詩百篇第1巻21番

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[[詩百篇第1巻]]>21番* *原文 Profonde argille blanche nourrir&sup(){1} rochier&sup(){2}, Qui d' vn&sup(){3} abysme [[istra>issir]]&sup(){4} lacticineuse&sup(){5}, En vain troubles&sup(){6} ne l'oseront&sup(){7} toucher Ignorants&sup(){8} estre au fond&sup(){9} terre argilleuse&sup(){10}. **異文 (1) nourrir : nourrit 1568 1590Ro 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Ma 1628dR 1649Xa 1650Ri 1981EB 1667Wi 1668P 1672Ga 1716PR 1772Ri, Nourrit 1656ECLb (2) rochier 1555 1557U 1557B 1568 1772Ri 1840 : rocher &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : Rocher 1656ECL) (3) d' vn : dun 1557B, d’un’ 1656ECLa, d’une 1716PRc (4) istra : naistra 1612Me (5) lacticineuse : la cticineuse 1628dR, lacticinieuse 1656ECLa, lactinieuse 1656ECLb, l'acticineuse 1672Ga (6) troubles : troublez 1568A 1568B 1568C 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Ma 1627Di 1628dR 1644Hu 1649Xa 1650Ri 1656ECL 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1772Ri 1981EB, troubler 1653AB 1665Ba (7) ne l'oseront : l'oseront 1557B 1612Me, ne l'oserunt 1668A (8) Ignorants : Ignorant 1591BR 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1628dR 1649Xa 1656ECL 1672Ga 1716PR 1981EB, jgnorans 1668P (9) fond : fons 1656ECLa, fonds 1656ECLb (10) argilleuse : arguilleuse 1589PV 1590SJ 1590Ro 1649Ca 1650Le 1668A (注記)1656ECLはp.149 と p.446 の2箇所に登場している。前者と後者で異なる場合、前者を1656ECLa とし、後者を 1656ECLb とした。 **校訂  [[ピエール・ブランダムール]]は3行目の troubles を troublés としている。ブランダムールは1555や1557Bが最初からそうであるかのように紹介しているが、当「大事典」で確認しているフォトコピーの類では、eの上に綴り字記号は全く見えない。  1555を忠実に転記したとしている[[ウジェーヌ・バレスト]]や[[ピーター・ラメジャラー]]も troubles としている以上、これは当「大事典」のみの誤認というわけではないだろう(ラメジャラーはそう転記した上で、troublésという読み替えを提案している((Lemesurier [2003b])))。 *日本語訳 岩を養う深く白い粘土は 乳白色をしていて深淵から出てくるであろう。 人々は無為に困惑させられ、それにあえて触れようとはしないだろう、 底に粘土質の土があるとは知らずに。 **訳について  1行目の直訳は「深く白い粘土は岩を養う」だが、2行目の関係詞との都合で上記のような語順とした。それ以外はほとんど議論の余地のない詩で、[[ピエール・ブランダムール]]の釈義や[[ピーター・ラメジャラー]]の英訳の内容も実質的に一致している。  既存の訳についてコメントしておく。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]1行目「岩が白い粘土を奥底に養う」((山根 [1988] p.44))は主語と目的語が倒置されていると考えれば成立するが、そう考えなければならないような必然性に乏しい。  同3行目「むなしく苦しめられた人びとは それに触れようとしないだろう」は、誤りではないが、troublez は「苦しめられる」ではなく「(不可解な現象に)困惑させられる、混乱させられる」と解釈するほうが自然である。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]4行目「未知なるものが粘土の地の底にあるだろう」((大乗 [1975] p.50))は、前置詞を補えば成立する訳。  [[五島勉]]は『[[ノストラダムスの大予言・地獄編]]』で訳しているので、それについてもコメントしておく。  2行目「その深海の淵にはラクチシヌーズがひそむだろう」((五島 [1994]『ノストラダムスの大予言・地獄編』 p.176))は、[[istra>issir]]を「ひそむ」と訳す根拠が不明。  4行目「だれも触れない未知のものが、地球のいちばん底の粘土のなかにある」は「だれも触れない」に当たる語が原文にない(五島は3行目後半を「だれもそれにあえて触れようとしない」と訳しているので、それを4行目に持ってきたということでもない)。また、「地球のいちばん底の粘土」は前置詞を補ったとしてもかなり強引な訳である。 *信奉者側の見解  [[1656年の注釈書>Eclaircissement des veritables Quatrains de Maistre Michel Nostradamus]]は、1559年の項目で、歴史書では扱われていないローカルな事件として取り上げ、海の奥底に根を下ろして海面に突き出ていた粘土質の岩が、海水に浸されることで海の表面に乳白色に広がったという不思議な事件の描写とした((Eclaircissement..., pp.446-447))。