2007F1日本グランプリ被害者の会(事務局)


2007F1日本グランプリ被害者の会(事務局)
http://www.fujispeedway.info/

入会申込み・裁判への参加
http://form1.fc2.com/form/?id=310883
2007年富士スピードウェイ(以下FSW)で開催されたF1日本グランプリを観戦し、精神的苦痛等の被害を受けた方を対象として「2007F1日本グランプリ被害者の会」を発足しました。

参加希望の方は、下記リンク先のフォームから入会することが出来ます。入会・会費は無料です。なお、2007F1日本グランプリ被害者の会に参加されても、訴訟の原告として参加するためには別途書類による申し込み手続き、所定費用が必要となります。


訴状・答弁書・意見陳述書の公開
http://www.fujispeedway.info/2007f1gp/2008/08/post_10.html

8月5日に行われた口頭弁論における、訴状、答弁書、意見陳述の内容について一般公開しま


訴状(当2007F1日本グランプリ訴訟原告団、弁護団による訴え)
http://www.fujispeedway.info/2007f1gp/2008/08/post_9.html
6月16日、東京地方裁判所にて富士スピードウェイに対して訴えを起こしました。その訴状を公開します。
(公開にあたって個人情報保護など一部修正を行っておりますが、ほぼ原文のまま)


訴状       

平成20年6月16日
東京地方裁判所民事部御中

原告ら訴訟代理人                   
弁護士      栄枝明典          
同                          
弁護士      石井尚子          
同                          
弁護士      内山浩人          
同                          
弁護士      江川勝一          




当事者  別紙当事者目録記載のとおり


損害賠償請求事件
 訴訟物の価額 3197万円
 ちょう用印紙額 11万6000円


第1 請求の趣旨

1 被告は,別紙「請求債権一覧表」記載の各原告に対し,同表記載の当該「原告氏名」欄に対応する「請求債権額」欄記載の金員及びこれに対する平成19年9月30日から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え

2 訴訟費用は被告の負担とする
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

第2 請求の原因
1 当事者

(1) 被告は,レース場の経営等を目的とする会社であり,2007年9月28日,同月29日,同月30日に静岡県駿東郡小山町中日向694番地に所在する富士スピードウェイ(以下,「本件会場」という。)で開催された2007FIA F1世界選手権フジテレビジョン日本グランプリレース(以下,「本件F1グランプリ」という。)の主催者である(甲1号証)。

(2) 原告らは,いずれも,被告が発行した有価証券たる本件F1グランプリのチケットを2007年9月27日までに取得し,所持していた者であり,本件会場で開催された本件F1グランプリを観戦しに行った者である(甲2号証,なお甲2号証の枝番は当事者目録中の原告番号と一致する)。

2 債務不履行責任

(1) 被告の義務
被告は,本件F1グランプリの主催者として,本件F1グランプリのチケットを基に観戦を求める者に対し,本件F1グランプリの主たるイベントであるF1カーによるレース(フリー走行,予選,決勝)やその他各種イベント等を観戦させる義務を負っていた。
また,被告は,本件F1グランプリ開催にあたり,本件会場の外にある被告が指定した鉄道の駅又は駐車場付近に用意されたシャトルバス乗り場(以下,「アクセスポイント」という。)と本件会場の間でシャトルバスを運行させたのであり,被告は,各アクセスポイントと本件会場の間のシャトルバスの運行・管理を適切に行い,チケット所持者に不測の損害が生じないようにする義務を負っていた。
特に,被告は,チケット購入時に購入者が利用すべきアクセスポイントを指定した上,被告が運行・管理するシャトルバス以外での本件会場への入出場を全面的に禁止する方式(以下,「チケット&ライドシステム」という。)を採用した。その結果,原告らチケット所持者は,被告の運行・管理するシャトルバスを利用せざるを得なかったのであるから,シャトルバスの運行・管理に際し被告に課された義務は一層重いものであった。
これ以外に,被告は,主催者として,本件F1グランプリのイベント全体の運営につき,会場内の誘導や混乱防止措置,トイレ・売店等の設備の設置なども含めた適切な観戦環境を提供する義務等も負っていた。

