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[[詩百篇第1巻]]>31番*
*原文
Tant d'ans&sup(){1} les guerres en Gaule&sup(){2} dureront,
Oultre la course&sup(){3} du [[Castulon]] monarque&sup(){4},
Victoire incerte trois grands couronneront&sup(){5}
Aigle&sup(){6}, coq, lune, lyon, soleil&sup(){7} en marque.
**異文
(1) Tant d'ans : Tendans 1588-89 1612Me, Tantd'ans 1590Ro, Tant dans 1772Ri
(2) les guerres en Gaule : en Gaule les guerres 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Di 1628dR 1627Ma 1644Hu 1649Xa 1650Ri 1653AB 1981EB 1665Ba 1716PR
(3) course : corse 1557B, tour 1589Rg, cource 1627Di
(4) monarque : Monarque 1588-89 1590Ro 1590SJ 1612Me 1644Hu 1649Ca 1650Le 1667Wi 1668 1672Ga, Monarque ? 1653AB 1665Ba
(5) couronneront : courouneront 1590SJ 1649Ca
(6) Aigle : Aigie 1588Rf
(7) &u(){coq, lune, lyon, soleil} 1555 1557U 1568 1772Ri : &u(){coq, une, lyon, soleil} 1557B, &u(){Coq, Lune, Lyon, Soleil} 1588-89 1589PV 1590SJ 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Di 1627Ma 1628dR 1644Hu 1649Ca 1650Le 1650Ri 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1981EB, &u(){Coq, Lune, Lyon, soleil} 1612Me, &u(){coq, Lune, Lyon, Soleil} 1649Xa, &u(){Lune, Lyon, Soleil} 1653AB 1665Ba
*日本語訳
幾年にもわたりガリアでは戦争が続くだろう、
カストゥロの君主の生涯(の長さ)を超えて。
不確かな勝利で、三人の大物は戴冠するだろう。
鷲、雄鶏、月、獅子、太陽は印をつけられる。
**訳について
大乗訳も山根訳も3行目まではおおむね問題ないが、いずれも4行目が微妙である。
4行目「鷲 鶏 月 ライオンは 太陽にしるしをあらわすだろう」((大乗 [1975] p.53))は信奉者側でしばしば見られる読み方だが、妥当性は疑問である。仮にどこかで区切るのだとすれば、前半律(各行の最初の四音節)の終わりである「月」まででひとまとまりとすること方がまだ妥当といえるのではないだろうか。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、あるスペイン王が死んだあとでも3人の偉人のいずれかが不確かな勝利をつかむまで戦いが続くことの予言とした。その3人とは、4行目で表されている神聖ローマ皇帝カール5世(鷲)、フランス王アンリ2世(雄鶏)、オスマン帝国のスレイマン大帝(月)だろうとし、その出来事は太陽が獅子宮に入っているときに起こるとしたものだろうと解釈した((Garencieres [1672]))。
[[アナトール・ル・ペルチエ]](1867年)は、[[Castulon]]をラテン語の Castula (ゆったりとした長衣、チュニック)と解釈し、そうした衣をまとった姿で現される自由の女神とした。そして、不確かな勝利で戴冠する3人の偉人とは1792年から1866年の間にフランスに君臨した3つの王朝を指すとした。それはナポレオン家(「鷲」)、オルレアン家(「革命派の雄鶏」、ル・ペルチエは月を[[イスラーム]]と結びつけ[[反キリスト]]の象徴とし、ここでは革命派を示すとした)、ブルボン家(「カトリックの獅子」、ル・ペルチエは太陽をキリスト教の象徴とした)の3つであるという((Le Pelletier [1867a] pp.170-171))。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)や[[ジェイムズ・レイヴァー]](1952年)はその解釈を基本線で踏襲した((Fontbrune (1938)[1939] p.29, レイヴァー [1999] p.262))。
