第1章第29話「黒の呪いと赤の殺意」


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PM 17:50 商店街


ピッ!

友人の晃輝からの電話を切る。


一体何がどうなっているんだ。

華枝が帰ってこないと思ったら、晃輝の妹の命李ちゃんも帰っていないだなんて・・・!
くそ・・・!
いやでもさっきのあの怪物が脳裏をよぎる。

小さなネコが、まるで虎のような怪物に変貌し、俺に襲い掛かってきた事。
もしあれがアレ一匹ではなく、この街のいたるところに出現しているとしたら・・・!!

悪い想像は俺を焦らせ、走らせる。
息も絶え絶え、汗だくになっていたけど構わない。

俺はどうしても華枝を見つけなきゃいけないんだ!!


人ごみが嫌いな華枝がこんなところに居るとは思えないけど、学校の帰りならば通るはず。
商店街の人ごみを一人一人見ながら走り、顔を確認しながら進む。

      • そういえば、学園付近を捜すようにって、晃輝が言っていたな。
ここは華枝の帰宅するルートを逆から辿ってみるか・・・。
その先に、華枝の行方を示す何かがあるかもしれない。
ただ闇雲に走り回るよりは、その方がいいかもしれない。

俺はそう思い立つと、このままボード学園へと向かった。



PM18:12 商店街


「列・・・!なんで家にいないのよッ!」

マンションには誰もいなかった。
家の電話も通じない。
外食が出来るような裕福な家庭環境じゃないし・・・。
それにこの時間にはいつもいるはずの華枝ちゃんもいないんじゃ、何かがあったって言ってるような物じゃない!


夏休みに入る前、7月。
華枝ちゃんが行方不明になったときも、列はこんな調子だった。
誰にも相談せずに、一人で突っ走って町中を探し回って・・・。

私が警察に届けなきゃ、あいつはずっと一人で探し回っていたに違いない。
あいつは昔っからそう。
思い込んだら本当に周りが見えなくなる性質な上に、それが妹の華枝ちゃんの事になるともう誰にも止められない。
もう、本当バカ!

とにかく列を探さなきゃ。
さっき携帯に電話をした時は話し中で連絡がつかなかった。

メールを送っても、あいつはいつもメール受信はマナーモードにしてるから、気づいていない可能性もある。

「もう、どこ行ったの、列・・・!」
彼らの行く場所など見当が付くはずもなく、闇雲に商店街の人ごみに飛び込んでいく。
その中をぐるぐると回りながら、辺りにいる人の顔を見て回る。

何処よ、何処なのよ列・・・私に気づいて、列・・・!


どんっ!!


「きゃあっ!?」

「うわっ!!?」

2つの短い悲鳴と共に、私はしりもちをつく。
私がよそを向いていた時、通行人の誰かとぶつかってしまったらしい。

「うう・・・いたたたぁ・・・・。」
石畳のアーケードの上に転んでしまったので、おしりを強く打ってしまったようだ。
痛むそこをさすりながら立ち上がると、私の目の前で同じように転ぶそのぶつかった相手に、私は手を差し伸べた。

「大丈夫ですか?・・・ごめんなさい、私、余所見をしていたもので・・・。」
それと共に、素直にこちらの非を認める謝罪をする。
人探しに夢中になって、前を見ていなかった私が悪いのだから、筋は通さないと。

「いえっ!僕も人を探していて、それで余所見を・・・すみません。」

なかなか話の分かる相手のようで、向こうも自分の非を認めて謝ってきた。
人のよさそうな外見の通り、私のぶつかった相手はなかなかの好人物らしい。

でも、よく見ると・・・。
「・・・?あなた、その制服、ボード学園の・・・。」
「あ、あなた、学園の生徒会長の草k・・・・! 」

私と同じように、相手も私の姿に見覚えがあるらしい。
でも、彼は何かを言おうとした時には口をつぐんでしまった。

「ど、どうもすみませんでした、僕急いでいるんで、それじゃあっ!」
「あっ・・・・。」

・・・行ってしまった。

私の事、生徒会長だってちゃんと知ってる風だったな。
でも、何で逃げ出すような真似を?

こんな時間に生徒が一人で出歩いているのを知られたら、まずいって思ったんだろうか?
それに彼、同級生だけど私とは違うクラスの生徒の覚えがある。

名前は・・・。やはり思い出せない。
そんなに目立つ生徒でもなかったと思う。

人探し、って言ってたわね。
彼も、列みたいに何かあったのかしら・・・?




PM18:55 工業団地 路上



「はああぁっ!!!」

ゴスッ!!!!!

「!!!!」

バゴオオオオッ!!

