第0章「ある休日の出来事」


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 そこは、まるで地獄だった。周りの建物は、破壊され所々から、煙が上がっている。
また、破壊された建物の近くには、人々の無残な死体があった。
ここは、本来はショッピングモールで、今日は休日で人がごった返し、賑わっていた。
その日、そこで何かが起こった。わずかな時間でショッピングモールは地獄へと変わった。
 一人の少女が、この地獄と化したショッピングモールの中を走っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・・・・・・」

随分走ったのか息切れをしている。でも少女は走るのをやめなかった。いや、やめる事はできなかった。
なぜなら、少女の後方からゆっくりと足取りで、群れを成して追って来るモノがあったからだ。

「逃げなきゃ・・・・・・・」

そう呟きながら、少女は走っていた。やがて少女はこのショッピングモールの中心にある
吹き抜けのホールに差し掛かった。そこの一階部分には東西南北の4方向に出入り口がある。
無論、上の階にも出入り口はあるのだが、階段等が破壊されている為、あがる事はできない。
その為、少女が入ってきた場所を除き、道は3つに分かれる。だが少女は、ホールの中心に来た時

「!」

少女は、驚いたような顔をしたと思うと、足を止めた。
そう、前方にも、そいつらはいた。後ろから追って来るモノと同じ奴だ。
少女は、右側の出入り口に向かおうとしたら

「!」

そこにも奴らがいた。
反対方向に行こうとすると

「そんな・・・・・・・・」

そこにも奴らの姿があった。

(逃げられない・・・・・・・・・)

そう思うと、少女はその場から動けなくなってしまった
少女に向かってくるモノたちは体形こそ人の形をしているが、人ではない異形の存在だった。
こいつらこそが、ショッピングモールを破壊し、人々を殺し、この場を地獄に変えたモノたちである。
そして今、その矛先を、少女へと向けていた。少女は恐怖のあまり悲鳴を上げたくても上げられない。
少しずつ、ソイツらは少女に迫る。彼女にもう逃げ場は無かった。そしてソイツらの一体が
少女へと近づいた。

「!」

次の瞬間、ホールに銃声が響く

「えっ?」

少女に近づいていたソイツは頭部を吹き飛ばされ地面に倒れた。そして上の階の方から
何者かが飛び降りて、少女の近くに着地した。その者は着地と同時に、両手に装備している銃で、ソイツらを撃った。

「ギャァァァァァァ!」

断末魔の咆哮を上げ、ソイツらは一体また一体と倒れていく。
そして、その者の手から銃が消えたと思うと、次の瞬間、巨大な剣を装備して

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

ソイツらへと向かっていき、その剣でソイツらを切り裂いていった。
少女は、その者が戦う姿をじっと見ていた。その者は状況に応じて何度か武器を切り替えながら戦い
そして、ソイツらを全滅させた。
戦いが終わると、その者は少女へと近づき

「大丈夫か?」

と語りかけた。その言葉に少女は頷く

「そうか、良かった・・・・・・」

少女は何も言わず、その者をじっと見ていた。その目には憧れの眼差しがあった。





 朝、私はよく見る夢から目を覚ました。時計を見ると起きるには、まだ早い時間だったけど
眠気がすっかり覚めてしまったので、私、蒼崎志保は、ベッドから起き上がり、服を着替え
居間へと向かった。そして部屋に入ると私の弟、幹也の姿があった。

「姉さん、随分早いね」

私と幹也は双子(二卵性双生児)で、私のほうが数秒早く生まれたから私がお姉さんという事になっている。
顔立ちは母さんに似ていて(私は死んだ父さんに似てるらしい)、私が言うのもなんだが美形の分類に入ると思う。
髪型はショートカットで、私と同じく顔には眼鏡をかけている。
そんな幹也の特技は料理、私も料理は少しくらいできるが、幹也にはかなわない。そんなわけで
幹也はいつの間にか食事係となっていた。だから幹也の朝は早い。

「夏休み最後の日、なんだからゆっくり寝てればいいのに」
「なんか、すっかり目が覚めちゃって」

しばらくして、御飯に鮭の塩焼き、卵焼きにお味噌汁といった和風な朝食がテーブルに
2人分並ぶ。
私の家族は母と姉が二人、弟一人、計五人で女四人、男一人の女系家族。
現在、二人の姉も独立していて、母さんも4月くらいから留守にしているから
今は弟と二人で暮らしている。