[[エミール・リュイール]](1938年)もフランス革命以降の支配体制の交代と解釈したが、彼の場合、帝政(「鷲」)、共和政(「雄鶏」)、共産主義政権(「月」)、王政(「獅子」)と理解し、「太陽」はそれらのあとにやってくる光とした。光というのは曖昧な解釈だが、彼はフランスが王政復古し、アンリ5世が即位するという文脈でこの解釈を展開したので、それのことだろう((Ruir [1938] p.113))。
[[アンドレ・ラモン]](1943年)は近未来の予言とし、フランスで内戦が続いたあと、帝政(「鷲」)、共和政(「雄鶏」)、人民戦線政府(「月」)、独裁政治(「獅子」)のいずれでもなく王政(「太陽」)が採用されることになる予言とした((Lamont [1943] pp.293-294))。
[[ヘンリー・C・ロバーツ]](1947年)は第二次世界大戦と解釈し、アメリカ(鷲)、フランス(雄鶏)、中華民国(月)、イギリス(獅子)が日本(太陽)に勝利したことと解釈した((Roberts (1947)[1949]))。
[[五島勉]](1973年)もこの解釈を踏襲しつつ、ロバーツが明記していなかった3人の偉人を、ドイツ降伏の段階で英雄となったアイゼンハワー、スターリン、ド・ゴールとした((五島『ノストラダムスの大予言』pp.98-99))。[[藤島啓章]](1989年)はこれらの解釈をほぼ踏襲した((藤島『ノストラダムスの大警告』))。
[[エリカ・チータム]](1973年)はスペインが君主制を放棄したあとに勃発した第二次世界大戦の予言とし、不確かな勝利を得る3人の偉人とはアメリカ(鷲)、フランス(雄鶏)、イギリス(獅子)で、日本が降伏し終戦に至った8月は太陽が獅子宮にあるときだったと解釈した((Cheetham [1973]))。
[[セルジュ・ユタン]](1972年)は普仏戦争(1870年 - 1871年)、第一次世界大戦(1914年 - 1918年)、第二次世界大戦(1939年 - 1945年)の予言とし、3人の偉人はアメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチル、ソ連のスターリンとした((Hutin [1972/1978/2002]))。
*同時代的な視点
[[ルイ・シュロッセ]]は、1521年にマルティン・ルターとローマ教皇レオ10世の断絶が決定的になったことがモデルとした((Schlosser [1986] p.47))。ただし、細かい詩句との対応は行っていない。
[[ピエール・ブランダムール]]はカストゥロの君主を神聖ローマ皇帝カール5世(スペイン王カルロス1世)とし、2行目の outre は彼の銘句「より遠くへ」(Plus ultra)に対応するとした。つまり前半はフランスの戦争がカール5世の治世の後にも続くことを言ったものだという。
鷲と雄鶏について、ブランダムールは、同時代の劇作家エチエンヌ・ジョデルが神聖ローマ帝国とフランスの対立を「鷲と雄鶏」で表現していた例を挙げる一方、むしろ空に現れた驚異の描写で、月と太陽の間に現れた幻獣ではないかとした((Brind'Amour [1996]))。[[高田勇]]・[[伊藤進]]もそれを踏まえて紹介した((高田・伊藤[1999]))。
[[ピーター・ラメジャラー]]も前半をカール5世とし、彼の事績を未来に投影したものとした。4行目は神聖ローマ帝国(鷲)、フランス(雄鶏)、イングランド(獅子)、オスマン帝国(月)、ローマ(太陽)の対立関係や小競り合いの様子とした((Lemesurier [2003b]))。
[[ジャン=ポール・クレベール]]は、ブランダムールの読み方を踏襲しつつも、4行目については「鷲、雄鶏」「月、獅子、太陽」という2つのグループに分け、前半を鷲と雄鶏の対立、後半を星位とする可能性を示した((Clébert [2003]))。
この詩に関して言えば、信奉者側のガランシエールの読み方も案外悪くないように思える。
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&bold(){コメントらん}
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- 1479年に誕生したスペイン王国は1482年に対グラナダ戦争を開始し、1492年に陥落させた。この時点でイベリア半島にある王国はスペイン、ポルトガル、ナヴァーラの三カ国だった。カスティーリャ王女イザベルの在位は30年、フランス革命戦争、ナポレオン戦争、スペイン継承戦争の期間を合計すると35年。4行は雄鶏(フランス国民)、獅子(英国)、鷲(神聖ローマ帝国)、太陽、月(経済)に影響を与えるという意味。 -- とある信奉者 (2012-02-29 22:26:25)
#comment
[[詩百篇第1巻]]>31番*
*原文
Tant d'ans&sup(){1} les guerres en Gaule&sup(){2} dureront,
Oultre la course&sup(){3} du [[Castulon]] monarque&sup(){4},
Victoire incerte trois grands couronneront&sup(){5}
Aigle&sup(){6}, coq, lune, lyon, soleil&sup(){7} en marque.
