、子どものころから一貫して変わらない世間での評価だった。
844: 1 :2021/04/13(火) 18:32:22 ID:QE9nDRzM
僕と佳乃の関係性はどうだったのかというと、別に悪いものではなかった。いや、むしろ良い方だったろう。少なくとも、第三者から見れば、仲良しなきょうだいに映っていたことは間違いない。
実際、妹からは懐かれていた。
僕はこれっぽっちも記憶していないが、母に言わせれば、「それこそ赤ん坊のころから、お母さんよりもお兄ちゃんの方が好きだった」らしい。
佳乃がまだ自分の足で立つことすらできなかった年齢のころ、近くに僕の姿が見えないとすぐに泣き出してしまい、抱っこをしてなだめすかしても全然泣き止まず、僕の姿を認めてようやくおとなしくなったという。
「子守唄を歌ってあげるより、お兄ちゃんの隣に寝かせてあげた方がずっと効果があったわよ」
と、母はよく笑っていた。
たぶん、大げさに言っていたのだろう。まだ分別のつかない赤子が、兄の存在
2021-04-18T18:07:55+09:00
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『きょうだい忌譚』
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2790.html
-[[『きょうだい忌譚』 はじまり]]
-[[『きょうだい忌譚』 1]]
2021-04-18T18:08:59+09:00
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高嶺の花と放課後『リンドウ』
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2789.html
836: 高嶺の花と放課後『リンドウ』 :2021/03/05(金) 10:52:37 ID:rgNZ.V2g
世の中には知らない方がいいことってのがある。
けど人間って愚かな生き物は、探求心にあらがえない。
一度知ってしまえばもう、"知らない"には戻れない。
自分が正しいと思っていたことは全て間違っていたと気付いてしまうこともある。
けれど知らなければそれは正しいのままでいられる。
これから綴られる物語も知らなければ良かったと、そう為る物語。
親切なあたしは一度だけ警告するよ。
これ以上は読まないほうがいい。
警告したからにはもう読書を中断させる義務なんてない。
知ってしまったことに対する責任なんてない。
嗚呼、きっとお前は後悔するんだろうな。
それでもいい。
だってあたしは
悲しむ君が好きだから
837: 高嶺の花と放課後『リンドウ』 :2021/03/05(金) 10:53:51 ID:rgNZ.V2g
待ちに待った月に一度の性行為の日。
けれどあたしが一番楽しみにしてるのは性行為自体じゃなくてその後の出来事だ。
いつからだろう。
あたしの中にあるこの歪んだものに気づいたのは。
あたしの膝の上で眠る彼を見つめれば、苦悶の表情で夢を見ている。
嗚呼、きっと彼は悪夢を見ている。
忘れたくても忘れられない地獄が何度も何度も繰り返されている。
胸が締め付けられる思いになる。
初めは彼が苦しんでいる姿を憐んでいるからこんな気持ちになるのだと思っていた。
違う。
本当はそうじゃない。
彼の苦しんでる姿が堪らなく愛おしいのだ。
けれど自分がそんな歪んだ人間なんて認めたくなくて、何度も目を逸らし続けた。
彼の前で誰よりも正しく、真っ当に生きようと思った。
そうやって彼を、そして自分自身を偽ってきた。
でもどうしたって心のどこかでもう認め始めている。
不幸のどん底にいた彼に惹かれた時点で既に歪んでいたのだ。
少し考えればわかる話だ。
普通は絶望し「死にたい」が口癖の人間を好きになるなんてどうかしてる。
相談相手として話を聞いてるなら
2021-04-18T18:11:23+09:00
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高嶺の花と放課後 最終話『クロユリ』
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2788.html
819: 高嶺の花と放課後 最終話『クロユリ』 :2020/06/14(日) 22:25:06 ID:/peGHtq.
