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あすさんの家庭教師15 - 家庭教師」(2010/08/12 (木) 00:07:17) の最新版変更点

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赤黒クマから命がけで逃げ出したあすさんの体はもはやボロボロである。 クマの極太の腕から繰り出される強烈なスマッシュの直撃で受けたダメージと、 常識では考えられない速さで走ったことによる筋肉への負荷は甚大なものであり、 それ以前に女子高生たちとの対応で疲労の極限に達していたあすさんは 丸一日、眠り続けてしまった。 そして、次の日… 明海「あすさん……あたし、頑張って学校いくから……帰ってきたら目を覚ましてね……」 明海は小声であすさんに話しかけ、中身の詰まったカバンを抱えて部屋を出ていった。 あすさんは死んだようにベッドの上に横たわったままで、目を覚ますことはなかった。 正午が過ぎ、3時が過ぎ、しばらくすると… ピンポーン。 インターホンの音が鳴った。 明海が経験したものと同じである。 ピンポーンピンポーン。 人の気配を感じさせずに鳴り続けるインターホン。 ピンポーン。 この不可解な音であすさんは意識を取り戻した。 あすさん「……ここは……っ! ……いてて……激痛が痛い……」 あすさんが痛みで泣きそうになると、インターホンの音は聞こえなくなった。 それと同時に、自分のいる環境の異変にすぐに気がついた。 その部屋には一切の生活用具がないのである。 窓はあってもカーテンがなく、壁紙はすべて取り去られた形跡があり、照明器具もない。 明海の部屋なら学習机やクローゼットくらいはあるはずなのに、それも見当たらない。 自分が横たわっているベッド以外、何もない部屋なのだ。 ところが床にノートパソコンが置かれていた。 あすさん「この部屋は…いったい……明海はどんな生活をしているんだ……?  このパソコン……電源が入ったままだ……明海のものだろうか……」 パソコンを見てみると電源が入っており、デスクトップが画面に表示されていることがわかった。 画面中央には「あすさんへ」という名前のファイルが置かれている。 あすさん「これは何だろう………」 あすさんがトラックパッドを操作し、そのファイルをダブルクリックして開くと… >あたしのパソコン勝手に見たら怒るからね(#^ω^)ピキピキ >  >                          明海 あすさん「ああっ!!しまった…トラップか~~~~~~~!」 ガチャッ あすさん「ぎゃあっっっ!!」 次の瞬間、背後のドアがガチャッと開いた。 明海「あー! あすさんが復活してる~~~~~~!!」 あすさん「や、やぁ……」 明海「あすさん復活だー! 復活だー!」 あすさん「ふ…復活だぁ~………」 明海「よかった……もう目を覚まさないのかと思った……」 ようやくまともな形で対面することになった明海とあすさんであるが、 初めがあまりにも非常識であったために、しばらく沈黙が続いた。 あすさん「…嬉しいのやら悲しいのやら…といった感じだね……」 明海「う、うん……。にこあ としか思えない……」 あすさん「にこあ……」 明海「このままあすさんが目を覚まさないのかと思うと……」 あすさん「大丈夫だよ……私は見てのとおり…生きている…」 明海「もし…あすさんが帰らぬ人になったら……原因はあたし……」 あすさん「……何度も殺さないで……」 明海「とにかく無事でよかった!」 あすさん「にこっ」 明海「あ、あすさん、あたし、今日は学校に行ってきたんだよ」 あすさん「そうか、それはよかった!」 明海「死んだあすさんの分まで頑張らなきゃ、って思ったの」 あすさん「また殺された~…」 明海「このまま家にいてくれたらいいのにな…」 あすさん「…あぁ…そうだ…帰りのこと…どうしたら…」 明海「帰ってほしくないなぁ~…」 あすさん「そういうわけにはいかないよ…」 明海「どうしたらここに残ってくれる?」 あすさん「ははは…そりゃ、ここで生活していけることが条件だよ」 明海「ふーむ……」 明海は考え込んでしまった。 あすさんにはその様子が冗談なのか本気なのかを判断できなかった。 あすさん「ところで明海、この部屋はいったい……」 明海「ん? あたしの部屋?」 あすさん「人が住んでいるとは思えない部屋なのだが……」 明海「実はこの部屋、というかこの家、取り壊すことになったの」 あすさん「…え?」 明海「この家がもともと相葉家の住んでいた家なんだけど──」 あすさん「ふむふむ」 明海「お父さんが錬金術の事業を一気に拡大させてからは、  この家とは比べ物にならない巨大な家を建てて、そこに住むようになったの」 あすさん「ふむ。この家はずいぶん古いようだね」 明海「そうなの。耐震基準を満たしていないから、もう住むことはできないんだって」 あすさん「そうか。