第1章第26話「暴走する刹那」


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作:プラスマイナス


PM.17:30 ボード学園校庭

数時間前まで学園の生徒で溢れていた校庭も、今や常識を超えた戦場へと姿を変えていた。

仮面ライダーシキ、レンゲルと異能怪人オカルト、プテラの戦いは熾烈を極めた。
双方一歩も譲らぬ攻防で長く膠着状態が続いていたが、次第に優劣がはっきりとし始めた。

異能怪人であるオカルトとプテラは、お互いの戦闘スタイルや能力を把握している事もあり個別に戦いながらも時折見せるコンビネーションで徐々に優勢となっていた。
逆に仮面ライダーであるシキとレンゲルは、お互い全くの初対面であり足並みを揃える事が出来ずに劣勢となっていた。いや、正しく言えばレンゲルは協力しようと努力していたが、シキは全く協力する気がなかったのだ。

深緑のライダー、レンゲルは主にオカルトと対峙していたが、オカルトに憑依され操られているギャレンを傷付けぬように戦っているので、主導権をオカルトに握られっぱなしであった。
漆黒のライダー、シキは主にプテラと対峙しており飛行能力を持つプテラの空中攻撃に苦戦しつつも、持ち前の戦闘勘と能力でほぼ互角の戦いを繰り広げていた。


「あぅ!!」

ギャレンの銃撃を食らい、レンゲルは後退した。銃撃はガードしているので大きなダメージは無いが小さなダメージでも受け続ければ身体にガタがくる。
事実、レンゲルは一方的な攻撃を受け続け徐々にふらつき始めていた。序盤は隙を見てギャレンの身体からオカルトを追い出すつもりだったが、オカルトは全く隙を見せないのだ。
一瞬、隙を見つけられてもそれはオカルトのフェイクであり、そこを突けば計算された攻撃を食らう。

「はぁ…はぁ…」
(突破口が見出せない。一体どうすれば…)

レンゲルは咄嗟に茂みの中に隠れギャレンの攻撃をかわした。そして茂みの中から様子を窺う。
ギャレンは茂みに銃口を向けつつも、こちらの出方を窺っている様子だ。
つまりお互いに膠着状態になったのだ。レンゲルにとっては一旦呼吸を整える良い機会だった。


(…レンゲルの力はこの程度か。特に警戒する必要はないな)

オカルトは茂みに銃口を向けつつも、内心では関心を失いつつあった。
SB社とボードのライダーについては事前に調査済みだ。その性能、能力、さらに装着者の身辺に至るまで調べつくした。この街で活動するには必要な事だったからだ。

しかし状況はオカルト達の予想を超える展開を見せている。
未知のライダーに組織、得体の知れない怪物などが出没しているらしい。こちらではまだ確認できていないが、街中に張り巡らした探知結界はその存在をオカルトに知らせている。
個人的には非常に興味をそそられるが、自分を含めた異能怪人は創造主アリスの命ずるままに行動する。特に忠誠心を刷り込まれた訳でもないのに何故か全員がアリスに従う。
考えてみれば妙な話だが、それを疑問に思う者は皆無だ。特にカルテットという異能怪人は。

『ぐあぁ!!』

オカルトが考えていると、プテラがそばに吹っ飛ばされて来た。随分とやられたようだ。
見ると対峙していたシキもボロボロになっている。
これだけで両者がどれだけの死闘を繰り広げたかが見て取れる。

(やはり…問題は月宮とバックにいる一ノ宮か…)

オカルトは内心分かりきった事を、と思いつつ再度認識した。
―奴は危険だ

オカルトは銃口の先をレンゲルからシキへと変える。そして迷わず引き金を引く。

「ちっ!!」

シキはボロボロの身だったが、素早く銃撃をかわし偶然にもレンゲルの隠れる茂みに飛び込んだ。

『プテラ、お前は先に退け。あとは我がやる』
『はぁ!?何言ってやがる!!オレはまだやれ…』

プテラは反論しようとするが、オカルトはそれを制止した。

『今はやれても後が出来なければ意味が無い。これは本番でもなければ練習でもない。単なる戯れだ。ここで全力を出す必要は無い』
『……ちっ!!』

オカルトの言葉にプテラは若干納得がいかない様子だったが、結局舌打ちだけするとそのまま翼を広げ飛び去った。


「ちっ!!」

茂みの中からそれを見ていたシキも何故か舌打ちをした。
無論、プテラが去ったのが原因である。

(あの単細胞なら口を簡単に滑らせたのに…不気味ヤローじゃ簡単にはいかないな)

因みに言っておくが、「不気味ヤロー」とはオカルトの事である。刹那はオカルトをそう呼んでいる。
オカルトの相手が一筋縄ではいかない事はシキも過去の戦闘から知っている。オカルトは特殊能力を駆使するタイプで、直接戦闘タイプの自分とは相性がイマイチだ。
今はどうやら他人の身体を使っているらしいが、それも射撃タイプ。やはり自分とは相性が悪い。

