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*原文
La republicque&sup(){1} de la grande cité&sup(){2}
A grand rigeur&sup(){3} ne voudra&sup(){4} consentir:
Roy sortir hors par trompete cité&sup(){5}
L'eschele&sup(){6} au mur&sup(){7}, la cité&sup(){8} repentir.
**異文
(1) republicque : Republique 1627 1672
(2) la grande cité : la grande Cité 1589PV 1649Ca 1650Le 1668 1672
(3) rigeur 1555 1840 : rigueur &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : riguenr 1611B, riguer 1627)
(4) voudra : vourda 1590Ro
(5) trompete cité : Trompette Cité 1672
(6) L'eschele : L'Eschelle 1672
(7) mur : Mur 1672
(8) la cité : la Cité 1589PV 1672
*日本語訳
大都市の共和政体は
大変な強情さで同意したがらないだろう、
王が[[喇叭>ラッパ]]手 〔らっぱしゅ〕 を通じて外に出るよう命じたことに。
壁に梯子、都市は後悔する。
**訳について
2、3行目は後述するようにいくつかの読み方があるが、ここでは[[ピエール・ブランダムール]]の釈義、およびそれを踏まえた[[高田勇]]・[[伊藤進]]の読み方に基づいた。ブランダムールは3行目の trompette を喇叭手から転じて「伝令使」と理解した。文脈からすれば十分に説得的だが、とりあえず訳では「喇叭手」にとどめた。
大乗訳2行目「きびしくおこなわれ 容認されることはなく」((大乗 [1975] p.109))は不適切。元になったはずの[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳でも、後半は Shall not consent と普通に能動態で訳されており、なぜ受動態になったのか不明。
同3行目「王は都市のトランペットで呼びだされてでていき」は、言葉の補いようによっては成立する訳。
山根訳2行目「過酷な弾圧に屈しないだろう」((山根 [1988] p.130))は、A grand rig(u)eur を副詞的に理解するのか、consentir の目的語と理解するのかの違い。ブランダムールらが前者で取ったため、当「大事典」もそれに従っているが、[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、後者の意味に取る論者も存在している。
同3行目「国王はらっぱに喚ばれ市から逐われ」も、3行目だけを切り離した訳としては十分に可能な訳。ブランダムールの読み方は3行目の cité を être cité de (~の命令を受ける)と関連する用法と理解したものである。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、共和政の大都市の候補としてジェノヴァ、[[ヴェネツィア]]、[[ジュネーヴ]]などを挙げたが、具体的な事件とは結び付けていなかった((Garencieres [1672]))。
[[アナトール・ル・ペルチエ]]は「バリケードの日」(1588年)と解釈した。この事件はカトリック同盟が中心となってパリ市民が放棄し、国王アンリ3世とその軍勢をパリから追い出した事件である。この解釈は[[チャールズ・ウォード]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]、[[エリカ・チータム]]らが追随した((Le Pelletier [1867a] p.98, Ward [1891] p.120, Laver [1952] p.84, Cheetham [1973/1990]))。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]と[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]の親子は、普仏戦争中に国防政府が直面したパリ包囲戦(1870年)と解釈した((Fontbrune (1938)[1939] p.103, Fontbrune (1980)[1982]))。
[[セルジュ・ユタン]]はルイ16世のヴァレンヌ逃亡事件と解釈した((Hutin [1978/2002]))。
2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが勝利すると、3行目の「喇叭兵」(トロンペット)をトランプと結びつける解釈が見られるようになった。日本ではネットメディアのTOCANAがこれを(おそらく最初に)紹介した(([[ノストラダムスが「トランプ大統領誕生」を完全予言していた! “恥知らずなトランペット”が核戦争勃発→世界滅亡は確定か!?>>http://tocana.jp/2016/11/post_11445.html]]))。
*同時代的な視点
市壁に梯子が掛けられるのは攻囲戦の描写だが、従来特定のモデルは提示されてこなかった。
[[ピーター・ラメジャラー]]も2003年の段階では不明としていたが、2010年には、シャルル8世のイタリア遠征と関連付けた((Lemesurier [2010]))。
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#comment
*原文
La republicque&sup(){1} de la grande cité&sup(){2}
A grand rigeur&sup(){3} ne voudra&sup(){4} consentir:
Roy sortir hors par trompete cité&sup(){5}
L'eschele&sup(){6} au mur&sup(){7}, la cité&sup(){8} repentir.
