第1章第23話「闇を焦がす」

「第1章第23話「闇を焦がす」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

第1章第23話「闇を焦がす」」(2009/09/22 (火) 01:14:22) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

作者 深優 PM16:25 繁華街 「しかし、あれは何だったんだ?」 緋色は、異形の猫の化け物を屠った後、また粉ミルクを近くのペットショップで買い その帰路の途中に先ほどの化け物の体液が付着したと思われるナイフをチャックのある袋に入れて眺めている。 断末魔の叫びを上げながら、その存在をアピールしていたあの化け物はその息の根が絶えるとまるで最初から何もなかったように消えて無くなった。 ただ、緋色の使っている軍事用ナイフがぼろぼろに刃こぼれを起こしていることが 唯一の証だ。 緋色はその唯一の証拠たるナイフに何か体液が付着しており、「屋敷のフラウに聞けば分かるのではないか?」と思い、余計な物が憑かないように袋にいれていた。 緋色は思う。 あれもまたこの町で起きている行方不明事件の一種であろうっと、 あんな化け物に自分の用に戦闘訓練の受けていないものには、ひとたまりもないだろう。 訓練といっても、剣道や空手などの身体を鍛える目的のそういった物ではなく 命のやり取りを行うものだ。 命のやり取りに戸惑いや躊躇いなど自分の命をなくす要因にすぎない。 「・・・皮肉だな。」 緋色は、自らをあざ笑うかのように口元を歪ませた。 己の運命を変えてしまった組織で学んだことがこうして役に立っており、 そのおかげで自分の守るべきものを守る力を得てしまっているのだ。 その代償がたとえ己の命だとしても・・・・。 PM16:30 繁華街 「だぁぁぁぁ、楽しいことは起きないかね。」 紅葉は、GパンにTシャツというラフな格好で、大あくびをしながら歩く。 そのやる気のない姿で如何にSB社の本社があるこの町の繁華街といえどあまりにも無防備ともいえるが、紅葉から放たれる人を近寄らせない雰囲気から強面の人間も目を合わせなかった。 「確かにこの町は、色々な物が渦巻きすぎているな 一見平和そうに見えて、実はこの一触即発状態この空気たまらなく良いね。 ....っと、おや?」 紅葉はにやりと笑いながら、一般の人間には感じ取れないような何かを感じ取っているようだった。 そして、Gパンのポケットに入っていたけたたましいほどのエレキギターの音が響く。 その音源である携帯端末のボタンを押して紅葉はそれを耳に当てた。 「どうした?」 紅葉は、着信相手の名前を確認するとけだるそうに言う。 『あなたって、今下見であの町にいるのよね?』 玉藻は、少々苛立った様子で言葉をまくし立てる。 「そうだぜ?・・・・まっ、概ねこの町になんでラビリンスの駒と俺たちの兵隊が この町に潜んでいることに関係あるんだろう?」 紅葉は、おもしろくなさそうに人間に化けているノーハーツを一瞥する。 ラビリンスとは、お互いの組織の理念が近いと言うだけあって 度々紛争地域などでの依頼では度々敵対同士として争うことはあるため、 無論、以来によっては共闘をすることもあるがわだかまりは決して消えることはない。 それ以外にも、紅葉としては人工的に作り出したノーハーツ自体をあまり好きには慣れなかった。無論簡単な理由だ。単純に「人工生命体」と言う物が気にくわなかった。 彼女以外にもクローンと呼ばれる人工生命体製造の技術この世の倫理に反しているという宗教観として毛嫌いする組織は多く、そういった所はアトランティカへと依頼するものだった。 確かに、人材を選定して組織に連れてくるまでの時間を省いても 改造するまでに、基礎訓練に1年かけこれに耐え抜けなかったものは破棄され、これに耐え抜いた物は更なる応用訓練に1年、それを超えてやっとDクラスとなる。 それだけ時間をかけている分、かなりの個としての能力は高い。 『流石隊長さんね。』 「よせ、んで?用件は何だ?」 『そうなのよ。それが妙な依頼がこっちに届いてね?』 「妙な依頼?」 『そっ、依頼主も不明、その依頼の用途も不明。』 「どんな依頼だ?」 『それが、一人の女の子を捜してくれって内容なの。』 「ほお。確かに分からないな。 けどもっと分からないのは、なんでそんな分けのわからない依頼を受けたんだ?」 