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*原文
De nuict par Nantes Lyris&sup(){1} apparoistra,
Des artz&sup(){2} marins&sup(){3} susciteront la&sup(){4} pluye:
Arabiq&sup(){5} [[goulfre>goulphre]]&sup(){6} grand&sup(){7} [[classe]] [[parfondra>parfondre]]&sup(){8},
Vn monstre&sup(){9} en Saxe&sup(){10} naistra&sup(){11} d'ours&sup(){12} & truye&sup(){13}.
**異文
(1) Lyris : l'Iris 1568I 1672
(2) artz : ars 1665 1840, arcs 1672
(3) marins : Marins 1627 1672
(4) la : le 1611B
(5) Arabiq : Vrabiq 1600 1610 1716, Vrabicq 1627 1644 1650Ri, Vrabic 1653 1665, Arabiq. 1660, Arabique 1672, Arabic 1840
(6) goulfre : gouffre 1557B 1589PV 1650Ri, goulphre 1590Ro 1644 1653 1665 1840, Goulfre 1672
(7) grand : grande 1600, grand' 1644 1650Ri
(8) parfondra : parfondera 1611B, profondra 1668P
(9) monstre : Monstre 1672
(10) Saxe : saxe 1653 1665
(11) naistra : naisrra 1660, naistre 1672, n'aîstra 1716
(12) ours : Ours 1672 1716
(13) truye : Truye 1672
(注意)1588-89では3-4-1-2の順でIV-64に差し替えられている。なお、1716の四行目の異文は原文ママ(n'aîtraではない)。
**校訂
1行目 Lyris は l'Iris とすべき。この点は信奉者・実証側とも異論がない。
*日本語訳
ナントのために、夜にイリスが現れるだろう。
(いくつかの)海の技術が雨を創り出すだろう。
アラブの湾は大艦隊を沈めるだろう。
ザクセンでは雄熊と雌豚から一匹の怪物が生まれるだろう。
**訳について
大乗訳2行目「海のアーチは雨となり」((大乗 [1975]p.186))は採用した異文の違い。3行目「アラビア湾に大艦隊がしかれ」は不適切。山根訳も3行目「アラビア湾で大艦隊が右往左往しよう」((山根 [1988] p.223))も不適切。
*信奉者側の見解
[[エリカ・チータム]]は人工降雨の技術、イラン・イラク戦争、東ドイツとソ連の関係などが描かれているとしていた((Cheetham [1990]))。
[[セルジュ・ユタン]]は3行目だけ解釈し、第三次中東戦争のこととした((Hutin [1978]))。[[ボードワン・ボンセルジャン]]はそこに加筆し、4行目を[[反キリスト]]の登場とした((Hutin [2002]))。
モーリス・ラカスは3行目を湾岸危機での米軍のペルシア湾への派遣、4行目を東ドイツ(雌豚)と西ドイツ(熊)の統一とした((ラカス [1994] p.45))。
*同時代的な視点
[[イリス]]は虹の神で、1行目は夜に虹が現れることを示している。当時、[[コンラドゥス・リュコステネス]]の記録では、1520年のウィーンで夜に虹と3つの月が現れたとされている((Lemesurier [2003b]))。こうした幻に関する噂が1行目に影響している可能性は当然あるだろう。4行目の怪物の誕生にしても、他の四行詩にも見られる当時の典型的な「驚異」である。
2行目の海の技術に関連して、[[ジャン=ポール・クレベール]]は[[フランソワ・ラブレー]]の『パンタグリュエル物語』に登場する降雨の技術を引き合いに出している。「ガステル宗匠は、雨を中空に引き止めて動かぬようにし、海原に、これを降らせるという技術も考案した」((訳文は渡辺一夫訳『ラブレー第四之書パンタグリュエル物語』岩波文庫p.275による。なお渡辺は「大腹」という字に「ガステル」という読みをあてている。))
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#comment
*原文
De nuict par Nantes Lyris&sup(){1} apparoistra,
Des artz&sup(){2} marins&sup(){3} susciteront la&sup(){4} pluye:
Arabiq&sup(){5} [[goulfre>gouffre]]&sup(){6} grand&sup(){7} [[classe]] [[parfondra>parfondre]]&sup(){8},
Vn monstre&sup(){9} en Saxe&sup(){10} naistra&sup(){11} d'ours&sup(){12} & truye&sup(){13}.