「でさ、彼氏とはどこまでいってるの?」
昨日、高校からの友人から数年ぶりに「会って話そう」と誘われた。
お昼に待ち合わせ、軽く百貨店で買い物を楽しんだ後、休憩がてら軽食を食べるためにカフェへと寄り、ようやく腰が落ち着いたころにそんな質問が飛んできた。
「あ?なんだよ、どこまでって」
「しらばくれちゃって。そんなの決まってるじゃない、セッ……ごめん」
これ以上何も言わせまいと睨みを利かせると恵は反射的に謝罪をした。
しかし相変わらずその瞳には、好奇心が宿ったままで、答えなければ話が進まないことは見え見えだった。
「…別に、そんなのとっくの昔にやってるよ」
「えええ!そうなの?!週何っ?週何っ?」
「うっさいな…。…月一くらいだよ」
「えー!あーでもまぁ確かに世間一般からしたら少ない気もするけど、あの不知火くんと紗凪だもんねぇ。むしろ多い方と評価すべきか」
「ああ!もう、だから嫌なんだよこういう話。それより同級生の連中には言ってないよな?あたしと不知火が付き合ってんの」
「流石に言ってないけどー、紗凪?まだ不知火くんのこと苗字呼びなの?」
「…別にいいだろ、むこうも名字呼びだし…」
「うっっっわ、淡白~」
「いいだろっ!あたしたちにはあたしたちのペースがあるんだよ!」
「ペースって言ったってあんたたちもう何年付き合ってんの?」
「えー…っと、大学4年の秋くらいだったから丸々3年くらいか…な」
「3年も付き合ってて名字呼びしてるなんてどうかしてるよ!本当に付き合ってんの!?」
「あー、煩い煩い。んだよ、じゃあ『ダーリン♡』とでも呼べばいいのか?」
我ながら気色の悪い声が出たと思う。
「ぷっ、あははははは!似合わなー!あはははははは、お腹痛い!」
「…ころす」
「ひひい、まって、謝るから!謝るから!謝…ぷっ、あはははははははは!」
「ちっ、人の事馬鹿にしやがって。そーいうお前の方は、どうなんだよ?」
「聞いてよーそれがさー、ついこないだ別れちゃってさ!」
「またかよ…あたしたちが付き合ってる間に何人取
2021-04-18T18:02:57+09:00
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高嶺の花と放課後 第19話『シオン』
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809: 罰印ペケ :2020/06/14(日) 22:10:18 ID:/peGHtq.
高校3年6月
妹が死んだ。
恋人が逮捕された。
小説が書けなくなった。
もう何もない。
僕には何もない。
けれど僕がどれだけ絶望しようと、慟哭しようと、残酷に時は進み続ける。
終わらないと思った冬は、気がつけば三寒四温に変わり、怒りを覚えそうな程美しい桜が咲き誇る。
けれどそんな桜もいつまでも咲いているわけもなく、勝手に散り落ちた花びらを踏むたびに、幾度となくざまあみろと罵った。
そんなものはただの八つ当たり。
自暴自棄。
毎日何故僕だけがのうのうと生きているのか、疑問を投げかける日々。
そうでもしないと、もう頭がおかしくなる寸前だった。
もういっそ狂ってしまいたいと、何度ものたうち回った。
時が心を癒す様子など全く見れず、寧ろ時が経つたびに、己の中の限界という足音が次第に大きくなっているのが分かっていた。
ガラス越しに世界を見下ろしても、死神には逢えやしない。
なにかきっかけを探し続ける日々を繰り返していた。
ガラスを粉々に割るきっかけを。
けれど消耗していく日々は決して劇的なものは起きず、起伏のない平原がいつまでも、地平線まで続いていた。
僕は死ぬ理由を探すために生きていた。
何か一つ、嫌なことがあれば死ぬ理由として簡単に採用する。
けれど何もないんだ。
良いことも、悪いことも。
だから筆が進まなくなった僕は、代わりに半生を振り返ることにした。
もう物語を綴れなくなってしまった僕が、最期に書く物語。
きっかけを作るための物語。
それがここまで書いてきた不知火遍の物語。
もう僕の心はこれ以上無く、傷付き、歪み、悲鳴を上げている。
憎悪と虚無と絶望と喪失と、そして愛情が、反発し合い今にも心臓が裂けそうな気分だ。
810: 高嶺の花と放課後 第19話『シオン』 :2020/06/14(
2021-04-18T18:01:35+09:00
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高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』
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792: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11:37:09 ID:l17.YzuE
心臓を貫く刃が勢いよく引かれる。
綾音が力無く倒れ込む。
錆びた鉄の匂いが爆ぜる。
「綾音、綾音綾音綾音綾音!!!」
クソなんで動けないんだ!
妹が死んでしまう!
「…」
華がもう一度、刃を振り上げる。
「待ってくれ!華!お願いだ!!死んじゃうよ!!!!」
僕の願いがまるで聞こえていない。
「やめてくれえええええええええええ!!!!!!!!!」
願いも虚しく、残酷にも刃が振り下ろされる。
「ぁぁぁぁぁッッッ!綾音!綾音ぇ!!」
一番見たくなかった光景が、目蓋に焼き付けられる。
綾音は静かに僕の方へ顔を向ける。
「おに……ちゃ…」
僕を呼ぶ声は最後まで続かない。
糸の切れた人形のように綾音は動かなくなる。
待っておくれッッ
こんな結末到底受け入れられない!!!
死んだ人間は何度か見たことがある。
祖父や祖母がそれにあたる。
けれど人が死ぬのは一度だって見たことはない。
こんなにもあっけなく死んでしまうのか?
いや綾音は死んでない!!!
まだ生きてるはずだ!!!
「綾音ッ、綾音!綾音………綾音ぇッッッ!!!!!」
もう死んでるよ。
煩い黙れ。
本当は分かっているんだろう?
このまま放っておけば死ぬかもしれないが、まだ助かる、僕が助ける!!!
いつまで現実を愚かに誤魔化すの?
綾音を助けられるなら、いくらでも愚か者になる!!
まだ分からないの?
黙れ!!!
君は本当に
煩い、それ以上はなにも思うな!!!