紅葉は、何かを睨みつけるかのように言う。 『・・・・・その依頼の額が半端無く高いのよ。』 玉藻はばつが悪そうに呟く。 「なるほど・・・それで? 高いと言うことはもちろん何かあったということだよな?」 紅葉は呆れた様子で、ため息をはく。 『そうなのよ。 依頼はどうも私たちだけに依頼した分けじゃないみたいなの。』 「なるほど、それでラビリンスの連中もいるのか。」 『それで・・・現場の指揮を万が一に備えて貴方に頼もうっと思うの。』 「やだね。・・・そんなものは諜報の奴らに頼め。 第一、俺なんかじゃ畑違いなんでね。」 紅葉は明らかに難色の色を示しながら頭を乱暴に掻いた。 『一番貴方がちかいから・・・』 「知るか・・・・ちょっとまてよ? なあ、部隊ってどれくらい出しているんだ?」 紅葉は、猫のように目を細めて何かを見つめる。 『Cが2、Dが18の二個班だけど?』 「じゃあ、C一人とD4~5人かりるわ。」 『ちょっ・・なにをいっってい』 紅葉は玉藻の返事を聞き終える前から通信を切った。 「よし、「α1」お前は今から俺の指揮で動け。あと「α2~5」お前らも・・・だ。 あとの班員は、「β1」の指揮下に入り任務を続行せよ。」 紅葉は、ポケットからサングラスを出しかけた。 無論、ただのサングラスではないそれをかけることによって精々200mほどだがその場にいるアトランティカの班員に通信することが可能な指揮官専用のツールだ。 無論、C~Dのゼスト全てには耳にその通信を傍受する小型受信機とCクラスには歯の奥に小型マイクを仕込んである。 「ヤー。」 抑揚の無い機械のような声が紅葉の耳に聞こえた。 「さて、どう楽しませてくれる? 対象物(ラビット)君?」 紅葉は、くすりと口元を歪ませ 常人では関知できないほど距離の離れた緋色を見つめていた。 18:45  裏路地 廃ビル前 「・・・最悪だ。」 緋色は繁華街より付けられていると思い巻こうとしたのが仇となり、 このような人の通らない裏路地に誘い込まれた事に悪態をつく。 「「.....」」 緋色の後方には吸光素材の真っ黒なスーツに暗視ゴーグルを付けた集団が 緋色のことを追いかけていた。 かの物の名は「D級ゼスト」 アトランティカの訓練をくぐり抜けた傭兵だ。 そして、そのコスチュームの左胸にはタランチュラのような蜘蛛が描かれていた。 緋色としては最も会いたくなかった相手である。 唯一の救いは、火器を兵装していなかった事だが事態は不利な方なのは変わりがなかった。 「手持ちが乏しい・・・こんな時に限って」 緋色は、廃墟ビルに隠れて自分の手持ちを確認した。 刃こぼれの激しいナイフ、靴底に仕込んでいたワイヤー、通りがかった工事現場で拾った 鉄パイプ、粉ミルク・・・これらを確認するとさらなるため息が出た。 「・・・あの猫のようにはいかないだろう。 ちっ・・・・かくなる上は」 緋色は、最近続いていた穏やかな日々に平和ぼけしていた自分を呪うように舌打ちをした そして、皮手袋に手を当てる。 「.....」 緋色が隠れた廃墟に1人の黒ずくめの男が探る用に首を動かし、 緋色を探していた。 「・・・・!!!!」 黒ずくめの男が何かにつまずきつんのめった。 「ちぃぃぃぃぃぃ!」 その瞬間、男の首筋に激しい衝撃が走る。 緋色が手にしていた鉄パイプで男を殴りつけたのだ。 もちろん、男がつんのめったのも偶然ではない。 緋色が即興で張ったワイヤーに引っかかったのだ。 「!?!?!?!?!」 その衝撃で地面に倒れた男がすぐさま立ち上がろうとするが、 緋色はすかさず男に鉄パイプを振り落とす。 すると、ゴーグルが砕け露出する素肌からべっとりと血があふれている。 「・・・・・・」 緋色は、何も言わずに倒れている男に追い打ちをかける様に更に鉄パイプを振り落とし 殴られる度にびっくんびっくんっと痙攣をしている男に対して血だまりができるまでその作業をやめなかった。 「つかえそうな物はこれだけか・・・。」 緋色は ワイヤーをすぐさま回収し、完全に息の根を止まっている男の懐をまさぐり、 男が持っていたナイフを自分の懐にしまいすぐさま別の物陰ににまた隠れた。 「「・・・・・・」」 鉄パイプで殴りつける金属音に反応してきたのか二人の男が、 緋色のいる廃墟に入ってきた。 入り口にある緋色が殴り殺した男に二人は近づき、その悲惨な死体に声も上げることもなくただじっと見つめ、ふと天井に目を向ける。 