期待されると答えたくなる性分らしいので、何だか妙に気合いが入った。帰ってから早々、PCの電源も入れずに、即風呂へ入って、即寝た。明日のためにと思った。翌日、目ざましよりも早く目が覚めて出勤したら、すでにトレーナーが来ていた。さっそくシャリを炊いていた。店が開店してしまうと、通常客の注文を優先的に作らなくてはいけないので、朝のうちに注文分の寿司をどれだけ握れるかがポイント。だけど、生ものは時間制限があるので、あまり早くに握っても駄目。用意された6人前のパーティー皿が5枚。そこへ、時間制限のない巻物やネタから握られは詰められていき、大きいパズルを組み立てているようだと思った。
人数が多いし、この大人数で全員取りかかっている仕事は同じ。そうなると、特にみんなの気合いが違う。ただ、もちろん私は嫌われ者なので、私の指揮を無視して勝手に作業を進めるパートさんもいた。だけど、そんなパートさんですら、同じパート同士で注意しあってくれる。「指揮の言う事聞きなさいよ!」と言って、私が指示した持ち場に戻るように注意してくれる。 同じ目標をもって取りかかるのは、良い事だと思った。
5枚のうち、一皿だけは子供用にサビ抜きで注文のはずになっていた。なので、それ通りに指示を進めていたんだけど、ここで注文票を見直して、大きな事に気付いた。子供の人数が、10人以上いる。絶対一皿じゃ足らない。ていうか、昨日まで子供の人数はここまで多くなかった。なんで人数が変わっているんだと思ってみんなに聞いたら、一人影の薄いパートさんが、「さっき電話で追加注文頂いたので、注文票直しました」と言った。 直したなら直したでちゃんと報告してよ!と言ったら、「声かけましたよ」とムスっとした顔で、パートさんは私を睨んできた。多分、作業に夢中でパートさんの声を聞いていなかったんだと思う。 もう一枚5人前のさび抜き寿司を作るには時間もぎりぎり過ぎるし、何よりまた予算が変わってしまう。人数は増えたのに予算は変わらないらしいので、下手したら一からやり直しになるかもしれない。
困ったのでトレーナーに助けを求めたら、トレーナーは「今日の指揮はあんたでしょ」と言った。あれだけ本社で企画案提出したんだから、その頭をひねりなさいと言われた。 あまりの無茶ぶりに、イライラしたのでこっそりウニを大量につまみ食いしてやったけど、でも、トレーナーの言う通り、ここで私が何とかしないと、どうにもならない。 でも、また一から電卓をたたき直す時間もない。奥で一人頭を抱えていたら、トレーナーが、「うちで一番安い寿司は何?」と聞いてきた。「イカとタコですね」「じゃあ、イカとタコよりも安いものは何?」「ないですね」「なくないでしょ、“握り”のイカとタコよりも安いもの、あるでしょ」少ない脳味噌をフルに使えと言われたて、考えた。だけどやっぱり何も思い浮かばない。というか、イカとタコと戦友関係をつくりあげすぎて、今更イカとタコよりも下の存在が思いつかなかった。
云々うなっていた私の頭から煙が噴き出ていたんだろう。トレーナーは、コップに水をついで差し出してくれて、メニュー表を持ってきてくれた。「6人前の皿を埋めるには何カン必要?」「55カンっすね、握りだけで」「55カンも握れないなら、どうすればいいのよ」「…あぁ、」「うちで一番安い一人前寿司は、どうやって皿を埋めてるの?」「巻物ですね」なら、さっさと巻いてこいと言われて、尻を叩かれた。巻物の材料、特に子供が好きな卵やかっぱ巻きや納豆は、原価がほとんどかからない。原価高めの鉄火巻きをいれるにしても、巻物にしてしまえば、握りを5カン並べる所が1本の巻物で埋まるんだよ。 慌てて巻物作り始めた私は、もくもくととにかく安くて、ガキが好きそうなネタを選んだ。たまご、きゅうり、鉄火、納豆。あと、おしんこ。一番安いイカ握りで皿を埋めるより、その半分の値段で一枚皿が埋まった。かなりすかすかだったけど、巻物の良い所は、すかすかでも並べ方一つでたくさん入っているように見える所だね。
