執筆者:ユルカ
AM 08:50 ボード学園高等部2年A組・教室
「志熊さん? あなた、護矢君と何かあったの?」
「えええっ!?」
回し蹴りがさく裂し、ダウンした晃輝を横目に、雅菜は京にそう聞いた。
「な、何もないですよ! あったら、もっと普通に話しかけてきませんか?」
「それもそうね……。ごめんなさい。野暮なことを聞いちゃって」
しかし、この会話を交わした後、京は誰にも聞こえない声で呟いた。
(ごめんなさいはこっちのほうですよ……草加さん)
そして、ダウンしている晃輝の手の中には、京の書いたメモがあった。
『放課後の屋上で待ちます。 志熊 京』
そして、その騒ぎを冷ややかな目で見ていた一人の少女がいた。
豊桜 冥 ―またの名を『EASE・技の戦士:ソフォクレス』―
(くだらない。一人の人気者に対する馬鹿騒ぎと、一人を口説こうとしたこの騒ぎ。
人間という生き物がくだらないことがわかる。)
「どうしたの? 豊桜さん、怖い顔しちゃって?」
雅菜が今度は冥に話しかけてきた。
しかし、冥はすぐに表情を変え、こう言った。
「いいえ。ちょっとこの騒ぎについていけなくなっただけよ」
「ああ……そうかもね」
(嘘という仮面は、どんな人間でも被れる物。しかし私が、被ることになるとは……)
同時刻・EASE:図書室―
そこで、神藤 和子 ―またの名を『EASE・力の戦士:エウリピデス』― は、本を読んでいた。
それも人間では到底読めないような数を……。
「勉強熱心だね?」
そこに、エウリュディケがやってきた。
「いえ、好きでやっていることですから」
「もうすぐ、読めなくなるからかな?」
ピクリと、和子の手が一瞬止まる。
「分かっているね? 次の任務に失敗したときは……」
「分かっています。ライダーを倒し、我等の同志とするために」
(だけど、私には……私には……!!)
和子の思いは複雑だった。
以前に知った、ゼベイル=舞夜のデータを調べるうちに、人間への情が出来てしまったのだ。
この3日間、何度もゼベイルをチャンスを与えられながら、それをわざと失敗させた。
(私は……どうすればいい?)
同時刻・Dr.レッドリリーのアジト―
「まだ、動かれないのですか?」
「そろそろ良いころね。やりましょうか」
まるで、料理をするような感覚で、作戦を実行しようとしているDr.レッドリリー。
なんて物騒なんだ。
「15:00に、ボード学園で始めなさい」
「目標は?」
「今回の目標は……SB社製のライダー及び、BOARDのライダーよ」
「了解しました。……シグマはどうしますか?」
「今回は目標を優先させなさい」
「はい」
(そう。私の傑作に、まだ死は早すぎる……)
ここにも、偽りの仮面を付ける者がまた一人。
物語は、仮面と共に動き出す。
最終更新:2010年04月08日 19:14