auge

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 &bold(){auge} は現代フランス語では「飼桶」、「(左官用の)平桶」、「排水渠」などの意味。ジャン・ニコの羅仏辞典(1606年)でも、「槽、桶」(Alveus, Alveolus)、「水管」(Canalis)などとラテン語訳されている(([[Dictionnaires d'autrefoisの「auge」の検索結果>>http://artflx.uchicago.edu/cgi-bin/dicos/pubdico1look.pl?strippedhw=auge]]))。 *古い天文学・占星術での意味  中期フランス語では「惑星の遠地点」(apogée de la planète) の意味も持っていた((LLS pp.24-25))。遠地点とは、地球から見て、惑星が最も遠い位置にあることである。現在では専ら地球の周りを回る月や人工衛星についてしか言われないが、かつてはアカデミーフランセーズの辞書でもapogée は「惑星が大地から最も遠くに位置する点」 (Le point où une planète se trouve à sa plus grande distance de la terre.)と定義付けられていた(1762年の第4版から1835年の第6版まで(([[Dictionnaires d'autrefoisの「apogee」の検索結果>>http://artflx.uchicago.edu/cgi-bin/dicos/pubdico1look.pl?strippedhw=apogee]])))。  [[ピエール・ブランダムール]]は、フランス語の語源学や中世天文学の研究を踏まえてこちらの定義を採り、「天体の遠地点」(l'apogée d' un astre) としていた((Brund’Amour [1993] p.212, n.59))。  [[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]も「遠地点」(apogée) としている((Lemesurier [2003b], Clébert [2003]))。  イタリア語では現代でも「遠地点」「絶頂」を意味する àuge という語が残っている((『新伊和辞典 増訂版』白水社、『伊和中辞典』小学館))。  ただし、エミール・リトレのフランス語辞典(1872年 - 1877年)では、「古い天文学用語」としての auge の定義として「今日 apsides と呼ばれるものに与えられていた名称で、つまりはある惑星の太陽からの距離が最も大きいか最も小さい諸点のこと」(Nom qu'on donnait à ce qui est dit aujourd'hui apsides, c'est-à-dire les points où une planète se trouve à sa plus grande ou à sa plus petite distance du soleil) とあり、「遠日点」と「近日点」の意味に理解されている(([[Dictionnaires d'autrefoisの「auge」の検索結果>>http://artflx.uchicago.edu/cgi-bin/dicos/pubdico1look.pl?strippedhw=auge]]))(ただし、apsides 自体は近地点や遠地点の意味も含んでいる((『仏和大辞典』白水社)))。  [[エヴリット・ブライラー]]はこれをふまえたものか、「近日点」ないし「遠日点」の意味としており、[[高田勇]]・[[伊藤進]]の[[百詩篇第1巻16番]]の訳でも「遠日点」とされている。また、[[ロベール・ブナズラ]]もこの場合は「遠日点」(aphélie) としているらしい((Clébert [2003]))。  当時のプトレマイオス的な宇宙観に基づく伝統的な占星術では、地球(大地)がその中心にあったのだから、「遠地点」という読みの方が説得的であるようにも思える。  「遠地点」(apogée) か「遠日点」(aphélie) かにはまだ議論の余地があるのだろうが、少なくともそのいずれかを指している可能性が高いとはいえるだろう。 *信奉者側の旧説  かつては主に信奉者側から、いくつか異なる読みが提示されていた。 -ラテン語の augere ないし augmen から「増加(する)」の意味。[[アナトール・ル・ペルチエ]]がおそらく最初に提示し、[[エドガー・レオニ]]もそれを支持していた。 -[[エリザベート・ベルクール]]も基本的な語義は「増加」としたが、[[詩百篇第1巻16番]]のAVGE については、au-age (-の時代に) の略とした((ベルクール [1982] pp.97-98))。 -[[ヴライク・イオネスク]]は AVGE について、ヴェガ (VEGA) のアナグラムとした((イオネスク [1991] pp.288-289))。ちなみにこの説は、古代の占星術ではヴェガに特段の意味はなかったとする前記ベルクールから、論外として一蹴された((ベルクール [1982] p.97))。イオネスクの著書ではベルクールの著書が酷評されているが((イオネスク [1991] p.352))、このやりとりとの関連性は不明である。 -「水槽」の意味に理解し、宝瓶宮(水瓶座)の隠喩と見なす説。[[マリニー・ローズ]]が示したが((Rose [2002c]))、[[クリスティアン・ヴェルナー]]も同じ読みをしていたらしい((Brund’Amour [1993] p.212))。 *登場箇所 -[[詩百篇第1巻15番]] -[[詩百篇第1巻16番]] ---- &bold(){コメント欄} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。 - 英語でピークになる事から、1章16ではその綴りを含むチェサピーク“Chesapeake”湾の海戦(1781年9月5日)をも暗示。 -- とある信奉者 (2012-02-20 14:27:30) #comment