「あれ?」

テーブルに2人分と言う事に私は疑問を覚えた。二人暮らしなんだから2人分と言うのは
当たり前だが、しかし普段は朝夕、4人分なのだ

「どうしたの?姉さん」
「佐由里さん達の分が無いなと思って」

佐由里さん、こと蒼崎佐由里は母さんの双子の妹に当たる人で、つまり叔母に当たる。
ただし叔母さんと言うのは禁句。
普段はこの人とその息子(養子)のシンの二人が、普段は朝と夕方、飯を
食べにやってくる。
佐由里さん曰く

「私は、姉さんから、『留守の間、子供達を頼む』と言われたから、毎朝毎晩来る義務があるのよ」

との事だがどうも、食事をたかりに来てるようにしか思えない。シンに至っては完全に
そのつもりらしい。

「今日は、来れないって電話があったよ。夜中の二時に・・・・・」
「またか・・・・・」

佐由理さんは時々、夜中に電話をかけてくるなど、少々非常識なところがある。
まあもう慣れちゃったけど
疑問も解決したところで、私は朝食を食べた。食後は、後かたづけを手伝ったり
テレビのニュースを見たりして過ごし、朝の10時を過ぎたあたりで私は出かける事にした。
と言っても特に予定なんて無かったけど、今日は家でゆっくりと過ごす気にもなれなかった。

「ちょっと出かけてくるけど、買い物とかある」

一応、幹也に用があるか聞く

「特にないよ。行ってらっしゃい」

と幹也は言った。

家を出た私は取りあえず、適当に街を歩いた。特に目的もなく歩いていた訳だけど
気がつくと私の足は自然とある場所を目指して歩いていた。
私がたどり着いたのは、大きな公園だった。その中央には巨大な石碑が置かれていて
そして夏休みの最後の日を過ごす子供達で賑わっていた。

(またここに来ちゃった・・・・・・)

ここに来ると、昔の事、思い出す。10年近く前、ここには巨大なショッピングモールがあった。
でも、ある日の休日、爆発事故が起き多くの犠牲者が出た。それ以降、ショッピングモールは
別の場所に移転し、その跡地は公園となった。石碑は爆発事故で死んだ人々為の慰霊碑だった。
この場所は、私にとって重要な意味があった。爆発事故と言ったがそれは表向きの話だと思う。
ここでは、もっと恐ろしい事が起きていた。誰も信じてくれなかったけど、私の記憶にはっきり焼き付いている。
私は、恐ろしくもあり大切な記憶、夢でよく見るその時の出来事を思い出していた。すると

「志保ちゃん?」

その声で私は現実に戻された。声が聞こえた方を向くと、

「サーチャー」

そこに居たのは凛堂暦、母さんや佐由理さんの知り合いで現在、私の通うボード学園の図書室の司書を務めている。
髪型は長髪に、顔には私と同じく眼鏡を着けている。私と違って眼鏡には度が入っていない
いわゆる伊達眼鏡である。
母さん達は彼女を「サーチャー」と呼んでいて、いつの間にか私もそう呼ぶようになっていた。
その由来は彼女が探し物の天才なのでそういうニックネームが付いたらしい。

「今日は、どうして、ここに?」

とサーチャーが聞いてきたので

「特に用はないんだけど、自然と足がこっちに」
「私と同じですね。私は今日は買い物に行くつもりだったんですが、つい自然と・・・・・」
「サーチャーも」

すると彼女は少し悲しそうな顔をし

「志保ちゃんもそうかも知れませんが、私もこの場所に思い出がありまして・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

それが、つらい思い出である事は何となく解ったので、私は何も言えなかった。
この瞬間、私たちをどこかくらい雰囲気が襲う。この状態がしばらく続いた後

「あの・・・・・志保ちゃん・・・・・・・」
「なに?」

突然、彼女は私に対して、何かを言おうとした

「すいません、何でもありません!」

と言って

「それじゃ、私はこれで!」

サーチャーは、この場から駆け足で立ち去った。
彼女の突然の行動に、私は唖然となった

「なんだったんだろう」

この後、しばらく私は、公園で適当に過ごしていたが、時計を見ると、
12時になろうとしていたので昼食を食べに、家に帰ろうとした時、

「あれは、シン?」

ふと公園のベンチに座っているシンの姿を見た。よく見てみると座ったまま寝ているようだった。
彼の髪は、そこそこの長さで、少々ボサボサな感じ、顔も整っていて悪くはなく、
全体的な印象はワイルドでかっこいい。
でも、色々あって私はコイツの事が嫌いだ。
だから、私は声をかける事もなく、この場を離れる事にした。
そして公園から出た直後、携帯電話が鳴った。誰からの着信かを確認しすぐに電話にでる。