**異文
(1) Lyris : l'Iris 1568I 1672
(2) artz : ars 1665 1840, arcs 1672
(3) marins : Marins 1627 1672
(4) la : le 1611B
(5) Arabiq : Vrabiq 1600 1610 1716, Vrabicq 1627 1644 1650Ri, Vrabic 1653 1665, Arabiq. 1660, Arabique 1672, Arabic 1840
(6) goulfre : gouffre 1557B 1589PV 1650Ri, goulphre 1590Ro 1644 1653 1665 1840, Goulfre 1672
(7) grand : grande 1600, grand' 1644 1650Ri
(8) parfondra : parfondera 1611B, profondra 1668P
(9) monstre : Monstre 1672
(10) Saxe : saxe 1653 1665
(11) naistra : naisrra 1660, naistre 1672, n'aîstra 1716
(12) ours : Ours 1672 1716
(13) truye : Truye 1672
(注意)1588-89では3-4-1-2の順でIV-64に差し替えられている。なお、1716の四行目の異文は原文ママ(n'aîtraではない)。
**校訂
1行目 Lyris は l'Iris とすべき。この点は信奉者・実証側とも異論がない。
*日本語訳
ナントのために、夜にイリスが現れるだろう。
(いくつかの)海の技術が雨を創り出すだろう。
アラブの湾は大艦隊を沈めるだろう。
ザクセンでは雄熊と雌豚から一匹の怪物が生まれるだろう。
**訳について
大乗訳2行目「海のアーチは雨となり」((大乗 [1975]p.186))は採用した異文の違い。3行目「アラビア湾に大艦隊がしかれ」は不適切。山根訳も3行目「アラビア湾で大艦隊が右往左往しよう」((山根 [1988] p.223))も不適切。
*信奉者側の見解
[[エリカ・チータム]]は人工降雨の技術、イラン・イラク戦争、東ドイツとソ連の関係などが描かれているとしていた((Cheetham [1990]))。
[[セルジュ・ユタン]]は3行目だけ解釈し、第三次中東戦争のこととした((Hutin [1978]))。[[ボードワン・ボンセルジャン]]はそこに加筆し、4行目を[[反キリスト]]の登場とした((Hutin [2002]))。
モーリス・ラカスは3行目を湾岸危機での米軍のペルシア湾への派遣、4行目を東ドイツ(雌豚)と西ドイツ(熊)の統一とした((ラカス [1994] p.45))。
*同時代的な視点
[[イリス]]は虹の神で、1行目は夜に虹が現れることを示している。当時、[[コンラドゥス・リュコステネス]]の記録では、1520年のウィーンで夜に虹と3つの月が現れたとされている((Lemesurier [2003b]))。こうした幻に関する噂が1行目に影響している可能性は当然あるだろう。4行目の怪物の誕生にしても、他の四行詩にも見られる当時の典型的な「驚異」である。
2行目の海の技術に関連して、[[ジャン=ポール・クレベール]]は[[フランソワ・ラブレー]]の『パンタグリュエル物語』に登場する降雨の技術を引き合いに出している。「ガステル宗匠は、雨を中空に引き止めて動かぬようにし、海原に、これを降らせるという技術も考案した」((訳文は渡辺一夫訳『ラブレー第四之書パンタグリュエル物語』岩波文庫p.275による。なお渡辺は「大腹」という字に「ガステル」という読みをあてている。))
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