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*原文
Dans les Espaignes viendra Roy&sup(){1} trespuissant&sup(){2},
Par mer & terre&sup(){3} subiugant&sup(){4} [[or]]&sup(){5} midy&sup(){6},
Ce&sup(){7} mal fera&sup(){8} rabaissant le croissant&sup(){9},
Baisser les æsles&sup(){10} à ceux du vendredy&sup(){11}.
**異文
(1) Roy : un Roi 1712Guy
(2) trespuissant : tres-puissant 1590Ro 1597 1600 1611B 1644 1649Ca 1650Ri 1650Le 1653 1660 1665 1668 1840, tres Puissant 1627, tres puissant 1712Guy, tres-puissan [?] 1716
(3) mer & terre : Mer & Terre 1672
(4) subiugant : subiuguant 1597 1611 1665 1712Guy 1840
(5) or : le 1627 1644 1650Ri 1650Le 1653 1660 1665 1668 1712Guy 1840, au 1672
(6) midy : Midy 1597 1600 1610 1611 1644 1650Ri 1653 1660 1665 1672 1716 1840
(7) Ce : De 1665
(8) mal fera : mal [ ] 1568A 1590Ro, &u(){ma; fera} 1867PL
(9) croissant : Croissant 1712Guy
(10) æsles : aisles 1568I 1597 1600 1611 1627 1644 1650Ri 1653 1660 1665 1668P 1672 1712Guy 1716
(11) vendredy : Vendredy 1590Ro 1597 1600 1610 1611 1644 1650Ri 1665 1672 1712Guy 1716 1840
(注記)1568A と 1590Ro の3行目の異文は、mal のあとに fera が入るくらいの大きな隙間が開いている。
*日本語訳
イスパニア諸地域に非常に強い王が来るだろう、
海と陸から今まさに南方を征服しつつ。
この悪事が三日月を低くしつつ、
金曜日の人々に翼を下げさせるだろう。
**訳について
1行目 Espaignes は本来単数で書かれるべきで、[[ジャン=ポール・クレベール]]らは普通にスペイン(Espagne)のこととしているが、複数であることを踏まえて意訳した。ただし、これは単にアラゴンやカスティーリャといったスペインの諸地域に過ぎないだろう。
2行目 [[or]] は「今」の意味で訳した。
4行目「翼を下げさせる」は「弱体化させる」を意味する慣用表現((Brind’Amour [1996] p.55))。似た表現は[[百詩篇第1巻6番]]にも登場している。
大乗訳は前半はともかく、後半「この悪は三日月のつのを打ちおとし/金曜日の人々の翼をつけて」((大乗 [1975] p.308))が誤訳。「つの」や「(翼を)つける」といった言葉は原文にない。
山根訳1行目「スペインに強大無比の王が生まれる」((山根 [1988]))は venir の意味する範囲が広いので成り立ちうる訳のひとつ。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、スペイン王フェリペ2世についてと解釈した((Garencieres [1672]))。
[[バルタザール・ギノー]]は、いずれスペインに現われる強大な王が南方(または南仏)を支配し、トルコを駆逐する予言とした((Guynaud [1712] p.291))。
[[アナトール・ル・ペルチエ]]はいずれフランスに現われる大君主「偉大なケルト人」がスペイン征服に乗り出すとともに、トルコをも屈服させる予言と解釈した。その際、3行目の mal (悪事、悪行)は mâle (雄々しい男性)と読み替えた((Le Pelletier [1867a] p.345))。
[[ヴライク・イオネスク]]は、イスパニア諸国をスペインによって発見された新大陸と解釈し、2行目の or を orient の語尾音省略と解釈することで、湾岸戦争についての予言と解釈した((イオネスク [1993] pp.68-71))。
*同時代的な視点
金曜日の人々がイスラーム信徒を指していることについては、立場を問わず異論がない。
[[ロジェ・プレヴォ]]や[[ピーター・ラメジャラー]]はイスラーム勢力の侵攻に対する大君主のイメージが投影された詩としている((Lemesurier [2003b/2010], Prévost [1999] p.223))。
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#comment
[[詩百篇第10巻]]>95番*
*原文
Dans les Espaignes viendra Roy&sup(){1} trespuissant&sup(){2},
Par mer & terre&sup(){3} subiugant&sup(){4} [[or]]&sup(){5} midy&sup(){6},
Ce&sup(){7} mal fera&sup(){8} rabaissant le croissant&sup(){9},
Baisser les æsles&sup(){10} à ceux du vendredy&sup(){11}.
