第1章第30話「人ならざる者達」


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第1章第30話「人ならざる者達」

作者深優

18:45 白姫邸 談話室

「ひー君、いくらなんでも遅いよ。」

葵は、帰りの遅い弟を心配してか落ち着かない様子で部屋をぐるぐると何度も廻っていた。

「緋色だって子供じゃないんだから・・・全く、落ち着きなさい。」

久遠は、葵を見ながらため息をはきながら、葵をなだめるようにいう。

「落ち着いていられないよ!!探しにいかなきゃ!」

普段温厚な葵には珍しい反応で、なだめようとしていた久遠に、キッと噛み付くようにほえる。
彼女のその反応は多少過保護すぎる反応かもしれないが、一度そのような状況で誘拐に遭い、
さらには謎の失踪事件がおきているこの町では不安が強くなるに決まっていた。

「あなたは自分の立場をお忘れですか?・・・お嬢様もおっしゃいましたが、
落ち着いてください。」

フラウは、音もなく現れてその両手にティーセットを両手に持っていた。

「そんなの関係ないよ!」

葵はその程度の言葉では心に響かないようだった。

「あなた一人が外にでてなんになるというのですか?
・・・今あなたが外に出たら格好の的とされてしまいます。」

フラウは、今にも出て行きそうな葵のウデをつかみ、その小柄な体躯では考えられないほどの力で強引に葵を座らせる。

「けど・・・。」

葵は、幾分冷静になったのかそれでも、納得いかないようだ。

「・・・自分の弟を信じなさい。
緋色は、少なくともそんじょそこらの奴には負けないわよ。」

久遠は、フラウが用意した紅茶を飲みながら苦笑する。

「まあ、確かにお帰りの時刻が遅いのも事実。
・・・ここは本機があたりを見てまいりましょう。
お嬢様達は、こちらでお茶でも飲んでお待ちください。」

フラウは日が傾いて沈みそうなのにかかわらず、かなり大きめな黒い日傘と
小柄な体格には不釣合いな旅行鞄を手にしていた。

「えっ・・・でも・・・一人だけじゃ危ないんじゃ・・・。」

葵は外見的に自分より更に幼いフラウを心配している様子だった。

「心配しなくても大丈夫よ。
フラウは、この町を脅かす化け物なんかにも負けないわよ。」

久遠は、再度紅茶に口を付ける。

「その期待を裏切らぬ様に、行って参ります。」

フラウディアは、ちょこんと頭を下げると、すたすたと屋敷から出て行った。


19:00  裏路地 廃ビル前

普段ならしんしんっと音もしない廃墟ビルは、夜の闇を焦がすような紅の炎に包まれた。
その炎の世界にこの世の物とは思えない異形の物が二つが並んでいた。

それは六つの黄色と黒の縞模様の腕を持ち、六角形の八つの黄色い目をした化け物。

「シュシュシュゥゥゥ」

それは、冷えて固まった溶岩のように黒い体躯に、全身に駆けめぐる血管のような深紅の模様、猛禽類の様な鋭い眼光に、
猛獣の様な牙を生やした凶悪なフォルムに、口からぼたぼたと流れる体液は、コンクリートの地面を易々と穴を開けている。

「ウラァァァァァァァァッ!!!」

それはゼストの変身体は人類の発展したオルフェノクとは似た存在である。
外見的に人工的に作り出したオルフェノクといっても差し支えはない。
ただ、彼らには使徒再生の能力などは存在しない。
彼らも、人工的に作り出された彼らも不安定な存在であり
定期的に投薬をしなければ、その拒絶反応が発生する。
変身体の姿は、その個体によって変化が生じるのがオルフェノクと同じく、
変身した物によって個体差が生じる。

「シュッッ!!!」

蜘蛛の化け物は、緋色が変身した黒い化け物に背中から生えている部分を含め四つの腕で
殴りかかる。

「グラァァァ!」

緋色は、その腕の左右の腕でつかみとり、通常の人間ではあり得ないもう二本の腕を
一本は払い飛ばし、最後の一本はその凶暴な牙で深くかじりついていた。
そしてそのまま、その腕をかみちぎる。

「シュユユユ!!!」

蜘蛛は悲鳴ともいえる声を上げた。


「グラファ!!!!!」」

緋色は、その怯んだ瞬間を見逃すはずもなくその組み合っている腕をあらぬ方向にへし折る。 
ボキッっと生々しい音を立てているのを気にせずに緋色は、蜘蛛の化け物に頭突きをたたき込みそのまま地面にたたきつける。

