あすさんの家庭教師36 - クビにされるあすさん


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あすさんに金をつかませておけばどうとでもなる──

明海の母はタカをくくっていた。


しかし今、目の前で起きているのはどういうことなのか。
あすさんはその金を受け取らず、すぐにも撤退しようとしているのである。



明海の母「……では…どうすれば残ってくれますか?」
あすさん「残るか残らないかの問題ではないのですよ」
明海の母「月謝を2倍……いいえ、10倍払うことで残ってもらえますか?」
あすさん「金額の問題でもありません」
明海の母「では娘は…どうなるのですか…」
あすさん「心配しなくてもいいではありませんか」
明海の母「……なんてこと……」
あすさん「明海はあなたに心配される必要がありますか?」
明海の母「そ…そんな…」
あすさん「はっきりと申し上げましょう。この家庭では誰も幸せになることはできません」
明海の母「…………」
あすさん「“錬金術を通じて物質を変化させることより人の心を変化させることのほうが難しいものです”」
明海の母「……その言葉は…!」
あすさん「この意見はもっともなのですが、言っている本人に問題があるため、今ひとつ説得力に欠けています」
明海の母「人の心………」

人間ではないあすさんが、このような発言をするのは実に不思議なことである。
別の生物なのに、妙な説得力がある。



あすさん「だいたい明海が入院しているのに、見舞いに行こうともしないのですね」
明海の母「それは……わたくしにも仕事があるから……」
あすさん「そうですか。どうせ今の明海は親も、私も、見舞いに来ることを期待していませんけどね」
明海の母「……行きましょう……」
あすさん「仕事があるのでしょう」
明海の母「……明海の見舞いに行きます」
あすさん「いってらっしゃい」
明海の母「あすさんも…お願いします…」


あすさん、明海の母、執事の3人が屋上のヘリポートへ向かうと、天候が再び荒れ始めてきた。


あすさん「……地上を走っていくことはできないか?」
執事「は、はい……ただいま手配いたします……」

エレベーターで6分かけて地上まで降りると、天候が回復した。

あすさん「……どうする……」
明海の母「地上を走りましょう…」
執事「お車の準備ができました」
あすさん「早いな」

あすさんの前にやってきたのは、ピンク色に点滅するごく普通のリムジンであった。

あすさん「この車は誰の趣味なのかね…」
執事「もちろんaspirinさまのご意見を反映させたものでございます」
明海の母「ピンク点滅なんてレアだと思いません?」
あすさん「……どういう原理で点滅しているのだろうか……」


ピンク点滅リムジンは、内装もピンク点滅であった。


あすさん「すごい……」
執事「このために色指定染色アンプルを10個も使いました」
あすさん「10個……」
明海の母「気に入っていただけたかしら……」


あすさんは鮮やかなピンク点滅リムジンに乗り込み、気分が悪くなった。


執事「……もうすぐ到着しますから……」
明海の母「…ちょっと点滅が過剰すぎたのでしょうか……」
あすさん「快適だけど、点滅がきつすぎる……」

あすさんは乗り物酔いよりも気分が悪くなり、病院に到着するころには意識を保つことさえ困難になった。


執事「aspirinさま……病院へ行かれたほうがよろしいでしょうか…」
明海の母「なに言ってるの? ここがその病院じゃないの」
執事「そうでございました……」
あすさん「大丈夫……少し外で体を冷やしてくる……」
明海の母「では、わたくしは先に行ってきますね」
執事「はい。ご案内いたします」

あすさんは雪の混じる北風に身をさらし、明海の母と執事は病院へ入っていった。

執事「明海さまの病室は…」
明海の母「何階?」
執事「……少々お待ちください。受付で聞いてまいります」
明海の母「……さっき行ったはずじゃなかったのかしら……」
執事「奥さま、6002号室でございます」
明海の母「じゃあ6階なのね」

すると、あすさんがものすごい勢いで走ってきた。

あすさん「ちょっと待って~~~~~!」
明海の母「あ、あすさん! もう平気なのですか?」
執事「お、おお……顔色もよくなられたようで…」
あすさん「もう一つ重要なことが…」
明海の母「なんでしょう?」
あすさん「……ひとつ、芝居を打ってもらいたいのですが…」
明海の母「芝居……?」
あすさん「明海の将来を占う重要なことを知るためです」
明海の母「明海の将来…ですか…。ど、どうぞ。何でも言ってください」
あすさん「あなたの口から直接、私をクビにした旨を伝えてほしいのです」
明海の母「……えっ!?あすさんをクビに……?」
あすさん「そうですねぇ…理由は…、“明海の支えには到底なりそうにない”ということにして」
明海の母「ちょ、ちょっと待ってください。そうしたらあすさんはどうなるのですか?」
あすさん「いえいえ。その前に明海がどのように反応するかがポイントなのです」
明海の母「明海の…反応…」
あすさん「あわてて取り乱すのか、納得するのか」
明海の母「納得するはずがないと思うのですけど……」
あすさん「私の予想では、明海はあっさりと納得するはずです。そうなったほうが計画を立てやすいので」
明海の母「……いったいどういうことでしょうか……」

あすさんの考えを読み取ることができない明海の母。


あすさんは自分からチャンスを棒に振ろうとしているとしか思えないような行動をとっている。
しかもそれは、明海のチャンスをも奪うことになるのではないだろうか。





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