**異文
(1) republicque : Republique 1627 1672
(2) la grande cité : la grande Cité 1589PV 1649Ca 1650Le 1668 1672
(3) rigeur 1555 1840 : rigueur &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : riguenr 1611B, riguer 1627)
(4) voudra : vourda 1590Ro
(5) trompete cité : Trompette Cité 1672
(6) L'eschele : L'Eschelle 1672
(7) mur : Mur 1672
(8) la cité : la Cité 1589PV 1672
*日本語訳
大都市の共和政体は
大変な強情さで同意したがらないだろう、
王が[[喇叭>ラッパ]]手 〔らっぱしゅ〕 を通じて外に出るよう命じたことに。
壁に梯子、都市は後悔する。
**訳について
2、3行目は後述するようにいくつかの読み方があるが、ここでは[[ピエール・ブランダムール]]の釈義、およびそれを踏まえた[[高田勇]]・[[伊藤進]]の読み方に基づいた。ブランダムールは3行目の trompette を喇叭手から転じて「伝令使」と理解した。文脈からすれば十分に説得的だが、とりあえず訳では「喇叭手」にとどめた。
大乗訳2行目「きびしくおこなわれ 容認されることはなく」((大乗 [1975] p.109))は不適切。元になったはずの[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳でも、後半は Shall not consent と普通に能動態で訳されており、なぜ受動態になったのか不明。
同3行目「王は都市のトランペットで呼びだされてでていき」は、言葉の補いようによっては成立する訳。
山根訳2行目「過酷な弾圧に屈しないだろう」((山根 [1988] p.130))は、A grand rig(u)eur を副詞的に理解するのか、consentir の目的語と理解するのかの違い。ブランダムールらが前者で取ったため、当「大事典」もそれに従っているが、[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、後者の意味に取る論者も存在している。
同3行目「国王はらっぱに喚ばれ市から逐われ」も、3行目だけを切り離した訳としては十分に可能な訳。ブランダムールの読み方は3行目の cité を être cité de (~の命令を受ける)と関連する用法と理解したものである。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、共和政の大都市の候補としてジェノヴァ、[[ヴェネツィア]]、[[ジュネーヴ]]などを挙げたが、具体的な事件とは結び付けていなかった((Garencieres [1672]))。
[[アナトール・ル・ペルチエ]]は「バリケードの日」(1588年)と解釈した。この事件はカトリック同盟が中心となってパリ市民が放棄し、国王アンリ3世とその軍勢をパリから追い出した事件である。この解釈は[[チャールズ・ウォード]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]、[[エリカ・チータム]]らが追随した((Le Pelletier [1867a] p.98, Ward [1891] p.120, Laver [1952] p.84, Cheetham [1973/1990]))。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]と[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]の親子は、普仏戦争中に国防政府が直面したパリ包囲戦(1870年)と解釈した((Fontbrune (1938)[1939] p.103, Fontbrune (1980)[1982]))。
[[セルジュ・ユタン]]はルイ16世のヴァレンヌ逃亡事件と解釈した((Hutin [1978/2002]))。
2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが勝利すると、3行目の「喇叭兵」(トロンペット)をトランプと結びつける解釈が見られるようになった。日本ではネットメディアのTOCANAがこれを(おそらく最初に)紹介した(([[ノストラダムスが「トランプ大統領誕生」を完全予言していた! “恥知らずなトランペット”が核戦争勃発→世界滅亡は確定か!?>>http://tocana.jp/2016/11/post_11445.html]]))。
*同時代的な視点
市壁に梯子が掛けられるのは攻囲戦の描写だが、従来特定のモデルは提示されてこなかった。
[[ピーター・ラメジャラー]]も2003年の段階では不明としていたが、2010年には、シャルル8世のイタリア遠征と関連付けた((Lemesurier [2010]))。
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