詩百篇第9巻90番

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[[詩百篇第9巻]]>90番* *原文 Vn capitaine&sup(){1} de la grand Germanie&sup(){2} Se viendra rendre par simulé secours Vn&sup(){3} Roy des roys&sup(){4} ayde&sup(){5} de Pannonie&sup(){6}, Que&sup(){7} sa reuolte fera de sang grand&sup(){8} cours. **異文 (1) capitaine 1568 1590Ro : Capitaine 1591BR & &italic(){T.A.Eds.} (2) grand Germanie : grand' Germanie 1568B 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1772Ri, Grand Germanie 1607PR 1610Po, grand Germaine 1716PR (3) Vn : Au 1590Ro 1591BR 1603Mo 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1649Ca 1649Xa 1650Le 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1720To 1772Ri 1840 1981EB (4) roys 1568X 1568A 1772Ri : Roys &italic(){T.A.Eds.} (5) ayde/aide : aydé 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To 1840 (6) Pannonie : pannonie 1590Ro, Pannoie 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 (7) Que : qu' à 1572Cr (8) grand : grands 1572Cr **校訂  [[ピーター・ラメジャラー]]は校訂していないが、実質的に3行目の Un を Au として読んでいる。また、英訳に併記されたカッコつきの読み方からすると、ayde de について et de の誤記の可能性も想定しているようである。 *日本語訳 大ゲルマニアの一隊長が 救援をよそおって赴いてくるだろう、 [[パンノニア]]の救いとなる王の中の王へと。 その叛乱は大流血を生み出すだろう。 **訳について  2行目の se rendre にはいくつもの意味がありうるが、ラメジャラーもクレベールも「行く、赴く」と理解しており、実際、そう読むのが一番文脈に適合していることからそれを採用した。  なお、その行の直訳は「偽りの救援によって赴いてくるだろう」だが、ぎこちないので若干意訳した。  既存の訳についてもコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]は一応許容範囲であると思われる。  2行目「いつわりの救援で敗北し」((大乗 [1975] p.280))は、se rendre に「降伏する」の意味もあるので可能な訳。  3行目「パノニアの助力で王の王に」は、原文どおりだと成立しないが、Au Roy des roys aydé de Pannonie というしばしば見られる異文の訳としてなら許容される余地がある。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]もおおむね許容範囲内だが、4行目「彼の戦争は未曾有の流血をもたらすだろう」((山根 [1988] p.312))で、revolte を「戦争」と訳すのは解釈に引きずられすぎではないかと思える。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は「ラテン語のパンノニアはハンガリーのことで、この詩には『王の中の王』が大トルコなのか神聖ローマ皇帝なのかを除けば、何も難しいことはない」とだけ注記した((Garencieres [1672] p.399))。  その後、少なくとも[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]は解釈しておらず、20世紀に入るまで注目されることはなかった。  しかし、ナチスが勢力を伸ばしてくると、それとの関連で解釈されるようになっていった。  [[エミール・リュイール]](1938年)はごく近い未来に、ハンガリーかその周辺国の前線を支援することを装ったドイツ軍人が、裏で共産主義勢力と手を結んで反乱を起こすことと解釈した((Ruir [1938] p.97))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]はそこまで詳細に解釈しなかったが、近未来にドイツで起こる反乱と解釈していた((Fontbrune [1939] p.175))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)は、近い将来にナチスの将校がハンガリーかその周辺国の権力者と裏で通じ、表向き忠誠を誓いながら反乱を起こすと解釈したので((Lamont [1943] p.258))、似たようなものといえるだろう。  [[ロルフ・ボズウェル]](1943年)は、ルドルフ・ヘスがイギリスに単独飛行して捕われた事件(1941年)と解釈した((Boswell [1943] pp.233-234))。  第二次世界大戦後になり、ドイツ軍人の大反乱などなかったことが確定すると、「軍人」をヒトラーとする解釈が出てくるようになった。  [[ジャン・ムズレット]]ら(1947年)はヒトラーが救援を装ってイタリアを訪問したことが、さらなる戦争の継続と大流血につながったと解釈した((Edouard & Mezerette [1947] p.57))。  [[ジェイムズ・レイヴァー]](1952年)は前半2行のみとりあげ、ヒトラーが周辺諸国を保護国化したことと解釈した((Laver [1952] p.224))。  ヒトラーとする解釈は[[エリカ・チータム]]、[[クルト・アルガイヤー]]らも採用したほか、[[南山宏]]監修の著書にも出てくる((Cheetham [1973], アルガイヤー [1985] p.57、南山『1999年,ほんとうに人類は滅亡するのか!?』p.19))。  ただし、20世紀以降でもヒトラー以外と解釈する論者もいる。  [[セルジュ・ユタン]]は、ナポレオン戦争と関連付けたし、[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は三十年戦争の予言とした((Hutin [1978], Fontbrune [1984], Nostradamus 2, pp.87-88))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]はオスマン帝国のハンガリー進攻に対し、神聖ローマ皇帝カール5世が1530年代に軍を派遣したことがモデルではないかと推測した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は、神聖ローマ帝国の軍人が大反乱を起こすことを描いたものと推測した。  なお、文脈に適合しないことにも触れつつ、「王の中の王」は通常キリストを指す慣用句で、『[[ミラビリス・リベル]]』に連なる中世以来の予言的伝統では神そのものを指すのに使われていたと指摘している((Clébert [2003]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - 30年戦争を予言。1行はボヘミアのドイツ系プロテスタントの小貴族の家に生まれた傭兵隊長ヴァレンシュタイン 2行は反逆の疑いを掛けられて暗殺されたこと。 王たちの王とは神聖ローマ帝国の皇帝にしてボヘミア、ハンガリーの王であるフェルディナンド二世のことで 反乱はベーメンの反乱。 -- とある信奉者 (2012-02-21 22:14:20)
[[詩百篇第9巻]]>90番* *原文 Vn capitaine&sup(){1} de la grand Germanie&sup(){2} Se viendra rendre par simulé secours Vn&sup(){3} Roy des roys&sup(){4} ayde&sup(){5} de Pannonie&sup(){6}, Que&sup(){7} sa reuolte fera de sang grand&sup(){8} cours. **異文 (1) capitaine 1568 1590Ro : Capitaine 1591BR & &italic(){T.A.Eds.} (2) grand Germanie : grand' Germanie 1568B 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1772Ri, Grand Germanie 1607PR 1610Po, grand Germaine 1716PR (3) Vn : Au 1590Ro 1591BR 1603Mo 1605sn 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1649Ca 1649Xa 1650Le 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1672Ga 1716PR 1720To 1772Ri 1840 1981EB (4) roys 1568X 1568A 1772Ri : Roys &italic(){T.A.Eds.} (5) ayde/aide : aydé 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To 1840 (6) Pannonie : pannonie 1590Ro, Pannoie 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 (7) Que : qu' à 1572Cr (8) grand : grands 1572Cr **校訂  [[ピーター・ラメジャラー]]は校訂していないが、実質的に3行目の Un を Au として読んでいる。また、英訳に併記されたカッコつきの読み方からすると、ayde de について et de の誤記の可能性も想定しているようである。 *日本語訳 大ゲルマニアの一隊長が 救援をよそおって赴いてくるだろう、 [[パンノニア]]の救いとなる王の中の王へと。 その叛乱は大流血を生み出すだろう。 **訳について  2行目の se rendre にはいくつもの意味がありうるが、ラメジャラーもクレベールも「行く、赴く」と理解しており、実際、そう読むのが一番文脈に適合していることからそれを採用した。  