第1章第33話「破滅の夜は終わらない」


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作:プラスマイナス



物語が始まる8ヶ月前。

20××年1月1日

新年あけましておめでとうございます。

この日、太平洋上のとある無人島で、ある事件が起こった。

“一ノ宮財閥”の私設軍隊が、同じく財閥の所有する無人島を爆撃したのだ。

爆撃は数十分間のみ行われたが、“一ノ宮財閥”の私設軍隊の大爆撃を受けた島は完全に焼け野原となり、地形が大きく変化してしまうほどの爪痕を残した。

この爆撃について、一般には『軍事演習』とされている。

しかし、これを不審に思った者たちも多く存在した。

“騎士団”や“G”を含めた多くの組織がこの事件の調査に乗り出し、爆撃された無人島に秘密裏に潜入し徹底的に調べ上げた。

が、破壊しつくされた島からは何も発見することはできなかった。

それもそのはず。“一ノ宮財閥”は島の爆撃だけでなく、その後現場に残っていたと思われる証拠もすべて処理していたのだ。

さらに“一ノ宮財閥”の内部に潜入する者たちもいた。

謎多き“一ノ宮財閥”に潜入することは、相当な危険を伴う任務でもある。

そしてそれは現実となる。

潜入した者は全員、不可解な死を遂げた。

一部では“一ノ宮財閥”の暗部“七つの大罪”の関与が噂されたが、結局のところそれを実証するだけの証拠も無く、どの組織も黙って引き下がるより他無かった。

結果、この事件は闇に葬られた。


後に『一ノ宮事件』と名付けられるこの出来事が、一体何を意味するのか。
それが明かされたのは、もう少し先の未来。世界の命運を左右する大事件の最中だった。


PM.19:55 場所不明

そこがどこかはワカラナイ。

そこは窓や扉などが一切無いが、かなりのスペースを持つ空間である。

そこには電灯などはないが、不思議と明るく同時に薄暗い。

そこには膨大な数の資料とモニターがあり、いくつかの場所に乱雑に置かれている。

広いが狭い。明るいが暗い。汚いが綺麗。

そんな矛盾だらけの場所。

それが“一ノ宮財閥”のトップである一ノ宮薫子の城であった。


その空間の中心にぽつんと置かれた豪勢な椅子と机。
机の上にはこれまた高価かつ高性能そうなパソコンと書類が置かれており、世界でも随一の権力を持つ者が座る椅子に腰掛けるのは、一人の少女。

その少女は整った顔立ちの美少女であり、育ちの良さを感じさせながらもどこか不気味な雰囲気も感じさせる独特の魅力を放っている。
彼女を知る者はこう語った。

―例えるなら“妖花”。見る者を惹き付ける魅力と触れる者に死を齎す魔力を兼ね備えた、世界一の“妖花”。それが一ノ宮 薫子である。

「ふふふ…」

妖花が微笑む。その目が見るのは二枚の書類。
その書類には、二人の女性について記されていた。

「ミシェル・フェオニールにアリシア・ステイト。“騎士団”と“G”は最強と最高の駒を用意してきたみたいね。うふふ…」

薫子が再び微笑む。その表情はゲームを楽しむ子供のように無邪気だ。
そのまま二人の書類を適当に放ると、別の書類二枚を手に取る。
今度はラビリンスとアトランティカに関する書類だった。

「ふーん…今回は依頼というよりも自分たちの目的の為に動いているみたいねぇ…」

膨大な字数の書類をチラリと見ただけで、薫子は全文を理解してみせた。
驚くべき才能だが、これは彼女が内容に関心が無いことを意味している。
それを示すように、手に取って僅か数秒で書類を放った。
次の書類を手に取ろうとするが、何かを思い出したようにその手が止まる。
そしてそのまま、あるモニターに目を向けた。

そのモニターには、病室で治療を受ける月宮刹那とそれを見守る二人の女性の姿が映し出されている。
それを見ながら薫子は机に頬杖をつき、珍しく呆れたような表情を見せる。

「はぁ…私の救世主様はどうして言う事を聞いてくれないのかしら?」

薫子は席を立ち、演劇で踊る舞台女優のようにクルクルと回る。

「ああ…世界の危機。それを救ってくださる救世主様。私の救世主様…」

誰が見ているわけでもないのに、大げさな振る舞いをしながら薫子は語り続ける。

「世界を救うのは“騎士団”でも“G”でもない。私の救世主様、月宮 刹那。貴方が私の、即ち世界の救世主…」

薫子は回るのをやめ、天を仰ぐように言う。

「貴方が救うのはこの世界。そして世界とは私そのもの。だから“騎士団”も“G”もみんな邪魔。その為に戦う私の盾そして剣。その名は大罪、“七つの大罪”…」

同時に宙を舞う七枚の書類。そこに記される七人。
“七つの大罪”。それは一ノ宮財閥の中でも特に闇の中にある、薫子直属の暗部組織。
数多の組織の力でもその実体を探れず、逆に多くの被害を被っているほどである。

モニターに映る病室の二人。刹那を見守るこの二人も“七つの大罪”の一員であった。

謎多き夜はまだまだ長い。


PM.20:00 一ノ宮財閥傘下の病院

裕輔が手配した医療班に預けられた刹那が運びこまれたのは、一ノ宮財閥の傘下である病院だった。
この街にはもうひとつSB社の病院施設が存在したが、当然こちらが選ばれる。
薫子は傷付いた刹那をSB社に預けたりはしない。必ず自分の眼の届く場所に置いておく。
刹那は基本的に自分勝手に行動するので、今だけでも檻の中に入れておこうというのだ。

