第1章第3話「デスティニー・エンカウント」

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「なんで俺まで行かなきゃなんないんだ……」 「もう、カシス君! ぶつぶつ言ったって仕方ないってば!」 志熊 京とカシス・S・時雨の二人はボード学園の校門前に来ていた。 9月1日、今日から二人ともこの学園の生徒である。 京は高等部2年A組。カシスは高等部3年B組だ。 「あのな、俺は大学卒業してこっち来たんだぞ。何でいまさら……」 「でも、やってることは自宅警備じゃない!」 簡単に言うと、ニートということだ。 実際はキールの手伝いをしているが、手伝いなので仕事とは見なされない。 「わかったよ。やるだけやってみるさ」 「とりあえず、職員室まで行こっ!」 京は意気揚々とそう言うが、カシスは知っていた。 ―空元気だな、あれは。 本当は不安だらけなのだろう。この学園に行くことが決まってから、 京はアルバイトをすると宣言して、あっという間に喫茶店のバイトを決めてきた。 だが京は、ある事情からあまり他人とは接していなかった。 そんな人間が学校で友人を作り、アルバイトで良好な関係を作れるのか? ―はっきり言おう。かなり難しい。 「そうか……」 カシスは木場社長が自分を一緒に編入させたかの理由をつかんだ。 ―ひとりじゃない。頼れる人がいるほうが良いって事か。 「なら、その思惑に乗ってやる。あいつが人間的に成長するかどうかを、見届けてやるさ」 カシスはそうつぶやくと、京の後を追いかけた。 それと同じ頃― (人間か……) 豊桜 冥ことソフォクレスは高等部2-A前で、残りの編入生を待っていた。 (くだらない……この世界の頂点にいるというのに、こいつらは世界を汚すゴミ達……) 彼女の細い目は人を軽視し、くだらないとはき捨てる。そんな目だった。 (しかし、それはまぁ置いといても……どういうこと……?) 彼女の興味は自分の横にいる生徒……八代 みつるに注がれていた。 (こんな奴から……力を感じるとは……) 彼女には相手の力量を量れる、「眼」を持っていた。 と言っても、相手がどれ位の力量を持っているかだけの判断しかできないが。 (一応、マークしておくか…………ん……!?) その時、ある一人の男と眼が合った。 同じクラスになる予定の生徒だろうか? (……私の正体を見透かされている? ……いや、こいつも……?) 「ここ、高等部2-Aですか?」 「え?」 いきなり話しかけられて、冥はやや戸惑う。 普通の相手なら驚くこともなく反応できるが……。 (シグマか……。彼女が……「鍵」だとエウリュディケは言っていたけど……) 「ええ、そうみたいね」 「そうみたいねってことは、あなたも2-A?」 「ええ。豊桜 冥よ、よろしくね」 「志熊 京です。よろしくお願いします」 ちょっと恥ずかしそうに京は手を差し出した。 一応礼儀に沿って握手する冥。 (……こんな子が……エウリュディケの一番気にするライダーなの?) ――冥も京も、まだ知らなかった。   この出会いがお互いの運命を狂わせた事に。 ←[[第1章第2話「始まりを告げる者達」]][[第1章第4話「闇のつぶやき」]]→

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