「スシュッ・・・・シュッ!?」

蜘蛛の化け物は立ち上がろうと顔をあげた瞬間、視界が黒い何かに遮られた刹那
緋色の足が蜘蛛の化け物に振り落とされる。

「シュッ!!!シュッ!!シュッ!・・・・」

その振り落とされる足は、蜘蛛の化けものが戦意を無くし気を失っても変わらない。

「グウゥゥゥゥ・・・・・・ラァァァァッ!!」

緋色は、変身の解けた蜘蛛の化け物であった服を身につけていない少女の頭を鷲掴みにすると、
何の容赦も無く握りつぶし上半身と下半身を無理矢理引きちぎり壁へ叩きつけた。

「ウラァァァァァァァァッ!!!!」

緋色は、その惨状に酔いしれるように咆えた・・・・。



18:45 町郊外

「現状把握・・・・了解。」

フラウディアは、電信柱によじ登り電話線ごと高圧電線に素手で握り、バチバチィと焦げ臭い匂いと共に甲高い音をさせる。
端から見ればただの自殺行為だが、普通では無い彼女にはそれなりに意味があった。
見た目はただの少女だが、彼女は古代文明が残した遺跡の中枢である。
現在は、ヒューマンインターフェースとしてこの身体で動いてはいるものの本来は、
人が決して感知そして入ることのできない電脳世界に住まう住人なのだ。

そして、その彼女は屋敷の帰宅をまだにする同僚とも呼べる人間を捜していた。
その手始めが、この奇行だ。

「レンゲルにギャレン、デルティ・・・その他にも多数のライダーの出現。
それに伴う怪人の出現・・・騒がしい町です。
それに、アトランティカ・・。」

フラウディアは、ふむふむと頷きながら電柱から飛びおりる。
先ほどに説明したとおり、フラウディアの本体はあくまでCPUであり彼女の本来の居場所は電脳世界といっても良い。
そこにかえるためにはどのようなバイパスでも良いのだ。
その世界で短期間の間に、彼女はこの町にある全ての監視カメラにアクセスし、今日一日のその映像記録を入手してきたのだ。
無論、全ての情報のプロテクトを突破する事ができるわけではないが、
少なくてもこの程度のことなら彼女にとって紅茶を淹れることよりもたやすい。
そのことに対し通常の人間では、その様なことをされたことも分からず、
凄腕の人間には、気づいたとしても痕跡を一切残さないのでそれを追うことすらかなわない。
人類が彼女の故郷ともいえる電脳世界に踏みいるまでに至らぬ限り、
世界に還った彼女はある意味この世に敵が存在しないであろう。

「ふむ。また一部の人間にばれましたか・・・
ますます、騎士団とGの彼女達に目を・・・・つけられなけ・・・ますよね。」

フラウディアは、持ち物である黒い日傘と旅行鞄を片手に悪びれもなくうれしそうに言う。
彼女の存在に気づいた者達も、実際に追ってこれる訳ではない。
ただ、あまりにも綺麗にいなくなりすぎる為その様なことができる人間などフラウディアしかいないことに気づくのだ。
それもありフラウディアは多数の二つ名を持ちその一つが「電脳の女神」である。
無論、その二つ名に対してフラウディア自身は気に入っていない。


「・・・おや?」

フラウディアは現在、緋色のいる場所の最短ルートを考えていると人が倒れている事に気づく。
その女性の着る男性向けのスーツは鋭い刃物の様な物で切り裂かれていて血だまりができるほどの夥しい出血をしており意識朦朧だった。

「なるほど、これが「仮面ライダーシキ」の月宮 刹那ですか。
        • 一ノ宮財閥に恩を売るのも良いかもしれません。」

フラウディアは今日一日の情報と一ノ宮財閥を調べた際に出てきた情報である
「一ノ宮薫子がカンケルと呼ばれる存在を追っており、その協力者」と出てきた。
カンケルについては、名前以外の情報は得られなかった。
フラウディアの時代にも名前は存在していたのだが、
フラウディア自身よく分かっていない。
月宮刹那に対しては、情報が操作された形跡があり詳しい事は分からない。

「ふむふむ。年頃の女性にしては余程の経験を積んでいる様ですね。
黒服に露出のない服にこの無数の傷・・・まるでどなたさんかに似ていますね。」

フラウディアは、手慣れた手つきで服を脱がせて的確な止血を行いつつ、
彼女の身体に刻まれた傷を見ながら我が家の執事を思い描く。

「応急処置はこの程度で十分ですね。
後は適切な医療施設に連れて行けば大丈夫でしょう。
・・・・・さて、いい加減鬱陶しいので出てきてください。」

フラウディアは、刹那を服をまた着せ直してから壁によりかかる様に寝かせる。
そして、振り返る動作もせず普段通りの抑揚のない声を上げる。

「「エサダ、エサダ」」
「「アレヲタベレバツヨクナレル。」」


そこには、鋭い牙を口元から生やした二本足でたっている猪、
茶色い羽に人の目のような模様が描かれた人間大の蛾。
そのどれもが血走った様な目でよだれを垂らしながら、フラウディアの言葉を無視して
目の前のえさの味の話を始めていた。

