詩百篇第8巻16番

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[[百詩篇第8巻]]>16番 *原文 Au&sup(){1} lieu que HIERON&sup(){2} feit&sup(){3} sa&sup(){4} nef fabriquer&sup(){5}, Si grand deluge&sup(){6} sera & si subite, Qu'on n'aura&sup(){7} lieu ne terres&sup(){8} s'atacquer&sup(){9} L'onde monter [[Fesulan]] Olympique. **異文 (1) Au : An 1611B (2) HIERON : Hieron 1590Ro 1627 1644 1649Ca 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840, HIESON 1605 1649Xa, Hieson 1672 (3) feit 1568 1597 1603Mo 1605 1611 1628 1649Xa : fait &italic(){T.A.Eds.}(&italic(){sauf} : fit 1672) (4) sa nef : la nef 1840 (5) fabriquer : fabriques 1610 (6) deluge : Deluge 1672 (7) n'aura : n'arau 1627 (8) terres : terre 1568A 1590Ro 1600 1603Mo 1644 1650Ri 1653 1665 1668P 1840, terre' 1627, Terre 1672 (9) s'atacquer : satacquer 1568A, attaquer 1627, sattaquer 1672 *日本語訳 ヒエロニュムスがその船を作らせるであろう場所に 洪水が起き、それがあまりに大きく急なので、 人々にはしがみつくべき場所も土地もないだろう。 水は[[ファエスラエ>フィエーゾレ]]のオリンピア記念建造物に達するだろう。 **訳について  3行目 s'attaquer は s'attacher と同一視する[[ジャン=ポール・クレベール]]の読み方に従った。DMF にはそのような語義はないが、逆に attacher の項になら attaquer の意味が載っている。  なお、現代フランス語で avoir lieu は「(事件などが)起こる、(催事などが)行われる」の意味だが、中期フランス語では「住む、生活する」(habiter, vivre)の意味になった((DMF p.384))。ここでは、クレベールに従って成句とは見なさなかったが、参考情報として指摘しておく。  山根訳は特に問題ない。3行目「あまりの凄まじさに攻撃する場所も土地も失ってしまう」((山根 [1988] p.257))は、上で述べたようにむしろ直訳としては正しい。  4行目「水はオリンポス山 フィエーゾレにまで達する」も、かつて[[エドガー・レオニ]]などもしていた読みなので、許容されるだろう。  大乗訳1行目「ジェイソンが舟をつくる場所に」((大乗 [1975] p.234))は、使役の意味が含まれていない点が不適切。「ジェイソン」は、[[ヘンリー・C・ロバーツ]]が Jieson と原文を改変していたことを踏まえた訳。[[ピーター・ラメジャラー]]もそうした読み方をしているが、古代ギリシア神話にひきつけるのなら「イアソン」と表記しておくべきだろう。  同4行目「波はオリンパスの神殿に よじのぼるだろう」はファエスラエ(フィエーゾレ)が訳に反映されていない。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、Hieson という異文を採用していたので、それをギリシア神話のイアソンと結びつけた。Fesulan はオリンピア山の何か有名な高い場所のことだろうとし、そこでイアソンがアルゴ船を作らせたと解釈した。しかし、それがどのような事件と結びつくのかについては何も語らなかった((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀に入るまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]の著書には載っていない。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、Hieron をギリシャ語からの造語として「全能者」(tout-puissant)つまり神と訳し、それが舟(教会)をつくった場所、つまりローマを大洪水が襲う予言と解釈した。Fesulan Olympique は「フィエーゾレ(にとって)のオリンポス山(にあたる山々)」と理解して、アッペンニーノ山脈と解釈した((Fontbrune [1939] p.277))。  [[アンドレ・ラモン]]は、Hieron をシュラクサイの暴君ヒエロニュムスとしたが、彼が船をつくる場所はローマとし、4行目もマックス・ド・フォンブリュヌの解釈に沿ってアッペンニーノと読んで、イタリアの大洪水と解釈した((Lamont [1943] p.351))。  [[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は、1980年代前半に起こると想定していた第三次世界大戦に先立って、ローマで革命が起こることと解釈し、4行目は、オリンピック競技のあと、それがフィレンツェ一帯(フィエーゾレはフィレンツェ近郊にある)にまで波及すると解釈した((Fontbrune [1980/1982]))。  [[セルジュ・ユタン]]は、プラトンが描くアトランティス滅亡のような大破局が20世紀末にあることと解釈した((Hutin [1981] p.87))。  [[ヴライク・イオネスク]]は、広島の原爆投下と解釈した。日本語版では詳述されていないので詳しいことはわからないが、アナグラムで「ヒロシマ」が隠されていると主張し、それが急速に広がり誰も助からないというのは、放射線のことだという。また、4行目の onde (水、海、波)は、水ではなく放射線の「波動」だとした((イオネスク [1993] p.204. 