引越しをするわけか」 明海「うん。でもあすさんには、長年あたしが暮らしていた部屋を見てもらいたくて…」 あすさん「なるほど………」 明海「あすさん、新しい部屋に案内するね」 あすさん「いくお♪ てけてけ! あっつー……いててて……」 明海「大丈夫? 歩けない?」 あすさん「筋肉痛は、じわじわくる……」 明海「あたしにつかまって」 あすさん「申し訳ない……」 明海「いくお♪」 あすさん「てけてけ」 あすさんは明海に体を預けながら階段を下り、玄関を出た。 明海「あすさん……真冬なのに裸足で、しかもサンダルで来るとは思わなかったよ…」 あすさん「これが私の正装なんだ」 明海「aspirinさん、すごいです!最高です!」 路上を歩くこと数分。 あすさん「え……このローズタワーみたいな建物が?」 明海「うん。これがあたしの新居」 あすさん「……何人家族だっけ?」 明海「3人だよ」 あすさん「この建物の一室が、じゃなくて、建物全部で3人暮らしってことか?」 明海「そうだよ」 あすさん「そんなバカな………」 明海「あすさんを入れたら4人だね。ちょっと狭くなるかも…」 あすさん「いや、十分すぎる……」 3人で暮らす家としては桁外れの大きさである。 しかしあすさんは、実際に内部を見るまでは信用できなかった。 明海「この最上階にお母さんがいるから、今から会ってくれる?」 あすさん「最上階って何階だ……」 明海「77階だよ」 あすさん「……………」 明海「大丈夫だって! ちゃんとエレベーターついてるから!」 あすさん「これが本当に家といえるのか……」 明海「あ、あすさんって高いところ苦手?」 あすさん「いや……驚いているだけだ……」 エレベーターで77階へ向かうこと6分。 あすさんは明海の母と初めて会うことになる。 あすさん「77階を3人で割っても、1人あたり25階分のスペースだぞ……どうやって住むんだ…」 明海「そっか~。もうちょっと歩いてね」 あすさん「家の中でこんなに歩くことがあるなんて…」 明海「楽しいでしょ」 あすさん「いいえ、今は疲れるだけです……」 明海「にこっ」 明海「あ、お母さんだ」 あすさん「あ、あ~…えーと…」 明海の母「ようこそいらっしゃいました。明海の母です。どうぞよろしく」 あすさん「あ、どうも……このたび…明海さんの家庭教師…として……」 明海の母「あらあら。あすさん、無理をなさらないで」 あすさん「……といいますと……」 明海の母「無理に体裁を取り繕おうとなさらなくていいんですよ。あすさんは明海にできた初めてのお友達ですもの」 あすさん「は……」 明海「ばれちゃったか~」 明海の母「あすさんのことは明海からよく聞かされています。なんだか、まるで」 明海「お、お母さんっ!」 明海の母「…本当にわがままな娘ですけれど…よろしくお願いしますね」 あすさん「はあ…こちらこそ……」 明海の母「さっそくですが、これを」 あすさん「……?」 あすさんは明海の母から封筒を手渡された。 小さな封筒の中に書類の束がぎっしり詰まっているようであった。 あすさん「……これは?」 明海の母「ここまで来てくださったお礼と、気持ちです」 あすさん「……開けてもいいですか?」 明海の母「どうぞ」 あすさんが封筒を開けると、大量の一万円札が入っていた。 あすさん「ちょ…ちょっと……待ってください……これは……」 明海の母「今月分のお給料、300万円です」 あすさん「さ、さんびゃく……」 明海の母「それでどうか娘をお願いします」 あすさん「待ってください……ここへ来るまでの交通費の100倍じゃないですか……」 明海の母「足りないようでしたら……」 あすさん「い、いいえ! 逆に多すぎるのでは……いくらなんでも……」 明海の母「もしあすさんがお望みになるのでしたら、こちらにお泊りいただいてもかまいません」 あすさん「あの…っ! 本当のことを言いますと…私は家庭教師などではなくて……」 明海の母「いえいえ。身分など関係ないのです。わたくしも明海も、あすさんご自身を高く評価しています」 明海「そうだよ~、あすさん!」 明海の母「これからも娘をよろしくお願いします」 あすさん「……………」 明海「あすさん、そんなもんなんだよ。家庭教師に資格とか免許なんてないんだよ。あすさんの実力が問題なの」 あすさん「過大評価じゃないのか……」 明海「相応だよ」 明海の母「あすさんならすぐに慣れると思いますよ」 あすさん「慣れる……」 明海「何事も最初から上手くいくはずなんてない、って、あすさん言ってたよね」 あすさん「うーむ………」 明海の母「明海、あすさんのお話をよく聞くのよ」 明海「わかってる~」 あすさん「私のお話………」 明海「センセー、今日の授業はなんですか~?」 あすさん「……あすさん先生……」 ----

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