**異文
(1) Tant d'ans : Tendans 1588-89 1612Me, Tantd'ans 1590Ro, Tant dans 1772Ri
(2) les guerres en Gaule : en Gaule les guerres 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Di 1628dR 1627Ma 1644Hu 1649Xa 1650Ri 1653AB 1981EB 1665Ba 1716PR
(3) course : corse 1557B, tour 1589Rg, cource 1627Di
(4) monarque : Monarque 1588-89 1590Ro 1590SJ 1612Me 1644Hu 1649Ca 1650Le 1667Wi 1668 1672Ga, Monarque ? 1653AB 1665Ba
(5) couronneront : courouneront 1590SJ 1649Ca
(6) Aigle : Aigie 1588Rf
(7) &u(){coq, lune, lyon, soleil} 1555 1557U 1568 1772Ri : &u(){coq, une, lyon, soleil} 1557B, &u(){Coq, Lune, Lyon, Soleil} 1588-89 1589PV 1590SJ 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Di 1627Ma 1628dR 1644Hu 1649Ca 1650Le 1650Ri 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1981EB, &u(){Coq, Lune, Lyon, soleil} 1612Me, &u(){coq, Lune, Lyon, Soleil} 1649Xa, &u(){Lune, Lyon, Soleil} 1653AB 1665Ba
*日本語訳
幾年にもわたりガリアでは戦争が続くだろう、
カストゥロの君主の生涯(の長さ)を超えて。
不確かな勝利で、三人の大物は戴冠するだろう。
鷲、雄鶏、月、獅子、太陽は印をつけられる。
**訳について
大乗訳も山根訳も3行目まではおおむね問題ないが、いずれも4行目が微妙である。
4行目「鷲 鶏 月 ライオンは 太陽にしるしをあらわすだろう」((大乗 [1975] p.53))は信奉者側でしばしば見られる読み方だが、妥当性は疑問である。仮にどこかで区切るのだとすれば、前半律(各行の最初の四音節)の終わりである「月」まででひとまとまりとすること方がまだ妥当といえるのではないだろうか。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、あるスペイン王が死んだあとでも3人の偉人のいずれかが不確かな勝利をつかむまで戦いが続くことの予言とした。その3人とは、4行目で表されている神聖ローマ皇帝カール5世(鷲)、フランス王アンリ2世(雄鶏)、オスマン帝国のスレイマン大帝(月)だろうとし、その出来事は太陽が獅子宮に入っているときに起こるとしたものだろうと解釈した((Garencieres [1672]))。
[[アナトール・ル・ペルチエ]](1867年)は、[[Castulon]]をラテン語の Castula (ゆったりとした長衣、チュニック)と解釈し、そうした衣をまとった姿で現される自由の女神とした。そして、不確かな勝利で戴冠する3人の偉人とは1792年から1866年の間にフランスに君臨した3つの王朝を指すとした。それはナポレオン家(「鷲」)、オルレアン家(「革命派の雄鶏」、ル・ペルチエは月を[[イスラーム]]と結びつけ[[反キリスト]]の象徴とし、ここでは革命派を示すとした)、ブルボン家(「カトリックの獅子」、ル・ペルチエは太陽をキリスト教の象徴とした)の3つであるという((Le Pelletier [1867a] pp.170-171))。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)や[[ジェイムズ・レイヴァー]](1952年)はその解釈を基本線で踏襲した((Fontbrune (1938)[1939] p.29, レイヴァー [1999] p.262))。