詩番号は7巻16番になっているが、単純な誤りだろう))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は、Hieron を後の異文のように Hieson と読み替え、ギリシア神話のイアソンと解釈し、『[[ミラビリス・リベル]]』にも世界終末に先立つ大洪水の描写があるので、それがモデルになっていると判断した((Lemesurier [2003b/2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は、ヒエロニュムスを紀元前3世紀のシュラクサイの暴君とし、彼が軍艦を建造させた場所、つまりシュラクサイ(シラクーザ)を洪水が襲うことではないかとした。4行目は、古代のオリンピア劇場があることでも有名なファエスラエ(フィエーゾレ)での洪水の描写とした。フィエーゾレはアルノ川に近く、たびたび洪水の被害にも遭ってきた。クレベールは、フィエーゾレがフィレンツェにも近いことから、この場合フィレンツェ一帯を指しているのではないかとした。  ほかに、クレベールは、『[[1561年向けの暦>Almanach, Pour L'an 1561.]]』に、「ヒエロニュムスの船」(navis Hieronis)という表現が出ていることも指摘した((Clébert [2003]))。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。 - イオネスク説を支持。アナグラムの話題が出たので投稿。 略されていたヒエロニュムスを元の形に直して四つの単語から Au HIERONYMUS sa nef → YROSHIMA usa UNE nef→ HIROSHIMA usa une nef 船は女性名詞だが数詞も女性形となってる。「ひとつの船」こそ、B-29 エノラゲイ。 オリンポス山の標高は2917mなのだがこれが原爆被害が3キロ以内が特に著しかったことを暗示。 2キロ以内の建物はすべて倒壊した。 -- とある信奉者 (2010-11-03 23:50:32) #comment
[[詩百篇第8巻]]>16番* *原文 Au&sup(){1} lieu que HIERON&sup(){2} feit&sup(){3} sa&sup(){4} nef fabriquer&sup(){5}, Si grand deluge&sup(){6} sera & si subite, Qu'on n'aura&sup(){7} lieu ne terres&sup(){8} s'atacquer&sup(){9} L'onde monter [[Fesulan]] Olympique. **異文 (1) Au : An 1611B (2) HIERON : Hieron 1590Ro 1627Ma 1627Di 1644Hu 1649Ca 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1720To 1840, HIESON 1605sn 1649Xa, Hieson 1672Ga (3) feit 1568 1591BR 1597Br 1603Mo 1605sn 1611 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Mo : fait &italic(){T.A.Eds.}(&italic(){sauf} : fit 1672Ga) (4) sa nef : la nef 1840 (5) fabriquer : fabriques 1606PR 1607PR, fabriqueur 1716PRb (6) deluge : Deluge 1672Ga (7) n'aura : n'arau 1627Di (8) terres : terre 1568X 1590Ro 1603Mo 1607PR 1610Po 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668P 1720To 1840, terre' 1627Di, Terre 1672Ga (9) s'atacquer : satacquer 1568X, attaquer 1627Di, sattaquer 1672Ga (注記)1627Diの3行目末尾は terre’attaquer となっている。 *日本語訳 ヒエロニュムスがその船を作らせるであろう場所に 洪水が起き、それがあまりに大きく急なので、 人々にはしがみつくべき場所も土地もないだろう。 水は[[ファエスラエ>フィエーゾレ]]のオリンピア記念建造物に達するだろう。 **訳について  3行目 s'attaquer は s'attacher と同一視する[[ジャン=ポール・クレベール]]の読み方に従った。DMF にはそのような語義はないが、逆に attacher の項になら attaquer の意味が載っている。  なお、現代フランス語で avoir lieu は「(事件などが)起こる、(催事などが)行われる」の意味だが、中期フランス語では「住む、生活する」(habiter, vivre)の意味になった((DMF p.384))。ここでは、クレベールに従って成句とは見なさなかったが、参考情報として指摘しておく。  既存の訳についてコメントしておく。  山根訳は特に問題ない。3行目「あまりの凄まじさに攻撃する場所も土地も失ってしまう」((山根 [1988] p.257))は、上で述べたようにむしろ直訳としては正しい。  4行目「水はオリンポス山 フィエーゾレにまで達する」も、かつて[[エドガー・レオニ]]などもしていた読みなので、許容されるだろう。  大乗訳1行目「ジェイソンが舟をつくる場所に」((大乗 [1975] p.234))は、使役の意味が含まれていない点が不適切。「ジェイソン」は、[[ヘンリー・C・ロバーツ]]が Jieson と原文を改変していたことを踏まえた訳。[[ピーター・ラメジャラー]]もそうした読み方をしているが、古代ギリシア神話にひきつけるのなら「イアソン」と表記しておくべきだろう。  同4行目「波はオリンパスの神殿に よじのぼるだろう」はファエスラエ(フィエーゾレ)が訳に反映されていない。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、Hieson という異文を採用していたので、それをギリシア神話のイアソンと結びつけた。