「まさかアイツ、こうなると分かってたのか…」

オカルトなら有り得ない事でもない。嫌な奴だ。
茂みの隙間から様子を窺うと、オカルトはこちらの出方を見ているらしい。
このまま飛び出せば狙い撃ち、かといって待ち続ければやがて銃撃で強制的に茂みから追い出されるだろう。
結局先手を取るのはオカルトだ。まったくもって不愉快な話である。

「ちっ!こうなったら…」
「あの…」
「何だ!!」

どう考えても八方塞な状況の中で話しかけられたので、シキは思わず怒鳴った。
話しかけたのはレンゲルだった。
実の所、不穏な風を読み駆けつけたが、レンゲルには現在の状況があまりよく見えていないのだ。来て分かった事は4つ。

1つめは未知の敵が現れた事。今のところ目的は不明。能力的にはオルフェノクやアンデッドと同等かそれ以上に見える。
2つめは同じく未知の仮面ライダーが出現した事。こちらも自分達の知りえないタイプの仮面ライダーである。怪人達は「月宮」と呼んでいた。
3つめはギャレンが敵の術中に嵌り、その意思と関係無く操られているという事。対峙しただけでも分かる。ギャレンの背後に見え隠れする別の存在が。
4つめはこの仮面ライダーと怪人はお互いに敵対している事。それもかなり深い因縁のある関係らしい。

「あの人は私の知り合いなんです。何とか助けたいんです」
「そんな事知るか!こっちは忙しいんだよ!!」

レンゲルの懇願もシキには届かない。というか聞く耳すら持たない。
しかしレンゲルも引かなかった。

「それなら一緒に戦いましょう!お互いの敵は同じはずです!」
「・・・・・・くそっ!」

シキは少し考えると、不満げな表情をしながらも渋々認めた。


オカルトは相変わらず銃口を茂みに向けながら、状況を静観していた。
シキとレンゲル。次はどのような手で来るのか。
そう考えていると、シキとレンゲルが同時に茂みから飛び出した。

『同時攻撃でこちらを撹乱する気か…だが!』

オカルトの標的は初めから決まっている。今後の障害となりうる者。

仮面ライダーシキ、月宮刹那だ。

オカルトは迷わず銃口をシキに向け、銃撃を放つ。

「ぐわっ!!」

シキは銃撃をまともに食らい、衝撃で吹っ飛ばされる。
しかしその間にレンゲルがオカルトに迫った。

「はあっ!!」
『ぐうっ!!』

レンゲルの一撃にオカルトは存外あっけなく吹っ飛ばされる。しかしこれは故意に攻撃を受けたのだ。

「くっ!」

レンゲルは攻撃を成功させたのに表情は曇る。やはりギャレンの身体を傷付けるのは気が進まない。
しかしシキが言うには、ギャレンを救う為にある程度のダメージは必要らしい。

「ごめんなさい、さくらさん!後でちゃんと謝ります!」

レンゲルは謝罪しながらも攻撃を続けていく。といっても致命傷になるような攻撃はしない。ある程度は防げるように手加減をしているのだ。

『貴様…月宮と組んだな。愚かな事を…』
「…?それはどういう意味ですか?」
『お前はあの女の恐ろしさを知らんのだ。橘さくらの開放を望むなら、すぐに後悔する事になるぞ』

レンゲルがオカルトの言葉に疑問を感じていると、体勢を立て直したシキが割り込んできた。そこには鬼気迫るものがヒシヒシと感じられる。
正直、レンゲルはその異常なまでの気迫に圧倒されていた。一体両者の間にはどのような因縁があるのか。

「オカルト!!お前ら一体どこまで調べた!!カンケルは今どこにいる!?」
『残念ながら、お前に教えるほどの事は分かっていない。その様子ではお前たちも大した情報は無いようだな』
「黙れ!!」

シキの拳がギャレンの顔面を捉える。まったく容赦の無い一撃。
ギャレンは口から吐血しながら豪快に吹き飛ぶ。さらに追撃の蹴りがギャレンの腹を何の迷いも無く直撃する。

『ぐはぁ!!』

ギャレンはさらに吐血しながら後退する。徐々に足元がふらつき始めた。
シキの猛攻は続き、血も涙もない非情の攻撃がギャレンに繰り出される。

「ちょ、ちょっと待ってください!!このままじゃさくらさんが!!」
「うるさい!!!!」

止めに入ったレンゲルの言葉も完全に無視しシキは攻撃を続ける。
パンチ、キック、パンチ、またパンチ…さらに強力なアッパーがギャレンの顎を確実に捉える。鮮血が宙を彩り、遂にギャレンが地に倒れる。

「『ぐ…ぁ…』」
(ダメージを受けすぎた…このままでは…憑依状態を保てん…)

大ダメージを受けた影響か、既に憑依状態にも変化が見えていた。
声もさくらとオカルトの両者のものに分かれつつあり、姿もギャレンとオカルトの姿がダブって見え始めている。