「・・・・・」 すると、一人の男は首筋から噴水のように血が吹き出ていた。 もう一人の男は、その返り血を浴びながら何事かと思い、 ナイフを引き抜きそれを見ようとするが その瞬間、どすっと胸に何かが当たる感覚を感じた。 そして、二人の男はバタンと前のめりに倒れていた。 「・・・あと3人。」 緋色は、返り血を拭いもせず、無表情のままナイフを引き抜いた。 そして、手にしていた粉ミルクを振りまきながら両手の皮手袋を外していた。 もくもくと立ち上る白い煙に、残り3人の男達も廃ビルの中に突入してきた。 視界の悪い中3人がずんずん進み、3人の死体の中心にいる緋色を発見する。 「・・・さようなら。」 緋色は全身から傷が浮かび上がり、己の拳から炎を発生させた。 その瞬間、廃ビルから激しい爆発が引き起こり、 白い世界は一瞬にして紅蓮の炎へ変わりに全てが包まれる。 気体中にある一定の濃度の粉塵が浮遊していると、火花などで引火して爆発を起こすことがあり、それを粉塵爆発という。 この現象は粉塵は非常に細かいので、体積に対する表面積の占める割合(比表面積)がかなり大きいだけでなく、空気中に飛散すると周りに十分な酸素も存在することとなり、燃焼反応に敏感な状態になってしまうためである。このような粉塵爆発事故によって、穀物サイロや工場などの建造物が破壊され、また炎上することになる。 その様な威力のものを引き起こせば、この世に生がある者はただではすまない。 激しい爆発が長く続く事はなく集束へたどるのだが、焔に包まれし世界は終わることはなかった。 全てを吹き飛ばしたと思われるその世界には、二つの影を映していた。 一つは、蜘蛛の様な顔に6本の太い幹のような腕を保有した全身が焼けこげた異形の物 もう一つは、溶岩が冷え固まった様に真っ黒な身体に全身にわたる血管のように脈を打っている紅蓮の炎より鮮やかな赤が全身を駆けめぐり、 触れれば全てが蒸発するような蒸気が常に発散されていた。 「うぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」 紅蓮の化け物は、全ての闇を焼き尽くすかのように、 鋭い牙をむきだしにしながら大地が軋むかのような咆哮を上げた・・・。 ←[[第1章第22話「夜を舞う」]][[第1章第24話「障害を排除する者達」]]→
作者 深優 PM16:25 繁華街 「しかし、あれは何だったんだ?」 緋色は、異形の猫の化け物を屠った後、また粉ミルクを近くのペットショップで買い その帰路の途中に先ほどの化け物の体液が付着したと思われるナイフをチャックのある袋に入れて眺めている。 断末魔の叫びを上げながら、その存在をアピールしていたあの化け物はその息の根が絶えるとまるで最初から何もなかったように消えて無くなった。 ただ、緋色の使っている軍事用ナイフがぼろぼろに刃こぼれを起こしていることが 唯一の証だ。 緋色はその唯一の証拠たるナイフに何か体液が付着しており、「屋敷のフラウに聞けば分かるのではないか?」と思い、余計な物が着かないように袋にいれていた。 緋色は思う。 あれもまたこの町で起きている行方不明事件の一種であろうっと、 あんな化け物に自分の用に戦闘訓練の受けていないものには、ひとたまりもないだろう。 訓練といっても、剣道や空手などの身体を鍛える目的のそういった物ではなく 命のやり取りを行うものだ。 命のやり取りに戸惑いや躊躇いなど自分の命をなくす要因にすぎない。 「・・・皮肉だな。」 緋色は、自らをあざ笑うかのように口元を歪ませた。 己の運命を変えてしまった組織で学んだことがこうして役に立っており、 そのおかげで自分の守るべきものを守る力を得てしまっているのだ。 その代償がたとえ己の命だとしても・・・・。 PM16:30 繁華街 「だぁぁぁぁ、楽しいことは起きないかね。」 紅葉は、GパンにTシャツというラフな格好で、大あくびをしながら歩く。 そのやる気のない姿で如何にSB社の本社があるこの町の繁華街といえどあまりにも無防備ともいえるが、紅葉から放たれる人を近寄らせない雰囲気から強面の人間も目を合わせなかった。 「確かにこの町は、色々な物が渦巻きすぎているな 一見平和そうに見えて、実はこの一触即発状態この空気たまらなく良いね。 ・・・・っと、おや?」 紅葉はにやりと笑いながら、一般の人間には感じ取れないような何かを感じ取っているようだった。 