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[[詩百篇第10巻]]>60番*
*原文
Ie pleure Nisse&sup(){1}, [[Mannego]]&sup(){2}, Pize&sup(){3}, Gennes,
Sauone, Sienne, [[Capue]]&sup(){4}, Modene&sup(){5}, Malte:
Le dessus sang & glaiue par [[estrennes>estrenne]],
Feu, trembler terre&sup(){6}, eau, malheureuse&sup(){7} [[nolte]]&sup(){8}.
**異文
(1) Nisse : Nice 1627Ma 1627Di 1672Ga 1800AD
(2) Mannego : Monnego 1568X 1590Ro, Manuego 1627Ma 1627Di, Monaco 1672Ga, manége 1800AD
(3) Pize : pise et 1800AD
(4) Capue : Capuë 1597Br 1606PR 1607PR 1610Po 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1716PR 1840, Capoue 1800AD
(5) Modene : Mo ene 1568B
(6) terre : terro 1649Xa, Terre 1672Ga
(7) malheureuse : mal-heureuse 1610Po 1668P, mal'heureuse 1605sn 1628dR 1649Xa 1649Ca 1650Le 1668A, Malheureuses 1800AD
(8) nolte : notes 1800AD
(注記)1800AD は匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)での異文。なお、Malheureuses notes は 1800AD の解釈の中では Maleureuse note と引用されている。
**校訂
Nisse は Nice の方が綴りとしては正しいが、プロヴァンス語名のニッサ(Nissa)を踏まえて意図的にそう綴った可能性もあるだろう。
Mannego を Monaco と同一視する従来の読み方が正しいのなら、1568Xに見られる Monnego の方が正しかったのかもしれない。
*日本語訳
私は涙する。ニース、モナコ、ピサ、ジェノヴァ、
サヴォーナ、シエーナ、カプア、モデナ、マルタ、
新年の贈り物として上方に血と剣、
火、地震、水、不吉にして望まれざるもの。
**訳について
1、2行目については[[マリニー・ローズ]]の読みを採用した場合、「モナコ」が「マレンゴ」になるという違いはあるものの、ほぼ異論はないといってよいだろう。
3行目については、[[estrenne]] の訳し方が難しい。ここでは[[エドガー・レオニ]]や[[ピーター・ラメジャラー]]に従い、本来の意味で訳したが、「呪いとして」とも訳せる。あるいは、[[ジャン=ポール・クレベール]]が言うように「予兆として空中に血と剣(が見られる)」という意味なのかもしれない。
山根訳はほとんど問題ないが、[[nolte]] を「抵抗」と訳すのは、[[エリカ・チータム]]の reluctance (不本意)という英訳を踏まえたものにしても、若干ニュアンスが異なるように思える。大乗訳も似たようなもので、nolte を「結末」と訳すこと以外はおおむね許容範囲だろう。
ただし、[[nolte]] についてはあまり説得的な読みが存在するとは言えず、どのような語に引きつけて理解するかによって様々な読み方がありうるだろう。
*信奉者側の見解
匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)では、1799年1月頃にフランスのシャンピオネ将軍らによってイタリア全土が征服されたときの情景とされている((L’Avenir..., pp.51-52))。
[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]といった19世紀の論者たちは、この詩の解釈を行っていない。
[[アンドレ・ラモン]]は第二次世界大戦中の描写とした((Lamont [1943] p.198))。
[[ロルフ・ボズウェル]]は新年を迎えたときに起こる戦争の描写とした((Boswell [1943] p.272))。
[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は近未来に想定していた第三次世界大戦で、イタリアが侵略されることの予言とした((Fontbrune [1980/1982]))。
[[エリカ・チータム]]は20世紀末の事件に関する予言かもしれないとしていた((Cheetham [1990]))。
[[五島勉]]は『[[ノストラダムスの大予言II]]』の時点では、1990年代のいずれかの年の初めに、挙げられている都市が全滅することと解釈した((五島『ノストラダムスの大予言II』pp.136, 220))。湾岸戦争開戦直前に出された『[[ノストラダムスの大予言・中東編]]』では、当時の中東危機に関連し、イラクないし他のアラブの過激国によるミサイルが、挙げられている都市に打ち込まれるおそれがあると解釈していた((五島『ノストラダムスの大予言・中東編』pp.174-176))。
*同時代的な視点
[[ピーター・ラメジャラー]]は、『[[ミラビリス・リベル]]』に描かれた地中海経由でのイスラーム勢力の南欧侵攻の予言が下敷きになっているとした((Lemesurier [2003b]))。
#ref(Nisse.PNG)
【画像】関連する地名(スピネッタ・マレンゴはナポレオンの「マレンゴの戦い」でも知られる場所。近隣にはボスコ・マレンゴがあるが省略した)
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#comment
[[詩百篇第10巻]]>60番*
*原文
Ie pleure Nisse&sup(){1}, [[Mannego]]&sup(){2}, Pize&sup(){3}, Gennes,
Sauone, Sienne, [[Capue]]&sup(){4}, Modene&sup(){5}, Malte:
Le dessus sang & glaiue par [[estrennes>estrenne]],
Feu, trembler terre&sup(){6}, eau, malheureuse&sup(){7} [[nolte]]&sup(){8}.