(2) 被告の義務違反
被告は,上記義務を負っていたにも関わらず,本件F1グランプリ2日目及び3日目において,各アクセスポイントから本件会場へ向かうシャトルバスを適切に運行・管理せず,本件会場周辺で大渋滞を発生させた。これにより,原告らは,本件会場への到着が大幅に遅れた。
会場内においても,被告による誘導が不十分,不適切であったため,会場内も座席に向かう人の波で大混乱となり,ようやく会場に到着しても,座席までたどり着けずレース等の観戦に遅れる者も多数いた。
上記シャトルバスの遅れ及び会場内の混乱により,原告らは,レースやイベントの全部や一部を観戦することができなかった。
また,帰路においては,被告がシャトルバスを適切に運行・管理しなかったことに加えて,観客の誘導すら十分に行わなかったことにより,帰りのシャトルバス乗り場も大混乱となり,原告らが,被告から指定された乗り場番号の列に並ぼうにも,並ぶべき列さえ分からない状態であった。ようやく列を見つけて並んでもシャトルバスが来ず,シャトルバス待ちのために長時間待たされる状態であった。また,シャトルバスに乗ってからも,シャトルバスによる渋滞が原因で,各アクセスポイントにたどり着くまで長い時間がかかった。
さらに,被告は,原告らをアクセスポイントやシャトルバス乗り場にて長時間待たせたにもかかわらず,十分な数のトイレ,売店,救護室等の設備を用意しなかったことから,シャトルバスの到着を待つ原告らに著しい苦痛を与えた。

3 不法行為責任
上記被告の義務違反は,チケット所持者の観戦する権利やシャトルバスにて適切に搬送される権利等を著しく侵害するものである。上記権利侵害は,被告のずさんな運営・管理によることは前記のとおりであり,少なくとも被告に運営・管理上の過失があったことは明らかでる。
したがって,被告の上記義務違反は不法行為にも該当する。

4 損害の発生および額
上記の債務不履行又は不法行為によって,原告らは以下のとおりの損害を被った。

(1) チケット金額相当額の損害
被告による上記シャトルバスのずさんな運行・管理,会場内での不適切な観客誘導等により,原告らは,本件F1グランプリの各レース及びイベントの全部又は一部を見ることが出来なかった。また,29日の混雑状況をみて,30日の観戦を諦めた者さえいた。
さらには,上記シャトルバスのずさんな運行・管理により,原告らは,シャトルバスにて,適切に搬送されるという利益を奪われた。
つまり,原告らは,チケット所持者が当然に受けるべきレース等の観戦及びシャトルバスでの搬送の利益について,そのほとんどを受けることができなかったのであり,各原告は,別紙当事者目録の「チケット代」欄に記載された各チケット代相当額の損害が発生している。

(2) 慰謝料
本件F1グランプリは,世界最高峰のモータースポーツであるF1グランプリの,2007年における国内での唯一の開催レースであった。
原告らは,本件F1グランプリの観戦を心より楽しみにしていたのである。
ところが,被告による上記シャトルバスのずさんな運行・管理や,会場内での不適切な観客誘導等により,原告らは,本件F1グランプリの決勝レース,その他レースやイベントの多くを観戦できなかったのであり,その精神的苦痛は計り知れないものがある。
また,原告らは,常軌を逸するほどの長時間,シャトルバスの到着を待たされており,また,乗車後も会場周辺のシャトルバス渋滞に巻き込まれる等による精神的苦痛も負っている。
とくに,会場から帰る際のシャトルバス乗り場においては,雨の降る寒い中,売店すらない場所で,野外で長時間待たされることによって,体調を崩す者,救急車で運ばれる者,トイレの数が絶対的に不足していたことより野外での排尿を余儀なくされる者もいた。日没後は一層冷え込み,照明もほとんどない暗い中で,いつ来るとも分からないシャトルバスの到着を待ち続けなければならなかった。このように原告らは過酷な状況におかれ,その精神的苦痛は甚大であった。
これらの精神的苦痛は,各原告によって異なるものの,あえて金額に換算すれば,20万円を下る者はいない。

(3) 弁護士費用
5万円。

5 よって,各原告は,被告に対し,①上記義務違反に基づく損害賠償請求として,別紙当事者目録の「チケット代」欄記載の各チケット代及び25万円の合計額並びにこれに対する本訴状送達の翌日から支払済みまで,商法所定の年6分の割合による遅延損害金の支払い,又は,②不法行為に基づく損害賠償請求権として,別紙当事者目録の「チケット代」欄記載の各チケット代及び25万円の合計額並びにこれに対する平成19年9月30日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第3 本件の経緯
1 本件F1グランプリの開催

