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*原文
De Languedoc&sup(){1}, & Guienne&sup(){2} plus de dix,
Mille vouldront les Alpes repasser:
Grans&sup(){3} [[Allobroges]] marcher contre [[Brundis]]
Aquin&sup(){4} & Bresse les viendront recasser&sup(){5}.
**異文
(1) Languedoc : languedoc 1557B
(2) Guienne : Guienna 1672, Gujenne 1650Le 1716
(3) Grans : Grand 1840
(4) Aquin : A quin 1649Ca
(5) recasser : rechasser 1557B
**校訂
1行目から2行目にかけて plus de dix mille (一万人以上)でひとまとまりなので、1行目末にヴィルギュル(カンマ)があるのは不適切。
*日本語訳
ラングドックとギュイエンヌから一万人以上が
アルプスを再び越えることを望むだろう。
偉大なアロブロゲスたちはブリンディジに対抗して行進し、
アクイノとブレシアは彼らを再び砕きに来るだろう。
**訳について
上の「校訂」の節にもある通り、1行目から2行目の冒頭はひとまとまりだが、便宜上その部分は1行目にまとめた。
4行目 Bresse は南仏のブレス(Bresse)を指す場合とイタリアのブレシア(Brescia)を指す場合があるとされるが、この場合はブレシアと見るべき点について、[[ピエール・ブランダムール]]、[[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]らの間に異論はない((Brind’Amour [1996] p.55, Lemesurier [2003b/2010], Clébert [2003]))。
大乗訳は固有名詞の読み方を措くとしても、前半「ランゲドックとギュイエンヌから一〇以上も/アルプスをふたたび通り」((大乗 [1975] p.210))が不適切。1行目の dix (十)は2行目の mille (千)と合わせて dix mille (一万)と読むべきだが、mille が訳から落ちている(元になった[[ロバーツ>ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳では算用数字で 10,000 と書かれていた)。また、voudront (~を望むだろう)も訳に反映されていない。
山根訳はおおむね問題はないが、2行目「一万人以上がアルプスを越えたがる」((山根 [1988] p.249))は、細かいことを言えば不適切。原文は passer (越える)ではなく repasser (再び越える)である。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、ほとんどそのまま言い換えたかのような内容で、ラングドックとギュイエンヌから多くの兵士がイタリアに侵攻するが苦戦し、退却のためにふたたびアルプスを越えようとすることと、サヴォワからピエモンテにかけての地方の人々がブリンディジに対抗するが、ヴェネツィア共和国に従っている二都市(アクイノ、ブレシア)に打ちのめされることとした((Garencieres [1672]))。
その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ロルフ・ボズウェル]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]の著書には載っていない。
[[ヘンリー・C・ロバーツ]]もガランシエールのように特定の事件とは結びつけず、アルプスを越えてイタリアに侵攻したフランス軍が、その軍事行動を悔やむことと解釈した((Roberts [1949]))。
[[セルジュ・ユタン]]は1944年にドイツやイタリアの占領からフランスが解放されたことの予言とした((Hutin [1978]))。
*同時代的な視点
ギュイエンヌ(フランス南西部)、ラングドック(フランス南部)、アロブロゲス(=サヴォワ、フランス南東部からイタリア北西部)などからイタリア北部へと侵攻がなされることの予言であるのは確かだろうが、[[ピーター・ラメジャラー]]らは特定のモデルを提示するに至っていない。
#ref(Aquin.PNG)
【画像】関連地図(地方名は中心都市の位置で代替している。具体的にはギュイエンヌはボルドー、ラングドックはモンペリエ、サヴォワはシャンベリー)
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#comment
[[百詩篇第7巻]]>31番
*原文
De Languedoc&sup(){1}, & Guienne&sup(){2} plus de dix,
Mille vouldront les Alpes repasser:
Grans&sup(){3} [[Allobroges]] marcher contre [[Brundis]]
Aquin&sup(){4} & Bresse les viendront recasser&sup(){5}.
**異文
(1) Languedoc : languedoc 1557B
(2) Guienne : Guienna 1672, Gujenne 1650Le 1716
(3) Grans : Grand 1840
(4) Aquin : A quin 1649Ca
(5) recasser : rechasser 1557B
**校訂
1行目から2行目にかけて plus de dix mille (一万人以上)でひとまとまりなので、1行目末にヴィルギュル(カンマ)があるのは不適切。
*日本語訳
ラングドックとギュイエンヌから一万人以上が
アルプスを再び越えることを望むだろう。
偉大なアロブロゲスたちはブリンディジに対抗して行進し、
アクイノとブレッシャは彼らを再び砕きに来るだろう。
**訳について
上の「校訂」の節にもある通り、1行目から2行目の冒頭はひとまとまりだが、便宜上その部分は1行目にまとめた。
4行目 Bresse は南仏のブレス(Bresse)を指す場合とイタリアの[[ブレッシャ]](Brescia)を指す場合があるとされるが、この場合はブレッシャと見るべき点について、[[ピエール・ブランダムール]]、[[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]らの間に異論はない((Brind’Amour [1996] p.55, Lemesurier [2003b/2010], Clébert [2003]))。
大乗訳は固有名詞の読み方を措くとしても、前半「ランゲドックとギュイエンヌから一〇以上も/アルプスをふたたび通り」((大乗 [1975] p.210))が不適切。1行目の dix (十)は2行目の mille (千)と合わせて dix mille (一万)と読むべきだが、mille が訳から落ちている(元になった[[ロバーツ>ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳では算用数字で 10,000 と書かれていた)。また、voudront (~を望むだろう)も訳に反映されていない。
山根訳はおおむね問題はないが、2行目「一万人以上がアルプスを越えたがる」((山根 [1988] p.249))は、細かいことを言えば不適切。原文は passer (越える)ではなく repasser (再び越える)である。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、ほとんどそのまま言い換えたかのような内容で、ラングドックとギュイエンヌから多くの兵士がイタリアに侵攻するが苦戦し、退却のためにふたたびアルプスを越えようとすることと、サヴォワからピエモンテにかけての地方の人々がブリンディジに対抗するが、ヴェネツィア共和国に従っている二都市(アクイノ、ブレッシャ)に打ちのめされることとした((Garencieres [1672]))。
その後、20世紀半ばまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]、[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]、[[アンドレ・ラモン]]、[[ロルフ・ボズウェル]]、[[ジェイムズ・レイヴァー]]の著書には載っていない。
[[ヘンリー・C・ロバーツ]]もガランシエールのように特定の事件とは結びつけず、アルプスを越えてイタリアに侵攻したフランス軍が、その軍事行動を悔やむことと解釈した((Roberts [1949]))。
[[セルジュ・ユタン]]は1944年にドイツやイタリアの占領からフランスが解放されたことの予言とした((Hutin [1978]))。
*同時代的な視点
ギュイエンヌ(フランス南西部)、ラングドック(フランス南部)、アロブロゲス(=サヴォワ、フランス南東部からイタリア北西部)などからイタリア北部へと侵攻がなされることの予言であるのは確かだろうが、[[ピーター・ラメジャラー]]らは特定のモデルを提示するに至っていない。
#ref(Aquin.PNG)
【画像】関連地図(地方名は中心都市の位置で代替している。具体的にはギュイエンヌはボルドー、ラングドックはモンペリエ、サヴォワはシャンベリー)
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