第4話 神経磨耗のデスステージ

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*神経磨耗のデスステージ  とりあえず会長は気が済んだのか、自分の部屋へと帰っていった。  去り際に「今日は面白いものを見せてやる」とか言っていたけど嫌な気しかしないのはなぜだろう。    それ以前に、今日すでに散々面白い(?)ものを見た気がする。凄いといった方がいいけど。 「あの会長様なにしてくれんだろーな」 「さあ?」 「劇でもやるんじゃねえか?」 「うーん」  なにかやるとしたら恐らく食堂だろう。  となると劇はないんじゃない、と否定的な見方をしてみた。 「正解だと思ったのによ」  少し落ち込む笠置君。  まぁ、あの人の腹の中を読めたら相当楽しいだろうけど。その前に神経衰弱にかかりそうだ。 「なんで飲み物飲んでるのさ」 「喉渇いたから」  いつの間にかソファーに腰掛けて、500のペットボトルを飲んでる炎村さん。  いくらなんでも人の部屋の冷蔵庫勝手に開けるのはダメだろう。  注意してみた。 「いいじゃん、たくさんあんだし」  ダメだった。見たら笠置君も飲み始めてる。 「もう部屋に戻りなよ」  こういうしかない。 「じゃ、最後に大富豪一回やろうぜ」 「やだ」 「なんで」 「絶対に自分が勝つまでやりそうだから。二人とも」  そうなると終わらないのは目に見えている。 「分かったよ」  割とあっさり引き下がった。もっと粘るかと思ったけど。 「んじゃ、夕食の時になー」 「わかった」  皆が自分の部屋に帰ったので、ソファーに腰掛ける。   「ちょっと疲れたな」  横になって眠るともなくウトウトしていた。  しばらくして思考がハッキリした。  寝ていたらしい。 「あ、もう夕食の時間に近いや」  夕食は6時30分からで、今は15分である。 「笠置君の部屋に行くか」  そう思い立った時。    コンコン。  ノックする音が聞こえてきた。 「おう、俺だよ」  頭に浮かんできたときにすでにやってきてるとはどういうご都合主義だろうか。  炎村さんもいる。 「んじゃ、食堂行こうぜ」  エレベーターで1階に降りる。  途中新入生の好奇の視線が痛かった。 「そんな気にスンナよ」 「そうそう」 「二人とも他人事だと思って」  これはかなり恥ずかしい。  食堂もやはりバカでかかった。  さすがに800人分の座席がある食堂だ。  まだ10分前だけど結構な人がすでに来てた。  ついでにそのほとんどが好奇の視線をこちらに向けていた。 「お、シャンデリアまであるなー。アタシの家にもほしいぜ」 「入れるスペースあるの?」 「・・・ない」  それじゃ無理だ。  空いているテーブルに座る。やはり視線が痛い。  テーブルにおいてあるメニューに集中する。  メニューも高そうなのばかりだ。食堂までタダなのが信じられない。  何にしようか。 「アタシはステーキ定食でいいか」 「俺は刺身定食」  高そうなの頼んでる。俺は・・・生姜焼き定食にしよう。  タダなんだけどな。なんだか気が引ける。  ウェイターさんが注文を聞きにくる。  それぞれ注文を告げる。 「かしこまりました」  ウェイターさんが戻っていくのをみながら、 「お前随分庶民的だな。贅沢すればいいのに」 「贅沢はたまにでいいんだ」 「入学式の日は贅沢するべきだと思うけどな」 「今日は疲れたんだ」 「さっきからそればっかだな」 「仕方ないだろ」  テーブルに思いっきりうっつぷす。  同時に、ホールが暗くなる。  まさか。 「諸君!改めて歓迎しよう!素晴らしいイベントを始めるぞ!」  響き渡る会長の声に沸き立つ新入生。沈む俺。  絶対何かある。  嫌な予感しかしない。 「さて、今日はバンドでやってきたわけだが、この俺の前に、鵜飼護を特別ゲストとして歌わせよう!」  あぁ、やはり。今度は歌わなきゃいけないのか。 「いいぞ、いいぞ、護!」 「何を歌うか知らんが頑張れよ!」  くそぅ、他人事だからって。  とりあえず執行部メンバーのほうへ行く。また拍手と視線が集中する。もうヤダ。 「鵜飼。貴様が歌うのはこいつだ」  いきなり演奏が始まる。  この前奏は確か・・・「たしかなこと」だったかな。  しかし、あの歌詞をこんな大勢の前でやるのは恥ずかしいぞ。  正直あんな高い音は出せないので、原曲より低めの音で歌う。  歌っているうちにあの部分がやってきた。  君にまだ 言葉にして 伝えてないことがあるんだ  それはずっと 出会った日から 君を 愛しているということ  フルだったからまだ歌う。  恥ずかしかった。だめだ。一瞬自殺なんて選択肢がよぎった。少し休もう。 「フム。なかなかよかったぞ」  あ、褒めてくれた。うれしい。 「諸君、余興は終わった!」  盛大に叫ぶ会長。あ、由紀先輩もいる。二人でヴォーカルなのか。 「俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!」  その一言に盛り上がりが最高潮になる会場。  デュエットだからあの由紀先輩も歌ってる。二人とも上手だな。  しっかし、俺の知らない曲だ。  由紀先輩がこんな曲歌うとは思わなかった。  選曲は会長だろうけど。  ともかく、周りのボルテージはマックスだ。  どうやら最後のサビに入ったみたいだ。  TRY AGAIN! TRY AGAIN!  明日が待ってるさああああアアアアアアアアアアアア!  最後のシャウトとともに曲が終わる。  相変わらずなんでもできるんだな。この人。  歌い終わってこっちに会長が来る。一言。 「なんだ、まだいたのか。戻っていてよかったぞ」  無駄にここに残っていた。必要はなかったらしい。もう涙が出てくる。  で、席に戻ろうとすると待て、と呼び止められた。  どっちなんだ。いったいどっちなんだ。 「明日は真っ直ぐ生徒会室に来い」 「分かりました」  はじめてまともなこと言われた気がする。いや、朝っぱらからだからやはり無茶苦茶か。  今日一日疲れることしかない。  席に戻るのをやめて部屋に戻る。  風呂にはいる。  そして寝た。  

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