レンゲルもその変化に気付き、シキを止めようと必死になっていた。
最早言葉ではシキを止める事は出来ない。強引にでも静止しなければさくらの生命が危ない。
しかし中々うまくいかない。小柄なレンゲルに比べ長身のシキの方が体格で勝っている。それ以上に何と言ってもシキの驚くべき気迫が問題だった。

「お願いです!!もうやめて!!じゃないとさくらさんが!!」
「うるさい、離せ!!離さないとお前もぶちのめすぞ!!」

もう滅茶苦茶だった。
オカルトは憑依状態の維持が困難になり、最早立つのもやっとである。
シキはそんなオカルトを倒そうと暴れまわり、完全に暴走している。
レンゲルはそんなシキを止めようと必死となり、戦闘時よりも疲弊していた。


この状況を最初に打破したのは最悪な事にシキだった。
突然シキの身体から黒い気のような物が放たれ、その衝撃でレンゲルは吹っ飛ばされた。

「こ、これは一体!?」

驚くレンゲルをよそに、シキの殺気もピークを迎えた。それと同時に全身に纏う黒い気が、全て右足に集中する。

「ダークライト……ノワール!!」

シキが空高く跳躍する。右足がより黒く染まっていくのが見て取れる。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

そして鋭い黒の一撃が、風を斬る速度でギャレンを直撃した。

「きゃあ!!」『ぐっ!!』
「さくらさん!!」

シキの強烈な蹴りをまともに食らい、遂にオカルトとギャレンは完全に分離した。しかし両者とも大ダメージは必至であり、ギャレンは大地を倒れ伏せたまま立ち上がる様子を見せず、オカルトもフラフラと幽霊の如く立ち上がった。

「ちっ!!」

そんなオカルトを見てシキが苦々しく舌打ちをする。この様子から察するに、シキはオカルトを殺すつもりだったようだ。さくらも一緒に。
シキの様子からそれを読み取ったレンゲルはすぐさまギャレンに傍に駆け寄り、シキを非難の眼差しで睨み付ける。
しかしシキはそれを意に介さず、未だオカルトに対して臨戦態勢をとり続けていた。

『・・・・・・・・・』

だが、憑依が解けたオカルトは無言を貫くとそのまま姿を消してしまった。どうやら撤退したようだ。
それと同時にシキも変身を解き、刹那の姿へと戻る。

「くそっ…また逃げたか…」

刹那は苦々しく呟くと、その場を早々に後にしようとする。
異能怪人に逃げられてしまったので、最早ここに用はない。ならばもう一度街に出てカンケルを一刻も早く探さなければ。

しかし刹那の前に同じく変身を解いた美月が立ち塞がった。その表情には困惑と非難の色が入り混じっている。

「ちょっと待ってくだ…」
「邪魔だ」

ドスッ!!
鈍い音と共に、美月は地面に膝を付く。刹那の拳が鳩尾を正確に捉えたからだ。

「ぐっ…ま、待って…」

美月は痛みに呻きつつも、刹那を止めようとするが、刹那はそれを完全に無視して足早にボード学園を後にした。

その後、美月の連絡を受けた木場夕菜が現場に駆けつけ、重傷のさくらは病院へと搬送された。


PM.18:00 町郊外

「く…そ…」

人気のない裏路地で、刹那は脇腹を押さえ苦痛に満ちた表情で悶えていた。
よく見ると、脇腹からは血が滲み出ており、黒いスーツを一部変色させていた。

実はプテラとの戦いで、プテラの鋭い爪が刹那の身体を捉えていたのだ。しかし刹那はその痛みに耐え、最後まで戦い抜いた。
カンケルに対する執念が彼女をここまでさせているのだが、ついに耐え切れず、こうして人目を避けて痛みを堪えていた。

「こんな…所で…早く…カンケルを…」

刹那は早々にこの場を後にしようと立ち上がる。しかし…

「うぐ!!」

ダメージは想像以上に大きいようだ。結果、痛みから刹那はすぐに座り込んでしまう。
その間にも傷口から出血が続いており、このままでは命に関わるかも知れない。

「はぁ…はぁ…」

徐々に意識が遠のいていく。視界がぼやけ始め、頭も回らなくなってきた。

「カン…ケル…」
ドサッ!!

刹那は最後の瞬間までカンケルの事を考えながら、ついに意識を失い地面に倒れ伏せた。


時刻不明 場所不明

仄暗い場所。
人気などまったく無く、ジメジメとした陰気な場所。
異臭が立ち込めドロドロとした水が溢れる場所。

『キシュゥゥゥ』

そこに響き渡る異形の叫び。しかし姿は見えない。
だが気配はする。一匹や二匹などではない。少なくとも数十匹はいるだろう。

『キシュゥゥゥ』

再び響く異形の叫び。滅びの使徒たちの叫び。
この存在を知る者は少ない。そして気付かない。

滅びの時が刻一刻と進み、世界が恐るべき病魔に蝕まれている事に。
真の恐怖とは、誰にも知られる事無く静かに、ゆっくりと進行していくのだと。

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