**異文
(1) Nisse : Nice 1627Ma 1627Di 1672Ga 1800AD
(2) Mannego : Monnego 1568X 1590Ro, Manuego 1627Ma 1627Di, Monaco 1672Ga, manége 1800AD
(3) Pize : pise et 1800AD
(4) Capue : Capuë 1597Br 1606PR 1607PR 1610Po 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1716PR 1720To 1840, Capoue 1800AD
(5) Modene : Mo ene 1568B
(6) terre : terro 1649Xa, Terre 1672Ga
(7) malheureuse : mal-heureuse 1610Po 1668P, mal'heureuse 1605sn 1628dR 1649Xa 1649Ca 1650Le 1668A, Malheureuses 1800AD
(8) nolte : notes 1800AD
(注記)1800AD は匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)での異文。なお、Malheureuses notes は 1800AD の解釈の中では Maleureuse note と引用されている。
**校訂
Nisse は Nice の方が綴りとしては正しいが、プロヴァンス語名のニッサ(Nissa)を踏まえて意図的にそう綴った可能性もあるだろう。
Mannego を Monaco と同一視する従来の読み方が正しいのなら、1568Xに見られる Monnego の方が正しかったのかもしれない。
*日本語訳
私は涙する。ニース、モナコ、ピサ、ジェノヴァ、
サヴォーナ、シエーナ、カプア、モデナ、マルタ、
新年の贈り物として上方に血と剣、
火、地震、水、不吉にして望まれざるもの。
**訳について
1、2行目については[[マリニー・ローズ]]の読みを採用した場合、「モナコ」が「マレンゴ」になるという違いはあるものの、ほぼ異論はないといってよいだろう。
3行目については、[[estrenne]] の訳し方が難しい。ここでは[[エドガー・レオニ]]や[[ピーター・ラメジャラー]]に従い、本来の意味で訳したが、「呪いとして」とも訳せる。あるいは、[[ジャン=ポール・クレベール]]が言うように「予兆として空中に血と剣(が見られる)」という意味なのかもしれない。
山根訳はほとんど問題ないが、[[nolte]] を「抵抗」と訳すのは、[[エリカ・チータム]]の reluctance (不本意)という英訳を踏まえたものにしても、若干ニュアンスが異なるように思える。大乗訳も似たようなもので、nolte を「結末」と訳すこと以外はおおむね許容範囲だろう。
ただし、[[nolte]] についてはあまり説得的な読みが存在するとは言えず、どのような語に引きつけて理解するかによって様々な読み方がありうるだろう。
*信奉者側の見解
匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年)では、1799年1月頃にフランスのシャンピオネ将軍らによってイタリア全土が征服されたときの情景とされている((L’Avenir..., pp.51-52))。
[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]といった19世紀の論者たちは、この詩の解釈を行っていない。
[[アンドレ・ラモン]]は第二次世界大戦中の描写とした((Lamont [1943] p.198))。
[[ロルフ・ボズウェル]]は新年を迎えたときに起こる戦争の描写とした((Boswell [1943] p.272))。
[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は近未来に想定していた第三次世界大戦で、イタリアが侵略されることの予言とした((Fontbrune [1980/1982]))。
[[エリカ・チータム]]は20世紀末の事件に関する予言かもしれないとしていた((Cheetham [1990]))。
[[五島勉]]は『[[ノストラダムスの大予言II]]』の時点では、1990年代のいずれかの年の初めに、挙げられている都市が全滅することと解釈した((五島『ノストラダムスの大予言II』pp.136, 220))。湾岸戦争開戦直前に出された『[[ノストラダムスの大予言・中東編]]』では、当時の中東危機に関連し、イラクないし他のアラブの過激国によるミサイルが、挙げられている都市に打ち込まれるおそれがあると解釈していた((五島『ノストラダムスの大予言・中東編』pp.174-176))。
*同時代的な視点
[[ピーター・ラメジャラー]]は、『[[ミラビリス・リベル]]』に描かれた地中海経由でのイスラーム勢力の南欧侵攻の予言が下敷きになっているとした((Lemesurier [2003b]))。
#ref(Nisse.PNG)
【画像】関連する地名(スピネッタ・マレンゴはナポレオンの「マレンゴの戦い」でも知られる場所。近隣にはボスコ・マレンゴがあるが省略した)
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