刹那に用意されたのは、この病院で最も高い個室。普通ならば高名な政治家などが使用するほどの高級病室である。
当然、一般の病室とは比べ物にならないほど豪華な個室で、高級ホテルのスイートルームが霞んで見えるほどだ。
その病室のベッドで刹那は眠っている。治療はこの病院で最高のスタッフが行い、完璧とも思える処置を施した。
今のところ意識は回復していないが、じき目を覚ますだろう。

「……………」

小さな寝息をたてながら眠り続ける刹那。
医者の話では、怪我以外にも刹那の身体には相当な疲労が溜まっていたらしく、彼女が連日連夜に亘って“カンケル”を探し続けていたことが判明。
そこで刹那の護衛と監視を兼ねて薫子直属の暗部“七つの大罪”の中から薫子が“遊び心”を込めて選んだ二名が、刹那に付きっ切りでいる事になった。

それがこの二人。七瀬 百合子と露草 遥である。因みに二人とも刹那とは同い年である。その点も選抜の理由であろうか。

「刹那…」

刹那のベッドの横に座り、刹那の手を握りながら心配そうに刹那の顔を覗き込んでいる少女。

彼女は七瀬 百合子。“七つの大罪”の一員であり、仮面ライダーリリスというもう一つの顔をもつ少女である。
美しい蒼色のロングヘアーに清楚な顔立ち、全体的に気品の良さが漂い“良家のお嬢様”という言葉がピッタリとしそうな美女。
しかし彼女の内面を知る人間に、そう考える者は一人として存在しない。

「……………」

心配そうに見ていた百合子の顔が徐々に刹那へ近付いていく。
距離はどんどん縮んでいき、次第に唇と唇が…

「何してんのよ!!」

二つの唇が一つになろうとした瞬間、もう一人の少女がそれを強引に中断させた。

彼女は露草 遥。百合子と同じく“七つの大罪”の一員であり、仮面ライダークロスという別の顔をもつ少女である。
ショートカットで栗色の髪にあまり化粧っ気はないがそれなりの美少女、しかし何よりも目を引くのはその服装である。
何故か肌の露出が多く正直かなり際どい服装なのだ。尤も彼女の体型は…まあ…その…なので、色気をあまり感じさせないのだが。

「何かすっごい失礼な事を言われた気がする」

遥は何故か湧き上がる腹立たしさを疑問に思いつつ、百合子の暴走を止めようとする。
百合子は知的な外見から想像しにくいが、同性に対して愛情を注ぐタイプの人種なのである。しかも彼女は、刹那に対して特にお熱で隙あれば×××な行為をしようとする。
普段ならば刹那が百合子をボコボコにするか、逃げ出すかで終わるのだが、今回刹那は意識を失っている。つまり百合子にとっては絶好の機会である。

「放して!!これは神様が!!いや薫子様が用意してくれたチャンスなの!!これを逃したら刹那と一つになれない!!」
「いや、一つになる必要ないし!!僕たちの任務はこの女の護衛だから!!」

ドタバタの大騒ぎだが、その乱闘の最中、百合子の眼がキラリと妖しい光を放つ。

「ふっ!!」
「は!?ひゃあ!!」

百合子の雰囲気が変わったと思った次の瞬間、遥は一瞬の内に組み伏せられ床に押し倒された。突然の出来事に、遥の対応が遅れた。
結果、百合子が倒れた遥に覆いかぶさる状態になる。そしてそれを理解した遥から冷たい汗が。

「な、何して…」
「ふふふ…最近、遥ちゃんとはご無沙汰だったから今夜は久しぶりに…」
「ひ、久しぶりって…僕はそんなこと…ま、まさか!?う、嘘でしょ?冗談よね!?」
「ふふふ…」

自分の知らぬ間に、百合子は何かしらの行為に及んでいる!?
そんな考えが遥を恐怖のどん底へと叩き落す。そのせいか、百合子の束縛を振り解けない。
百合子は普段はこんな感じだが、戦闘となればプロとしての実力を見せる。一方の遥は直接的な戦闘は苦手であり、主に補助を担当する場合が多い。
つまり百合子に組み伏せられた時点で、遥に逃げ場はない。なすがままである。

「それじゃあ…」
「い、いやぁ…ちょっとまっ…んっ…ぁ…」

色欲の夜はまだまだ長い。



































ヨルハマダマダナガイ



AM.02:00 繁華街・路地裏

『キシュゥゥゥゥゥ』

それはまさに“異形”であった。
全身が漆黒の外骨格に覆われており、鋭利で攻撃的な姿をしている。
甲殻類や甲虫に似た特徴をもち、鮮血よりも真紅に染まった眼からは“破壊の本能”しか感じ取れない。
両手には鋭い鉤爪が、身長と同じ位の長さをもつ尻尾の先端には鋭利な針が備わっている。

そしてこの異形はその身体を、鉤爪を、尾を血に染め上げている。
これだけ見ても、この異形がたった今“獲物”を殺したのだと理解できる。

それを証明するように、異形の前には物言わぬ肉塊が一つ、二つ、三つ…。
アスファルトの地面は一面が血の海となっており、犠牲者がどれだけ残酷な殺され方をされたのか、想像に難くない。

「ひぃ!!」

その凄惨な現場を見たのは一人の男。中年の酔っ払い。
何故こんな時間に?何故こんな場所へ?

ソンナコトハドウデモイイ

異形の赤眼に新たな“獲物”が映りこむ。これでこの男の運命は決まった。

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

深夜の路地裏に響き渡る、戦慄の断末魔。

人知れず、そして人以外の存在にすら知られずに不気味に世界を蝕む絶望。
真の恐怖とは、何の前触れもなく突然に、確実に忍び寄る。


破滅の夜は終わらない。

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