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*原文
Soubz vmbre&sup(){1} faincte&sup(){2} d'oster de seruitude&sup(){3},
Peuple & cité&sup(){4} l'vsurpera&sup(){5} luy mesmes&sup(){6}:
Pire fera par [[fraulx>fraux]]&sup(){7} de ieune pute,
Liuré&sup(){8} au champ&sup(){9} lisant le&sup(){10} faulx proesme&sup(){11}.
**異文
(1) vmbre 1557U 1589PV : ombre &italic(){T.A.Eds.}
(2) faincte : saincte 1649Ca 1668
(3) seruitude : seruitute 1611 1660
(4) cité : Cité 1672 1712Guy
(5) l'vsurpera : vsurpera 1665 1840
(6) luy mesmes : luy mesme 1588-89 1590Ro 1605 1611 1627 1628 1653 1660, luy-mesmes 1649Ca 1650Ri, luy-mesme 1644 1649Xa 1650Le 1665 1668 1672 1712Guy 1840
(7) par fraulx : par faux 1649Ca 1668A, faux 1668P
(8) Liuré : Luité 1644 1650Ri 1653 1665
(9) champ : chant 1627, Champ 1672
(10) le : ce 1588Rf 1589Rg
(11) proesme : proësme 1557B 1597 1611 1628 1649Xa 1650Ri 1660 1840, poësme 1600 1610 1627 1716, poëme 1644 1653 1665, prcësme 1672
*日本語訳
隷属から取り去るという偽りの口実で、
人々と都市を彼自身が強奪するだろう。
若い娼婦の詐術によって一層悪いことをするだろう。
偽りの序文を読みながら、野で引き渡される。
**訳について
大乗訳1行目「奴隷から解放された人の みかけの影のもと」((大乗 [1975] p.150))は前半が誤訳。後半は[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳を逐語訳したせいもあるのだろうが、sous ombre de ... は「・・・を口実にして」を意味する成句である((DMF. なお、『新仏和中辞典』など、現代の辞書にも載せているものがある。))。
同3行目「若い淫婦をだまして悪くなり」も誤訳。もとになったはずのロバーツの英訳 He shall do worse by the deceit of a young whore ((Roberts [1949] p.146))と比べてもおかしい。
同4行目「彼はまちがったつきあいをして 国土にうらぎられるだろう」もおかしい。ロバーツの英訳 For he shall be betrayed in the field reading a false proem と見比べても、「つきあい」などはどういう根拠で導かれた訳なのか、よく分からない。
山根訳1行目「隷属者を除くとの微妙な口実のもとで」((山根 [1988] p.181))は、faux (偽りの)が「微妙な」と訳されている根拠が不明。
同2行目「民衆と市 みずから権力を奪取する」は、luy-mesme を変則的に処理すれば、成り立つ余地はある。
*信奉者側の見解
19世紀末までで解釈を展開したのは3人だけである。
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、オリヴァー・クロムウェルに関係のある詩かもしれないとしていた((Garencieres [1672]))。
[[バルタザール・ギノー]]は、イギリスの名誉革命と解釈した((Guynaud [1712] pp.224-226))。
[[ウジェーヌ・バレスト]]は、フランス革命によって共和政が樹立されたことの不幸を予言したとする詩を列挙した際に、この詩もそこに含めていた((Bareste [1840] p.517))。
20世紀に入っても、あまりとりあげられていない上、解釈にそれほど統一性が見られない。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、反キリストの出現に関する詩とした((Fontbrune [1939] p.268))。
[[アンドレ・ラモン]]は、ヒトラーの『我が闘争』の欺瞞性に関する詩と解釈した((Lamont [1943] p.254))。ヒトラーの権力掌握や『我が闘争』に関する詩とする解釈は、[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]も展開した((Fontbrune [1980/1982]))。
[[エリカ・チータム]]は、ルイ16世とマリー・アントワネットに関する詩と解釈した((Cheetham [1973]))。[[ネッド・ハリー]]はそれを踏襲した((Halley [1999] p.86))。
[[セルジュ・ユタン]]は、フランス革命に関する詩と解釈した((Hutin [1978]))。
[[ヴライク・イオネスク]]は、共産主義が淫婦に喩えられているという前提で「若い娼婦」を中国共産党と解釈し、その欺瞞性を表現した詩と解釈した((イオネスク [1991] pp.143-144))。
*同時代的な視点
[[ピーター・ラメジャラー]]は、具体的に特定できないとしつつも、おそらくイタリア辺りでの同時代の政治情勢をモデルにしていると推測した((Lemesurier [2003b/2010]))。
曖昧で様々な情勢に当てはめうるが、ルネサンス期のイタリアに特に当てはめられるのではないかという見解は、[[エドガー・レオニ]]も示していた((Leoni [1961]))。
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- イオネスク説を支持するが1-2行は人々を都市から農村へと追いやったポルポトのほうがより適切に思える -- とある信奉者 (2010-11-06 09:41:18)
*原文
Soubz vmbre&sup(){1} faincte&sup(){2} d'oster de seruitude&sup(){3},
Peuple & cité&sup(){4} l'vsurpera&sup(){5} luy mesmes&sup(){6}:
Pire fera par [[fraulx>fraux]]&sup(){7} de ieune pute,
Liuré&sup(){8} au champ&sup(){9} lisant le&sup(){10} faulx proesme&sup(){11}.