**異文
(1) Roy : un Roi 1712Guy
(2) trespuissant : tres-puissant 1590Ro 1597Br 1603Mo 1610Po 1611B 1644Hu 1649Ca 1650Mo 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1716PR(b c) 1720To 1840 1981EB, tres Puissant 1627Ma 1627Di, tres puissant 1712Guy, tres-puissan [?] 1716PRa
(3) mer & terre : Mer & Terre 1672Ga
(4) subiugant : subiuguant 1591BR 1597Br 1603Mo 1611 1627Ma 1650Mo 1665Ba 1667Wi 1712Guy 1720To 1840, subjugeant 1716PRb
(5) or : le 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1712Guy 1720To 1840 1981EB, au 1672Ga
(6) midy : Midy 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1672Ga 1716PR(a c) 1720To 1840 1981EB
(7) Ce : De 1665Ba 1720To
(8) mal fera : mal [ ] 1568X 1590Ro, ma fera 1607PR, &u(){ma; fera} 1867PL, mal fara 1716PRb
(9) croissant : Croissant 1712Guy
(10) æsles : aisles 1568C 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Mo 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668P 1672Ga 1712Guy 1716PR 1720To 1981EB
(11) vendredy : Vendredy 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Mo 1650Ri 1665Ba 1667Wi 1672Ga 1712Guy 1716PR 1720To 1840
(注記1)1716PRaの1行目は puissan で途切れているが、最初からそれしか印刷されていなかったのか、端が破れて途切れてしまったのか、コピーでは判断がつかない。
(注記2)1568X と 1590Ro の3行目の異文は、mal のあとに fera が入るくらいの大きな隙間が開いているので、[ ]で表現した。
*日本語訳
イスパニア諸地域に非常に強い王が来るだろう、
海と陸から今まさに南方を征服しつつ。
この悪事が三日月を低くしつつ、
金曜日の人々に翼を下げさせるだろう。
**訳について
1行目 Espaignes は本来単数で書かれるべきで、[[ジャン=ポール・クレベール]]らは普通にスペイン(Espagne)のこととしているが、複数であることを踏まえて意訳した。ただし、これは単にアラゴンやカスティーリャといったスペインの諸地域に過ぎないだろう。
2行目 [[or]] は「今」の意味で訳した。
4行目「翼を下げさせる」は「弱体化させる」を意味する慣用表現((Brind’Amour [1996] p.55))。似た表現は[[詩百篇第1巻6番]]にも登場している。
大乗訳は前半はともかく、後半「この悪は三日月のつのを打ちおとし/金曜日の人々の翼をつけて」((大乗 [1975] p.308))が誤訳。「つの」や「(翼を)つける」といった言葉は原文にない。
山根訳1行目「スペインに強大無比の王が生まれる」((山根 [1988]))は venir の意味する範囲が広いので成り立ちうる訳のひとつ。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、スペイン王フェリペ2世についてと解釈した((Garencieres [1672]))。
[[バルタザール・ギノー]]は、いずれスペインに現われる強大な王が南方(または南仏)を支配し、トルコを駆逐する予言とした((Guynaud [1712] p.291))。
[[アナトール・ル・ペルチエ]]はいずれフランスに現われる大君主「偉大なケルト人」がスペイン征服に乗り出すとともに、トルコをも屈服させる予言と解釈した。その際、3行目の mal (悪事、悪行)は mâle (雄々しい男性)と読み替えた((Le Pelletier [1867a] p.345))。
[[ヴライク・イオネスク]]は、イスパニア諸国をスペインによって発見された新大陸と解釈し、2行目の or を orient の語尾音省略と解釈することで、湾岸戦争についての予言と解釈した((イオネスク [1993] pp.68-71))。
*同時代的な視点
金曜日の人々がイスラーム信徒を指していることについては、立場を問わず異論がない。
[[ロジェ・プレヴォ]]や[[ピーター・ラメジャラー]]はイスラーム勢力の侵攻に対する大君主のイメージが投影された詩としている((Lemesurier [2003b/2010], Prévost [1999] p.223))。
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