第2章第1話「朝からビッグニュース!?」


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作:イシス


AM.7:48 ボード学園への通学路


新学期から早3日。そろそろ生徒たちの中にも学校へと気持ちが切り替わる者も出てくる。
だが、世間の動きというのは生徒の気分以上に移り代わりが激しい。

どこかから大きな物資の移動があるという噂や、各地の紛争で今日も犠牲者が出てきたこと。世界の有識者が
集まり様々な議題で紛糾していることや、それに参加していた博士の頭の中にダイナマイトが発見され大騒ぎに
なったりと、今日も世界は忙しない。

そして、この街でも不気味な噂が広がっている。
またも複数の怪物たちを見たという情報、仮面ライダーの噂。しかもそれに真実味を持たせるように、一部の
場所では常識ではありえない被害が出たという話もある。大きな騒ぎにはなってないが、ボード学園でも突然の
改修工事が始まり、しかもそれが2日で終わったという。以前のものとの変化はパッと見ては分からないだろう。
だが、生徒たちにはこの工事の原因に仮面ライダーと怪人が何かしたのではという噂で持ちきりだ。


何一つ証明の手立てがないことこそ、この異変の不思議さを強調すると共に、ますます人の心に不安と恐怖を
植え込ませることとなる。





「到着は今日の8時ね。」
「ええ。ボード学園の生徒の興奮度は木端微塵ですね。」
「知らない生徒が大半でしょう。」
「あの娘が戻ってくるなんて夢にも思わないでしょうから。」

まだまだ厳しい朝の陽ざしが指す通学路を志熊京は歩いていると、その先を行く見知った二つの背中に気づく。
学校に入学したての彼女であるが、その二人は彼女が今日まで知り合った中では最も親しい。学校四日目では
不安も少なくない。僅かばかりでも心を許せる学友の存在というものは彼女にとってありがたいものだ。

京は早足に二人の女生徒、草加雅菜と豊桜冥との距離を縮めていく。

「草加さん、豊桜さん、おはようございます。何か話していたみたいですけど、何の・・・」
「「むっ!?聞いたなこいつ!!」」
「え、ええ!?」

京にとって初めて仲の良い友人が作れるかもと思っていた矢先に、その友人候補二人からいきなり怒号にも
近い返事が返された。挨拶が悪かったのかとか、振った話題が悪かったのかとか、京は二人が突然怒った原因を
探ろうとする。

とはいえ、そもそも突然こんなことが起きてまともに頭が働くはずもない。その証拠に京は見る見る顔色が
紅潮していき、不自然な汗をダラダラ流す。焦る少女の姿は愛くるしく、それを見ている内に雅菜と冥の顔から
笑みがこぼれてきた。

「ぷぷ・・・志熊さんったら面白い反応するのね。」
「冗談ですよ志熊さん。ちょっとからかっただけです。ごめんなさいね。」
「え?ええ?からかったって・・・意味が分からないのですが・・・」

まさか転入して数日でからかわれるとは夢にも思わなかっただろう。それだけ自分に好意を持ってくれたと
解釈するべきか悩む所ではあるが、少なくとも京が見た印象では二人からは悪意らしきものは伝わらない。

それにしたって、まるで一人に変身するのに三体ぐらいの宇宙人が必要なノリだったが。

「えと、それで何の話だったんですか?」

混乱も解けた京は再度二人に質問する。それに対し、雅菜と冥は含みある笑みを返した。

「学校に着けば分かるわ。」
「ええ。マスコミ的に言えば、特ダネ中の特ダネでしょうか。」
「?」

二人の話からは抽象的で、京はただ首を傾げるしかない。

「お、三人ともお揃いかい?」

気さくにかけてきた声の主へと三人の顔が向く。そこにいたのは薄い青色の髪にエメラルドに近い瞳の美少年、
八代みつるだった。さらに彼の近くには風瀬列、護矢晃輝、そして二人の妹の華枝に命李もいた。登校途中で
会ったのだろう。

「おはよう八代君。学校には慣れてきた?」
「ま、ぼちぼちかね。俺よか志熊さんと豊桜さんはどうなんよ?」
「私は・・・楽しいことが多くて、そっちの方で疲れちゃいますね。」
「私も志熊さんと同意見です。本当にいい学校に来たと思いますよ。」

転入生三人は既にボード学園のことを気に入ってきているらしい。生徒会長を務める者として、そして自分も
一生徒として、例えお世辞でも三人の言葉は嬉しく思える。

新しい友人が輪に加わってきたことで、これまでにない新しく、そして心地よい風が吹き抜けるような穏やかな
時間が流れているような気がした。これからの学生生活が今まで以上に笑いの絶えないものになればいい。
前からボード学園の生徒である者たちも、そしてボード学園の生徒になった者たちもそう願っているだろう。





AM.7:57 ボード学園校門前


「な、なんだこれ!?」

列はいつもと違う校門前の光景に驚かずにはいられなかった。
だが、この光景は列でなくとも圧倒されてしまうに違いない。

人、人、人。校門前は夥しい数の人だかりによって通ること自体が困難を極めた。しかもボード学園の生徒の
大半がここに集まっているらしく、中にはどう見ても学生とは程遠い人間の姿も多数見られた。

「ふえー。なんだいこりゃ?こんな朝っぱらからお祭り騒ぎかい。」
「・・・あー!ま、まさか、あの噂ってマジだったのか!?」
「雅菜、なんだよこれ。今日ってなんかあるのか?」
「まぁ、驚くのも無理ないわよね。」

