詩百篇第10巻95番

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*原文 Dans les Espaignes viendra Roy&sup(){1} trespuissant&sup(){2}, Par mer & terre&sup(){3} subiugant&sup(){4} [[or]]&sup(){5} midy&sup(){6}, Ce&sup(){7} mal fera&sup(){8} rabaissant le croissant&sup(){9}, Baisser les æsles&sup(){10} à ceux du vendredy&sup(){11}. **異文 (1) Roy : un Roi 1712Guy (2) trespuissant : tres-puissant 1590Ro 1597 1600 1611B 1644 1649Ca 1650Ri 1650Le 1653 1660 1665 1668 1840, tres Puissant 1627, tres puissant 1712Guy, tres-puissan [?] 1716 (3) mer & terre : Mer & Terre 1672 (4) subiugant : subiuguant 1597 1611 1665 1712Guy 1840 (5) or : le 1627 1644 1650Ri 1650Le 1653 1660 1665 1668 1712Guy 1840, au 1672 (6) midy : Midy 1597 1600 1610 1611 1644 1650Ri 1653 1660 1665 1672 1716 1840 (7) Ce : De 1665 (8) mal fera : mal [ ] 1568A 1590Ro, &u(){ma; fera} 1867PL (9) croissant : Croissant 1712Guy (10) æsles : aisles 1568I 1597 1600 1611 1627 1644 1650Ri 1653 1660 1665 1668P 1672 1712Guy 1716 (11) vendredy : Vendredy 1590Ro 1597 1600 1610 1611 1644 1650Ri 1665 1672 1712Guy 1716 1840 (注記)1568A と 1590Ro の3行目の異文は、mal のあとに fera が入るくらいの大きな隙間が開いている。 *日本語訳 イスパニア諸地域に非常に強い王が来るだろう、 海と陸から今まさに南方を征服しつつ。 この悪事が三日月を低くしつつ、 金曜日の人々に翼を下げさせるだろう。 **訳について  1行目 Espaignes は本来単数で書かれるべきで、[[ジャン=ポール・クレベール]]らは普通にスペイン(Espagne)のこととしているが、複数であることを踏まえて意訳した。ただし、これは単にアラゴンやカスティーリャといったスペインの諸地域に過ぎないだろう。  2行目 [[or]] は「今」の意味で訳した。  4行目「翼を下げさせる」は「弱体化させる」を意味する慣用表現((Brind’Amour [1996] p.55))。似た表現は[[百詩篇第1巻6番]]にも登場している。  大乗訳は前半はともかく、後半「この悪は三日月のつのを打ちおとし/金曜日の人々の翼をつけて」((大乗 [1975] p.308))が誤訳。「つの」や「(翼を)つける」といった言葉は原文にない。  山根訳1行目「スペインに強大無比の王が生まれる」((山根 [1988]))は venir の意味する範囲が広いので成り立ちうる訳のひとつ。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、スペイン王フェリペ2世についてと解釈した((Garencieres [1672]))。  [[バルタザール・ギノー]]は、いずれスペインに現われる強大な王が南方(または南仏)を支配し、トルコを駆逐する予言とした((Guynaud [1712] p.291))。  [[アナトール・ル・ペルチエ]]はいずれフランスに現われる大君主「偉大なケルト人」がスペイン征服に乗り出すとともに、トルコをも屈服させる予言と解釈した。その際、3行目の mal (悪事、悪行)は mâle (雄々しい男性)と読み替えた((Le Pelletier [1867a] p.345))。  [[ヴライク・イオネスク]]は、イスパニア諸国をスペインによって発見された新大陸と解釈し、2行目の or を orient の語尾音省略と解釈することで、湾岸戦争についての予言と解釈した((イオネスク [1993] pp.68-71))。 *同時代的な視点  金曜日の人々がイスラーム信徒を指していることについては、立場を問わず異論がない。  [[ロジェ・プレヴォ]]や[[ピーター・ラメジャラー]]はイスラーム勢力の侵攻に対する大君主のイメージが投影された詩としている((Lemesurier [2003b/2010], Prévost [1999] p.223))。 ---- #comment
