第1章第9話「戦士の心得」


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『お前は、僕が最初で最後の最高の弟子だ。』


不意に頭の中その言葉が響く。
そこで忌まわしき記憶と共に、
忘れたい物ではあるが、今の自分を形成させた記憶。


『なぜだ!たとえ特殊能力を保有せずとも緋色の実力は僕が認めている!

それなのに僕の断りをえず、廃棄処分とはどういうことだ!』

俺を「無能」と決定を下された時、廃棄の決定を唯一抗議してくれた人だった。
結果として俺の処遇は廃棄処理となったが、それでもただ一人、
こんな俺を味方してくれた人だった。


『・・・・すまない。』

薄暗く、言葉では言い表せないような腐敗臭と嫌悪感の走る廃棄処理場に訪れたその人は、

自分の処分を顧みずに、俺と姉さんを脱走する手引きをしてくれた。

その人とはそれを最後に会っていない。

最後の言葉は、俺が廃棄されたことなのか。

それとも俺たちをこのような所に連れてきて、人ではない何かにしたことなのかは分からない。

それでも一ついえることは、後にも先にも俺が「師」と崇めた人はあの人だけだろう。






「懐かしいな。」

俺は、床に燕尾服のままで寝ていたようだ。
寝ぼけ眼を擦りながら現状を思い出す。

「・・・着替えて、「また」発作が起きたらしいな。」

着替えた後に全身を駆けめぐった痛みに、どうやら意識を失っていたらしい。
最近では間隔が短くなってきた気がする。
どうやら、もう限界が近いのかもしれない・・・・。
だが、姉さん達に気づかれない自分の部屋で倒れたのが救いだ。

「まだ死ぬわけにはいかない・・・。」

俺はぐっと拳を握ると、そのまま部屋を後にする。



「ちょっとさ。子猫用のミルクってどこにあるの?」

不意に長くて広い廊下で声をかけられる。
姉さんとクラウは、庭で掃除の予定だろうから屋敷にいるのは
ただ一人しかいない。

「一階の調理室の端から3番目の棚に無かったか?」

俺が、この前拾った子猫を抱えながらなでている久遠に答える。

「ん~、それが無いのよ。・・・予備とかないの?」

「・・・そうか。そこにないとしたらない・・・今から買いに行こう。」

どうやら気づかない内に使い切っていたようだ。
こいつらも育ち建ち盛りだから急いだ方が良さそうだ。

「うん。お願い。
代金は、この前渡したカードを使ってくれればいいから」

久遠はそういうと、子猫の肉球をぷにぷにしていた。

「・・・了解した。行ってくる。」

俺は、久遠にそう告げると、屋敷のドアを開けた。
どうやら、姉さん達は屋敷の裏あたりを掃除しているらしくあうことはなかった。
俺はそのまま駅前のペットショップを目指して歩き始めた。




ふと、今日の学校での事を思い出す。
まず、姉さんと同じクラスでは無いことは腹立たしい事この上ないが今更しょうがない。
それよりも、クラスの人間がこの上なく異質すぎる。

まずは、同じ転校生ときた『八代 みつる』

あれは、俺のいた組織のような組織に属している人間だ。
華奢な体つきで顔も中性的、気さくな性格でクラスにとけ込んでいたが、
あれは偽りの笑顔の仮面をかぶっているのだろう。
それから察するに、諜報活動などをメインとした物なのだろう。
観察力と洞察力は俺と同等かもしくは上だろう。
力の張り合いでは負ける気はしないが、手の内を中々見せないだろうから
ある意味、一番やっかいな相手には違いない。

後は、八代 みつると話していた『護矢 晃輝』

あれは、違和感を感じる。
普段なら気にしない程度の違和感を感じだが、あれは奴らを狩りに行った時の
夜にたまに感じる違和感と同じなので多分何かあるのだろう。
違和感を違和感と思わせない感じ、それは憑いている奴の力だ。
つまり、そこまで知恵を持つ高位な物だろう。
ただ、あれ自体には放っておいても大丈夫そうだ。

それと、クラスで一人浮いていた『蒼崎 シン』

あれは、なにかおかしい。漠然とした物だがおかしい。
あまり深く関わらない方が良さそうだ。
感覚で生きている生き物だから不確定要素が大きい。
まあ、こちらから接触しなければ大丈夫そうだ。

他にも、生徒会長の『草加 雅菜』

あれは、俺とは別の意味でただの人間ではないようだ。
改造のレベルでは俺より人間のようだが、それでも常人とは違うようだ。
あちらも、こちらを危険視しているようなので注意がいる。