「ハァ・・・・ハァ・・・・。」
私の元に再び襲い掛かってきた白い兵士達の、最後の一体を気合一閃、踵落としでその頭部をアスファルトへと沈める。

くぅっ・・・。

こうも立て続けに襲われるんじゃ、華枝の体が、もたない・・・!
私も、この『黒い蟲』の力も、ようやく目覚めたばかり。

徐々にこの状態に慣らしていかないといけないのに、連中は容赦なく私に向かってくる。

あの軍服の女が華枝を誘拐したのと関係しているのだろう。
とにかくここから早く離れないと、また次の奴がくる・・・!


周囲を見渡す。
既に日は暮れ、潰れた工業団地は僅かな街灯の光も及ばない暗黒の地。
周囲に立ち並ぶ無人の工場は光を発せず、月光で伸びる影は更なる闇を作り出す。

かつて大型トラックの行き交っていたこの大きな道路も、今や異形たちの争う戦場でしかない。
そして私も・・・その一人だ。

黒い体皮に、真っ赤な瞳、背中に生やした粗末な翅(はね)。
これは私に穿たれた呪い。
私にこんな運命をもたらした、白の魔女と戦う為の力!
奴らを倒し、全てを清算するまで、私は倒れるわけには行かない!

だからこんな場所にいつまでも足止めされている訳には・・・


ブワアアッ!!!


「!!!!」
その瞬間、闇の世界を切り裂いて赤い閃光が奔った。
火の粉を散らしながら迫るそれは、私に向けられた紅蓮の殺意・・・!

バッ!

ドフアアアアアアアアアッ!!!!!

私が飛び立つと同時に、元々立っていた場所に火柱が立ち上る。
空中に静止した私は、すぐにその炎の塊が飛んできた方向を見据えた。

ボウッ!ボウッ!ボウッ!!

しかし次の瞬間には、間髪いれずに飛来する炎の塊!
「くうッ!!」

空中機動を駆使し、それらをすべて避けてみせる!

新手の敵か・・・!
でも今までの奴とはやり方が違う。

ひょっとして、あれらを指揮する大物が現れたという事・・・!?



「ちぇっ。素直に一発で当たって欲しかったなぁ。」
「あ、でも当たって死なれても困るかな。「捜して来い」って話だし。」

すると、地上で女の子の声がした。
こんな時間、こんな場所に女の子・・・?

・・・いや、私だって似たようなもの。
それにその口ぶりは、明らかに先ほどまで私を狙っていたととれる台詞。

私は静かに下に降りると、その少女に視線を向けた。

「こんばんは。ハナエさん。」

「・・・!華枝を知っているの・・・?」
少女の言葉に、まず面食らった。
私を見て、華枝と呼ぶ・・・?

「うん。だってずっと見てたから。」
「あの軍服の女がここにあなたを連れて来たところから。」
「多重人格だって事も、見せてもらっちゃった。」

「あなたを狙っていくつもの組織が動いてたみたいだし。」
「あなた、自分が思っているよりずっと有名人だよ?」

「・・・!!」

いくつもの組織が私を狙っていた?!
それに、私も知られている・・・!

「なんで、なんでいきなりそんな事になっているの・・・?!」
「お前、誰なの・・・?!」

「あなたにはね、スゴイ賞金がかかってるの。普通の女の子だと思ってたから、ちょっと失敗しちゃったけどね。」
「ホントはあのノーハーツたちに任せて、私は楽してボーナスを貰いたかったけど、それも無理になっちゃったから。」

「それに、私の事なんてどうでもいいでしょ?」
「だって私が直接あなたを捕まえて、賞金を頂いちゃうんだからねッ!」

「ッ!!!」

殺気が迸った。
焼けるような熱い彼女の殺気が周囲に走る。

ボウッ!!

瞬間、彼女の足元が赤く炸裂した!

「そぉれえっ!!」
炎の反動を利用してか、一気に距離を詰める少女。
その拳は、やはり紅蓮の炎を纏う!

ブゥオオオアアアッ!!!!

赤い尾を引く拳が振りぬかれる!!!
飛んでも間に合わない・・・!!!


バヒュウウウッ!!!

火の粉を撒き散らし、赤の拳は宙を切る。
体を右に流して命中の一点を避け、かわす!!

「!!」

ザッ!!

流した体を右足で踏ん張り、動きを止める。
そこからすぐに両手を地面につけ、姿勢を安定させる。

「りゃああああああああっ!!!」

ギャウンッ!!!

そこを軸に右足を振り回し、突進姿勢で突っ込んできた少女の踏ん張るその軸足を払う!!

「うあッ!?」
踵から払われその軸足を失い、後ろに向かって倒れようとする少女・・・!

流れるようにすらりと立ち上がる私は、そのまま右足を大きく掲げ・・・

ブゥオンッ!!!

踵を落としたッ!!!




ドガァァァァンッ!!!