「志保・・・・・・・」
「凪!」

神楽凪、私の幼なじみ、夏休みに入る前、家族と共に突然姿を消した。
当時、何が起きたのか解らず、心配していた私に突然、メールが届いた
内容は、事情があって、しばらく会えない事や、その事で心配しないでほしい
と言う事が書かれていた。
それ以降は完全に連絡が途絶えていた

「今どうしてるの?」
「ごめん・・・今は言えない・・・・・」
「言えないって、一体!」

と私が言うと

「もうすぐ・・・・・そっちに戻れる・・・・・・・そしたら・・・・・」

この後、少し間があり

「全てを話す・・・・・・心配しないで・・・」
「凪、本当に戻って来てくれる?」
「・・・必ず戻る。信じて・・・・・」

そして

「それじゃ・・・・・」

と言って、電話は切れた。
気になる事はあるけど、私は彼女の「必ず戻る」という言葉を信じる事にした。





一人の女がいる。女神のように美しい顔をした女だ。彼女は必死に叫んでいる。
何かを請うがごとく

「やめて・・・・・・・・その子を殺さないで!」



「!」

ベンチに座って寝ていたシンは目を覚ました。

「またあの夢か」

見ていたのはいつもの夢

「腹へったな・・・・・・・・」

彼が何故、ここにいたのか別段深い理由はない。朝から用事で忙しく、それらが終わった後
一休みしようとベンチに座ったら、そのまま寝てしまったという、それだけの事

「さてと・・・・・・・」

昼時になり空腹感が出てきた彼は、昼食を取る事とし、とある食堂へと足を運んだ。
その食堂で、注文した物はと言うと、

「カツ丼、超特盛り一つ」

この瞬間、店の空気が変わった。彼が注文したのは、この食堂の名物メニューだ
でかいドンブリに、山のようにご飯を盛り、更に大量のトンカツがその上にのせられる。
そのボリューム故に一人で完食した人間は未だいない。
なので、それを注文する事は店の客や店員の注目を集める事となった。
客達の多くは、

(無謀な事を)

と思っている。なんせテレビで有名なフードファイターでさえ完食した人間はいないのだから。
やがて、そのカツ丼がシンの前に運ばれてきた。その大きさはテーブルを占拠し
その影がシンを隠してしまうほどの大きさだった。だが彼はその大きさに圧倒される様子もなく
もの凄い勢いで食べ始めた。そして暫しの時間が過ぎた後

「おい、もしかして、いけるんじゃないのか」

と言う声が客達の中に挙がり始めた。それもそのはず、トンカツの山は消え
後は、ドンブリの中のご飯だけ、しかもシンのペースは一向に落ちない。

「すごいな、アイツ」

と言う声も挙がってくる。
そして、シンはカツ丼を米一粒残さず完食した。その瞬間、店の中の客から一斉に拍手が挙がった。
店員達は呆然としていた。それはこの店始まって以来の快挙なのだから
だが周りの様子は何処吹く風でシンは

「騒がしいな・・・・・・・」

と一言呟いた後、普通に勘定を払い、店を出て行った。あれだけの料を食べたにもかかわらず
一向に苦しそうにせず、店を出た後も

「甘いもんが食いてぇな」

まだ何かを食べに行くような素振りだった。ちなみに今日の彼は、朝から用事のお陰で
臨時収入があり、まだまだお金に余裕があった。



シンが去った食堂では未だ興奮が冷めやらない様子で

「すごかったな」

と言う声が客達の間から挙がっていた。
そんな客達の中に二人の女性がいた。一人は髪型はポニーテールで
髪の色は赤みがかった色。もう一人は年下のようで帽子を被っていて髪型は解らないが
帽子から銀色の毛がはみ出していて、顔にはサングラスを着けていた