最も注意がいるのは、同じ転校生の『豊桜 冥』それと『志熊 京』だ。
他にも『水野 水美』、『峠 総一郎』と注意がいりそうなのがその比ではない。

それはそのはずだ・・・・この二人はそもそも人間ですらないのだから

志熊 京これは、作られてから間もないのかどうやら人間社会に慣れていないように見える。
これ自身には多分害は無いのかもしれないのだが、
それに秘めている物は危険を感じる。
誰が何のために彼女につけたかまでは分からないが、
可哀想だが彼女はその存在自体が争いを呼ぶ火種になるだろう。
できれば、関わり合いたくはない。

そして、豊桜 冥はそれを狙ってきた刺客か何かだろう。
これも人間ではなさそうだ。
しかも、見抜く能力は高そうで、俺と少し目が合っただけで何かを感じたようだ。
願わくば、こちらに興味を持って欲しくはない。
察するに、彼女の組織も八代の組織並に大きい物だろう。
ただでさえ、面倒ごとが多いのにこれ以上増やしたくない。


最後に、一番の不確定要素『風瀬 列』

あれは、本当にどこにでもいる人だ。
ただ、不思議と何か人を引きつける何かを持っているのだろう。
それが証拠に、彼の周りには様々な物達が集っている。




ふと、物にふけっていると見慣れない看板を見つける。

「八代薬局?」

そういえば、八代が学校で薬局に住んでいると行っていたのを思い出した。

「つまり・・・隠れ家か。
一度、見てみるのもいいかもしれない。」

八代の組織がいかほどの物か興味を抱きながら、店の中に入った。


「確かに、中は充実しているが・・・・・何で猫用はあって犬用のは一つもないんだ?」

中にはいると、まだ開店して間もないのか客は俺しかいないようだ。
特に変わった点は無いのだが、ただ犬用品は一切無いくらいだろうか。

とりあえず、いつも買っている粉ミルクを1缶ほど手に取り、
1ダースほどを配送して貰うように会計のレジにいった。

「これを頼む。・・・あと1ダースほど配送を頼む・・・・・・・」

レジには、雑誌を読みながら「むふふっ」とおかしな声を上げている女性が一人いた。
栗色のショートヘアでなぜかぼろの白衣をきた変わった格好だが、まあこれが八代の言う姉だろうと判断した。

「うへぇ!?・・・さぼってません~!さぼってませんよ~!」

声をかけられると思っていなかったのか驚いた表情で声を上げる。
間延びした口調からも想像しやすい、マイペースな性格のようだ。
胸のプレートには「杏奈」と書いてあるのでそれが名前のようだ。

