詩百篇第8巻90番

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[[詩百篇第8巻]]>90番* *原文 Quand des [[croisez>croiser]]&sup(){1} vn trouué&sup(){2} de sens&sup(){3} trouble En lieu du [[sacre]] verra vn bœuf&sup(){4} cornu Par vierge&sup(){5} porc son lieu lors sera comble&sup(){6}, Par roy&sup(){7} plus ordre ne sera soustenu. **異文 (1) des croisez : les croisez 1605sn 1627Di (2) trouué : treuué 1627Ma 1627Di (3) sens : sene 1667Wi 1668P 1720To (4) bœuf : Bœuf 1672Ga (5) vierge : Vierge 1650Ri (6) comble : double 1672Ga, comblé 1716PR (7) roy 1568X 1568A 1568B 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1650Mo : Roy &italic(){T.A.Eds.} **校訂  1行目 trouble と3行目 comble では韻を踏んでいないとして、[[ロジェ・プレヴォ]]は comble を ouble に、[[ジャン=ポール・クレベール]]は couble にそれぞれ校訂した。 *日本語訳 意識に混乱の見られる十字軍参加者の一人が、 聖職者の座に角の生えた牡牛を見るであろう時に、 乙女の代わりに豚がその座を占めるだろう。 王によって修道会はもはや支持されないだろう。 **訳について  3行目の par を pour と同じで対応関係を示すものと見たのは、[[ピーター・ラメジャラー]]の読みに従ったもの。「乙女によって豚がその座を占めるだろう」とも訳せる。  4行目 ordre は「修道会」以外に「騎士団」「秩序」などとも訳せる。  既存の訳についてコメントしておく。  大乗訳で1行目に相当する「十字架の受難が人々にあるとき/迷いの心があって」((大乗 [1975] p.252))は、「受難」に当たる言葉がどこから出てきたのか不明。「人々」というのも、十字軍参加者のうちの一人(un des croisez)の訳として不適切。  同3行目「乙女なる豚によって地位が二重になり」も不適切。最後の部分は採用した異文によるものだからまだ良いとしても、「乙女なる豚」は意味不明。  山根訳1行目「十字の者どもの気がおかしいのがわかるとき」((山根[1988]))は、大乗訳同様、そのうちの一人という意味合いが完全に抜け落ちており、不適切。  同3行目「処女のおかげでやがて豚の席がいっぱいになり」は、par の処理が不適切なのは大乗訳と同じ。また、comble は現代語では「一杯になる、ぎゅうづめになる」などの意味だが、中期フランス語では、単に「(空いている所を)埋める」の意味もあった。乙女も豚も単数形なのだし、多くの豚が登場するかのように読める訳は不適切だろう。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、ある騎士団の一員が錯乱し、教会に角の生えた牛が入り込むことなどを目撃するという事件などが、将来に起こると解釈した((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀までこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]の著書には載っていない。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、近未来における反キリストの誕生と解釈した。十字架の者たち、つまりキリスト教徒たちの中から、反体制的な感覚の者が現われ、邪教の象徴である黄金の牡牛を聖なる場所で示すことなどとした((Fontbrune [1939] p.267))。  [[アンドレ・ラモン]]は1941年の情勢と解釈した。croisez を「十字を付けた者たち」と解釈し、錯乱するその一人とは、1941年5月にイギリスに単独飛行し捕らえられたルドルフ・ヘスのこととした。また、2行目の en lieu de sacre を聖地と解釈し、同年6月に聖地エルサレムにも近いシリアへ、英仏軍が侵攻したことと解釈した((Lamont [1943] p.232))。  [[セルジュ・ユタン]]は、革命派の中で反教会主義が増大することと解釈した((Hutin [1978]))。  [[ジョン・ホーグ]]は、イラクがクウェートに侵攻した湾岸危機の予言で、詩番号の90は1990年に対応するとしていた((Hogue [1997/1999]))。 *同時代的な視点  [[ロジェ・プレヴォ]]は、14世紀のテンプル騎士修道会事件と関連付けた。  テンプル騎士修道会の起源が十字軍にあったことはよく知られており、その最後の総長ジャック・ド・モレー(Jacques de Molay)の行動が錯乱したものであったことは、多くの歴史家の見解が一致している。  そして、尋問されていたときの騎士修道会士たちは崇拝の対象として祭り上げられており、彼らを聖なる存在と崇める者がいた一方で、猫、牛、豚などの四足の動物の姿に見立てる者たちがいた。  彼らの騎士修道会(ordre)を、フランスのフィリップ4世は長らく支持してきたが、14世紀初頭に転換し、異端という嫌疑をかけて修道会士の一斉逮捕に踏み切った((Prévost [1999] pp.38-39))。  [[ピーター・ラメジャラー]]は、『[[ミラビリス・リベル]]』に収録された偽ビセンテの予言との関連性を指摘した。  そこでは、未来におけるヨーロッパへの侵攻の凶兆がいくつか挙げられており、その一つが「教会で牛が鳴き声をあげること」であった((Lemesurier [2003b]))。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。なお、当「大事典」としては、以下に投稿されたコメントの信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 - ワイマール共和国のヒンデンブルグがナチスのヒトラー総統を見ることを予言。十字軍はカギ十字のナチを皮肉な比喩。角の生えた牡牛は、牡牛座生まれで、大統領と首相を兼ねた総統になったヒトラー(1933年)を指している。“1933年8月27日、ヒトラーとともに「タンネンベルクの戦い記念館」での式典に出席。・・・ヒンデンブルグは1934年7月末頃にはたびたび昏睡状態に陥るようになる”―wikipediaより。 -- とある信奉者 (2012-12-22 23:50:13)