 &bold(){auge} は現代フランス語では「飼桶」、「(左官用の)平桶」、「排水渠」などの意味。  ジャン・ニコの羅仏辞典(1606年)でも、「槽、桶」(Alveus, Alveolus)、「水管」(Canalis)などとラテン語訳されている(([[Dictionnaires d'autrefoisの「auge」の検索結果>>http://artflx.uchicago.edu/cgi-bin/dicos/pubdico1look.pl?strippedhw=auge]]))。 *古い天文学・占星術での意味  中期フランス語では「惑星の遠地点」(apogée de la planète) の意味も持っていた((LLS pp.24-25))。  遠地点とは、地球から見て、惑星が最も遠い位置にあることである。現在では専ら地球の周りを回る月や人工衛星についてしか言われないが、かつてはアカデミーフランセーズの辞書でもapogée は「惑星が大地から最も遠くに位置する点」 (Le point où une planète se trouve à sa plus grande distance de la terre.)と定義付けられていた(1762年の第4版から1835年の第6版まで(([[Dictionnaires d'autrefoisの「apogee」の検索結果>>http://artflx.uchicago.edu/cgi-bin/dicos/pubdico1look.pl?strippedhw=apogee]])))。  [[ピエール・ブランダムール]]は、フランス語の語源学や中世天文学の研究を踏まえてこちらの定義を採り、「天体の遠地点」(l'apogée d' un astre) としていた((Brund’Amour [1993] p.212, n.59))。  [[ピーター・ラメジャラー]]、[[ジャン=ポール・クレベール]]も「遠地点」(apogée) としている((Lemesurier [2003b], Clébert [2003]))。  イタリア語では現代でも「遠地点」「絶頂」を意味する àuge という語が残っている((『新伊和辞典 増訂版』白水社、『伊和中辞典』小学館))。  ただし、エミール・リトレのフランス語辞典(1872年 - 1877年)では、「古い天文学用語」としての auge の定義として「今日 apsides と呼ばれるものに与えられていた名称で、つまりは、ある惑星の太陽からの距離が最も大きい点か最も小さい点のこと」とあり、「遠日点」と「近日点」の意味に理解されている(([[Dictionnaires d'autrefoisの「auge」の検索結果>>http://artflx.uchicago.edu/cgi-bin/dicos/pubdico1look.pl?strippedhw=auge]]))(ただし、apsides 自体は近地点や遠地点の意味も含んでいる((『仏和大辞典』白水社)))。  [[エヴリット・ブライラー]]はこれをふまえたものか、「近日点」ないし「遠日点」の意味としており、[[高田勇]]・[[伊藤進]]の[[詩百篇第1巻16番]]の訳でも「遠日点」とされている。  また、[[ロベール・ブナズラ]]もこの場合は「遠日点」(aphélie) としているらしい((Clébert [2003]))。  当時のプトレマイオス的な宇宙観に基づく伝統的な占星術では、地球(大地)がその中心にあったのだから、「遠地点」という読みの方が説得的であるようにも思える。  「遠地点」(apogée) か「遠日点」(aphélie) かにはまだ議論の余地があるのだろうが、少なくともそのいずれかを指している可能性が高いとはいえるだろう。 *信奉者側の旧説  かつては主に信奉者側から、いくつか異なる読みが提示されていた。 -ラテン語の augere ないし augmen から「増加(する)」の意味。[[アナトール・ル・ペルチエ]]がおそらく最初に提示し、[[エドガー・レオニ]]もそれを支持していた。 -[[エリザベート・ベルクール]]も基本的な語義は「増加」としたが、[[詩百篇第1巻16番]]のAVGE については、au-age (-の時代に) の略とした((ベルクール [1982] pp.97-98))。 -[[ヴライク・イオネスク]]は AVGE について、ヴェガ (VEGA) の[[アナグラム]]とした((イオネスク [1991] pp.288-289))。この説は、前出のベルクールからは、古代の占星術でヴェガに特段の意味など無く、論外だとして一蹴された((ベルクール [1982] p.97))。このやり取りのためかどうか、イオネスクの著書では、逆にベルクールの著書が酷評されている((イオネスク [1991] p.352))。 -「水槽」の意味に理解し、宝瓶宮(水瓶座)の隠喩と見なす説。[[マリニー・ローズ]]が示したが((Rose [2002c]))、[[クリスティアン・ヴェルナー]]も同じ読みをしていたらしい((Brund’Amour [1993] p.212))。 *登場箇所 -[[詩百篇第1巻15番]] -[[詩百篇第1巻16番]] ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - 英語でピークになる事から、1章16ではその綴りを含むチェサピーク“Chesapeake”湾の海戦(1781年9月5日)をも暗示。 -- とある信奉者 (2012-02-20 14:27:30)

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