サングラスの女性が言う

「アイツがシンか」

するとポニーテールの女性が答える

「モンスターイーターと呼ばれるだけはありますね」

サングラスの女性は、年下のようだが、ポニーテールの女性よりも上の立場にいるように思われる。

「怪物を喰らう者、だけど見る限りではただの大食らいね」
「奴が情報通りの男かどうか、ためしてみますか?」
「いや情報通りなら、骨折り損のくたびれもうけになるだけよ。止めた方が良い」
「そうですか」
「それに、我々はやる事があるわ。食事も済んだ事だし戻るとしましょう」
「はい」

この後、二人の女性は、勘定を済ませ、店から出て行った。



志保と別れたとサーチャーは一人考えていた

(危なかったもしあのままだったら、あの事を志保ちゃんに・・・・・・・)

彼女には志保に話してはいけない何かがあるようだ

(でも、変に思われただろうな)

その時、彼女の携帯電話が鳴った。誰からの電話かを確認し、受話スイッチを入れる

「どうしたんですか、アリシアさん・・・・・・・・そうなんですか・・・・・・・・
いいですよ・・・・・・・・・」

しばらく会話を続けた後、彼女は電話を切り

「忙しくなりそうですね」

そう言うと、彼女は急ぎ足でその場から立ち去った。



どこかの社長室のような場所に、食堂にいたサングラスの女性の姿があった。
彼女は、サングラスと帽子を取ると、顔にフルフェイスのマスクを被った

「ふう」

と溜息をつき部屋にある大きな机の前に座り、机の上に置いてあるパソコンで
しばらく、何かの処理を行っていた。それが一息ついたと思うと
女性は、マスクの一部に手を当てると

「私だ、状況は?」

と話し始めた。どうもこのマスクには通信機が付いているらしい
そして返事がくる

「作戦は成功です」
「それは良かった」
「今後は?」
「そうね、妨害作戦はここまで、でも彼女の監視は続けて、Gの手並みを見てみたいから」
「解りました、首領」
「それで、神羅月菜は今どこ」
「このままだと、本部の所在地に入ります」
「そう、面白くなってきたわね」

と言い

「引き続き、任務に戻りなさい」
「解りました」

と言った後、

「全ては我らラビリンスの利益の為に・・・・・・」

と言って通信は切れた。仮面の女性は

「社訓だからって、毎回言わなくても良いんだけど・・・・・・・」

と呟いた。



「確か、この辺なんだけど・・・・・・・・・」
「すいません、私の為に・・・・・・・・」

現在、私は道案内をしていた。何故かというと、凪からの電話の後、家に帰る途中

「あの・・・・・○○に行くにはどうしたら良いんでしょうか」

と道を聞かれたのである。
聞いてきたの、私の同じくらいの歳の少女で、髪はそこそこの長さで、
おとなしくて、幸薄そうな雰囲気が漂っていた。しかも私に聞いてきた時の声も
どこか力が抜けたように弱々しく、もしかしたら聞き損ねていたかも知れなかった。

「えーと」

彼女の聞いてきた場所は、何処にあるかは知っている。困ったのは、
ここからだと道順が複雑で、口頭では伝えにくく、地図を書くにも難しかった

「あの・・・・・・・・」

と彼女は問いかけてきた。私は

「案内してあげようか?」
「良いんですか」

と彼女は遠慮しがちに言ったが

「いいの、ちょうど私も今から、そこの近くに行くから、」
「そうですか。ありがとうございます!」

少女は深々と頭を下げた。
実際のところ、私はそこの近くに行く予定なんて無かった。でも適当な事は言えないし
それに、放っては置けなかった。
そう言うわけで、私は、彼女の道案内をする事となったのだが、その場所は知ってはいたけど
行くのは久しぶりだったので、何度か迷いそうになった。だけど

「ここよ、ここ!」

その場所へとたどり着いた。

「本当にありがとうございました」

と彼女は、また深々と頭を下げた

「いいの、いいの、ついでだから」

すると彼女は

「もしかして、ボード学園の生徒ですか?」
「ええ」
「高等部2年生ですか」
「そうだけど・・・・・・・」

何でこんな事を聞くんだろう

「私、新学期から転入するんです。ボード学園の高等部2年に」
「そうなんだ」
「もしかしたら学校で会えるかも知れませんね」

と言い

「私は黒招霧恵と言います。貴女は」
「私は蒼崎志保」

これが私と黒招霧恵との出会いだった。後に彼女は私にとって忘れる事の出来ない存在に
いや、この後起こる様々な出来事が、すべてが私にとって忘れる事の出来ないものとなる。
今思えば、この日が私にとっての平穏な日々の終わりだったのかも知れない。
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