なお、その行の直訳は「偽りの救援によって赴いてくるだろう」だが、ぎこちないので若干意訳した。  既存の訳についてもコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]は一応許容範囲であると思われる。  2行目「いつわりの救援で敗北し」((大乗 [1975] p.280))は、se rendre に「降伏する」の意味もあるので可能な訳。  3行目「パノニアの助力で王の王に」は、原文どおりだと成立しないが、Au Roy des roys aydé de Pannonie というしばしば見られる異文の訳としてなら許容される余地がある。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]もおおむね許容範囲内だが、4行目「彼の戦争は未曾有の流血をもたらすだろう」((山根 [1988] p.312))で、revolte を「戦争」と訳すのは解釈に引きずられすぎではないかと思える。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は「ラテン語のパンノニアはハンガリーのことで、この詩には『王の中の王』が大トルコなのか神聖ローマ皇帝なのかを除けば、何も難しいことはない」とだけ注記した((Garencieres [1672] p.399))。  その後、少なくとも[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]は解釈しておらず、20世紀に入るまで注目されることはなかった。  しかし、ナチスが勢力を伸ばしてくると、それとの関連で解釈されるようになっていった。  [[エミール・リュイール]](1938年)はごく近い未来に、ハンガリーかその周辺国の前線を支援することを装ったドイツ軍人が、裏で共産主義勢力と手を結んで反乱を起こすことと解釈した((Ruir [1938] p.97))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]]はそこまで詳細に解釈しなかったが、近未来にドイツで起こる反乱と解釈していた((Fontbrune [1939] p.175))。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)は、近い将来にナチスの将校がハンガリーかその周辺国の権力者と裏で通じ、表向き忠誠を誓いながら反乱を起こすと解釈したので((Lamont [1943] p.258))、似たようなものといえるだろう。  [[ロルフ・ボズウェル]](1943年)は、ルドルフ・ヘスがイギリスに単独飛行して捕われた事件(1941年)と解釈した((Boswell [1943] pp.233-234))。  第二次世界大戦後になり、ドイツ軍人の大反乱などなかったことが確定すると、「軍人」をヒトラーとする解釈が出てくるようになった。  [[ジャン・ムズレット]]ら(1947年)はヒトラーが救援を装ってイタリアを訪問したことが、さらなる戦争の継続と大流血につながったと解釈した((Edouard & Mezerette [1947] p.57))。  [[ジェイムズ・レイヴァー]](1952年)は前半2行のみとりあげ、ヒトラーが周辺諸国を保護国化したことと解釈した((Laver [1952] p.224))。  ヒトラーとする解釈は[[エリカ・チータム]]、[[クルト・アルガイヤー]]らも採用したほか、[[南山宏]]監修の著書にも出てくる((Cheetham [1973], アルガイヤー [1985] p.57、南山『1999年,ほんとうに人類は滅亡するのか!?』p.19))。  ただし、20世紀以降でもヒトラー以外と解釈する論者もいる。  [[セルジュ・ユタン]]は、ナポレオン戦争と関連付けたし、[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は三十年戦争の予言とした((Hutin [1978], Fontbrune [1984], Nostradamus 2, pp.87-88))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]はオスマン帝国のハンガリー進攻に対し、神聖ローマ皇帝カール5世が1530年代に軍を派遣したことがモデルではないかと推測した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は、神聖ローマ帝国の軍人が大反乱を起こすことを描いたものと推測した。  なお、文脈に適合しないことにも触れつつ、「王の中の王」は通常キリストを指す慣用句で、『[[ミラビリス・リベル]]』に連なる中世以来の予言的伝統では神そのものを指すのに使われていたと指摘している((Clébert [2003]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - 30年戦争を予言。1行はボヘミアのドイツ系プロテスタントの小貴族の家に生まれた傭兵隊長ヴァレンシュタイン 2行は反逆の疑いを掛けられて暗殺されたこと。 王たちの王とは神聖ローマ帝国の皇帝にしてボヘミア、ハンガリーの王であるフェルディナンド二世のことで 反乱はベーメンの反乱。 -- とある信奉者 (2012-02-21 22:14:20)

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