そして、Gパンのポケットに入っていたけたたましいほどのエレキギターの音が響く。 その音源である携帯端末のボタンを押して紅葉はそれを耳に当てた。 「どうした?」 紅葉は、着信相手の名前を確認するとけだるそうに言う。 『あなたって、今下見であの町にいるのよね?』 玉藻は、少々苛立った様子で言葉をまくし立てる。 「そうだぜ?・・・・まっ、概ねこの町になんでラビリンスの駒と俺たちの兵隊が この町に潜んでいることに関係あるんだろう?」 紅葉は、おもしろくなさそうに人間に化けているノーハーツを一瞥する。 ラビリンスとは、お互いの組織の理念が近いと言うだけあって 度々紛争地域などでの依頼では度々敵対同士として争うことはあるため、 無論、以来によっては共闘をすることもあるがわだかまりは決して消えることはない。 それ以外にも、紅葉としては人工的に作り出したノーハーツ自体をあまり好きには慣れなかった。無論簡単な理由だ。単純に「人工生命体」と言う物が気にくわなかった。 彼女以外にもクローンと呼ばれる人工生命体製造の技術この世の倫理に反しているという宗教観として毛嫌いする組織は多く、そういった所はアトランティカへと依頼するものだった。 確かに、人材を選定して組織に連れてくるまでの時間を省いても 改造するまでに、基礎訓練に1年かけこれに耐え抜けなかったものは破棄され、これに耐え抜いた物は更なる応用訓練に1年、それを超えてやっとDクラスとなる。 それだけ時間をかけている分、かなりの個としての能力は高い。 『流石隊長さんね。』 「よせ、んで?用件は何だ?」 『そうなのよ。それが妙な依頼がこっちに届いてね?』 「妙な依頼?」 『そっ、依頼主も不明、その依頼の用途も不明。』 「どんな依頼だ?」 『それが、一人の女の子を捜してくれって内容なの。』 「ほお。確かに分からないな。 けどもっと分からないのは、なんでそんな分けのわからない依頼を受けたんだ?」 紅葉は、何かを睨みつけるかのように言う。 『・・・・・その依頼の額が半端無く高いのよ。』 玉藻はばつが悪そうに呟く。 「なるほど・・・それで? 高いと言うことはもちろん何かあったということだよな?」 紅葉は呆れた様子で、ため息をはく。 『そうなのよ。 依頼はどうも私たちだけに依頼した分けじゃないみたいなの。』 「なるほど、それでラビリンスの連中もいるのか。」 『それで・・・現場の指揮を万が一に備えて貴方に頼もうっと思うの。』 「やだね。・・・そんなものは諜報の奴らに頼め。 第一、俺なんかじゃ畑違いなんでね。」 紅葉は明らかに難色の色を示しながら頭を乱暴に掻いた。 『一番貴方がちかいから・・・』 「知るか・・・・ちょっとまてよ? なあ、部隊ってどれくらい出しているんだ?」 紅葉は、猫のように目を細めて何かを見つめる。 『Cが2、Dが18の二個班だけど?』 「じゃあ、C一人とD4~5人かりるわ。」 『ちょっ・・なにをいっってい』 紅葉は玉藻の返事を聞き終える前から通信を切った。 「よし、「α1」お前は今から俺の指揮で動け。あと「α2~5」お前らも・・・だ。 あとの班員は、「β1」の指揮下に入り任務を続行せよ。」 紅葉は、ポケットからサングラスを出しかけた。 無論、ただのサングラスではないそれをかけることによって精々200mほどだがその場にいるアトランティカの班員に通信することが可能な指揮官専用のツールだ。 無論、C~Dのゼスト全てには耳にその通信を傍受する小型受信機とCクラスには歯の奥に小型マイクを仕込んである。 「ヤー。」 抑揚の無い機械のような声が紅葉の耳に聞こえた。 「さて、どう楽しませてくれる? 対象物(ラビット)君?」 紅葉は、くすりと口元を歪ませ 常人では関知できないほど距離の離れた緋色を見つめていた。 18:45  裏路地 廃ビル前 「・・・最悪だ。」 緋色は繁華街より付けられていると思い巻こうとしたのが仇となり、 このような人の通らない裏路地に誘い込まれた事に悪態をつく。 「「.....」」 緋色の後方には吸光素材の真っ黒なスーツに暗視ゴーグルを付けた集団が 緋色のことを追いかけていた。 かの物の名は「D級ゼスト」 アトランティカの訓練をくぐり抜けた傭兵だ。 そして、そのコスチュームの左胸にはタランチュラのような蜘蛛が描かれていた。 緋色としては最も会いたくなかった相手である。 唯一の救いは、火器を兵装していなかった事だが事態は不利な方なのは変わりがなかった。 