[[エミール・リュイール]](1938年)もフランス革命以降の支配体制の交代と解釈したが、彼の場合、帝政(「鷲」)、共和政(「雄鶏」)、共産主義政権(「月」)、王政(「獅子」)と理解し、「太陽」はそれらのあとにやってくる光とした。光というのは曖昧な解釈だが、彼はフランスが王政復古し、アンリ5世が即位するという文脈でこの解釈を展開したので、それのことだろう((Ruir [1938] p.113))。
[[アンドレ・ラモン]](1943年)は近未来の予言とし、フランスで内戦が続いたあと、帝政(「鷲」)、共和政(「雄鶏」)、人民戦線政府(「月」)、独裁政治(「獅子」)のいずれでもなく王政(「太陽」)が採用されることになる予言とした((Lamont [1943] pp.293-294))。
[[ヘンリー・C・ロバーツ]](1947年)は第二次世界大戦と解釈し、アメリカ(鷲)、フランス(雄鶏)、中華民国(月)、イギリス(獅子)が日本(太陽)に勝利したことと解釈した((Roberts (1947)[1949]))。
[[五島勉]](1973年)もこの解釈を踏襲しつつ、ロバーツが明記していなかった3人の偉人を、ドイツ降伏の段階で英雄となったアイゼンハワー、スターリン、ド・ゴールとした((五島『ノストラダムスの大予言』pp.98-99))。[[藤島啓章]](1989年)はこれらの解釈をほぼ踏襲した((藤島『ノストラダムスの大警告』))。
[[エリカ・チータム]](1973年)はスペインが君主制を放棄したあとに勃発した第二次世界大戦の予言とし、不確かな勝利を得る3人の偉人とはアメリカ(鷲)、フランス(雄鶏)、イギリス(獅子)で、日本が降伏し終戦に至った8月は太陽が獅子宮にあるときだったと解釈した((Cheetham [1973]))。
[[セルジュ・ユタン]](1972年)は普仏戦争(1870年 - 1871年)、第一次世界大戦(1914年 - 1918年)、第二次世界大戦(1939年 - 1945年)の予言とし、3人の偉人はアメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチル、ソ連のスターリンとした((Hutin [1972/1978/2002]))。
*同時代的な視点
[[ルイ・シュロッセ]]は、1521年にマルティン・ルターとローマ教皇レオ10世の断絶が決定的になったことがモデルとした((Schlosser [1986] p.47))。ただし、細かい詩句との対応は行っていない。
[[ピエール・ブランダムール]]はカストゥロの君主を神聖ローマ皇帝カール5世(スペイン王カルロス1世)とし、2行目の outre は彼の銘句「より遠くへ」(Plus ultra)に対応するとした。つまり前半はフランスの戦争がカール5世の治世の後にも続くことを言ったものだという。
鷲と雄鶏について、ブランダムールは、同時代の劇作家エチエンヌ・ジョデルが神聖ローマ帝国とフランスの対立を「鷲と雄鶏」で表現していた例を挙げる一方、むしろ空に現れた驚異の描写で、月と太陽の間に現れた幻獣ではないかとした((Brind'Amour [1996]))。[[高田勇]]・[[伊藤進]]もそれを踏まえて紹介した((高田・伊藤[1999]))。
[[ピーター・ラメジャラー]]も前半をカール5世とし、彼の事績を未来に投影したものとした。4行目は神聖ローマ帝国(鷲)、フランス(雄鶏)、イングランド(獅子)、オスマン帝国(月)、ローマ(太陽)の対立関係や小競り合いの様子とした((Lemesurier [2003b]))。
[[ジャン=ポール・クレベール]]は、ブランダムールの読み方を踏襲しつつも、4行目については「鷲、雄鶏」「月、獅子、太陽」という2つのグループに分け、前半を鷲と雄鶏の対立、後半を星位とする可能性を示した((Clébert [2003]))。
この詩に関して言えば、信奉者側のガランシエールの読み方も案外悪くないように思える。
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- 1479年に誕生したスペイン王国は1482年に対グラナダ戦争を開始し、1492年に陥落させた。この時点でイベリア半島にある王国はスペイン、ポルトガル、ナヴァーラの三カ国だった。カスティーリャ王女イザベルの在位は30年、フランス革命戦争、ナポレオン戦争、スペイン継承戦争の期間を合計すると35年。4行は雄鶏(フランス国民)、獅子(英国)、鷲(神聖ローマ帝国)、太陽、月(経済)に影響を与えるという意味。 -- とある信奉者 (2012-02-29 22:26:25)