第1章エピローグ5「終わりの始まり」


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作:プラスマイナス


PM 19:35 住宅街

比良埼 藍と別れた草加 雅菜は、彼女や先の男子生徒(一之瀬 裕輔)のように夜道を出歩いている生徒がいないかと帰路に着きながら見回りをしていた。
好奇心からなのか、それとも自分のように何か事情があるのか、想像以上に夜の街を出歩いている生徒は多いようだ。

そんな中、雅菜は知った顔に出会った。

「神宮寺さん!!」
「草加会長!?」

雅菜が夜道で出会ったのは、ボード学園の制服を着た少女だった。
左の袖には『ボード学園生徒会』と書かれた腕章をしており、彼女が雅菜と同じ生徒会のメンバーだと一目で理解できる。
尤もボード学園で彼女を知らぬ人間は殆どいない。それほど彼女は有名だった。

神宮寺 千夏

ボード学園生徒会の副会長を務める高等部2年生の少女。
真面目で規律正しく少々口うるさい部分もあるが、同時に世話好きでもあるので生徒たちからの人気も高かった。

当然、会長を務める雅菜ともほぼ毎日会っている。だが学外で会うのは意外にもこれが初めてだった。しかも夜道で。

「神宮寺さん、こんな時間に一体何をしているの?」
「ああ、実はね…」

千夏の話を聞いたところ、どうやら千夏は華枝が行方不明になった事件以来、自主的に夜間の見回りをしていたらしい。
案の定、彼女の不安は的中し行方不明事件や怪物騒ぎが起こったというわけだ。

「そ、そんな話は初耳よ!?」
「あくまで個人的にやっている事だし…でも生徒会の腕章をしたままというのは職権の乱用よね、すぐに外すわ」
「いや、そういう事じゃなくて…神宮寺さんも危険よ、早く帰りなさい」
「大丈夫よ。護身用に…これを持ってるから」

そういうと千夏は警棒とスタンガンを取り出すが、雅菜はそれでも納得はしない。

(こんな物で怪人なんかに対抗できるわけない)

雅菜はそう思い、見回りを続けようとする千夏を引き止める。
彼女は現在この街で起こっている事件の真相を知らない普通の学生。危険な場所からはなるべく離れたほうが良いに決まっている。

しかし、それはあくまで雅菜の見解だが…

「と、とにかく。今晩は神宮寺さんも家に帰って。いいわね」
「わかったわよ。でも何そんなに焦ってるの?」

千夏は雅菜の態度を不審に思うように帰路に着き、雅菜もそれを見送ると自身も帰路に着くのだった。



「ふぅ、まさかこんな所で草加会長に会うなんて…本当に何かあったの?」

雅菜と別れてから千夏は人目を避けた場所にいた。
見回りをしていたのは本当だ。しかし彼女の目的はそれだけでは無い。
“ボード学園生徒会・副会長”としての神宮寺 千夏ではなく“一ノ宮財閥暗部・七つの大罪”としての神宮寺 千夏が“今の”彼女だ。
敬愛する一ノ宮 薫子からの密命を受け、街の様子を探っていたのである。

「何かあったと考えるべきよね。一応連絡しておくか…」

そう言うと彼女は懐から携帯電話を取り出し、街に潜入している実働部隊に連絡を入れた。



場所不明 時刻不明

謎の液体で満たされた巨大なシリンダー。
意味不明の数式が書き殴られた天井、壁、床。
日本語や英語、フランス語など多くの文字で書かれた書類が乱雑に散らばっている。
それ以外にも計器が様々な情報を知らせている。

そんな部屋にいるのはただ一人。
漆黒の服装に身を包んだ容姿端麗な美女だった。
美しい金色の長髪にモデル顔負けの長身に顔立ち。しかし表情は暗く、それがすべてを台無しにしているように感じられた。
瞳は虚ろで濃い隈が出来ており、顔色も良いとは言いがたい。

女の名はアリス。
人は彼女を“狂気の魔女”とも“史上最悪の天才”とも呼ぶ。
しかし彼女はそれを知らない。知ろうともしない。関心もない。興味もない。
他人のことなどどうでもよい。

彼女の目的はたった一つ。

己の研究の完成

それだけだった。


「くそっ…何故なの!何が間違っているというの!?」

アリスは何かの薬品の調合をしていたが、どうやら失敗したようだ。
そのまま薬品を無造作に投げ捨てると、小規模ながら爆発が起こった。しかしアリスはそれすら気にも留めない。
壁に書き殴られた数式の上にさらに新しい数式を書き出す。
壁には既に何重にも数式が書かれており、どれが新しい数式なのか常人には理解できないだろう。だが、アリスはそれらを全て判別し同時に理解している。
この行為だけでもアリスが途方もない頭脳の持ち主であると、想像に難くない。

