百詩篇第4巻99番

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*原文 L'aisné&sup(){1} [[vaillant]] de la fille du&sup(){2} Roy, Repoulsera si profond&sup(){3} les Celtiques: Qu'il mettra fouldres&sup(){4}, combien&sup(){5} en tel [[arroy]] Peu & loing puis&sup(){6} profond es&sup(){7} Hesperiques **異文 (1) L'aisné : Laisné 1590Ro 1600 1610 1716, L'Aisné 1672 (2) du : dn 1716 (3) profond : auant 1649Ca 1650Le 1668 1792Du (4) fouldres : Foudres 1672 (5) combien : combat 1588-89 1611B 1660 (6) puis : pis 1588-89 1611B, pris 1660 1792La (7) profond es 1557U 1557B 1568A 1590Ro 1672 : profond és &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : profondes 1588-89 1589PV 1649Ca 1792Du, profonés 1716, profond ès 1772Ri 1866De) (注記)1792Du は1792年ヴァン・デュレン版の、1866De は1866年ドゥラリュ版の異文。 *日本語訳 王の令嬢の勇敢な長男が、 ケルト人たちをあまりにも奥深くへと押し返すので、 彼は雷を(先々で)置くだろう。そんな有様になるのは如何ばかりか。 近かれ遠かれ、次には[[ヘスペリア]]の奥深くに。 **訳について  2行目から3行目にかけては si... que... (so... that...) の構文になっている。  3行目の「雷を置く」は直訳したもの。[[ジャン=ポール・クレベール]]は「彼ら(ケルト人)の諸地方に戦火を撒き散らす」という意味に理解している。foudres は複数形であり、その辺りの意味を補うために、上の訳ではカッコ書きで「さきざきで」を付け加えた。  3行目後半は[[arroy]]の解釈によっていくつかの読みがありうる。上では「状態、有様」の意味を採用し、戦火に巻き込まれる場所がどれだけ増えるのか、という意味に理解した。  既存の訳についてもコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。まず1行目「王妃の勇敢な息子は」((大乗 [1975] p.148))は誤訳。la fille du Roy の直訳は「王の令嬢」であり、「王女」と訳すのは許容されるだろうが、「王妃」は不適切である。また、aisné はただの「息子」ではなく「長男」の意味である。  3行目「こうしてなんども光をともし」は、大乗訳にしばしば見られる light と lightening の取り違えを含んでいる上、[[arroy]]がどう訳されたのかもよく分からない。  4行目「小さく遠く あとでスペインにいきわたるだろう」は、peu の理解が不適切。この場合は距離的ないし時間的な幅があまりない(つまり「近い」)という意味で使われている。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]の前半は問題ない。その3行目「彼は雷電を操る 同勢はかくも大群」((山根 [1988] p.176))は、mettre を「操る」とするのは強引だし、後半も[[arroy]]を「同勢」と訳すのは意訳しすぎに思える。  4行目「遠方に数えるほど やがて西の奥深くへ」の前半の問題点は大乗訳への指摘と重なるので省く。[[ヘスペリア]]は本来的には西方を指すので、「西」と訳すこと自体は許容されるだろう。 *信奉者側の見解  全訳本以外での解釈例はほとんどない。  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、スペイン王女アンヌ・ドートリッシュの息子であるフランス王ルイ14世と解釈し、彼のフランドル侵攻が描かれているとともに、スペインにも深く侵攻することになると解釈した((Garencieres [1672]))。  [[エリカ・チータム]]は1973年の段階では、フランスがスペインないしアメリカをミサイルなどの遠距離攻撃可能な現代兵器によって攻撃することではないかとした。後には第三次世界大戦中にICBM (大陸間弾道ミサイル) が使われることの描写ではないかとした((Cheetham [1973], Cheetham [1990]))。なお、前者は[[その日本語版>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]では、宇宙からUFOの大編隊が飛来して空襲してくることとする原秀人の解釈に差し替えられた。  [[セルジュ・ユタン]]は「フランス軍のスペインからの撤退」という時期が明記されていない漠然とした解釈しかつけておらず、[[ボードワン・ボンセルジャン]]の補注でも何も変更はなかった((Hutin [1978], Hutin [2003]))。  [[ジョン・ホーグ]]は1行目の結び付け方が難しいとしつつも、ナチスの電撃戦に関する詩と解釈した((Hogue (1997)[1999]))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]はフロワサールの年代記にモデルがあると見なし、百年戦争中にイングランドのエドワード黒太子が大陸に渡り、各地を転戦して勝利を重ねたことの描写とした((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。 ---- &bold(){コメントらん} 以下のコメント欄は[[コメントの著作権および削除基準>著作権について]]を了解の上でご使用ください。なお、当「大事典」としては、以下に投稿されたコメントの信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 - 英国王チャールズ一世の娘(メアリー・ヘンリエッタ・ステュアート)の長男はウィリアム3世であり、フランスと大同盟戦争を始める。この戦いは北アメリカではウィリアム王戦争と呼ばれる。 奥深くとは時間的なものであり、アメリカ独立戦争のレキシントン・コンコードの戦いを予言している。LOING PUISをLOING NEXTに置き換えてのアナグラムでLEXINGTON レキシントンになる。 -- とある信奉者  (2012-03-15 22:33:44) #comment
