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109名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 04:47:46.04 ID:Ax0QvrS80

引っ越し先のマンションは、とにかく綺麗だった。
先にも言ったが、自分の母ちゃんはクレヨンしんちゃんのみさえみたいな母ちゃんだからな、想像つくと思うが、とにかく見栄っ張りなんだよ。
収入が増えたら増えたで、安い長屋とかに住んで金貯めて家買えばいいのに、「汚い家はいやだ!」(長屋住まいごめんな)とか言ってとにかく綺麗な暮らしをしたがる。

母ちゃんが凄いのはここから。
綺麗な暮らしをしたがればしたがるほど、もちろんお金もかかってくるだろ。
「お金がないなら稼げばいいのよ!」とか言って、訳わからん資格の勉強をしたり、たかが主任なのに社長に直々「会社をよくするため」とかいって企業改革提案をしたり。
働いて、家事して、おもらしが止まらない妹を病院へ連れていって、勉強して。一体いつ寝てるんだろう、と。相変わらずニートをしながら、母ちゃんを見て思っていた。

 

 

116名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 04:52:26.83 ID:Ax0QvrS80

そんな母ちゃんを見て、高校卒業まじかの兄は高校卒業したらすぐ働いて母ちゃんを助けるといった。
母ちゃんは、ガリガリに痩せた顔でもまっすぐな笑顔で、「お前(兄)が大学出るだけのお金はもう貯まってるから、進学しなさいよ」と言ってた。
兄はなぜかぼろぼろ泣いてて、母ちゃんにお礼を言ってたけど、自分の事で手いっぱい(笑)なニートな自分は、なぜ兄が泣いてて、なぜ母ちゃんが笑顔なのかよく分からなかった。マジで。

 

 

122名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 04:57:00.23 ID:Ax0QvrS80

だけど結局、進学をやめてフリーターになった兄。就職しなかった理由をつい最近話してくれたが、どうやらまだ当時父親の借金で両親が離婚している、という事実は就職活動で不利だったらしく、思っていた職につけなかったからと言っていた。
アルバイトで稼ぎながら、母ちゃんにお金を入れている兄をみて「偉いなぁ」とは思いつつも、自分も働いて母ちゃんを助けようという意識は皆無だった自分。
そして、母ちゃんの仕事が忙しくなるにつれて酷くなる妹のおもらし。ついには小学校へ投稿しなくなり、毎日毎日、ニートの自分と一緒にポケモンをして時間を潰すようになっていった。

 

 

132名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:03:08.21 ID:Ax0QvrS80

長文が規制できえた

がっかり

 

 

137名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:06:01.59 ID:Ax0QvrS80

規制に負けず頑張る


アルバイトをしながら稼いだお金を母ちゃんへ渡す兄を見て、えらいなぁと思いながらも自分は何もしようとは思わなかった。
そしてその頃になると、母ちゃんは現場責任者の仕事もしてほしいと言われていたようで、フォークリフトの動かし方から、専門的な機材の動かし方まで、日々勉強していたようだった。

 

 

142名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:09:53.58 ID:Ax0QvrS80

当時の母ちゃんの一日。

朝5時起床。
不登校の妹と、ニートの私、そして兄のために朝食と昼食を作り、自分の弁当を作る。

昼休み12時頃必ず帰宅。
妹と自分と一緒に弁当を食べる。
食べてすぐ会社に戻る。

夜9時頃帰宅。
家事、夕食作り。

その後勉強。
深夜起床。

そんな生活だったが、母ちゃんが弱音をはいた事はない。今でも、別に当時の生活はつらくなかったと言い張る。

 

 

146名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:12:32.96 ID:Ax0QvrS80

妹のおもらしが酷くなり、不登校が数カ月続くと自然と妹の通院日数も増えてくる。
ついに現場責任者となった母ちゃんは仕事を抜け出す訳にもいかず、唯一の休憩時間を使って妹を病院へ連れていく日々を送ってた。
お前ニートなんだからお前が病院へ連れていけよ、と思うだろ?あぁ、今ならそう思うが、当時はそんな考えは微塵もなかったな。
ただ、母ちゃんは大変だぁって思いしかなかった。

 

 

