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ボード学園の正門を、風瀬華枝がとぼとぼと歩いて通る。
兄・列も友人・神歌も既に居らず、一人での帰宅である。
普通の人なら何でも無いと思うだろうが、彼女は少々前から夜が怖くなっていた。
そのため、とぼとぼと言いつつやや早足で帰路についていた。
……と、その華枝をつける影が一つ……。
「変ね……。微かな力を彼女から感じるのだけれど、気のせいかしら?」
エウリュディケの部下……真名をエウリピデス、偽名を神藤和子(しんどうかずこ)と言う。
ソフォクレス=豊桜冥と同じ様に、彼女も力を感じる「眼」を持っている。
しかも彼女は、普段からかけている眼鏡に力を込めてあり、微々たる力も計れるようになるのである。
それを利用し、放課後の時間にボード学園の正門から出てくる生徒達を見張り、
微かでも力を感じる生徒を見つけて、あわよくばこちら側に引き込むようにと、エウリュディケに命令されていた。
「やっぱり間違いなのかな……いや、でもそんなはずは……」
やや自問自答しながらも、神藤和子は風瀬華枝を追っていた。
放課後、京とカシスは同じ帰路についていたが、突如カシスが訝しげな表情をし始めた。
「……どうしたの?」
「つけられてる」
「えっ!?」
思わず後ろを向きそうになる京。
「バカっ! 気付かれたらどうするんだよ!」
「ご、ごめん」
3分ほど歩くが、依然訝しげな表情のままのカシス。
「よく失踪事件が起こってるって話だ、引き離すぞ」
「どうやって?」
「3つ数えたら、走る」
「わかった」
「いいか…………1……2……3!」
合図とともに、二人は後ろに目もくれずダッシュした。
このあたりは人通りが少ないので人の多い大通りに出ようという作戦である。
「よし、さっきの気配は無い!」
「っ!?」
だが突如現れた人影に、二人は止まらざるを得なかった。
「……志熊 京だな?」
「え?」
その人影はまさに影と言えるほど黒かった。
上から下まで黒一色!
しかも、声からでは男性か女性かの判別もつかない。
「我が主の命により、貴様を排除しに来た」
「なっ!?」
「おい待てよ。さっきからつけていたのは京を狙っていたからか?」
カシスが喧嘩腰で謎の人物に聞く。
「我ではない」
謎の人物がそう返答した時だった。
「私の京ちゃんに何してるのよー!!!」
「き、北崎さん?」
北崎沙耶(きたざきさや)。スマートブレイン社が売り出しているグラビアアイドルである。
「もしかして、さっきまでつけてたのは北崎さん?」
「つけてたってのは人聞きが悪いなぁ。ただ私の京ちゃんに悪い虫がつかないか見張ってた、だ・け」
「オイコラ! 俺は虫扱いかよ!!」
どうやら、カシスの感じた後ろからの気配は彼女だったようだ。
「では改めて我が主の命により志熊 京、貴様を排除しに来た」
「ちょっと! 京ちゃんは私のものよ! 殺させやしない!」
間の台詞さえなければすごく勇ましいのだが。
「北崎沙耶……デルティーか。我が主からは貴様を倒しておいたほうがいいと聞いている」
「デルティー……何故その名前を普通の人が」
「……変身」
黒い光……まさしく漆黒の光が謎の人物から放たれると、次の瞬間それは姿を現した。
黒騎士のような出で立ちをし、黒いベルトには剣が装備されている。
左腕には大きな盾もあり、頭には甲冑を模したような角も見受けられる。
「ら、ライダーなの?」
「我が名はオブディア。ライダーとして生まれライダーを超えし者也」
「ふん。あんたに私が超えられると思ってるの?」
北崎はどこからかベルトを取り出すと腰に装着し、ちょっと変わった携帯電話を取り出すと耳にあて……
「変身!」
《Standing by》
そう言うと、ベルトの左腰に携帯電話を装着し、
《Complete》
仮面ライダーデルティーへと変身した。
「かかってきなさいよ!」
「では……参る」
……ここに、妙に西洋じみた黒い謎の人物・オブディアと
ストーカー・デルティーの戦いが始まろうとしていた。
……別に始まらなくてもいいのに。