「・・・・!!!」
だが少女は、無理な体勢ながらも私の踵を両手で受け止めた!

「ヘヘ・・・。危ない危ない。」
次の瞬間、私の黒い体皮にその掌から熱が伝わってきた。

「ッ!!!!」

バッ!!

危険を感じ、翅を羽ばたかせてその場を逃れた瞬間、

ドオオオオオオウッ!!!!!

「うあ・・・・!?」
その両手から、まるで火山の噴火を思わせるような火柱が上がった。
あまりの高熱に、顔を腕で覆う。
もしもアレに飲まれていたら、一瞬で黒焦げになっていただろう・・・。


「ちぇ。また避けた。今ので決まったと思ったのになぁ。」
少女はこともなげに立ち上がると、背中についた砂粒を払う。

「面倒ねあなた。ひらひら飛んで、私の嫌いなタイプ。」
「もっと正面からこう、づがーんって言うのはないの?そういうのだったら、私すっごく得意なんだけど。」

「そうね・・・じゃあひらひら飛べないようにしようか!」

少女はおもむろに手を伸ばす。
そしてその手先で・・・。

パチンッ!

指を鳴らした。



ゴウッ!!!!!!!!



同時、私と彼女の周囲を炎の壁が包み、夜空さえも多い尽くした・・・!!
さながら炎のドームという表現が適切だろう。

「これで空は飛べないよ?もうあなたには真っ向勝負しか残っていない。」
「さあて、今度こそ気持ちよく締めさせてもらおうかな!」

少女がゴキゴキとその拳を鳴らす。

確かにこれでは飛び上がって避ける事も、逃げ出す事も出来ない!
しかも、この高熱・・・ただ立ってるだけでも体が焼けてしまいそう・・・!!

ゴオオオオオオオオオオ・・・・・・。

そんな中でも、彼女は平然と立っている。
彼女を包む革のジャンパーもまるで燃えようとしていない。

これだけの炎を自在に操る・・・。彼女も、人間ではない何かなのか・・・!




「ホラ・・・。行くよッ!!!」

ゴッ!!!

彼女の燃えるような赤い髪がなびき、少女は再び駆けた!!!

ぐっ・・・と腰を落とし、その燃えるような一撃を待ち構える・・・!!



ヒュッ・・・


ギィィンッ!!!!!!!


「うわっ!!!?」

「うっ!!!?」
私と少女が激突しようとしたその瞬間、炎のドームが割れ、巨大な鎌が地面に突き立った!!

「鎌・・・?なんで、こんなところに・・・・?」

「ひ・・・こ、この鎌って・・・!!」

突き立ったその鎌を見て、引きつった声をあげる少女。
私と相対するその少女だけは、この事情を理解したらしい。


ヌ・・・ッ

「え、あ・・・・・・・・・・・・!!!!」

次の瞬間、私は見た。
あの赤い髪の少女の背後に、黒いローブを纏った悪霊が浮かんでいるのを・・・・!!!!

「ひぃ・・・・・っ!!!」

「・・・フレイム。首領、ならびにローレライ様はお前の行動に甚くご立腹・・・・・・」
「・・・・・首領の勅である。『今すぐ帰還せよ』・・・・・・・・・・」

「ふぁ、うああああああっ!!!わ、わかった!わかったからあっ!!」

パチンッ!

「今から帰る、帰るよおッ!!!」

ばびゅうううううううんっ!!!

明らかに恐怖におののく彼女は、再び指を鳴らすと炎のドームを消し、すぐさま走り去ってしまった。

その姿を呆気にとられながら見ていると、いつの間にかあの悪霊も地面に突き立った鎌も、その姿を消している事に気づく。
それに、周囲から雑兵たちの気配も一切消えた。

なんだったんだろう、アレは・・・。




PM19:13 工業団地 路上



当面の危機が去り、ようやく一息をつく。

それにしても・・・。
私に賞金をかけた奴って、一体何者なんだろう?

そいつのおかげで、私は華枝を誘拐したあの女、それに先ほどの連中を含めた多数の組織に顔を知られる事になった。
わざわざこんな手の込んだ事をするなんて・・・。
それに・・・。

私に賞金をかけたそいつは元々華枝を指名していた。
しかも私の正体を見越して、あんな異能力者を揃えるような組織に情報を流していた。
私と、華枝を知るような相手といえば・・・・。

・・・たった一人しか思い当たらない。

もし白の魔女が私を捜し出すために、あの連中を雇っていたのだとしたら・・・。
奴らは、近々私の前に現れるだろう。


そう・・・・。

裏切り者の私を、始末するために。






私に穿たれた呪いの名はゼベイル。
白の魔女の造り出した改造実験体にして、失敗作。

私は風瀬 舞夜。
華枝の作り出した、夜の闇に生を受けたもう一人の人格・・・。


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