「手持ちが乏しい・・・こんな時に限って」 緋色は、廃墟ビルに隠れて自分の手持ちを確認した。 刃こぼれの激しいナイフ、靴底に仕込んでいたワイヤー、通りがかった工事現場で拾った 鉄パイプ、粉ミルク・・・これらを確認するとさらなるため息が出た。 「・・・あの猫のようにはいかないだろう。 ちっ・・・・かくなる上は」 緋色は、最近続いていた穏やかな日々に平和ぼけしていた自分を呪うように舌打ちをした そして、皮手袋に手を当てる。 「・・・・・」 緋色が隠れた廃墟に1人の黒ずくめの男が探る用に首を動かし、 緋色を探していた。 「・・・・!!!!」 黒ずくめの男が何かにつまずきつんのめった。 「ちぃぃぃぃぃぃ!」 その瞬間、男の首筋に激しい衝撃が走る。 緋色が手にしていた鉄パイプで男を殴りつけたのだ。 もちろん、男がつんのめったのも偶然ではない。 緋色が即興で張ったワイヤーに引っかかったのだ。 「!?!?!?!?!」 その衝撃で地面に倒れた男がすぐさま立ち上がろうとするが、 緋色はすかさず男に鉄パイプを振り落とす。 すると、ゴーグルが砕け露出する素肌からべっとりと血があふれている。 「・・・・・・」 緋色は、何も言わずに倒れている男に追い打ちをかける様に更に鉄パイプを振り落とし 殴られる度にびっくんびっくんっと痙攣をしている男に対して血だまりができるまでその作業をやめなかった。 「つかえそうな物はこれだけか・・・。」 緋色は ワイヤーをすぐさま回収し、完全に息の根を止まっている男の懐をまさぐり、 男が持っていたナイフを自分の懐にしまいすぐさま別の物陰ににまた隠れた。 「「・・・・・・」」 鉄パイプで殴りつける金属音に反応してきたのか二人の男が、 緋色のいる廃墟に入ってきた。 入り口にある緋色が殴り殺した男に二人は近づき、その悲惨な死体に声も上げることもなくただじっと見つめ、ふと天井に目を向ける。 「・・・・・」 すると、一人の男は首筋から噴水のように血が吹き出ていた。 もう一人の男は、その返り血を浴びながら何事かと思い、 ナイフを引き抜きそれを見ようとするが その瞬間、どすっと胸に何かが当たる感覚を感じた。 そして、二人の男はバタンと前のめりに倒れていた。 「・・・あと3人。」 緋色は、返り血を拭いもせず、無表情のままナイフを引き抜いた。 そして、手にしていた粉ミルクを振りまきながら両手の皮手袋を外していた。 もくもくと立ち上る白い煙に、残り3人の男達も廃ビルの中に突入してきた。 視界の悪い中3人がずんずん進み、3人の死体の中心にいる緋色を発見する。 「・・・さようなら。」 緋色は全身から傷が浮かび上がり、己の拳から炎を発生させた。 その瞬間、廃ビルから激しい爆発が引き起こり、 白い世界は一瞬にして紅蓮の炎へ変わりに全てが包まれる。 気体中にある一定の濃度の粉塵が浮遊していると、火花などで引火して爆発を起こすことがあり、それを粉塵爆発という。 この現象は粉塵は非常に細かいので、体積に対する表面積の占める割合(比表面積)がかなり大きいだけでなく、空気中に飛散すると周りに十分な酸素も存在することとなり、燃焼反応に敏感な状態になってしまうためである。このような粉塵爆発事故によって、穀物サイロや工場などの建造物が破壊され、また炎上することになる。 その様な威力のものを引き起こせば、この世に生がある者はただではすまない。 激しい爆発が長く続く事はなく集束へたどるのだが、焔に包まれし世界は終わることはなかった。 全てを吹き飛ばしたと思われるその世界には、二つの影を映していた。 一つは、蜘蛛の様な顔に6本の太い幹のような腕を保有した全身が焼けこげた異形の物 もう一つは、溶岩が冷え固まった様に真っ黒な身体に全身にわたる血管のように脈を打っている紅蓮の炎より鮮やかな赤が全身を駆けめぐり、 触れれば全てが蒸発するような蒸気が常に発散されていた。 「うぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」 紅蓮の化け物は、全ての闇を焼き尽くすかのように、 鋭い牙をむきだしにしながら大地が軋むかのような咆哮を上げた・・・。 ←[[第1章第22話「夜を舞う」]][[第1章第24話「障害を排除する者達」]]→

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。