153名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:15:57.75 ID:Ax0QvrS80

だけどある日、母ちゃんが夜中にせき込んでるのを聞いた。
ただの風邪だ、と言い張るけど、どう考えても顔真っ赤だし、声はがらがらだし、体は鶏がらみたいだし、悪い病気の人みたいな風貌。
「お前が頑張って“社会へ戻る勉強”が出来るように、母ちゃん頑張らなきゃいけないから、こんな事でへこたれてられない」とか言って、
難しい本をひたすら読んでなんかノートを書いてた母ちゃん。

その姿を見て、ちょっとだけ心が揺らいだ。

 

 

158名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:19:31.24 ID:Ax0QvrS80

先にいっておくが、どらまちっくな展開とか、母ちゃん死んじゃうかもとかそんなオチはないぞ



心が揺らいだけど、何をしていいかよく分からなかった自分。
いや、働けよと思うが、働こうという意思は皆無だったからなぁ。家事もやり方なんぞ分からないし、料理だって出来ない。
さてどうしよう、と思って、何もしなくていいか、とは思いつつ。だけどなんか揺らいだこの気持ちを形に残したいと思った自分。
一日妹とポケモンしながら考えてた所、テレビである特集をしていた。

 

 

167名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:23:48.51 ID:Ax0QvrS80

疲れた体には甘い物が一番!みたいな特集で、家庭で簡単に出来るお菓子作り!みたいなワイドショーにありがちなテレビのワンコーナーだった。
プリン作りの特集で、美味そう…と思った自分は、卵と砂糖と牛乳というシンプルな材料で作れるそのお菓子を作ってみたくなった。
あ、言っておくけど、別に母ちゃんに作ってあげようと思ったわけじゃない。
ただ、なんかエネルギーがわいて、美味しいプリン作れたら、なんか自分、変われるかも!みたいな、何の根拠もないやってみよう精神だけだったけどな。
きっと、このなんかとりあえずやってみようかな精神は、ニート経験者なら分かってくれると思う。

 

 

169名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:27:27.62 ID:Ax0QvrS80

相変わらずおむつをつけたままの妹と一緒に、プリン作りを始めた自分。
プリンが好きな妹から、「出来たらひとつちょうだい」と可愛くおねだりされたから、自分の分と妹の分、合計二つつくろうと思った。
プリンの型なんかないから、どんぶりを代用して作ったプリン。蒸し器に入れてから、あとは出来あがったプリンを冷蔵庫に入れるだけ
となった所で、強い強い達成感から睡魔が襲ってきた。

何とか蒸し終えたプリンを冷蔵庫に入れて、妹と二人、ソファーで昼寝をした。

 

 

180名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:30:58.26 ID:Ax0QvrS80

目が覚めたらすっかり夜で、隣で寝てたはずの妹がいなかった。
寝ぼけた頭で妹を探したら、キッチンで母ちゃんと一緒に、妹はいた。

自分は目が悪いので、眼鏡をかけない状況で視界がぼやけていたけど、これだけは分かった。母ちゃんが、声を上げて泣いていた。
母ちゃんの泣き声に驚いて、慌てて眼鏡をかけてキッチンへ向かうと、どんぶりに入ったプリンを食べながら、母ちゃんがぼろぼろに泣いてた。

 

 

189名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日:2009/04/16(木) 05:36:04.82 ID:Ax0QvrS80

オムツをつけた妹が、「お姉ちゃん、おはよう」と笑って、「私、食べきれなかったからお母さんにプリン半分だけたの。お姉ちゃんの分はちゃんと冷蔵庫にあるよ」と言った。
なんで妹のプリンを食べながら母ちゃんが泣いてるのかよく分からない。だから、どうして泣いているのか母ちゃんに聞いたら、おいおい泣きながら母ちゃんは言った。
「疲れた時には甘い物がいいて…テレビで見て、母ちゃんのために作ってくれたんだろ?」

いや、ちげーよ。私はプリンを腹いっぱい食いたくて自分のために作ったんだよ

とはさすがに言えない空気で、とりあえず頷いておいた自分。
泣く母ちゃんの後ろで、おむつをつけた妹が嬉しそうに笑っていた。

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最終更新:2009年04月27日 09:17
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