(1) F1グランプリとは
F1グランプリとは,国際自動車連盟(FIA)の統括するフォーミュラ格式のレースの最高峰である。F1グランプリは,世界各国を転戦し,各レースごとの順位によって与えられる点数(チャンピオンシップ・ポイント)の総計によってチャンピオンを決定する。
2007年のF1グランプリは,全17戦開催され,各レース延べ数十万人の観客が動員され,また,世界約200カ国でテレビ放映され,年間で延べ530億人が視聴しているスポーツイベントである。

(2) 基本的な競技の進行
F1グランプリは,原則として,金曜日にフリー走行(練習走行)が行われ,土曜日の午後に予選レースが開催され,予選レースのタイムによって,決勝レースのスタート時の整列順が決定される。日曜日の午後に行われる決勝レースは,原則的に距離305キロメートルを超える最も短い周回数で,その優劣が争われる。なお,決勝レースは2時間を超えた場合は,その周回で打ち切られる。

(3) 日本での開催
F1グランプリは,日本では,1976年,1977年及び2007年に静岡県の富士スピードウェイ(本件会場)で開催され,1987年から2006年にかけては,三重県の鈴鹿サーキットで開催されている。(なお,1994年,1995年には,パシフィックグランプリという名で,岡山県の英田サーキットで開催されている。)

(4) 鈴鹿サーキット
前述したように,三重県の鈴鹿サーキットでは,1987年から2006年までの間20年間F1グランプリが開催されたが,サーキットや関係者の努力により,概ね円滑な運営がなされていた。
なお,鈴鹿サーキットで開催されたF1グランプリでは,後述する「チケット&ライドシステム」は採用されていなかった。したがって,観客は,来場方法について自由に選択することができた。例えば,自家用車やバイクで来場する者もいれば,電車,バス等の公共交通機関で来場する者もいた。
また,鈴鹿では,開催日前より来場し,会場内に24時間滞在したり,会場の側にテントを張って夜を明かしたり,車中で宿泊するなど,滞在方法を自由に選ぶことができた。しかし,富士スピードウェイでは,開催日前に来場することや,会場内に滞在することも許されなかった。

(5) 富士スピードウェイ(本件会場)
被告は,2006年3月24日,フォーミュラ・ワン世界選手権(F1グランプリ)の開催権利等を管理するフォーミュラ・ワン・アドミニストレーション(会長:バーニー・エクレストン氏)との間で,本件F1グランプリを富士スピードウェイで開催することで合意したと発表した(甲3号証)。
被告は,2007年のF1グランプリ第15戦として,9月28日から30日にかけて,本件会場で本件F1グランプリを開催した。F1グランプリが本件会場で行われるのは,1977年以来30年ぶり3回目であり,被告がF1グランプリを主催するのは初めてであった。
F1グランプリは,各レース延べ数十万人観客の来場が見込まれる大規模な国際大会であり,本件F1グランプリにおいても,決勝戦14万人,開催3日間で延べ28万人の来場が予測されていた(甲4号証の1,2)。

2 チケット&ライドシステムの採用
本件F1グランプリ開催に際して,被告は,チケット&ライドシステムを採用した。チケット&ライドシステムとは,本件会場周辺の道路に交通規制を行い,一般観客(バスツアー参加者を除く。以下同様。)が,乗用車,バイク,徒歩,自転車等で本件会場内へ入場することを全面禁止し,一般観客の本件会場への入退場を被告が運行・管理するシャトルバスのみに制限する方式である。したがって,本件F1グランプリにおいて,一般観客が本件会場に行くには,

(1) 鉄道で被告が指定した駅まで行き,同駅付近に用意されたアクセスポイントからシャトルバスを利用する

(2) 乗用車又はバイクで被告が指定した駐車場まで行き,同駐車場付近に用意されたアクセスポイントからシャトルバスを利用する。
のいずれかを選択せざるを得なかった。
また,一般観客は,チケット購入申込時に,席種の希望とともに,鉄道指定駅7カ所(新松田駅,大雄山駅,駿河小山駅,御殿場駅,三島駅,新富士駅,富士急ハイランド駅),場外駐車場指定エリア10カ所(東富士,裾野,富士山,滝ヶ原,沼津,須走,北富士,河口湖,山中湖,山北),バイク駐車場1カ所の合計18カ所の中から,第3希望までを記載して申し込み,被告が,個々の観客の利用する駅又は駐車場を決定した(必然的にアクセスポイントも決定される)。したがって,一般観客が利用すべきアクセスポイントは,最終的には被告が全て決定した(甲5号証の2,8頁ないし12頁)。
なお,被告は,チケット購入申し込みに際し,駐車場の駐車券をも合わせて申し込むこととした。
チケットには,被告から指定された駅又は駐車場が明記されており,一般観客はそこにあるアクセスポイント以外からシャトルバスを利用することはできないことになっていた。
原告らも,一般観客として,各々被告から指定されたアクセスポイントからシャトルバスを利用して,本件会場に向かうことになっていた(甲5号証の2,13頁ないし32頁)。

3 本件F1グランプリの開催日程
(1) 2007年9月28日,同月29日,同月30日に富士スピードウェイ(本件会場)において,本件F1グランプリが開催された。被告が発表した開催日程は以下のとおりである(甲6号証,5頁)。

(2) 9月28日(金曜日)
8:50~9:20   ネッツカップヴィッツレース フリー走行
10:00~11:30 F1フリー走行1回目
11:55~12:25 ポルシェカレラカップジャパン フリー走行
14:00~15:30 F1フリー走行2回目
16:00~16:30 ポルシェカレラカップジャパン 公式予選

(3) 9月29日(土曜日)
9:30~10:00  ネッツカップヴィッツレース 公式予選
11:00~12:00 F1土曜フリー走行
14:00~15:00 F1公式予選
15:30~16:00 ポルシェカレラカップジャパン 決勝(1)/10周

(4) 9月30日(日曜日)
9:30~10:00  ネッツカップヴィッツレース決勝/8周
10:30~11:00 ポルシェカレラカップジャパン 決勝(2)/10周
12:00~      ドライバーズパレード
13:30~      FIA F1世界選手権 
           フジテレビジョン 日本グランプリレース決勝/67周
16:00~      チャリティオークション

4 本件F1グランプリ初日(9月28日)の状況
初日の28日は,平日ということもあり,観客が少なかったが,一部ですでにシャトルバス渋滞が発生していた。

5 本件F1グランプリ2日目(9月29日)の状況
(1) 本件会場へ向かう際の混雑,混乱

ア 本件F1グランプリ2日目,観客らは,各々指定されたアクセスポイントからシャトルバスで本件会場へ向かおうとしたが,アクセスポイントには,朝から行列ができており,シャトルバスに乗車するにも長時間待たなければならなかった。
また,被告が事前に告知していたシャトルバスの運行時刻表には,午前5時15分から午後0時30分までの間,5分から30分ごとにシャトルバスが運行されることになっていた(甲5号証の2,14頁ないし32頁)。ところが,実際は,この運行予定から大幅に遅れてシャトルバスは運行されていた。

イ シャトルバスに乗車してからも,混雑は続いた。
被告のシャトルバス運行計画では,場外18エリアに存在する各アクセスポイントから,本件会場の東西2カ所しかないゲートをめがけ,10万人近い観客が1時間あたり数百台,延べにして数千台のシャトルバスで向かうことになり,本件会場周辺の道路では大渋滞が起こり,本件会場が近づくにつれ,シャトルバスが全く動かない状態となり,中には,2時間半乗ってもシャトルバスがゲートに到着しないため途中でシャトルバスを降りて走って会場に向かう者もいた。
チケット販売時には,被告から,シャトルバスの所要時間は,最も遠い三島駅のアクセスポイントからでも約85分と告知されていたにもかかわらず,上記シャトルバス渋滞のため,シャトルバス乗車後本件会場に到着するまで3時間近くかかった者もおり,予め被告が示した所要時間を大幅に上回ることになった。観客の中には,目当てにしていたレースやイベントを見られなかった者も多く存在した。

(2) 本件会場内の状況
ア 本件会場には,東西に2カ所のシャトルバス駐車場が設けられていた。
被告は,観客が東西いずれの駐車場を利用するかについて,客席の位置と関係なく決定した。つまり,観客の中には,西駐車場から東端の観客席まで歩かされ,また逆に東駐車場から,西端の観客席まで長時間歩かされた者もいる。
また,観客はシャトルバス降車後,チケットゲートでチケットの検査を受けることになっていたが,東西の駐車場に下ろされた観客は,狭いチケットゲートを通らされたことから,そこがボトルネックとなり大混雑となった。
さらに,観客の列を止めてまで,関係車両の名目で一部の観客を一般客に優先して通行させたことから,会場内の混雑に拍車がかかった。
加えて,誘導員の誘導が不十分,不適切であり,また,十分な案内の標識もなかったことも,混雑の要因となった。

イ 先のシャトルバスの遅れに加え,このような場内の大混雑により,目的としたレースやイベントの全部又は一部を観ることが出来ない観客が多数発生した。

(3) 帰宅時の混乱と混雑
ア レース終了後には,さらに大きな混乱が生じた。
29日に来場していた観客は,被告の発表によれば約9万人であり,そのほとんどが予選レース終了前後に,シャトルバスを利用するために一斉にシャトルバス乗り場に向かった。前述のとおり,本件会場内のシャトルバス乗り場は,西側と東側の2カ所のみであり,2カ所しかないシャトルバス乗り場に向かう人波で,本件会場内では大混乱が生じた。さらに,東西のシャトルバス乗り場にたどり着いた観客は,数万人の人混みの中から,自分が指定されたアクセスポイントへ向かう シャトルバスの列を探し,行列に並ばなければならなかった。
シャトルバス乗り場は人であふれかえり,また列の先頭付近はパイロンで区切られていたものの,それ以降はなにもないため列の切れ目が分からなかった。しかも,被告の係員による誘導や,最後尾を示すプラカードの掲示もなかった。そのため,観客は,どこが自分が乗るシャトルバスの列なのか,行列はどこにあるのか,最後尾はどこなのかすら分からず,並ぶべき行列を探すためだけに1時間以上人混みの中を探し歩いた観客も多かった。また,日没後は,照明が列の先頭付近にしかなかったため,列の後方は真っ暗で並ぶべき列が全くわからない状態となった。
被告の係員は誘導等を全く行わず,観客が係員を見つけ,どこに並べばいいか聞いても,「バイトなので分かりません,最後尾はご自身で探して下さい」などと繰り返すのみであり,「それならば,責任者を呼んで欲しい。」と言っても,対応はなかった。

イ また,苦労して行列を探し出して,列の最後尾に並んでからも,一向にシャトルバスは来ず,行列は全くすすまなかった。
このように観客の大部分がシャトルバスに乗れず,シャトルバス乗り場付近でバスを待っていたにもかかわらず,被告は,午後7時ころシャトルバス乗り場以外の施設を全て閉鎖してしまった。シャトルバス乗り場には,売店も,雨をよけるスペースもなく,観客らは,風雨にさらされながら,寒さや空腹などに耐え,ひたすらシャトルバスを待たざるを得なかったのである。また,シャトルバス乗り場にはほとんどトイレは設置されておらず,数少ないトイレに人が殺到し,中には,女性であっても野外での排泄を余儀なくさせられる者までいた。
シャトルバスを待つ観客の中には,具合が悪くなる者も続出したが,被告が救護室を午後6時ころ閉めてしまったため,具合が悪くなっても,救護室の外でじっとしているしかなかった。また,救急車のサイレンも鳴り響いていた。

ウ ようやくシャトルバスに乗り込んでからもシャトルバス渋滞のため帰宅まで膨大な時間と労力を費やすことになった。

(4) 29日のシャトルバス待ちの惨状や道路渋滞により甚大な被害を受けた観客の中には,30日の決勝レースの観戦を諦める者もいた。もし,当日中に帰宅することができなくなってしまえば,翌日以降の仕事に支障を来すと考えたり,幼い子どもを数時間も寒い中で待たせることはできないなどの理由から,30日の決勝レースの観戦を諦めざるを得なかったのである。
皆,30日の決勝レースやドライバーズパレード等のイベントを楽しみにしていたにもかかわらず,前日の異常な混乱ぶりを目の当たりにし,断腸の思いで諦めざるを得なかったのである。

6 F1グランプリ3日目(9月30日日曜日)の状況
(1) 本件会場へ向かう際の混乱,混雑 
3日目午後1時30分から行われる決勝レースは,本件F1グランプリのメインイベントである。そのため,30日は前日以上に混雑することは必至であった(被告の発表によると,当日の観客数は14万人)。
ところが,被告は,なんらの有効な対策も取らなかったため,早朝から大混雑が発生した。
アクセスポイントの人だかりは前日よりもひどく,長蛇の列となっていた。アクセスポイントの行列を見た観客の中には,あまりの行列のひどさに観戦を諦めて帰宅する者もいた。
やっとの思いでシャトルバスに乗ってからも,今度は道路が渋滞し,会場に近づくにつれて渋滞がひどくなり,シャトルバスが全く動かなくなった。決勝レースのスタート時刻が近づいても一向にシャトルバスが動かなかったため,やむなくシャトルバスを降りて歩いて会場に向かう観客も多く,中には走って向かう者もいた。

(2) 本件会場内の状況
ア 本件会場内においても,前日以上の混雑が当然予想されたにもかかわらず,被告は,特段会場内の混乱回避のための有効な手段を講じなかった。
案の定,30日の会場内の混乱は前日以上となり,観客はシャトルバスを降りても,大混雑の中,自分の座席まで長時間の歩行を余儀なくされた。
観客は,本件会場までのシャトルバスの大混雑に巻き込まれ,すでに相当の苦痛を受けていたことから,本件会場に着いてからの大混雑は,観客の苦痛に拍車をかけるものであった。

イ 観客は,当初予定していた到着時刻を大幅に遅れて席に着くこととなり,決勝レースがスタートした後も,会場内は席に向かう人であふれていた。
また,帰りの混雑を考えて決勝レースのスタート直後に席を立つという苦渋の決断をした者もいた。
結局,観客の多くは,予定していたレースやイベントの全部又は一部を観ることができなかった。

 (3) 帰路の混乱,混雑
ア 帰りのシャトルバス乗り場は,前日以上の大混雑であった。
  決勝レースの終了前に帰路に着き,シャトルバス乗り場に向かった者ですら,シャトルバス乗り場の混雑に巻き込まれてしまい,レース終了後に至っては,会場内はシャトルバス乗り場に向かう人によって大混乱となった。
  そのため,30日にも体調を崩す者が続出し,中には倒れて救急車で運ばれる者や,男女問わず道ばたでの排泄を余儀なくされる者など,ひどいありさまであった。トイレに行くとまた最後尾に並ばなければならないし,そもそも並ぶべき列を見つけ出すことも難しいため,トレイや水分摂取をがまんする人も多かった。また,列を離れることができずにその場で失禁してしまう者までいた。
  列が全く進まないことから,観客が誘導員に説明を求めても,誘導員は「すぐ来ます。」といい加減な説明を繰り返すのみで,シャトルバスの運行状況について全く把握している様子はなかった。観客が本部スタッフへの連絡を依頼すると,「本部スタッフが誰もいません。」という,常識では考えられないような返答であった。
  あまりのひどい状況からシャトルバス乗り場付近には罵声が飛び交い,救急車のサイレンの音,泣き叫ぶ子どもの声など,現場は阿鼻叫喚の巷と化した。売店もなく,手持ちの食料を周囲の人と分け合って空腹をしのいだ者もいた。
  日が暮れると寒さは一層ひどくなり,寒さのあまり息も白くなった。舗装されていない悪路に並ばされていたため,地面は雨でひどいぬかるみとなり,列に並ぶ観客は,足下が汚れ,座って休んだり,荷物を置いたり,抱いている子どもを下ろすこともできなかった。
  観客は,雨と寒さの中,いつ来るか分からないシャトルバスをひたすら長時間待たされ,疲労と苦痛により極限状態に達したのである。
イ 原告らの中で,当日最後に本件会場を後にした者は午後10時を過ぎていたが,その原告がシャトルバスバスに乗ったあとも,バス乗り場には多くの人々が取り残されていた。
ウ ようやくシャトルバスに乗り込んでからも道路の渋滞のため,アクセスポイントに到着するまで,膨大な時間がかかった。このような,帰路の混乱,混雑は,単にシャトルバスの遅れにとどまらず,その後の交通機関にも影響し,予定していた電車に乗れず,その日のうちに家に帰り着かなかった者や,ホテル等に宿泊せざるを得なかった者も多数いた。寒い中長時間待たされた結果,体調を崩す者も多数おり,翌日からの仕事に支障を来した者や,数日仕事を休まざるを得なかった者もいた。
  このように30日は29日を上回る悲惨な状況であった。

7 結語
以上のように,被告は,チケット&ライドシステムの採用により,原告らの入退場をシャトルバスだけに限定したにもかかわらず,適切な運営管理を行わず,シャトルバスや会場の大混雑を生じさせた。
F1日本グランプリは,モータースポーツの最高峰であるF1レースを日本で観戦できる唯一の機会であり,よって,原告らは本件F1グランプリを心から楽しみにしていたのである。
ところが,このような被告のずさんなF1グランプリの運営により,レースやイベントの観戦の機会を奪われた。さらに,これにとどまらず,雨の降る寒い中,トイレも売店も救護室もない劣悪な環境で,常軌を逸するほど長時間シャトルバスの到着を待たされた。
被告のこのようなずさんな運営により,原告らは,筆舌に尽くしがたい苦痛を受け,精神的にも,肉体的にも,経済的にも著しい損害を被ったのである。
よって,原告らは,被告に対して,請求の趣旨記載のとおりの支払いを求めて本訴に及んだ次第である。
以上


附属書類

1 甲号証写し    各1通
2 資格証明書     1通
3 訴訟委任状     109通


証拠方法

甲1   オフィシャルプログラム(抄本)
甲2の1~109 チケット
甲3   プレスリリース
甲4の1 プレスリリース
甲4の2 富士スピードウェイ2007年F1日本グランプリの開催概要を発表
甲5の1 プレスリリース
甲5の2 添付資料
甲6   富士スピードウェイ2007年F1日本グランプリのイベント概要を発表
甲7   プレスリリース
甲8   2008年 F1日本グランプリの開催概要について
甲9の1 交通アクセスの問題
甲9の2 場内環境の問題
甲10  F1日本GP大改革
甲11  日本GPへ向けバス輸送を検証
甲12  週刊オートスポーツ(1131号)
甲13  週刊オートスポーツ(1136号)
甲14  週刊オートスポーツ(1148号)
甲15  プレイボーイ(No.43)
甲16  プレイボーイ(No52,53)
甲17  プレイボーイ(No.11)
甲18  プレイボーイ(No.17)
甲19  週刊スパ
甲20  F1速報
甲21  GRANDPRIX Special
甲22  マイコミジャーナル
甲23の1~20 ビデオファイル
甲24  写真撮影報告書

〒104-0061 東京都中央区銀座4-10-16 シグマ銀座ファースト6階
栄枝総合法律事務所(送達場所)
電 話 03-3546-8101
FAX 03-3546-7700
原告ら訴訟代理人
弁 護 士      栄   枝   明   典

弁 護 士      石   井   尚   子
〒231-0005 横浜市中区本町1-7 東ビル5階
内山辰雄法律事務所
電 話 045-212-3411
FAX 045-212-3415

弁 護 士      内   山   浩   人
〒107-0052 東京都港区赤坂3-2-6 赤坂光映ビル6階
西川紀男法律事務所
電 話 03-3587-1841
FAX 03-3587-1854

弁 護 士      江   川   勝   一



〒410-1307 静岡県駿東郡小山町中日向694番地
被       告     富士スピードウェイ株式会社
上記代表者代表取締役    ●● ●●



答弁書(被告・富士スピードウェイ、被告弁護士による答弁書)
http://www.fujispeedway.info/2007f1gp/2008/08/post_8.html
被告・富士スピードウェイの答弁書を以下に公開します。
(公開にあたって個人情報保護など一部修正を行っておりますが、ほぼ原文のまま)


平成20年(ワ)第16322号 損害賠償請求事件

原 告  ●●●● 外108名
被 告  富士スピードウェイ株式会社

答   弁   書
平成20年7月29日


東 京 地 方 裁 判 所
   民事第49部  御中

上記当事者間の頭書事件について、被告は後記のとおり答弁する。

被 告  富士スピードウェイ株式会社
〒●●-●●
東京都●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
 ●●●●法律事務所(送達場所)
        電 話 03-●●-●●
         FAX O3-●●-●●
上記被告訴訟代理人
  弁護士  ●● ●●
同   ●● ●●


第1、請求の趣旨(訴状第1の項)に対する答弁

1、原告らの請求をいずれも棄却する
2、訴訟費用は原告ら各自の負担とする
との判決を求める。

第2、請求の原因(訴状第2の項)に対する認否

1、当事者(第2の1の項)について
(1)、1の(1)の項は認める。
(2)、1の(2)の項については、次のとおりである。
 ①、訴状添付の当事者目録記載の原告らのうち、本答弁書末尾添付の別紙「調査結果一覧表」における「確認結果」の欄に丸印が付されている者合計72名に、被告が本件F1グランプリのチケットを販売したことは認める。
 ②、但し、当該原告らのうち、原告番号●●の原告(●●●●)に対して被
  告が販売した本件F1グランプリのチケットの券種は、同原告が主張する金61,000円のC指定席券(甲第2号証の●●)ではなく、金11,000円の自由席券である(乙第1号証の原告番号●●)。
 ③、上記の72名を含めて、原告らが「本件F1グランプリを観戦しに行った者」であるかどうかは知らない。
 本件F1グランプリのチケットは、譲渡可能な無記名有価証券の一種であって、「観戦しに行った者」が誰であるかは被告の知るところではないからである。

2、債務不履行責任(第2の2の項)について
(1)、2の(1)の項は、一般論としてこれを争わない。
(2)、2の(2)の項は争う。

3、不法行為責任(第2の3の項)について
 争う。

4、損害の発生および額(第2の4の項)について
(1)、4の(1)の項は争う。
(2)、4の(2)の項は争う。
(3)、4の(3)の項は争う。

5、第2の5の項について
 争う。

第3、本件の経緯(訴状第3の項)に対する認否
1、本件F1グランプリの開催(第3の1の項)について
1の(1)乃至(5)の各項は、大筋においてこれを争わない。

2、チケット&ライドシステムの採用(第3の2の項)について
2の項は、大筋においてこれを争わない。

3、本件F1グランプリの開催日程(第3の3の項)について
 3の(1)乃至(4)の各項は、大筋においてこれを争わない。

4、本件F1グランプリ初日(9月28日)の状況(第3の4の項)について
 4の項は、大筋においてこれを争わない。

5、本件F1グランプリ2日目(9月29日)の状況(第3の5の項)について
 5の(1)乃至(4)の各項は、全体の趣旨としてこれを争う。

6、本件F1グランプリ3日目(9月30日)の状況(第3の6の項)について
 6の(1)乃至(3)の各項は全体の趣旨としてこれを争う。

7、結語(第3の7の項)についで
 争う。

第4、被告の主張(想定される争点)の概要

1、被告は、本件F1グランプリの運営について、想定を超える悪天候に見舞われたことなどの特殊事情もあり、結果として来場者の全てに十分満足を与えることが出来たとはいい難い面があったことは否定しない。
 しかし、被告としては、その運営に最善を尽くしたつもりであり、また事後処理についても、可能な限り真摯且つ誠実に対応して来たと考えている。
 例えば、本件F1グランプリの三日目に開催された決勝レースのスタート時刻(午後1時30分)以降に遅参して入場ゲートを通過した来場者についてはその場で個別に確認して、合計85名の対象者に「遅延証明書」を発給のうえ、後日改めてチケット代金の一部払戻し手続を実施したこと(但し、85名中の31名は、「自分は期待どおり十分楽しませて貰ったから」などの理由を述べて払戻しを辞退し、あるいは払戻し手続きを取られなかった)、またC指定席の一部を構成する仮設スタンドで観戦した来場者から、「目当てにしていた第1コーナーのデッドヒートがよく見えない」との苦情が出されたため、直ちにその原因を調査した結果、仮設スタンドの建設請負業者による設計構造上の問題があると判断し、該当者全員に対して後目チケット代金の一部返戻手続を実施したことなどは、合理的な理由があると認められる来場者についてそれぞれ然るべき対応をしたことの例(それだけではない)である。

2、前記第2の1の(2)の項において指摘したように、原告らは、「本件F1グランプリを観戦しに行った者」であると主張して本訴請求を行なう適格性を有する者であるのかどうかは、前提条件として明確にされなければならない事項である。

3、原告らの主張、とりわけ本件F1グランプリの二日目(9月29日)及び三日目(9月30日)の状況に関するその主張には、実態を少なからず誇張するところが多いため、本件訴訟事件の審理を通じて客観的な正しい状況が明らかにされることが必要である。

4、更に、原告らが、被告による本件F1グランプリの運営状況によって損害を受けたと主張する具体的な原因事実及びその程度は原告各自によってそれぞれ異なる筈であるから、それらの点が個別的に明らかにされることもまた不可欠である。

5、なお、上記4の点に関連して付言するに、巷間伝えられるところによれば、原告らはインターネットを媒介手段とする募集に応募してそれぞれ原告となった者であるとのことであるから、その住所地は全国各地に散在し(訴状添付の当事者目録参照)、個別の事情を逐一正確に確認するのは容易でないことは理解し得ないでもないが、それにしても、総勢109名にのぼる原告ら全員を全く同じ経験をした者として一律に取り扱うというのは、如何にも杜撰であるとの批判を免れないであろう。
 せめて、原告ら各自の言い分から複数の具体的なレベルでの共通項を抽出し、それを指標として原告らを幾つかのグループに仕分けしてそれぞれ主張する、という程度の労を惜しむべきではないと考えられる。

証 拠 方 法
1、乙第1号証  報告書(作成者 ●●●●)

添 付 文 書
1、訴訟代理委任状 1通
2、乙第1号証写 1通
以  上




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