[[詩百篇第10巻]]>95番* *原文 Dans les Espaignes viendra Roy&sup(){1} trespuissant&sup(){2}, Par mer & terre&sup(){3} subiugant&sup(){4} [[or]]&sup(){5} midy&sup(){6}, Ce&sup(){7} mal fera&sup(){8} rabaissant le croissant&sup(){9}, Baisser les æsles&sup(){10} à ceux du vendredy&sup(){11}. **異文 (1) Roy : un Roi 1712Guy (2) trespuissant : tres-puissant 1590Ro 1597Br 1603Mo 1610Po 1611B 1644Hu 1649Ca 1650Mo 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1716PR(b c) 1720To 1840 1981EB, tres Puissant 1627Ma 1627Di, tres puissant 1712Guy, tres-puissan [?] 1716PRa (3) mer & terre : Mer & Terre 1672Ga (4) subiugant : subiuguant 1591BR 1597Br 1603Mo 1611 1627Ma 1650Mo 1665Ba 1667Wi 1712Guy 1720To 1840, subjugeant 1716PRb (5) or : le 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1712Guy 1720To 1840 1981EB, au 1672Ga (6) midy : Midy 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1672Ga 1716PR(a c) 1720To 1840 1981EB (7) Ce : De 1665Ba 1720To (8) mal fera : mal [ ] 1568X 1590Ro, ma fera 1607PR, &u(){ma; fera} 1867PL, mal fara 1716PRb (9) croissant : Croissant 1712Guy (10) æsles : aisles 1568C 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Mo 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668P 1672Ga 1712Guy 1716PR 1720To 1981EB (11) vendredy : Vendredy 1590Ro 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Mo 1650Ri 1665Ba 1667Wi 1672Ga 1712Guy 1716PR 1720To 1840 (注記1)1716PRaの1行目は puissan で途切れているが、最初からそれしか印刷されていなかったのか、端が破れて途切れてしまったのか、コピーでは判断がつかない。 (注記2)1568X と 1590Ro の3行目の異文は、mal のあとに fera が入るくらいの大きな隙間が開いているので、[ ]で表現した。 *日本語訳 イスパニア諸地域に非常に強い王が来るだろう、 海と陸から今まさに南方を征服しつつ。 この悪事が三日月を低くしつつ、 金曜日の人々に翼を下げさせるだろう。 **訳について  1行目 Espaignes は本来単数で書かれるべきで、[[ジャン=ポール・クレベール]]らは普通にスペイン(Espagne)のこととしているが、複数であることを踏まえて意訳した。ただし、これは単にアラゴンやカスティーリャといったスペインの諸地域に過ぎないだろう。  2行目 [[or]] は「今」の意味で訳した。  4行目「翼を下げさせる」は「弱体化させる」を意味する慣用表現((Brind’Amour [1996] p.55))。似た表現は[[詩百篇第1巻6番]]にも登場している。  大乗訳は前半はともかく、後半「この悪は三日月のつのを打ちおとし/金曜日の人々の翼をつけて」((大乗 [1975] p.308))が誤訳。「つの」や「(翼を)つける」といった言葉は原文にない。  山根訳1行目「スペインに強大無比の王が生まれる」((山根 [1988]))は venir の意味する範囲が広いので成り立ちうる訳のひとつ。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、スペイン王フェリペ2世についてと解釈した((Garencieres [1672]))。  [[バルタザール・ギノー]]は、いずれスペインに現われる強大な王が南方(または南仏)を支配し、トルコを駆逐する予言とした((Guynaud [1712] p.291))。  [[アナトール・ル・ペルチエ]]はいずれフランスに現われる大君主「偉大なケルト人」がスペイン征服に乗り出すとともに、トルコをも屈服させる予言と解釈した。その際、3行目の mal (悪事、悪行)は mâle (雄々しい男性)と読み替えた((Le Pelletier [1867a] p.345))。  [[ヴライク・イオネスク]]は、イスパニア諸国をスペインによって発見された新大陸と解釈し、2行目の or を orient の語尾音省略と解釈することで、湾岸戦争についての予言と解釈した((イオネスク [1993] pp.68-71))。 *同時代的な視点  金曜日の人々がイスラーム信徒を指していることについては、立場を問わず異論がない。  [[ロジェ・プレヴォ]]や[[ピーター・ラメジャラー]]はイスラーム勢力の侵攻に対する大君主のイメージが投影された詩としている((Lemesurier [2003b/2010], Prévost [1999] p.223))。 ---- #comment

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