「それはどうでもいいが、これと同じ物を1ダースほど配送を頼む。」

俺はやや呆れ顔で答える。
すると、店主はじ~っと、俺をなめるように眺めて俺の頭の上に視点が停止する。

「あの~頭の上の猫さんはファッションですか~。」

「何を馬鹿な・・・・・」

店主がそういうので、頭に手を当てる。

「にゃ~。」

黒斑の猫がいた・・・・。

「そうだ。」

短くそうこたえると、店主はにんまりと微笑んでいた。
どうやら、俺に対して恐怖の感情を抱いていないらしい。

「むふふ~、お兄さんかわいいですね~。」

レジで会計をしながら、配送の手続きをしていた店主の笑みは更に増していた。
小馬鹿にされているような気がして腹が立つが、気にせず配送伝票に記入する。

「あれ~?お兄さんは~、あの屋敷の人なんですか~。」

店主は、俺が記入している所をのぞき込みながら言う。

「・・・ああ、ごらんの通り・・・執事だ。」

俺は、面倒なことになりそうなので簡単に答えて会計をすまそうとする。

「ふむふむ。白鷺緋色君ですか~。屋敷と言うことは、旦那様に無理矢理攻められる受けですかね~・・・
それとも、萱では旦那様を嬲っちゃう攻めさんですかね~」

「むふふっ」とピンク色の妄想をしながら、どうやらどこかに旅立ったようだ。

「お前を今すぐ攻め滅ぼそうか?」

俺はおもむろに持っていた猫を店主の顔に猫を乗っける。
すると猫は落ちたくない一心で店主の顔に爪を立てる。

「にぎゃ~~~~~~!」

店主は、こんな時でも間延びした口調で叫んだ。
それに驚いたのだろうか猫は、そそくさと外に逃げたようだ。

「あうぅぅぅ~、こんな攻めは結構ですよ~。
同じ攻めなら~、緋色君のナウイ息子で~・・・」

店主の両頬は、綺麗なみみず腫れができていた。

「帰ってきたか。・・・・安心しろ・・薬局なんだから薬はたくさんあるぞ?」

俺は会計を済ませると「この店の売り物の」カットバンを店主に張ってやる。

「あうう~、ありがとうございます~」

店主はそういうと「痛い痛い」と、しきりに言っていた。

「・・・ああ、じゃあな。」

俺は、そういうと店を後にした。





店を出てふと気づいた。

「あれは・・・風瀬 列か。」

どこの誰だか分からないが、赤い髪のショートカットの女の子と腕を組んで歩いているようだ。
どうやら、デート中らしい。
風瀬は仕切りと周りを気にしているのでどうやら恥ずかしいらしい。
俺とどうやら帰る方向が同じらしい。
見つかっても面倒なのでしょうがなく、八代のような特別な訓練を受けていなければ気づかない程度に気配を消して歩いた。

「しかし、あの子は・・・・」

しきりに周りを気にしている風瀬を尻目に、俺はそのとなりの少女を見る。
あの子は、なにか違和感を感じた。もしかしたら、あの子もまた・・・・。




『ヴミャアアアアアアアアアアアアアアアアアウッ!!!』


思考の海に行こうとした所、非日常の雄叫びに視線をそれにあわせる。


「面倒なことになりそうだな・・・。」

俺は、何度か目撃している化け物を見ながら
ここからどうやってここから逃げるかを考える。
あれは俺が相手にする舞台の役者ではないはずだ。
おそらく、風瀬達はあれとの距離を考えると逃げ切れないだろう。
まあ、俺が何とかすればでき無くないがそこまでする義理はない。


「・・・大丈夫。俺が守ってあげるよ。」

逃げる算段をしていると、風瀬の声が聞こえた。
恐怖で足下は震えているにもかかわらず、一緒にいる少女をかばうように・・・。

その姿・・・・まるで・・・


『・・・大丈夫だよ。おねぇちゃんが、守ってあげる』

いじめっ子から自分も震えながら守ってくれた幼きときの姉さんのようで




















ゴンッ!


「グニェッッッッッッッ~~!」

攻撃を仕掛けようとした化け物は、不意にきた衝撃に悲鳴を上げる。

「さっさと逃げろ。」

投げつけた粉ミルクは見事化け物の額に命中してのたうち回っていた。

俺は、気づいたら身体が先に動いていた。


「君は・・・」

風瀬は、驚いたようにこちらを見ていた。

「・・・・その子を守りたいんだろ?・・さっさと逃げろ。」

「けどそれじゃあ・・・」

「お前が逃げたら俺もにげるさ・・・。」

「列さん・・・」

赤髪の少女が不安そうに声をだす。

「白鷺・・・ありがとう。・・・お前もちゃんと逃げろよ!」

風瀬はそういうと少女の手を取り、走って逃げていく。


「・・ありがとう・・か。」

言われ慣れない言葉に照れくさい感じを感じながら目の前の化け物と対面する。



b>「グファァァァッ」


目の前の化け物は獲物を逃したことにいらだちを感じているようだ。
すると、俺のいる場所に飛びかかってきた。

「獣並の知能しかないか。」

俺は、すっと後ろに飛び引き、持っていた粉ミルクを目つぶし代わりに、化け物にぶっかける。


「ギヤァァァァァァァ!!!!」

化け物は先ほど以上にのたうち回る。


『戦士たる者、戦いならばいついかなる時でも非情に撤せよ』
『何かを奪わなければ何も守れん・・・それが戦いだ』

ふと、懐かしい言葉を思い出す。

「分かっているさ・・・師匠。」

俺は、愛用のナイフを化け物ののど笛に両手で力を込めて突き立てた。




「ギニャァァァァッッッッッッ!!!!!!」



化け物は、断末魔の叫びを上げながら蒼い炎を上げて抵抗するが、
俺は振り落とされないようにしながら、急所という急所に突き立てまわる。



すると、ぐったりと動かなくなったそれは青白い炎を上げて灰に消えた。





『そして、知れ。

争いなど何も生み出さず残るのは空しさだけだと・・・。』

その炎を見ていると、また懐かしい声が聞こえた気がした。



「さて、本来の役者が来る前に消えるかな・・・。」


こちらのそれを察知して近づいてくる本来の役者の気配を
感じながらその場を後にした・・・・。





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