百詩篇第5巻69番

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*原文 Plus ne sera&sup(){1} le grand en faulx&sup(){2} sommeil&sup(){3}, L'inquietude&sup(){4} viendra prendre repoz: [[Dresser>dresser]] [[phalange]]&sup(){5} d'or&sup(){6}, azur&sup(){7}, & vermeil, Subiuguer&sup(){8} Affrique la&sup(){9} ronger iusques aux oz&sup(){11}. **異文 (1) ne sera : sera 1772Ri (2) faulx : feux 1597 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1716, feu 1653 1665 (3) sommeil : semmeil 1653 (4) L'inquietude : L'inquiétude 1649Ca, L'Inquietude 1672 (5) phalange : Phalange 1644 1650Ri 1653 1672 (6) d'or : d'Or 1672 (7) azur : azuré 1588-89, Azur 1672, d'azur 1716 (8) Subiuguer : Subiuger 1589PV 1649Ca 1650Le 1668A (9) la : & 1672 (10) iusques aux oz : iusques oz 1568B 1568C 1568I 1772Ri, iusques os 1597 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1650Ri 1660, iusqu'aux os 1600 1672, iusque aux os 1627 1649Ca **校訂  4行目冒頭について、[[ピエール・ブランダムール]]は韻律の都合上 Juguer Affrique... となるべきとした((Brind’Amour [1996] p.273))。 *日本語訳 偉人はもはや偽りの眠りに陥らないだろう。 憂慮が休息することになるだろう、 黄金、瑠璃、紅玉の杖を仕上げて、 アフリカを征服し、骨まで齧ることで。 **訳について  山根訳2行目「不安が休息を追い出すだろう」((山根 [1988] p.200))は、[[エリカ・チータム]]の英訳を忠実に転訳したものだが、原文からすると意味が逆になっている。  同3行目「金色 青 朱の密集集団がたつ」は「密集集団」が不自然なようだが、[[phalange]]をどう訳すかという訳し方の揺れの範囲内である。  大乗訳1行目「人はいつわりの眠りの中にもはやなく」((大乗 [1975] p.166))は、grand を単なる「人」と訳すのが不適切。  同2行目「休みのない人が休み」は、inquietude (憂慮、心配事)を「休みのない人」とするのは意訳にしても強引に思える。  同3行目「彼は金と空色の軍を起こし」は、vermeil (朱色、紅玉)が訳に反映されていない。もっとも、この点は[[テオフィル・ド・ガランシエール]]以来の誤訳が引き継がれた結果でもある。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、アフリカを征服する強力な軍隊を確立する偉大な君主の予言と解釈していた((Garencieres [1672]))。  その後、解釈は途絶えるが、[[アナトール・ル・ペルチエ]]が七月王政当初のルイ=フィリップの予言と解釈すると、それに追随する者が多くなった。  ル・ペルチエは前半を王座について安泰となったルイ=フィリップのこととした。3行目の色はフランスの三色旗のことで(彼は[[phalange]]を「旗」と訳した)、4行目はアフリカ征服(フランスは七月王政成立直前にアルジェリアに侵攻し、アルジェを占拠していた)を指すという((Le Pelletier [1867a] p.250))。  [[チャールズ・ウォード]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]もほぼそのまま踏襲したが、三色旗は赤、白、青であって赤、金、青ではない。レイヴァーのみこの点に触れ、ノストラダムスが老眼のせいで見通し損ねたと推測した((Ward [1891] pp.331-332, Lamont [1943] p.107, Laver [1952] p.197))。[[エリカ・チータム]]はそのコメントを引き合いに出しつつ、紋章学では王権は黄金で表すことから理解可能だとした((Cheetham [1990]))。三色旗は自由、平等、友愛だといわれるが、白はブルボン王家をあらわす色でもあった。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は、1532年にカール5世がチュニスでバルバロス・ハイレッティンの軍勢に勝利したことと、『[[ミラビリス・リベル]]』に描かれた未来の予言とが重ねあわされているとした((Lemesurier [2003b/2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は、シャルルマーニュ伝説と関連付けた。シャルルマーニュ伝説では、彼は死んだのではなく眠りについただけで、いずれ眠りから覚めて異教徒達を駆逐すると信じられていた。  この詩はシャルルマーニュが「偽りの眠り」から醒め、人々の心配を打ち払い、色とりどりの貴石を散りばめた王杖を揮い、アフリカの不信心者たちを征服することを描いているという。  同時に、似たような伝説はフリードリヒ2世についても伝えられていることを指摘した((Clébert [2003]))。  中世の大君主に関する予言はシャルルマーニュやフリードリヒの伝説から派生しているので、ある意味ではラメジャラーとクレベールの解釈は同一線上にあるといえるかもしれない。 ---- - 欧州人で初めてアフリカを横断した探検家リヴィングストンとボーア戦争(南アフリカ戦争)を予言。 -- とある信奉者 (2010-11-20 10:48:27) #comment
