第0章「終わりと始まり」


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15年前



某県の山中

ここには地図にも載っていないある村が存在した。

そしてそこで暮らす人々は誰にも知られる事無く
ただただ平穏な日々を過ごしていた。

その時、その瞬間までは…


「・・・・・・」

気が付いたら私は瓦礫の中にいた。
家が崩れた時に偶然出来た隙間の中にいたのだ。

幸い怪我はしていないようだ。
動けないが…

なぜこんな事になったのか。
それは突然だった。

夜空を暗雲が覆った闇夜の晩。

早く寝るようにと母に促され、床に入ってすぐの出来事。
背筋に悪寒が走り、身体の内側から未知の感覚がした。

そして気が付けば、この状況。
一体何が?
母と父は 村の人は大丈夫だろうか?

初めはそんな事を考えていた。
しかしすぐに他人の心配をしている暇は吹っ飛んだ。

『ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!』

突然耳に飛び込む悲鳴、いや断末魔。
それも一人では無い。後から後から聞こえてくる。
私は恐怖から耳を塞いだ。

断末魔の叫びが徐々に近づく。
同時に先ほどの悪寒。 後から思えば、これは“悪寒”ではなく“戦慄”だったと思う。

何かが来る。直感でそう思った。
無意識のうちに息を殺す。

「・・・・・・」

“ソレ”は通り過ぎていった。
…助かった。

そのとき隙間から“ソレ”の姿を見る事が出来た。
後に確信した。これは神のくれたチャンスであったのだと。

「!!!!!!!」

だが、私はショックで気を失った。
“ソレ”いや“カンケル”を直視しただけで…


次に気が付いたときは、私は瓦礫の中でただ立ち尽くしていた。
周りの瓦礫は、強力な力で吹き飛ばされていた。

しかし驚きはしなかった。
自分がやったのだと無意識に感じたからだ。
頭に浮かぶのは疑問ではなく村に伝わる“言い伝え”。

「ふっ…ふふふ…」

何故か笑みがこぼれる。
あの“言い伝え”が本当なら、私は奴を殺せる。
私が生き残ったのも、私が選ばれたからだ。
両親の、村の皆の敵がとれる。“復讐”が出来る。


私は確信した。



現在

とあるホテルの一室


「・・・・・・」

女性は自室の窓から夜の街を見下ろしながら、自身の“終わりと始まり”を思い出していた。
この街も自分の故郷のように“カンケル”によって蹂躙され破壊されるのか…

「…ふっ、何を考えているんだ私は…」

女性は自虐的に笑う。
妙な感傷に浸る自分が何とも滑稽に思える。

「私のやる事はただ一つ。カンケルを倒す事。それ以上も以下もない」

あの日以来、一日とてカンケルの存在を、この感情を忘れた事など無かった。
カンケルは私が倒す。他の誰にも譲らない。この権利を奪おうとする者は例え神であろうと悪魔であろうと許さない。
敵はカンケルのみ。それ以外は眼中に無い。邪魔する者はすべて排除。利用する物はすべて利用する。
それが彼女、月宮 刹那を今日まで突き動かす唯一の感情である。

「カンケル…お前は私が、私が…」

手に作った握り拳に徐々に力が篭っていく。

「私が…絶対に殺してやる!!」

刹那の口から恨み言が出ると同時に、彼女の手から真っ赤な血が滴り落ちた。

バチッ!!

そのとき突然テレビの電源が入った。
中々の怪奇現象だが、刹那はそれに驚くことなく「またか…」といった表情でテレビに目を向ける。
テレビには何故か狐の面を付けた金髪の少女が映っている。ドレスで着飾ったその姿は少女が高貴な身分であることを安易に想像させる。

『今晩は、刹那さん。お元気かしら?』

少女はテレビの中から気軽な感じの口調で刹那に話しかけてくる。
しかし刹那は呆れた表情で対応する。

「前置きはいい、早く本題に入れ」
『もう…せっかちですね。刹那さんは…』

刹那の素っ気無い対応に少女は拗ねるが、刹那は無視する。
少女もこれ以上は無駄と判断したのか、話を本題に移した。

『じゃあ本題ね。実は良い知らせと悪い知らせがあるの』

少女の言葉に刹那の表情が若干変わる。

『悪い知らせから話すわね。Dr.アリスの一味がその街に向かっているとの情報が入ったわ。これは我が社の諜報部が掴んだ情報だから100%信頼できるわよ』

その知らせに刹那の表情が一層険しくなる。
眼には憤怒と憎悪の感情が入り乱れ、爛々と輝いている。

「またあいつ等が…」
『それから良い知らせね。実は“騎士団”がその街に潜入しているらしいの』
「“騎士団”が?」

ここで刹那は先程とは異なり、少々驚いたような表情になった。
“騎士団”の存在と目的は知っていたので、何故良い知らせなのか理解出来なかった。
刹那から見れば“騎士団”も自分の悲願達成の邪魔者でしかないのだ。

「それはどういう…」
『“騎士団”の行動理由から見ればアリスは殲滅対象だからそっちは“騎士団”に押し付けてしまえば良いのよ』

なるほど邪魔者は邪魔者に、と言う事か。刹那も思わず納得する。
仮に“騎士団”が…いや如何なる組織が存在しても邪魔ならば…
“世界の秩序”なんて関係ない。自分にとっての“世界”は既にカンケルによって崩壊してしまったのだから。

『それからその街には私の部下が前々から潜入しているので、あの子にも協力させます。百合子さんも近々合流すると思いますので』
「感謝しています、薫子様」
『うふふふ…嘘が下手ですね刹那さん』

そういうと薫子と呼ばれた少女は狐の面を取り素顔を見せる。
整った顔立ちの美少女だが、それが逆に不気味にも見えるのは何故だろうか?
刹那は常にそう思う。

『あなたは私を利用しているだけ。感謝なんか少しもしていない。でも利用するのは私も同じ、でも感謝はしているわ。刹那さん以上に協力的な人間はいないですから』

「ふふふ…」と微笑む薫子に、刹那は内心こう思った。

―油断ならない奴…

それは刹那の薫子に対する第一印象であり、依然としてそう感じ続けている。
カンケルへの復讐に協力的だが、内心では何を考えているのか、出会ってかなりの年月が流れたが未だに読めない。

そんな刹那の考えを知ってか知らずか、薫子は別れの言葉を切り出した。

『今日はここまでね。それじゃあ刹那さん、頑張ってくださいね』

笑顔の薫子が手を振る映像を最後に、テレビは勝手に消えた。

刹那は再び窓から夜の街を見下ろす。
復讐を果たす最大のチャンスは、一筋縄ではいかない。
そう確信した。
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