**異文
(1) vmbre 1557U 1589PV : ombre &italic(){T.A.Eds.}
(2) faincte : saincte 1649Ca 1668
(3) seruitude : seruitute 1611 1660
(4) cité : Cité 1672 1712Guy
(5) l'vsurpera : vsurpera 1665 1840
(6) luy mesmes : luy mesme 1588-89 1590Ro 1605 1611 1627 1628 1653 1660, luy-mesmes 1649Ca 1650Ri, luy-mesme 1644 1649Xa 1650Le 1665 1668 1672 1712Guy 1840
(7) par fraulx : par faux 1649Ca 1668A, faux 1668P
(8) Liuré : Luité 1644 1650Ri 1653 1665
(9) champ : chant 1627, Champ 1672
(10) le : ce 1588Rf 1589Rg
(11) proesme : proësme 1557B 1597 1611 1628 1649Xa 1650Ri 1660 1840, poësme 1600 1610 1627 1716, poëme 1644 1653 1665, prcësme 1672
*日本語訳
隷属から取り去るという偽りの口実で、
人々と都市を彼自身が強奪するだろう。
若い娼婦の詐術によって一層悪いことをするだろう。
偽りの序文を読みながら、野で引き渡される。
**訳について
大乗訳1行目「奴隷から解放された人の みかけの影のもと」((大乗 [1975] p.150))は前半が誤訳。後半は[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳を逐語訳したせいもあるのだろうが、sous ombre de ... は「・・・を口実にして」を意味する成句である((DMF. なお、『新仏和中辞典』など、現代の辞書にも載せているものがある。))。
同3行目「若い淫婦をだまして悪くなり」も誤訳。もとになったはずのロバーツの英訳 He shall do worse by the deceit of a young whore ((Roberts [1949] p.146))と比べてもおかしい。
同4行目「彼はまちがったつきあいをして 国土にうらぎられるだろう」もおかしい。ロバーツの英訳 For he shall be betrayed in the field reading a false proem と見比べても、「つきあい」などはどういう根拠で導かれた訳なのか、よく分からない。
山根訳1行目「隷属者を除くとの微妙な口実のもとで」((山根 [1988] p.181))は、faux (偽りの)が「微妙な」と訳されている根拠が不明。
同2行目「民衆と市 みずから権力を奪取する」は、luy-mesme を変則的に処理すれば、成り立つ余地はある。
*信奉者側の見解
19世紀末までで解釈を展開したのは3人だけである。
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、オリヴァー・クロムウェルに関係のある詩かもしれないとしていた((Garencieres [1672]))。
[[バルタザール・ギノー]]は、イギリスの名誉革命と解釈した((Guynaud [1712] pp.224-226))。
[[ウジェーヌ・バレスト]]は、フランス革命によって共和政が樹立されたことの不幸を予言したとする詩を列挙した際に、この詩もそこに含めていた((Bareste [1840] p.517))。
20世紀に入っても、あまりとりあげられていない上、解釈にそれほど統一性が見られない。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、反キリストの出現に関する詩とした((Fontbrune [1939] p.268))。
[[アンドレ・ラモン]]は、ヒトラーの『我が闘争』の欺瞞性に関する詩と解釈した((Lamont [1943] p.254))。ヒトラーの権力掌握や『我が闘争』に関する詩とする解釈は、[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]も展開した((Fontbrune [1980/1982]))。
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&color(gray){【画像】角川文庫版『わが闘争・上』}
[[エリカ・チータム]]は、ルイ16世とマリー・アントワネットに関する詩と解釈した((Cheetham [1973]))。[[ネッド・ハリー]]はそれを踏襲した((Halley [1999] p.86))。
[[セルジュ・ユタン]]は、フランス革命に関する詩と解釈した((Hutin [1978]))。
[[ヴライク・イオネスク]]は、共産主義が淫婦に喩えられているという前提で「若い娼婦」を中国共産党と解釈し、その欺瞞性を表現した詩と解釈した((イオネスク [1991] pp.143-144))。
*同時代的な視点
[[ピーター・ラメジャラー]]は、具体的に特定できないとしつつも、おそらくイタリア辺りでの同時代の政治情勢をモデルにしていると推測した((Lemesurier [2003b/2010]))。
曖昧で様々な情勢に当てはめうるが、ルネサンス期のイタリアに特に当てはめられるのではないかという見解は、[[エドガー・レオニ]]も示していた((Leoni [1961]))。
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&bold(){コメントらん}
以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。
なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。
- イオネスク説を支持するが1-2行は人々を都市から農村へと追いやったポルポトのほうがより適切に思える -- とある信奉者 (2010-11-06 09:41:18)