*原文 Plus ne sera&sup(){1} le grand en faulx&sup(){2} sommeil&sup(){3}, L'inquietude&sup(){4} viendra prendre repoz: [[Dresser>dresser]] [[phalange]]&sup(){5} d'or&sup(){6}, azur&sup(){7}, & vermeil, Subiuguer&sup(){8} Affrique la&sup(){9} ronger iusques aux oz&sup(){11}. **異文 (1) ne sera : sera 1772Ri (2) faulx : feux 1597 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1716, feu 1653 1665 (3) sommeil : semmeil 1653 (4) L'inquietude : L'inquiétude 1649Ca, L'Inquietude 1672 (5) phalange : Phalange 1644 1650Ri 1653 1672 (6) d'or : d'Or 1672 (7) azur : azuré 1588-89, Azur 1672, d'azur 1716 (8) Subiuguer : Subiuger 1589PV 1649Ca 1650Le 1668A (9) la : & 1672 (10) iusques aux oz : iusques oz 1568B 1568C 1568I 1772Ri, iusques os 1597 1605 1610 1611 1628 1649Xa 1650Ri 1660, iusqu'aux os 1600 1672, iusque aux os 1627 1649Ca **校訂  4行目冒頭について、[[ピエール・ブランダムール]]は韻律の都合上 Juguer Affrique... となるべきとした((Brind’Amour [1996] p.273))。 *日本語訳 偉人はもはや偽りの眠りに陥らないだろう。 憂慮が休息することになるだろう、 黄金、瑠璃、紅玉の杖を仕上げて、 アフリカを征服し、骨まで齧ることで。 **訳について  山根訳2行目「不安が休息を追い出すだろう」((山根 [1988] p.200))は、[[エリカ・チータム]]の英訳を忠実に転訳したものだが、原文からすると意味が逆になっている。  同3行目「金色 青 朱の密集集団がたつ」は「密集集団」が不自然なようだが、[[phalange]]をどう訳すかという訳し方の揺れの範囲内である。  大乗訳1行目「人はいつわりの眠りの中にもはやなく」((大乗 [1975] p.166))は、grand を単なる「人」と訳すのが不適切。  同2行目「休みのない人が休み」は、inquietude (憂慮、心配事)を「休みのない人」とするのは意訳にしても強引に思える。  同3行目「彼は金と空色の軍を起こし」は、vermeil (朱色、紅玉)が訳に反映されていない。もっとも、この点は[[テオフィル・ド・ガランシエール]]以来の誤訳が引き継がれた結果でもある。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、アフリカを征服する強力な軍隊を確立する偉大な君主の予言と解釈していた((Garencieres [1672]))。  その後、解釈は途絶えるが、[[アナトール・ル・ペルチエ]]が七月王政当初のルイ=フィリップの予言と解釈すると、それに追随する者が多くなった。  ル・ペルチエは前半を王座について安泰となったルイ=フィリップのこととした。3行目の色はフランスの三色旗のことで(彼は[[phalange]]を「旗」と訳した)、4行目はアフリカ征服(フランスは七月王政成立直前にアルジェリアに侵攻し、アルジェを占拠していた)を指すという((Le Pelletier [1867a] p.250))。  [[チャールズ・ウォード]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]もほぼそのまま踏襲したが、三色旗は赤、白、青であって赤、金、青ではない。レイヴァーのみこの点に触れ、ノストラダムスが老眼のせいで見通し損ねたと推測した((Ward [1891] pp.331-332, Lamont [1943] p.107, Laver [1952] p.197))。[[エリカ・チータム]]はそのコメントを引き合いに出しつつ、紋章学では王権は黄金で表すことから理解可能だとした((Cheetham [1990]))。三色旗は自由、平等、友愛だといわれるが、白はブルボン王家をあらわす色でもあった。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は、1532年にカール5世がチュニスでバルバロス・ハイレッティンの軍勢に勝利したことと、『[[ミラビリス・リベル]]』に描かれた未来の予言とが重ねあわされているとした((Lemesurier [2003b/2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は、シャルルマーニュ伝説と関連付けた。シャルルマーニュ伝説では、彼は死んだのではなく眠りについただけで、いずれ眠りから覚めて異教徒達を駆逐すると信じられていた。  この詩はシャルルマーニュが「偽りの眠り」から醒め、人々の心配を打ち払い、色とりどりの貴石を散りばめた王杖を揮い、アフリカの不信心者たちを征服することを描いているという。  同時に、似たような伝説はフリードリヒ2世についても伝えられていることを指摘した((Clébert [2003]))。  中世の大君主に関する予言はシャルルマーニュやフリードリヒの伝説から派生しているので、ある意味ではラメジャラーとクレベールの解釈は同一線上にあるといえるかもしれない。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。 - 欧州人で初めてアフリカを横断した探検家リヴィングストンとボーア戦争(南アフリカ戦争)を予言。 -- とある信奉者 (2010-11-20 10:48:27) #comment

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