「ちっ…」

アリスは苦々しく舌打ちをすると、数式を書くのを止めて書類棚へと歩を進める。
書類棚には乱雑にファイルや資料が突っ込んであり、整理整頓とはほぼ無縁の様子だ。
アリスはその書類棚に手を突っ込むと、次々と資料を引っ張り出す。時折タイトルを確認するが基本的には出しては放り、出しては放りを繰り返す。

「…………………これだ」

目的の物を見つけたのか、アリスは散らかり放題の書類棚をほったらかしにしたまま、手にしたファイルに目を向ける。
しばらく読み続けると、突如思いついたように部屋を出た。

広い廊下

研究室を見た限りではわからなかったが、そこはかなり大きな屋敷だった。
散らかった研究室とは対照的に廊下は塵一つ見つからないほど綺麗だ。いや、研究室以外は綺麗といった方がわかりやすいだろう。

アリスがファイルを読んだまま廊下を歩いていると、執事のように燕尾服を着た青年と出くわした。
青年はアリスを見つけると深々と頭を下げたが、逆にアリスは青年を見つけると苦々しい表情をする。

「…出かけるわ」
「では、お供いたします」
「ふざけないで!!お前たちがどうしようと勝手だけど私の邪魔をしないで!!」

今までの無感情さが嘘のように激昂するアリス。
だが青年はただ言われるがまま、頭を下げ続ける。

「承知いたしました。では、いってらっしゃいませ」
「……………」

アリスは無言のままその場を後にした。
青年はアリスが視界から消えるまで頭を下げ続け、アリスが完全に見えなくなるとようやく頭を上げる。
すると、いつの間にか青年の周りには四人の男女が現れていた。

「ちっ!言いたい放題だな。むかつくぜ」
「まぁ落ち着きなさい。アリス様は焦っているのよ」
「アリスさまはおこってるの?」
「…………」

上から
ボサボサの赤毛をしたボーイッシュな少女。
チャイナドレスを着た黒の長髪をした妖艶な女性。
ゴスロリ風の服装をした金のツインテールの少女。
フードを目深に被り右目に眼帯をした隻眼の少年。

「それで?本当にアリス様お一人で行かせるつもりなの?」
「まさか。お供するに決まっている」

チャイナドレスの女性が艶かしい笑みを浮かべながら執事風の青年に問う。
しかし青年は決まりきった事を口にするように言い放った。
それを聞いた女性は再び微笑を浮かべる。

「ねぇ?それ私に任せてくれない?」
「……いいだろう」
「ありがと。で?アリス様の行き先は?」
「例の街。“時雨養護施設”だ」
「そう」

そのまま女性はアリスの後を追うように去っていった。

「…………」

その後をさらに眼帯の少年が続く。

「…って、オイ!!何でオカルトまで!?」
「あたしもいきたい~」

赤毛の少女とゴスロリの少女がブーブーと文句を言うが、青年はまったく気にしていない。

「我らは留守番だ。それとプテラ」
「あん?何かよ…ってイテェ!!!」

ふいに青年がプテラと呼ばれた少女の右腕を掴むと、彼女は絶叫と共に苦痛に顔を歪めた。実はプテラはシキとの戦いの怪我を隠していたのだ。

「これくらいだいじょ…イテ!!イテ!!イテェよ!!!!」
「なら早く治療しろ。すぐにだ」
「ちりょうしろよ~」

そう言うと痛みに喚くプテラを置いて青年と少女は、サッサとその場を後にした。

「~~~~~~~~~~」

残されたのは激痛に苦しむプテラだけだった。


時刻不明 街の地下深く

街には古い都市伝説があった。
街の地下に地下鉄やライフラインとは異なる謎の空洞や道が存在する、という噂。
実際に記録にない地下道は確かに存在した。しかしその上に暮らす殆どの人間は、それを知らない。
それが特に害になるわけでもなく、謎の地下道や空洞はただ存在しているだけだからだ。

しかし…

そこは誰にも知られること無く恐怖の巣窟へと変貌を遂げ、今や異形の怪物たちが蠢く魔境と化している。
そして最深部にて静かに、絶望が時を待っている。

終わりの始まりを…

『…レ…ガモト…ハ…ラ……チ………ワ…ラ…ノゾム…マコ…ノ…カイ…』





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