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*原文
Au&sup(){1} chef du monde&sup(){2} le grand [[Chyren]]&sup(){3} sera,
Plus oultre&sup(){4} apres aymé&sup(){5} craint&sup(){6} redoubté:
Son bruit & loz les cieulx&sup(){7} surpassera&sup(){8},
Et du&sup(){9} seul tiltre victeur&sup(){10} fort contenté&sup(){11}.
**異文
(1) Au : Vn 1593BR 1594JFp.40 1605 1628 1649Ca 1649Xa 1650Le 1668 1672
(2) monde : Monde 1672
(3) Chyren : CHIREN 1594JF 1605 1628 1649Xa 1650Le 1668 1840, Cheiren 1672, Hiren 1593BR
(4) Plus oultre : PLVS OVTRE 1594JF 1605 1628 1649Xa 1650Le 1668
(5) apres aymé : apresayme 1600, apres ayme 1597 1610 1672 1716
(6) craint : criant 1600 1610 1716
(7) cieulx : Cieux 1611B 1660 1672
(8) surpassera : sur passera 1649Ca
(9) du : de 1589Rg
(10) victeur : Victeur 1594JF 1605 1628 1649Ca 1649Xa 1650Le 1668 1672, vigueur 1588-89
(11) contenté : contente 1672
*日本語訳
偉大なシランが世界の首領になるだろう、
プルス・ウルトラが愛され、恐れ慄かれた後に。
彼の名声と称賛は天を越え行くだろう。
そして勝利者という唯一の称号に強く満足する。
**訳について
1行目について。大乗訳で「世界の子ども」とあるのは明らかな誤訳(Chief を Child と間違えた?)。
2行目は直訳すれば「より遠くへと愛され、恐れ慄かれた後に」。独裁者説を採る者は「より遠くへと愛された後に、恐れおののかれる」と訳すことがあり、一応そういう訳も可能である。
*信奉者側の見解
[[ジャン=エメ・ド・シャヴィニー]]はシランをアンリ(2世)のアナグラムと理解し、plus oultre は神聖ローマ皇帝カール5世の標語「プルス・ウルトラ」(Plus Ultra)のフランス語化と見た((Chavigny [1594] p.40))。[[テオフィル・ド・ガランシエール]]も同様の読みである。
他の信奉者もその延長線上にあるが、[[アンリ2世]]は世界の指導者と呼べる立場にならなかったので、[[アナトール・ル・ペルチエ]]や[[エリカ・チータム]]のように[[アンリ4世]]の方にあてた者もいる。
また、2行目をより一般化し、未来の君主または独裁者とする説もある。
*同時代的な視点
実証的な視点でも、シャヴィニーの読み方はほぼ正しいものと考えられている。つまり、この詩は「カール5世の後にはアンリ2世が世界の王になる」という意味であろう。
カール5世の退位表明は1556年10月25日のことである((菊池良生『神聖ローマ帝国』講談社現代新書、p.203))。第6巻70番の公刊は(1556年[[シクスト・ドニーズ]]版が実在しないのなら)1557年9月3日のことだったので、カール5世後のヨーロッパ情勢でフランスが伸張することに期待感を示すのは、時宜に適った願望といえただろう。ただし、これは実現するどころか当のアンリ2世が1559年に世を去ったため、「ノストラダムスの最も悲惨な推測」((LeVert[1979] p.224))となってしまったことは否めない。
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#comment
*原文
Au&sup(){1} chef du monde&sup(){2} le grand [[Chyren]]&sup(){3} sera,
Plus oultre&sup(){4} apres aymé&sup(){5} craint&sup(){6} redoubté:
Son bruit & loz les cieulx&sup(){7} surpassera&sup(){8},
Et du&sup(){9} seul tiltre victeur&sup(){10} fort contenté&sup(){11}.
**異文
(1) Au : Vn 1593BR 1594JFp.40 1605 1628 1649Ca 1649Xa 1650Le 1668 1672
(2) monde : Monde 1672
(3) Chyren : CHIREN 1594JF 1605 1628 1649Xa 1650Le 1668 1840, Cheiren 1672, Hiren 1593BR
(4) Plus oultre : PLVS OVTRE 1594JF 1605 1628 1649Xa 1650Le 1668
(5) apres aymé : apresayme 1600, apres ayme 1597 1610 1672 1716
(6) craint : criant 1600 1610 1716
(7) cieulx : Cieux 1611B 1660 1672
(8) surpassera : sur passera 1649Ca
(9) du : de 1589Rg
(10) victeur : Victeur 1594JF 1605 1628 1649Ca 1649Xa 1650Le 1668 1672, vigueur 1588-89
(11) contenté : contente 1672
*日本語訳
偉大なシランが世界の首領になるだろう、
プルス・ウルトラが愛され、恐れ慄かれた後に。
彼の名声と称賛は天を越え行くだろう。
そして勝利者という唯一の称号に強く満足する。
**訳について
1行目について。大乗訳で「世界の子ども」とあるのは明らかな誤訳(Chief を Child と間違えた?)。
2行目は直訳すれば「より遠くへと愛され、恐れ慄かれた後に」。独裁者説を採る者は「より遠くへと愛された後に、恐れおののかれる」と訳すことがあり、一応そういう訳も可能である。
*信奉者側の見解
[[ジャン=エメ・ド・シャヴィニー]]はシランをアンリ(2世)のアナグラムと理解し、plus oultre は神聖ローマ皇帝カール5世の標語「プルス・ウルトラ」(Plus Ultra)のフランス語化と見た((Chavigny [1594] p.40))。[[テオフィル・ド・ガランシエール]]も同様の読みである。
他の信奉者もその延長線上にあるが、[[アンリ2世]]は世界の指導者と呼べる立場にならなかったので、[[アナトール・ル・ペルチエ]]や[[エリカ・チータム]]のように[[アンリ4世]]の方にあてた者もいる。
また、2行目をより一般化し、未来の君主または独裁者とする説もある。
*同時代的な視点
実証的な視点でも、シャヴィニーの読み方はほぼ正しいものと考えられている。つまり、この詩は「カール5世の後にはアンリ2世が世界の王になる」という意味であろう。
カール5世の退位表明は1556年10月25日のことである((菊池良生『神聖ローマ帝国』講談社現代新書、p.203))。
第6巻70番の公刊は(1556年[[シクスト・ドニーズ]]版が実在しないのなら)1557年9月6日のことだったので、カール5世後のヨーロッパ情勢でフランスが伸張することに期待感を示すのは、時宜に適った願望といえただろう。
ただし、これは実現するどころか当のアンリ2世が1559年に世を去ったため、「ノストラダムスの最も悲惨な推測」((LeVert[1979] p.224))となってしまったことは否めない。
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