[[詩百篇第8巻]]>90番* *原文 Quand des [[croisez>croiser]]&sup(){1} vn trouué&sup(){2} de sens&sup(){3} trouble En lieu du [[sacre]] verra vn bœuf&sup(){4} cornu Par vierge&sup(){5} porc son lieu lors sera comble&sup(){6}, Par roy&sup(){7} plus ordre ne sera soustenu. **異文 (1) des croisez : les croisez 1605sn 1627Di (2) trouué : treuué 1627Ma 1627Di (3) sens : sene 1667Wi 1668P 1720To (4) bœuf : Bœuf 1672Ga (5) vierge : Vierge 1650Ri (6) comble : double 1672Ga, comblé 1716PR (7) roy 1568X 1568A 1568B 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1650Mo : Roy &italic(){T.A.Eds.} **校訂  1行目 trouble と3行目 comble では韻を踏んでいないとして、[[ロジェ・プレヴォ]]は comble を ouble に、[[ジャン=ポール・クレベール]]は couble にそれぞれ校訂した。 *日本語訳 意識に混乱の見られる十字軍参加者の一人が、 聖職者の座に角の生えた牡牛を見るであろう時に、 乙女の代わりに豚がその座を占めるだろう。 王によって修道会はもはや支持されないだろう。 **訳について  3行目の par を pour と同じで対応関係を示すものと見たのは、[[ピーター・ラメジャラー]]の読みに従ったもの。「乙女によって豚がその座を占めるだろう」とも訳せる。  4行目 ordre は「修道会」以外に「騎士団」「秩序」などとも訳せる。  既存の訳についてコメントしておく。  大乗訳で1行目に相当する「十字架の受難が人々にあるとき/迷いの心があって」((大乗 [1975] p.252))は、「受難」に当たる言葉がどこから出てきたのか不明。「人々」というのも、十字軍参加者のうちの一人(un des croisez)の訳として不適切。  同3行目「乙女なる豚によって地位が二重になり」も不適切。最後の部分は採用した異文によるものだからまだ良いとしても、「乙女なる豚」は意味不明。  山根訳1行目「十字の者どもの気がおかしいのがわかるとき」((山根[1988]))は、大乗訳同様、そのうちの一人という意味合いが完全に抜け落ちており、不適切。  同3行目「処女のおかげでやがて豚の席がいっぱいになり」は、par の処理が不適切なのは大乗訳と同じ。また、comble は現代語では「一杯になる、ぎゅうづめになる」などの意味だが、中期フランス語では、単に「(空いている所を)埋める」の意味もあった。乙女も豚も単数形なのだし、多くの豚が登場するかのように読める訳は不適切だろう。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、ある騎士団の一員が錯乱し、教会に角の生えた牛が入り込むことなどを目撃するという事件などが、将来に起こると解釈した((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀までこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]の著書には載っていない。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、近未来における反キリストの誕生と解釈した。十字架の者たち、つまりキリスト教徒たちの中から、反体制的な感覚の者が現われ、邪教の象徴である黄金の牡牛を聖なる場所で示すことなどとした((Fontbrune [1939] p.267))。  [[アンドレ・ラモン]]は1941年の情勢と解釈した。croisez を「十字を付けた者たち」と解釈し、錯乱するその一人とは、1941年5月にイギリスに単独飛行し捕らえられたルドルフ・ヘスのこととした。また、2行目の en lieu de sacre を聖地と解釈し、同年6月に聖地エルサレムにも近いシリアへ、英仏軍が侵攻したことと解釈した((Lamont [1943] p.232))。  [[セルジュ・ユタン]]は、革命派の中で反教会主義が増大することと解釈した((Hutin [1978]))。  [[ジョン・ホーグ]]は、イラクがクウェートに侵攻した湾岸危機の予言で、詩番号の90は1990年に対応するとしていた((Hogue [1997/1999]))。 *同時代的な視点  [[ロジェ・プレヴォ]]は、14世紀のテンプル騎士修道会事件と関連付けた。  テンプル騎士修道会の起源が十字軍にあったことはよく知られており、その最後の総長ジャック・ド・モレー(Jacques de Molay)の行動が錯乱したものであったことは、多くの歴史家の見解が一致している。  そして、尋問されていたときの騎士修道会士たちは崇拝の対象として祭り上げられており、彼らを聖なる存在と崇める者がいた一方で、猫、牛、豚などの四足の動物の姿に見立てる者たちがいた。  彼らの騎士修道会(ordre)を、フランスのフィリップ4世は長らく支持してきたが、14世紀初頭に転換し、異端という嫌疑をかけて修道会士の一斉逮捕に踏み切った((Prévost [1999] pp.38-39))。  [[ピーター・ラメジャラー]]は、『[[ミラビリス・リベル]]』に収録された偽ビセンテの予言との関連性を指摘した。  そこでは、未来におけるヨーロッパへの侵攻の凶兆がいくつか挙げられており、その一つが「教会で牛が鳴き声をあげること」であった((Lemesurier [2003b]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - ワイマール共和国のヒンデンブルグがナチスのヒトラー総統を見ることを予言。十字軍はカギ十字のナチを皮肉な比喩。角の生えた牡牛は、牡牛座生まれで、大統領と首相を兼ねた総統になったヒトラー(1933年)を指している。“1933年8月27日、ヒトラーとともに「タンネンベルクの戦い記念館」での式典に出席。・・・ヒンデンブルグは1934年7月末頃にはたびたび昏睡状態に陥るようになる”―wikipediaより。 -- とある信奉者 (2012-12-22 23:50:13)

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