第2章第11話「変わろうとする妹/揺らぐ兄」


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作者・サイショ

PM13:00 ボード学園中等部3年A組 教室。

「……えっと、華枝ちゃん…大丈夫?」

話しづらい、そんな状況でもさすがに無二の友人が何時もの数倍位縮こまっているのをみて命李は話しかけてみた。

「う、うん……大丈夫…」

その返事もどこか弱弱しかった。無理もない、何せキャナ☆が友人第一号宣言してさらに演劇部に入る……。
見当違いにも程があるのに華枝に妬みの視線を送る人物もいたほどだ。

ソレを受けている華枝としては相当な重みなんだろう……。そう命李は感じた。

「あ、あと……その、ありがとうね……命李ちゃん」

「う、うん。いいよ、別に……『キャナ☆』さんも分かってくれたみたいだし……ね」

ちなみに今は華枝が命李の机の近くに避難して事無き事を得ている。
恐らく、いや確実に後少し命李が華枝を彼女の机から引きづり出すようにしてなければ彼女はキャナ☆と一緒に食事をする羽目になっただろう。
妬みと羨望の視線の束を浴びる事になりながら。普通なら「いいだろう」と自慢できるが……。

「(華枝ちゃんが……耐えれるとは思えない……し)」

なお、ちゃんとキャナ☆に断りを入れて了承してもらっている。さすがに黙って引きづり出すなど出来るわけがなかった。
それでも、今までとは違う行動を取れたのは素直に『あの一件』が大きいのだろう、と命李は感じた。

なら、そのついでに今日言いたかった事を言う為に命李は口を開く。

「あ……そ、そういえば。今日吹奏楽部で吹くんだけど……、その……華枝ちゃんも見学に来る?」

たどたどしく言いながらも、命李は華枝を誘う。

……それが大きな選択肢と知る事はかなりの後なのは、言うまでもないだろう。

PM16:15 ボード学園屋上。

昼には賑わうであろうその場所には今は晃輝しかいなかった。
そして彼は少し目を細め悩んでいた、理由は……そう、京の事である。

『まだ悩むか? さっさと我らの仲間にすればいいだろうが』

ギルファリアスがユックリと現れる。
だが晃輝はそちらの方を見ずにギリっと歯を噛み締めた。

「うるさい、黙れ。……彼女にだって日常があるんだぞ? それを否定するような事をおいそれとできるわけがないだろ」

『ふ、偽善者が……好きにしろ。我は呼ばれるまでは黙っておこう』

やれやれ、と肩をすくめて姿を消すギルファリアス。
晃輝はソレを横目で見て学校へと続くドアへと視線を移す。

「…………さて、何て言うべきか……」

できれば実は軽いジョークでした、というオチも考えたが。
そんな事を言えば殴られるし最悪学校にいられないだろう。

「はぁ、どうすれば……いいのかねぇ」

溜息を吐いて彼は屋上の手すりに手を当てる、そして空を見上げていた時……。
ドアが、開いた。視線を其方へと向けると……志熊 京が顔をドアから出していた。

「よぉ、志熊。……呼ばれた理由、わかるか? まぁ、わからないだろうけどな」

「……ライダーについて……ですよね?」

その直後に晃輝は自分の相棒を心の奥底より恨んだのは言うまでもないだろう。
思わず拳を震わせていたいるのだからよほどである。

「あぁ、そう……だな。えっと、ライダーについて何か知ってるか?」

「……私が、その仮面ライダーになれる事程度です」

「そう、か」

そう聞き終えるとフゥ、と晃輝は一息をつく。
暫く目を閉じ顔を空へと向ける……。そして、覚悟を決めたように再び京と顔を合わせた。

「……単刀直入に言う。お前は仮面ライダーを何だと思う?」

「どう……?」

「あぁ、人と同じ存在が人とは異なる姿と力を得る存在。ここまでは分かるよな? 変身したわけだからな」

しかし、京の反応は晃輝が想像していた反応とは違った。
てっきり困惑するかと晃輝は思っていたのだが……

「あ、あの時は頭が一杯一杯であまり実感が……」

と、どちらかというと少し戸惑う感じだった。ソレを見て晃輝は吹き出しそうになるが……口を閉じて事無き事を得る。

「……そうか、まぁ、ライダーは普通じゃない力を得るってわけだ。……お前はその力で何をしたい?」

「え、何を……って」

「理由だ、その力で成し遂げたい事。ソイツは曖昧でチグハグで矛盾だらけで……だからライダーどうしてもぶつかる事が必ずある……お前はそんな『歪な戦場』に立ち向かう覚悟はあるのか?
 そしてその覚悟に見合う理由はあるのか?」

「……私は……誰かの為に……」

誰かの為に、口で言えば簡単な言葉。
だが、それを実行することがどれだけ難しいか晃輝は良く知っていた。己がソレをしようとして挫折したのだから。
大切な1を守る為に、他の10を捨てることを選んだ彼だから。それでもその行為を未だ後悔する彼だから……、晃輝は京に同じ道を進んでほしくなかった。

「俺と同じか。なら、尚更はっきり言おう。お前じゃ無理だ」

「っ……」

「誰かの為に、言うだけなら簡単だ。だけどな、1を救えば他の奴らも救わなければいけない。そんな選択を迫られたときどうする?」

「……」

「1を救えば、10を救わなければいけない、100を救わなければ文句を言われる、1000を救わなければ恨まれる、10000を救わなければ敵となる……。
救えば救うほど「どうして私は救われないの?」と不満を言う奴は増える。それを全て受け止めて全てを守る覚悟があるのか? 無いならやめておけ。
……自分の周りにいる者だけを救うというのがどれだけ苦痛か、理解できるなら、な」

そこまで言い終えたとき彼は慌てて口を閉じた。「戦わなくていい」と言ってそこで終わるつもりだったのに気がついたら自分が常日頃感じている絶望を口にしていたのだ。

自分がライダーである事の苦悩、それを言える人がいないから歯止めが利かなくなったんだろう。
そう思うとさらに自分が情けなく思えてくる晃輝だった。

「まぁ、これは言いすぎかもしれない。だけどな、誰かを守るために戦うってのはそれだけ難しいんだ。ソレに戦う事を決意したら最後、日常って奴を半分くらい捨てることになる。
怪我だってする、それでいいのか? お前は一度選んだら最後の選択肢をそう簡単に選んでそれでいいのか?」

「…………」

お前は戦わなくていい。そう言えなかった。
目の前の少女はこれだけ言われても心に秘めた思いが揺らいですらいないのだ、今言えば確実に否定する。そうされれば……。

「(甘えちまうかもしれない、一緒に戦わないか。と誘っちまうかもしれない……っ)」

それだけは避けたい、なぜなら彼の力は守る為にある。
後悔しても、それでも周りだけは自分の力だけで戦わせることなく守りたいというエゴだらけの覚悟が揺らいでしまうかもしれない。

それを彼は恐れていた。

だから、彼は突き放す。
少女をこれ以上非日常に染めないように、そして自分にもう二度と興味を抱かせないように。

「最後に……これからどうするかは知らんが……覚悟は持って行動しろ。それだけだ」

そして彼は京から顔をそむける。これ以上彼女の真っ直ぐな瞳を見たくないから。自分の決意が揺らぐのを感じたくないから。

彼は、空を見上げた。
京がその場から立ち去ってくれる事を祈りながら。

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