僕は本当に愚かだね。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」
793: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11:37:37 ID:l17.YzuE
脳が焼き切れそうだ。
なんだよ…
なんなんだよ!!!
こんなのあんまりだ!!!
「遍…」
赤く染められた包丁は彼女
2021-04-18T17:59:53+09:00
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高嶺の花と放課後 第17話『スイセン』
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2785.html
780: 罰印ペケ :2020/05/31(日) 11:23:32 ID:l17.YzuE
「ほら綾音。今日からお兄ちゃんになる遍くんよ。挨拶して」
初めて綾音と家族になった日は何故だか、よく覚えている。
今では僕ら二人の母親を務めてる義母の、妙子さんの後ろに隠れていた。
「もうお母さんの後ろに隠れてても仲良くなれないよ?綾音、昨日までずっとお兄ちゃんが出来るって喜んでたじゃない」
「あ…あの、あやねです。なかよく…してくださぃ」
なんとか勇気を振り絞ったというような挨拶だったが、段々と尻窄みになっていた。
「こんにちはあやねちゃん。ぼくはあまねっていうんだ。すっごくなまえにてるね」
「うん…」
なんとか歩み寄ろうとしたが、それでもなお新しい母親の影から出てこない。
これからのことが漠然と不案になったのを覚えてる。
「ごめんね遍くん。綾音ったら少し緊張してるみたい。それでも仲良くしてくれるかな?」
「はい、いいですよ」
「ごめんね、少し剛さ…パパと話すことがあるから二人で仲良くしてもらってもいいかな?」
「はい」
僕は構わないと言った心境だったが、肝心の仲良くする相手がおいそれと簡単に母親と離れるとは思えなかった。
「綾音もいい?」
「うん」
しかしその予測に反して、簡単に母親の言うことを聞いた。
この時、子供ながらに『この子は良い子だな』と単純に考えたのを覚えてる。
母親の姿が見えなくなり、さぁ困ったと思っていると、綾音は先ほどの様子とは一転、僕に近づいてこう言った。
「わたしね!あやねっていうの!おにーちゃんはあまねっていうんでしょ?あたしたちにているね!」
先程とは違う、はっきりと強い意志を持った自己紹介。
内容としてはほとんど僕の復唱に近いが、それが綾音にとっての歩み寄りの証拠なのだろう。
しかし震えてる手、身体、瞳が幼いながらに緊張感の伝わるものだった。
「うん…。よろしくねあやね」
この日から僕ら二人の兄
2021-04-18T17:58:16+09:00
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高嶺の花と放課後 第16話『ブラックローズ』
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755: 高嶺の花と放課後 第16話『ブラックローズ』 :2020/05/09(土) 18:59:39 ID:4HTiHH1c
高校2年11月中旬
早朝、いつも通り登校し下駄箱へ向かうと見知った顔があった。
「よう、不知火」
「…」
「ちっ、無視かよ」
この間、『他の女に関わるな』と怒られたばかりなのに、過ちを繰り返すほど愚かではないと自負しているつもりだし、華の"仕置き"も甘いものではなかった。
「遍」
「!」
「ははっ、似てんだろ。口調が似ても似つかないからあんまり指摘されねぇけど実は結構声似てんだぜ」
「…おはよう、萩原さん」
「やっと口を開いたな。単刀直入に言うが、お前に少し話があんだわ」
どうすればいいのだろう。
そもそもこんなところを華に見られたら、また僕は"罰"を受ける。
自分が取るべき行動が分からないままでいると、それを肯定だと勘違いした萩原さんは話を続ける。
「何か、色々と引っ掛かってるんだよ。こうモヤモヤするようなさぁ。いくつか聞きてぇことがあるんだけど、まず文化祭の朝の時に居た"彼女"。そして、今荒れに荒れてる高嶺の花こと高嶺華。どっちが本当の彼女だ?あるいは二股か?」
こうなってしまったら、さっさと答えてしまった方が華に見つかる心配もないと考える。
「…僕の彼女は初めから華だけだよ。萩原さんが出会った彼女を自称したのは僕の妹だ」
「なるほどな。つまりお前の妹の嘘に騙された私は、そのまま本当の"彼女"に伝えてしまって怒らせたってところか」
「…まぁ、そうだね」
「今思えばあの日から華の様子はおかしくなっていった気がするけど、お前らは一体いつから付き合ってんだ?」
「僕らが付き合い始めたのは10月初めの頃だ」
「10月初め?そうか…じゃああの時茶番を演じていたわけだ」
「あの時…?」
「お前と桐生が華に仮の告白した時だよ」
そうか、その時か。
あの時は、萩原さんの"せい"で痛い目を見たな。
頬に痛みこそは蘇らないが、熱が少し帯びる。
756: 高嶺の花と放課後 第16話『ブラックローズ』 :2020/05/09(土) 19:00:52 ID:4HTiHH1c
「ああ、そうだね。あ
2021-04-18T17:56:16+09:00
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