「当機に迎撃の用意あり。
当機及び彼女に危害を加えれば自衛行為に移らせていただきます。」

普通の人間なら悲鳴の一つも上げる所なのだが、銀色の髪を靡かせながら
ぱっちりしたスカイブルーの大きな瞳がきりっと覇気が帯びる。

「「アタマガイイ」」
「「アシカライタダク」」

化け物達はまたもフラウディアの言葉などまるで聞いておらず、
食の算段を始めている。

「オレガイチバン!!!!」

一番のりに飛びつこうとした猪が、フラウディアに向かって突進を始めた。
速度は既に人の領域は超えており車すらぶち抜きそうな勢いだ。
ましてや、人間などたやすくつぶれてしまうだろう。

「勧告は受け入れなかった為に迎撃行動に移行する。」

フラウディアは、避けようともせずに日傘を猪に向かって差した。

「ソンナモノデ・・・オゴッ!オゴッ!!!オゴッ!!!」

猪は、そのままフラウディアごと押しつぶそう気にせずつっこもうとするが、
その瞬間、かつて無いほどの衝撃が自分を襲った。
日傘の先端部分が吹っ飛んだ先には、柄の部分が暴徒鎮圧用散弾銃に偽装していた
フラウディアが引き金を引いたまま銃身の下にあるフォアエンドを引き矢継ぎ早に
三発叩き込んでいた。猪は青白い炎を上げながらもう勢いは失われていた。
その際、「ガチャッ」というけたたましい威嚇音に、ビクッと動けないでいた。

「一つ目。」

フラウディアは、勢いの失った猪に銃床部で顎を的確に振りぬいた。
「ウゴゴッ!!!!」

猪は顎から砕けるような音を立てながら宙に浮かび上がりながら灰に消えた。

「アレヲタベレバ!」

蛾の化け物は、目の前のフラウの頭上を飛び超えようと空に飛び刹那を目指す。

「もっと高く飛ぶべきでしたね。」

フラウは、見上げることなく銃口を上に向けてフォアエンド再度引き、
空になった薬莢を飛ばし、その薬莢が地面にカランっと音を立てた瞬間
再度引き金を引いた。

「!!!!???」

蛾は何が起こったかわからず、バッと自分の左羽を見ると綺麗に下半分が吹き飛んでいた
そしてそのままよろよろと高度を落とし落ちた先、
自分の顎に身を焦がすような熱に戦慄した。

「ヤメッ!!」

蛾はガシャンっと言う音に自分の顎が上下にゆれたの感じる。
そして、懇願するように不安定な姿勢で器用に支えている少女に訴えた。

「二匹目」

フラウディアは、ためらいもなく引き金を引いた。
ガの化け物は、空の薬莢が地面にカランっと音を立てると同時に青い炎と共に灰に消えた。



「盗み見とは、いい趣味ですね。」

フラウディアは、散弾銃を曲がり角に向ける。

「すいません。怖くて足がすくんでいました。」

物陰から出てきたボード学園の制服を着た少年は、両手を上げて出てきた。

「つまらない演技は要りません。・・・それに、これの弾が切れていることも
貴方がこれでは死なないことぐらい察しが着いているのでしょう?エンド」

フラウディアは、淡々とした口調で散弾銃の銃口をおろす。

「僕の名前は一之瀬裕輔です・・・・。「電脳の女神」・・・どうして貴女がここに?」

裕輔はフラウディアに人懐っこい笑みを浮かべながら手を下ろした。

「では、裕輔。私はフラウディア・リヴァーレ。
その質問には・・・夜風に当たりに来ました。・・・貴方は彼女ですか?」

フラウディアはいつもの無表情の顔で銃口を刹那に向ける。

「・・・・・これはあなたが?」

裕輔は、フラウディアの動向をうかがうようにいう。

「応急処置は済ませてあります。適切な医療機関に処置していただければ大丈夫です。」

フラウディアは、銃を下げると旅行かばんを拾い上げる。

「・・・何が目的ですか?」

裕輔は、刹那を背負うといぶかしげな目でフラウディアを見る。

「・・・貴方方に貸しを作っておこうかと思いまして。」

フラウディアはそっけない態度で裕輔を見る。

「・・・わかりました。」

「それでは、ごきげんよう。」

「ええ、さようなら。」

裕輔はフラウディアからきびすを返していった。

「・・・当機も急がねば.・・・。」

フラウディアも裕輔とは逆の道を急いでいった。

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