出来あがった合計6皿の寿司値段を計算したら、やっぱり無理に増やした巻物のせいで若干予算はオーバーしていた。だけど、まだまだ黒字が出るレベルだ。6皿目最後の皿にガリを詰めて、ふたをしてから、厨房の人間の間でどっと拍手が沸いた。お疲れ様、と言い合っているパートさんをしり目に、とりあえず終わった事にほっとして、座り込んだ。浅見さんが、「あんたの巻物提案、凄く良かったよ。お疲れ様」と言って、ジュースを買ってくれた。あの提案はトレーナー発案なのにと思って言おうとしたら、トレーナーが「黙っておけ」という顔をした。帰り際に、トレーナーは「職場って良いでしょ」と聞いてきた。「みんなで何かやり遂げるのは良いですね」と返したら、「あんたにもそれを分かってほしかった」良かった、あんたの小さい頭でも理解できたかwwwwと笑っていた。この一件で、ただ漠然と、この店にずっといたいなと思った。
パートのおばちゃんはむかつくし、レジに出ても客から怒られるし、ただ寿司が好きなだけの人だけど、でも寿司が好きというか、この店が好きなんだと改めて思った。 だから勤めたいし、これからもいたいと思ったので、母ちゃんにそれを伝えた。「社員になろうと思う」と言ったら、母ちゃんは「それは、自分の意思で決めた事?」と聞いてきた。なので、「私の意思だ」と言ったら、「よし!ならやりなさい」と母ちゃんは言った。 勤めるからには、やめるなとは言わないが、全力をつくせと言われた。「あんたの人生のフィールドが、○○寿司になれるように母ちゃんは応援する」とも言ってくれた。そんなに重大な事を決めた意識がなくて、母ちゃんの言葉がピンとこなかったけど、それでも何か「偉い偉い」と褒めてもらえたので、嬉しいからまぁいいかと思った。
これが私が社員になるまでのいきさつ。そして、実はこんな中途半端で申し訳ないが、もう他にネタがない。なので、尻切れトンボのようで申し訳ないけど、事実上これで話はおしまいです。何か聞きたい事とか、これはどうなったんだよ?的な事があれば言ってくれれば書きます。
もっと小説のような感動的ラストを想像してた人すみません。私の話のピークは、母ちゃんが部長昇進した所です。ほんとすみません。
>>717
してます。寿司屋で働きながら、衣装作りをしてます。前に営業電話をかけていましたが、あれは衣装をオーダーしてくれた人との打ち合わせ電話です。
>>720
>>721>>722参照
>>723食べてない。名倉は数年たって、大学生になった今でも握りはへたくそなので高いネタは与えられない。>>724うーん、今は常連客オンリーの衣装オーダーしかしてない。新規客の申し込み受付もしてない。ので、答えとしてはNO。創作欲求は、あるっちゃあるけど、文字も絵も書けないので、形にする術がないのが本音かね>>728習ってる。あ、ちなみに母ちゃんとオヤジ再婚が決まったんだった。それで興奮してVIPにスレ立てした事を今思いだした。まぁ、再婚といってもまだ口約束で、一緒に住んだりもしてないけどね。
>>731ううん、今も部長止まり。むしろ部長までの道のりがトントン拍子過ぎたんだと思うと母ちゃんが言ってた。>>732カバと一緒にうんこしてよって話?>>735してます。今でもキリストオーラ全快です。ついでに最近あいつはおほめの言葉をもらっていました。>>736寿司が食べれればいいかな、という気持ちのままだな。仕事がきついとは思わないけど、やっぱそれでもたまにフラっと休みたくなる時もある。そういう時はVIPでスレ立ててストレス発散してる。>>737兄は結婚したし、妹は立派に進学高校へ入学。父母の再婚も決まって、円満なのではないでしょうか。>>738ないので今も現在進行形で戦っている。>>739書いてないな。>>740^^
>>744衣装にもよるけど、大体平均して一着の取り分1万~だな。>>746どうなったとは?オヤジはもうとっくに自己破産して、弁護士に債務整理頼んでて、弁護士費用の分割もすでに終わってる>>747妹JK兄は結婚>>751分からない。正直、全然変わっていないとは思うけど、周りいわく変わったらしい。
じゃあまぁこんな所で。またきっと、VIPにスレ立てすると思うから、クズ子だって事はあかさないけど、またどこかで会えたらいいなと。
質問には最後まで答える>>770貯金はしてる。今はひらめ貯金してるところ。>>773あるっちゃあるけど、ないっちゃない。>>774来てどうするんだよwwww
wiki厨最後までありがとうございました。みんなもありがとうございました。一人でも多くの人が、うんこモリモリしますように。うちの母ちゃん凄いぞ 完
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。
下から選んでください: