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不穏の気配




 事情を知らない者から見れば、実に奇怪な光景なのだろう。
 宙に浮いた林檎が傾き、その一部が唐突に消え失せる。
 林檎には人間のものとは思えない歯型がくっきりと残されていた。

『で、どれくらい待ってから追いかけるんだ?』

 林檎を咀嚼しながら、不可視のソレは目の前の男に話しかけた。

「慌てるなリューク。
 僕は"街の位置を聞いた後、隠しておいた荷物を取りに行っていた"という体裁を整えて彼女に会いに行く。
 その理由付けが不自然でない程度に時間を置くつもりだよ」
『ふぅん……』

 興味なさそうに相槌を打ちながら、リュークは林檎をもう一齧りする。
 支給された食料の中に林檎が入っていたのはリュークにとってラッキーな出来事だった。
 参加者全員に配られているのか、それとも運良く支給されたのかは分からないが、
 リュークにとってはどうでもいいことだ。
 考えたり行動したりするのはライトがすればいい。
 自分はただそれを眺め、林檎を片手に楽しむだけだ。
 その点では、リュークはこのゲームの主催者に似ているといえるかもしれない。

『あんま時間掛けてると、誰かに先越されるかもな』
「それくらい想定済みさ」

 月は古びたテーブルの上に支給品を広げていた。
 数本の容器に分けられた飲料水と、数日分はあるであろう食料。
 名簿とは名ばかりの白紙に地図のほか細々とした品々。

「武器になりそうなものはないか……やはりデスノートを没収されたのは痛いな」
『おいおい、脅して告白しても無効だろ』

 その発言に含まれた物騒な単語をリュークは聞き逃さなかった。
 しかし月は、そんな反応を見越していたかのように、余裕の態度を崩さない。

「リューク。僕はあの少女を必ず振り向かせてみせる。
 だが、確かにお前の言うとおり、邪魔者は必ず現れるだろう。
 そのときは――迷わずそいつを消す」

 リュークは月の横顔を覗き見た。
 自らの勝利を確信して止まない不敵な笑み。
 ――目的のためならば如何なる手段も厭わない。
 夜神月とは、そういう男なのだ。
 事実、ここに至るまでにも多くの命を奪ってきた。
 そしてそれを咎と思うこともなく、己こそが正義であると確信し続けてきた。
 ならば、このサバイバルにおいても手段を選ぶはずがない。
 必要とあらば他人を騙し、必要とあらば他人を殺めることだろう。
 リュークの人間離れした貌に喜色が浮かぶ。
 この島でも面白いモノがたくさん見れそうだ。

「とはいえ、彼女に邪魔者を消したことが気付かれるのはまずい。
 消してしまったことがばれると、好かれるのは絶望的だ。
 できることなら避けたい手段としておくべきだな」

 呟きながら、思索に耽る月。
 恐らくは少女と再会してからの展開をシミュレートしているのだろう。
 リュークは林檎を食べきると、感情の読めない眼で辺りを見渡した。
 邪魔が入り、邪魔者を消してしまう展開があるもよし。
 邪魔など入らず、一人の死者も出さぬまま終わるもよし。
 考えるのも行動するのもライトがすればいい。
 だから、訊ねられない限りは答えない。
 小屋の外に誰かが潜んでいることなど――





「なぁに? あの人間、さっきから一人で喋ってるけど」
「人には他人が踏み込んではいけない事情というものがあるのですわ」

 半開きの窓の下、ラクス・クラインと水銀燈は小さく声を交わした。
 草原の中でいつまでも時間を潰しているわけにはいかないと思い、
 すぐ近くに通っていた道路へ向かったところ、この小屋を見つけたのだった。

「それにしても物騒なこと言ってるわねぇ」

 水銀燈は他人事のように言った。
 直接的な表現こそしていないものの、男が言わんとすることは、邪魔者の殺害に他ならない。
 とはいえ、水銀燈もラクスも、男のいう邪魔者には当てはまりそうにもなかった。
 同性である以上、少女とやらを横取りすることなど有り得ないのだから。

「あんな人間なんか見てても面白くないわぁ。早く別のところへいきましょ?」
「……」

 あくまで無関係を貫こうとする水銀燈に対し、ラクスは硬い表情を崩さない。

「こんな形でゲームに乗る人が現れるなど、予想していませんでした」
「恋は盲目っていうじゃなぁい。何が起こっても不思議じゃないわぁ。
 ……変なこと考えてると、消されちゃうかも?」

 冗談めかしたその言葉は、決して間違ってはいなかった。
 男の行動を妨害しようとするならば、間違いなく邪魔者として扱われることだろう。
 ラクスは目を伏せ、静かに踵を返した。

「この無益なゲームも、あのような行いも、止めなければなりません。
 けれど、今の私には力がない……」
「ああいう選択も自由なんじゃないのぉ?」

 からかうような水銀燈の囁きに、ラクスは首を横に振った。

「自らの恋愛を成就するために他者を犠牲にする。
 これもまた、彼らが見たいと望む『娯楽』に過ぎません」

 彼ら、とはこのゲームを主催する者たちのことだ。
 このゲームは宇宙規模の特別番組なのだという。
 孤島に隔離された人々の苦悩と足掻き、生み出されるドラマ。
 それを安全な場所から眺め、スリルと感動を堪能する無数の視聴者。
 つまるところ、あの男もまた、首謀者の思惑通りに自由を束縛されているに過ぎないのだろう。
 自由意志で動いているように思いながら、実は全て掌の上――
 ラクスは胸元からせり上がる感覚に柳眉をしかめた。

「参りましょう、水銀燈」
「いいけど、どこ行くのかしら? 街? それともさっきの場所に戻るとかぁ?」

 水銀燈はラクスの傍らで地図を広げた。
 ラクスが主張する目的に協力するつもりはないが、話し相手くらいなら吝かではない。
 一人で行動するよりは退屈しないだろうから。



【I-7 小屋/午前2時】

【夜神月@DEATH NOTE】
 [状態]:健康
 [道具]:支給品一式。ランダムアイテム(未開封)
 [標的]:灰原哀 (ただし名前は知らない)
 [思考]:
  1.哀をものにする。
  2.邪魔者が現れるようなら排除する
  3.新世界? なにそれうまいの?
※灰原哀と遭遇してからそんなに時間が立っていません


【ラクス・クライン@機動戦士ガンダム SEED DESTINY】
 [状態]:健康。
 [道具]:基本支給品。ランダムアイテム(未開封)
 [標的]:なし
 [思考]:
  1.人は自由であるべき存在なのです
  2.人の自由を侵害するこのゲームは許せません
  3.暴走する参加者は止めなければ
  4.そのためにも力が必要です
  5.なんだか、他人の気がしませんわ


【水銀燈@ローゼンメイデン】
 [状態]:健康、恋愛感情なし。
 [道具]:基本支給品。ランダムアイテム(未開封)
 [標的]:なし
 [思考]:
  1.当面はラクス・クラインについていく
  2.ドールズを探す
  3.なんとなく他人の気がしないわね




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