Fesulan はオリンピア山の何か有名な高い場所のことだろうとし、そこでイアソンがアルゴ船を作らせたと解釈した。しかし、それがどのような事件と結びつくのかについては何も語らなかった((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀に入るまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]の著書には載っていない。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、Hieron をギリシャ語からの造語として「全能者」(tout-puissant)つまり神と訳し、それが舟(教会)をつくった場所、つまりローマを大洪水が襲う予言と解釈した。Fesulan Olympique は「フィエーゾレ(にとって)のオリンポス山(にあたる山々)」と理解して、アッペンニーノ山脈と解釈した((Fontbrune [1939] p.277))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)は、Hieron をシュラクサイの暴君ヒエロニュムスとしたが、彼が船をつくる場所はローマとし、4行目もマックス・ド・フォンブリュヌの解釈に沿ってアッペンニーノと読んで、イタリアの大洪水と解釈した((Lamont [1943] p.351))。  [[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]](1980年)は、1980年代前半に起こると想定していた第三次世界大戦に先立って、ローマで革命が起こることと解釈し、4行目は、オリンピック競技のあと、それがフィレンツェ一帯(フィエーゾレはフィレンツェ近郊にある)にまで波及すると解釈した((Fontbrune [1980/1982]))。  [[セルジュ・ユタン]](1981年)は、プラトンが描くアトランティス滅亡のような大破局が20世紀末にあることと解釈した((Hutin [1981] p.87))。  [[ヴライク・イオネスク]](1976年)は、広島の原爆投下と解釈した。  HIERONは語源のHIERONYMOSと見なして[[アナグラム]]で HIROSHIME ONを導き、Hieron 以下を「人々が船(=軍艦)を造る場所、広島」と読んだ。また、Fesulanは FEL USA-Nとして、FELはラテン語 Felisから「毒」の意味と主張した。それが急速に広がり誰も助からないというのは、放射線のことだという。また、4行目の onde (水、海、波)は、水ではなく放射線の「波動」だとした((Ionescu [1976] pp.596-599. イオネスク [1993] p.204. 日本語版で詩番号は7巻16番になっているが、単純な誤りだろう))。  [[竹本忠雄]](2011年)はこれを支持した((竹本[2011]pp.724-729))。  [[パトリス・ギナール]](2011年)も、アナグラムの仕方などは異なるが、広島の原爆と解釈した((Guinard [2011]))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は、Hieron を後の異文のように Hieson と読み替え、ギリシア神話のイアソンと解釈し、『[[ミラビリス・リベル]]』にも世界終末に先立つ大洪水の描写があるので、それがモデルになっていると判断した((Lemesurier [2003b/2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は、ヒエロニュムスを紀元前3世紀のシュラクサイの暴君とし、彼が軍艦を建造させた場所、つまりシュラクサイ([[シラクーザ]])を洪水が襲うことではないかとした。  4行目は、古代のオリンピア劇場があることでも有名なファエスラエ([[フィエーゾレ]])での洪水の描写とした。フィエーゾレはアルノ川に近く、たびたび洪水の被害にも遭ってきた。  クレベールは、フィエーゾレが[[フィレンツェ]]にも近いことから、この場合フィレンツェ一帯を指しているのではないかとした。  ほかに、クレベールは、『[[1561年向けの暦>Almanach, Pour L'an 1561.]]』に、「ヒエロニュムスの船」(navis Hieronis)という表現が出ていることも指摘した((Clébert [2003]))。 #googlemaps(){<iframe src="https://www.google.com/maps/embed?pb=!1m18!1m12!1m3!1d23036.139662741574!2d11.277306965415851!3d43.8036250134345!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x132a55abb2dca4a5%3A0x4e4f96a4a715bf9f!2z44Kk44K_44Oq44KiIOOAkjUwMDE0IOODleOCo-ODrOODs-ODhOOCpyDjg5XjgqPjgqjjg7zjgr7jg6w!5e0!3m2!1sja!2sjp!4v1589984709729!5m2!1sja!2sjp" width="600" height="450" frameborder="0" ></iframe>} ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - イオネスク説を支持。アナグラムの話題が出たので投稿。 略されていたヒエロニュムスを元の形に直して四つの単語から Au HIERONYMUS sa nef → YROSHIMA usa UNE nef→ HIROSHIMA usa une nef 船は女性名詞だが数詞も女性形となってる。「ひとつの船」こそ、B-29 エノラゲイ。 オリンポス山の標高は2917mなのだがこれが原爆被害が3キロ以内が特に著しかったことを暗示。 2キロ以内の建物はすべて倒壊した。 -- とある信奉者 (2010-11-03 23:50:32)

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