[[テオフィル・ド・ガランシエール]]もこの解釈をほぼ丸写しにしたが、時期については何も触れなかった((Garencieres [1672]))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]はフランス革命に関する詩と解釈した((Fontbrune [1939] p.39))。  [[アンドレ・ラモン]]は1704年に(それまでは中国からの輸入に頼っていた)磁器の製法がヨーロッパでも発見されたことと解釈した((Lamont [1943] pp.91-92))。[[ジョン・ホーグ]]はこの解釈をそのまま引用した((Hogue (1997)[1999]))。  [[エリカ・チータム]]や[[セルジュ・ユタン]]は錬金術的な詩の可能性を示唆するにとどまった((Cheetham [1990], Hutin [1978/2003]))。なお、[[五島勉]]はこれらの解釈を「化学」云々と紹介したが((五島、前掲書、p.178))、錬金術 (alchimie) と化学 (chimie) は別の語である。  その五島は、1994年に朝日新聞が小さく報じた東太平洋の海底火山脈で発見された熱水塊についてと解釈した((五島、前掲書、pp.176-181))。 *同時代的な視点  [[オルス・アポロ]]を20世紀に復刻したマルセル・プチは、この詩をノストラダムスと同時代に行われたランソンの発掘調査と解釈した((Petit [1993] p.15))。この解釈は[[ピーター・ラメジャラー]]や[[ジャン=ポール・クレベール]]も支持した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010], Clébert [2003]))。  ランソン(Lançon)は[[サロン=ド=プロヴァンス]]の少し南にある町で、16世紀にコンスタンティヌス帝時代のオッピドゥム(城塞都市)が発掘された。[[セザール・ド・ノートルダム]]とも親交のあったペーレスクは、その発掘では「岩を支えていた白い粘土」の下から多くの宝物が出土したことを記録している。  他方で[[ロジェ・プレヴォ]]は、増水の際に色が変わるヴォクリューズの泉は宝を隠しているという地元の伝説と解釈した((Prévost [1999] p.162))。  ちなみに、プレヴォや[[ピエール・ブランダムール]]は、ノストラダムスがプライベートな手紙の中に書いた詩において、「粘土は岩の母である」という一句があることを指摘している((Brind’Amour [1996]))。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。なお、当「大事典」としては、以下に投稿されたコメントの信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 - 尖閣諸島問題でレアアース輸出国の中国が、世界中に禁輸措置を取ったが、 最近発見された日本領の海底にも存在したレアアースについての予言か? しかし、十分に採掘できない予感。 -- とある信奉者 (2013-04-14 21:13:51) #comment
[[詩百篇第1巻]]>21番* *原文 Profonde argille blanche nourrir&sup(){1} rochier&sup(){2}, Qui d' vn&sup(){3} abysme [[istra>issir]]&sup(){4} lacticineuse&sup(){5}, En vain troubles&sup(){6} ne l'oseront&sup(){7} toucher Ignorants&sup(){8} estre au fond&sup(){9} terre argilleuse&sup(){10}. **異文 (1) nourrir : nourrit 1568 1590Ro 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Ma 1628dR 1649Xa 1650Ri 1981EB 1667Wi 1668P 1672Ga 1716PR 1772Ri, Nourrit 1656ECLb (2) rochier 1555 1557U 1557B 1568 1772Ri 1840 : rocher &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : Rocher 1656ECL) (3) d' vn : dun 1557B, d’un’ 1656ECLa, d’une 1716PRc (4) istra : naistra 1612Me (5) lacticineuse : la cticineuse 1628dR, lacticinieuse 1656ECLa, lactinieuse 1656ECLb, l'acticineuse 1672Ga (6) troubles : troublez 1568A 1568B 1568C 1591BR 1597Br 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1627Ma 1627Di 1628dR 1644Hu 1649Xa 1650Ri 1656ECL 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1772Ri 1981EB, troubler 1653AB 1665Ba (7) ne l'oseront : l'oseront 1557B 1612Me, ne l'oserunt 1668A (8) Ignorants : Ignorant 1591BR 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1611B 1628dR 1649Xa 1656ECL 1672Ga 1716PR 1981EB, jgnorans 1668P (9) fond : fons 1656ECLa, fonds 1656ECLb (10) argilleuse : arguilleuse 1589PV 1590SJ 1590Ro 1649Ca 1650Le 1668A (注記)1656ECLはp.149 と p.446 の2箇所に登場している。