*原文 L'aisné&sup(){1} [[vaillant]] de la fille du&sup(){2} Roy, Repoulsera si profond&sup(){3} les Celtiques: Qu'il mettra fouldres&sup(){4}, combien&sup(){5} en tel [[arroy]] Peu & loing puis&sup(){6} profond es&sup(){7} Hesperiques **異文 (1) L'aisné : Laisné 1590Ro 1600 1610 1716, L'Aisné 1672 (2) du : dn 1716 (3) profond : auant 1649Ca 1650Le 1668 1792Du (4) fouldres : Foudres 1672 (5) combien : combat 1588-89 1611B 1660 (6) puis : pis 1588-89 1611B, pris 1660 1792La (7) profond es 1557U 1557B 1568A 1590Ro 1672 : profond és &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : profondes 1588-89 1589PV 1649Ca 1792Du, profonés 1716, profond ès 1772Ri 1866De) (注記)1792Du は1792年ヴァン・デュレン版の、1866De は1866年ドゥラリュ版の異文。 *日本語訳 王の令嬢の勇敢な長男が、 ケルト人たちをあまりにも奥深くへと押し返すので、 彼は雷を(先々で)置くだろう。そんな有様になるのは如何ばかりか。 近かれ遠かれ、次には[[ヘスペリア]]の奥深くに。 **訳について  2行目から3行目にかけては si... que... (so... that...) の構文になっている。  3行目の「雷を置く」は直訳したもの。[[ジャン=ポール・クレベール]]は「彼ら(ケルト人)の諸地方に戦火を撒き散らす」という意味に理解している。foudres は複数形であり、その辺りの意味を補うために、上の訳ではカッコ書きで「さきざきで」を付け加えた。  3行目後半は[[arroy]]の解釈によっていくつかの読みがありうる。上では「状態、有様」の意味を採用し、戦火に巻き込まれる場所がどれだけ増えるのか、という意味に理解した。  既存の訳についてもコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。まず1行目「王妃の勇敢な息子は」((大乗 [1975] p.148))は誤訳。la fille du Roy の直訳は「王の令嬢」であり、「王女」と訳すのは許容されるだろうが、「王妃」は不適切である。また、aisné はただの「息子」ではなく「長男」の意味である。  3行目「こうしてなんども光をともし」は、大乗訳にしばしば見られる light と lightening の取り違えを含んでいる上、[[arroy]]がどう訳されたのかもよく分からない。  4行目「小さく遠く あとでスペインにいきわたるだろう」は、peu の理解が不適切。この場合は距離的ないし時間的な幅があまりない(つまり「近い」)という意味で使われている。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]の前半は問題ない。その3行目「彼は雷電を操る 同勢はかくも大群」((山根 [1988] p.176))は、mettre を「操る」とするのは強引だし、後半も[[arroy]]を「同勢」と訳すのは意訳しすぎに思える。  4行目「遠方に数えるほど やがて西の奥深くへ」の前半の問題点は大乗訳への指摘と重なるので省く。[[ヘスペリア]]は本来的には西方を指すので、「西」と訳すこと自体は許容されるだろう。 *信奉者側の見解  全訳本以外での解釈例はほとんどない。  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、スペイン王女アンヌ・ドートリッシュの息子であるフランス王ルイ14世と解釈し、彼のフランドル侵攻が描かれているとともに、スペインにも深く侵攻することになると解釈した((Garencieres [1672]))。  [[エリカ・チータム]]は1973年の段階では、フランスがスペインないしアメリカをミサイルなどの遠距離攻撃可能な現代兵器によって攻撃することではないかとした。後には第三次世界大戦中にICBM (大陸間弾道ミサイル) が使われることの描写ではないかとした((Cheetham [1973], Cheetham [1990]))。なお、前者は[[その日本語版>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]では、宇宙からUFOの大編隊が飛来して空襲してくることとする原秀人の解釈に差し替えられた。  [[セルジュ・ユタン]]は「フランス軍のスペインからの撤退」という時期が明記されていない漠然とした解釈しかつけておらず、[[ボードワン・ボンセルジャン]]の補注でも何も変更はなかった((Hutin [1978], Hutin [2003]))。  [[ジョン・ホーグ]]は1行目の結び付け方が難しいとしつつも、ナチスの電撃戦に関する詩と解釈した((Hogue (1997)[1999]))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]はフロワサールの年代記にモデルがあると見なし、百年戦争中にイングランドのエドワード黒太子が大陸に渡り、各地を転戦して勝利を重ねたことの描写とした((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 ---- &bold(){コメントらん} 以下に投稿されたコメントは&u(){書き込んだ方々の個人的見解であり}、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません。  なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 - 英国王チャールズ一世の娘(メアリー・ヘンリエッタ・ステュアート)の長男はウィリアム3世であり、フランスと大同盟戦争を始める。この戦いは北アメリカではウィリアム王戦争と呼ばれる。 奥深くとは時間的なものであり、アメリカ独立戦争のレキシントン・コンコードの戦いを予言している。LOING PUISをLOING NEXTに置き換えてのアナグラムでLEXINGTON レキシントンになる。 -- とある信奉者  (2012-03-15 22:33:44)

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