←[[第1章第9話「戦士の心得」]][[第1章第12話「異能強襲」]]→
ボード学園の正門を、風瀬華枝がとぼとぼと歩いて通る。
兄・列も友人・神歌も既に居らず、一人での帰宅である。
普通の人なら何でも無いと思うだろうが、彼女は少々前から夜が怖くなっていた。
そのため、とぼとぼと言いつつやや早足で帰路についていた。
……と、その華枝をつける影が一つ……。
「変ね……。微かな力を彼女から感じるのだけれど、気のせいかしら?」
エウリュディケの部下……真名をエウリピデス、偽名を神藤和子(しんどうかずこ)と言う。
ソフォクレス=豊桜冥と同じ様に、彼女も力を感じる「眼」を持っている。
しかも彼女は、普段からかけている眼鏡に力を込めてあり、微々たる力も計れるようになるのである。
それを利用し、放課後の時間にボード学園の正門から出てくる生徒達を見張り、
微かでも力を感じる生徒を見つけて、あわよくばこちら側に引き込むようにと、エウリュディケに命令されていた。
「やっぱり間違いなのかな……いや、でもそんなはずは……」
やや自問自答しながらも、神藤和子は風瀬華枝を追っていた。
放課後、京とカシスは同じ帰路についていたが、突如カシスが訝しげな表情をし始めた。
「……どうしたの?」
「つけられてる」
「えっ!?」
思わず後ろを向きそうになる京。
「バカっ! 気付かれたらどうするんだよ!」
「ご、ごめん」
3分ほど歩くが、依然訝しげな表情のままのカシス。
「よく失踪事件が起こってるって話だ、引き離すぞ」
「どうやって?」
「3つ数えたら、走る」
「わかった」
「いいか…………1……2……3!」
合図とともに、二人は後ろに目もくれずダッシュした。
このあたりは人通りが少ないので人の多い大通りに出ようという作戦である。
「よし、さっきの気配は無い!」
「っ!?」
だが突如現れた人影に、二人は止まらざるを得なかった。
「……志熊 京だな?」
「え?」
その人影はまさに影と言えるほど黒かった。
上から下まで黒一色!
しかも、声からでは男性か女性かの判別もつかない。
「我が主の命により、貴様を排除しに来た」
「なっ!?」
「おい待てよ。さっきからつけていたのは京を狙っていたからか?」
カシスが喧嘩腰で謎の人物に聞く。
「我ではない」
謎の人物がそう返答した時だった。
「私の京ちゃんに何してるのよー!!!」
「き、北崎さん?」
北崎沙耶(きたざきさや)。スマートブレイン社が売り出しているグラビアアイドルである。
「もしかして、さっきまでつけてたのは北崎さん?」
「つけてたってのは人聞きが悪いなぁ。ただ私の京ちゃんに悪い虫がつかないか見張ってた、だ・け」
「オイコラ! 俺は虫扱いかよ!!」
どうやら、カシスの感じた後ろからの気配は彼女だったようだ。
「では改めて我が主の命により志熊 京、貴様を排除しに来た」
「ちょっと! 京ちゃんは私のものよ! 殺させやしない!」
間の台詞さえなければすごく勇ましいのだが。
「北崎沙耶……デルティーか。我が主からは貴様を倒しておいたほうがいいと聞いている」
「デルティー……何故その名前を普通の人が」
「……変身」
黒い光……まさしく漆黒の光が謎の人物から放たれると、次の瞬間それは姿を現した。
黒騎士のような出で立ちをし、黒いベルトには剣が装備されている。
左腕には大きな盾もあり、頭には甲冑を模したような角も見受けられる。
「ら、ライダーなの?」
「我が名はオブディア。ライダーとして生まれライダーを超えし者也」
「ふん。あんたに私が超えられると思ってるの?」
北崎はどこからかベルトを取り出すと腰に装着し、ちょっと変わった携帯電話を取り出すと耳にあて……
「変身!」
《Standing by》
そう言うと、ベルトの左腰に携帯電話を装着し、
《Complete》
仮面ライダーデルティーへと変身した。
「かかってきなさいよ!」
「では……参る」
……ここに、妙に西洋じみた黒い謎の人物・オブディアと
ストーカー・デルティーの戦いが始まろうとしていた。
……別に始まらなくてもいいのに。
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