前者と後者で異なる場合、前者を1656ECLa とし、後者を 1656ECLb とした。 **校訂  [[ピエール・ブランダムール]]は3行目の troubles を troublés としている。ブランダムールは1555や1557Bが最初からそうであるかのように紹介しているが、当「大事典」で確認しているフォトコピーの類では、eの上に綴り字記号は全く見えない。  1555を忠実に転記したとしている[[ウジェーヌ・バレスト]]や[[ピーター・ラメジャラー]]も troubles としている以上、これは当「大事典」のみの誤認というわけではないだろう(ラメジャラーはそう転記した上で、troublésという読み替えを提案している((Lemesurier [2003b])))。 *日本語訳 岩を養う深く白い粘土は 乳白色をしていて深淵から出てくるであろう。 人々は無為に困惑させられ、それにあえて触れようとはしないだろう、 底に粘土質の土があるとは知らずに。 **訳について  1行目の直訳は「深く白い粘土は岩を養う」だが、2行目の関係詞との都合で上記のような語順とした。それ以外はほとんど議論の余地のない詩で、[[ピエール・ブランダムール]]の釈義や[[ピーター・ラメジャラー]]の英訳の内容も実質的に一致している。  既存の訳についてコメントしておく。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]1行目「岩が白い粘土を奥底に養う」((山根 [1988] p.44))は主語と目的語が倒置されていると考えれば成立するが、そう考えなければならないような必然性に乏しい。  同3行目「むなしく苦しめられた人びとは それに触れようとしないだろう」は、誤りではないが、troublez は「苦しめられる」ではなく「(不可解な現象に)困惑させられる、混乱させられる」と解釈するほうが自然である。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]4行目「未知なるものが粘土の地の底にあるだろう」((大乗 [1975] p.50))は、前置詞を補えば成立する訳。  [[五島勉]]は『[[ノストラダムスの大予言・地獄編]]』で訳しているので、それについてもコメントしておく。  2行目「その深海の淵にはラクチシヌーズがひそむだろう」((五島 [1994]『ノストラダムスの大予言・地獄編』 p.176))は、[[istra>issir]]を「ひそむ」と訳す根拠が不明。  4行目「だれも触れない未知のものが、地球のいちばん底の粘土のなかにある」は「だれも触れない」に当たる語が原文にない(五島は3行目後半を「だれもそれにあえて触れようとしない」と訳しているので、それを4行目に持ってきたということでもない)。また、「地球のいちばん底の粘土」は前置詞を補ったとしてもかなり強引な訳である。 *信奉者側の見解  [[1656年の注釈書>Eclaircissement des veritables Quatrains de Maistre Michel Nostradamus]]は、1559年の項目で、歴史書では扱われていないローカルな事件として取り上げ、海の奥底に根を下ろして海面に突き出ていた粘土質の岩が、海水に浸されることで海の表面に乳白色に広がったという不思議な事件の描写とした((Eclaircissement..., pp.446-447))。[[テオフィル・ド・ガランシエール]]もこの解釈をほぼ丸写しにしたが、時期については何も触れなかった((Garencieres [1672]))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]はフランス革命に関する詩と解釈した((Fontbrune [1939] p.39))。  [[アンドレ・ラモン]]は1704年に(それまでは中国からの輸入に頼っていた)磁器の製法がヨーロッパでも発見されたことと解釈した((Lamont [1943] pp.91-92))。[[ジョン・ホーグ]]はこの解釈をそのまま引用した((Hogue (1997)[1999]))。  [[エリカ・チータム]]や[[セルジュ・ユタン]]は錬金術的な詩の可能性を示唆するにとどまった((Cheetham [1990], Hutin [1978/2003]))。なお、[[五島勉]]はこれらの解釈を「化学」云々と紹介したが((五島、前掲書、p.178))、錬金術 (alchimie) と化学 (chimie) は別の語である。  その五島は、1994年に朝日新聞が小さく報じた東太平洋の海底火山脈で発見された熱水塊についてと解釈した((五島、前掲書、pp.176-181))。 *同時代的な視点  [[オルス・アポロ]]を20世紀に復刻したマルセル・プチは、この詩をノストラダムスと同時代に行われたランソンの発掘調査と解釈した((Petit [1993] p.15))。この解釈は[[ピーター・ラメジャラー]]や[[ジャン=ポール・クレベール]]も支持した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010], Clébert [2003]))。  ランソン(Lançon)は[[サロン=ド=プロヴァンス]]の少し南にある町で、16世紀にコンスタンティヌス帝時代のオッピドゥム(城塞都市)が発掘された。[[セザール・ド・ノートルダム]]とも親交のあったペーレスクは、その発掘では「岩を支えていた白い粘土」の下から多くの宝物が出土したことを記録している。  他方で[[ロジェ・プレヴォ]]は、増水の際に色が変わるヴォクリューズの泉は宝を隠しているという地元の伝説と解釈した((Prévost [1999] p.162))。  ちなみに、プレヴォや[[ピエール・ブランダムール]]は、ノストラダムスがプライベートな手紙の中に書いた詩において、「粘土は岩の母である」という一句があることを指摘している((Brind’Amour [1996]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - 尖閣諸島問題でレアアース輸出国の中国が、世界中に禁輸措置を取ったが、 最近発見された日本領の海底にも存在したレアアースについての予言か? しかし、十分に採掘できない予感。 -- とある信奉者 (2013-04-14 21:13:51)

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