人だかりに唖然とするばかりの列たちや、晃輝のように真相を理解しむしろそっちに驚くなど、反応は様々だ。
そして真相を知り得ていると思われる雅菜も、この光景を目の当たりにして苦笑しか出てこなかった。
お祭り騒ぎも同然な事の詳細が、雅菜と同じく理解していた冥によって語られる。

「実は今日、あの“キャナ☆”が復学するようなのですよ。」

しばし間を置いて、

「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?」」」

男子勢から空を衝かんばかりの絶叫が溢れた。


驚くのも無理はない。
“キャナ☆”こと新浜香奈はテレビで引っ張りだこの超が付くほどの売れっ子アイドルなのだ。元々彼女が
ボード学園の生徒であることは有名な話だったが、仕事の都合もあって殆ど学校には来なかった。

だが、何を思ったか“キャナ☆”はアイドル活動を休止し、今日から復学するというのだ。休止の話自体は
もちろん、復学の話すら知らない者が殆どだろう。


「私も草加さんから聞いただけなのですけどね。」
「全く、急すぎて今でも焦ってるぐらいよ。いきなり先生から“キャナ☆”が復学するって言うんですもの。
 いくら私が生徒会長だからって、ちょっと無茶ぶりすぎると思うんだけど。」

学校側にこの話が来たのもかなり急だったらしい。そんな無茶が通る辺り、何者かの見えざる腕が伸びている
気がしてならない。こんな芸当ができる人間など雅菜が知る内では一人しかいない。

「ええー、でもマジであの“キャナ☆”が復学すんだ!やっべー!サイン貰えるかな!?」
「俺、貰えたら家宝するぞ絶対!」

生徒会長の吐く重い溜息とは裏腹に、男子勢、特に八代と晃輝は興奮を隠しきれないようだ。


「あ、風瀬君!何をしているのですか!早くこっちに来なさい!」
「ぶ、部長!?それにユリウス君にイオちゃんまで・・・」
「「お、おはようございます。」」

誰よりも校門に近い場所を陣取っていたのは、新聞部部長の桐島ふゆみだった。しかも彼女のすぐ近くには
転入して早々に体験入部から正式に入部を決めた転入生、イオとユリウスまで控えている。二人の挨拶は
事前に打ち合わせしていたかと思われるほど同じタイミングで発せられた。

「部長がここにいるってことは、やっぱり“キャナ☆”絡みで?」
「あら、話が速いですわね。もちろんこのビッグニュースを逃す訳にはいきませんことよ。」

ふゆみがいつにも増して息巻いているのは気のせいではないだろう。もっとも、周囲を見渡せばマスコミと
思われる人間もかなり見受けられるし、しかも相当必死な様子が伝わってくる。皆、この特大ネタを逃すまいと
目を光らせていることだろう。


その瞬間を今か今かと誰もが待ち構え、そして遂に誰もが待ち望んだ展開が訪れた。


「どいてください!通りますからどいてください!」
「はい押さないで押さないで!」

突如として校門前が慌ただしくなる。黒いスーツを着こむ何人もの屈強な男たちが、自らの身を呈し何者も
立ち入ることの許さない通路を形成しだしたのだ。そこまでして彼らが守る人物こそ、今ここに集まる者たちの
注目の的。国民的アイドルの座を欲しいままにするボード学園の中学3年生。

「きゃっほ~☆みんな、お・ま・た・へ☆今日から“キャナ☆”、現役ジョッチューに復帰なのら☆」

突き抜けた感のある言葉遣いをするこの少女こそ、“キャナ☆”こと新浜香奈。髪に様々なデフォルトされた
動物の髪飾りを付け、テレビや雑誌に登場する彼女は濃い目のアイシャドーをしていたが、普通の学生に戻ると
あってかそれは見られない。所謂すっぴんであるが、今日まで“キャナ☆”のすっぴんが公開されたことはない。
アイドルの復学に合わせ、これは二重の意味でスキャンダルでもあった。

「うおおおおおお!!」
「ほ、本物の“キャナ☆”だーーーー!!!」
「握手して!サインして!!」

たちまち周囲のボルテージが最高潮を迎え、一足先にボード学園へと入っていく“キャナ☆”を追おうと、
生徒もそうでない者も彼女を守るSPを押しのけその後を追おうとする。SPの方はそれを阻止しようと必死だ。

「きゃ~ん!“キャナ☆”ちゃんちゅっちゅして~!」

中にはなんかやたら背の高いおさげをした薄水色の髪の女までいて、“キャナ☆”の幅広い人気が伺える。

「あ!特大スクープが行ってしまいますわ!さぁ二人とも!私に続きなさい!」
「ぶ、部長!ちょっとま・・・って、ぎゃーーーーー!!」
「ユリウ・・・ぴぎぃっ!」

新聞部部長の桐島ふゆみとてジャーナリストを目指す者として、取材対象を逃すつもりはない。女とは思えぬ
圧力でSPを乗り越えようとする。新聞部に入りたてに加えイオとユリウスの方は、哀れ押し寄せる人波に
飲まれていき、元々小柄な二人の姿があっという間に掻き消えてしまう。ふゆみも“キャナ☆”の取材に必死で、
二人を気にかけている余裕もない。

押しつ押されつ、踏みつ踏まれつ。
たちまちの内に穏やかなはずの朝の登校時間が一転して阿鼻叫喚の凄まじい戦場と化した。


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