ノストラダムスの超法則 死活の書

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 『&bold(){ノストラダムスの超法則 死活の書}』は、[[五島勉]]が1994年に青春出版社から刊行した著書。  同社の新書版「プレイブックス」の一冊として刊行され、1994年の年間ベストセラー新書・ノンフィクション部門第7位にランクインした(トーハン調べ、日販調べとも)。  奥付がその年の12月になっていることを考えると、短期的にかなりの売れ行きを示したと考えられる。 #amazon(4413016297) 【画像】カバー表紙 *内容  序章「大予言を阻止する『ノストラダムスの超法則』 ― 残されていたもう一つの衝撃をはじめて明かす」は導入的な内容である。  ノストラダムスの予言詩集とは別に、プライベートな手紙に驚くべき超法則が隠されていたが、[[ジャン・デュペーブ]]の『[[ノストラダムス:未公刊書簡集>Nostradamus : Lettres inédites]]』(1983年)で復刻された当時の手紙をそのまま紹介することは禁止されているので、自分がエッセンスを取り出して、他の伝記類の情報とあわせて紹介していくと断られている。  1章「ノストラダムス超法則の恐るべき指針!希望を持つな、“絶望と危機感”を持て」は、1554年秋にノストラダムスのもとを訪れた騎士サンピエールのエピソードである。サンピエールはアルル公の末娘を賭けた決闘を前に絶望的なアドバイスを受けたが、それでかえって開き直ったサンピエールは決闘に勝利することができた。ノストラダムスによれば、本来ならば負けるはずだったサンピエールが、絶望することによって運命を逆転させたのだという。  五島はこの話をいくつかの伝記から断片的に見出したといい、そこから絶望しきることで光明が見える可能性を示している。  2章「あなたの未来は『シレーヌの大破局』か『オロールの幸運』か」では、1555年3月にノストラダムスのもとを訪ねた大物政治家シャルドンが、ノストラダムスの予言どおりにあっさり死んだことをまず紹介し、ノストラダムスは絶望に落ちたどん底の人々にはオロール(暁)の幸運が待っているが、今まで幸せばかりだった人にはシレーヌ(セイレーン、海魔女)の破局が待ち受けていると説いていたと紹介している。  3章「ノストラダムス、愛と性と結婚の秘法 愛されたければ愛されたい気持ちを捨てよ」では、ノストラダムスが10代から20代の若い男女からの恋愛相談を多く受けていたとして、14歳の女学生、17歳のシェフ志望の少年、22歳の商社勤務の女性などの手紙をいくつも例に出し、ノストラダムスはそこでも愛や結婚に希望を持つなと重ねて強調していたことが示される。  4章「『もっとひどい地獄を見よ』 450年前に示されていた経済大乱の病根」も、題名から見当がつくように、会社経営などでもとにかく希望を持つな、無欲になれというアドバイスをしていたことが示される。  5章「『諸世紀』第九巻二〇番の戦慄予知図 もしも彼らが知っていたなら――!」は、ヴァレンヌ事件の予言とされる[[百詩篇第9巻20番]]を引き合いに出し、フランス革命期に国王夫妻がこの予言の警告をきちんと受け止めていたならば運命は変わっていたとして、ここに重要なカギがあると指摘している。  6章「ついによみがえるノストラダムスの魔言秘法 人類を生かしてきた死活の超法則」は、以上のような絶望しきること、無欲になることの重要性をうかがわせるような現実の事件などを多く引き合いに出している。  7章「ノストラダムスの最後の超法則 大予言と秘法の合体から生まれるものとは」は1995年から1999年までの予測をまとめた章で、そのピークにあたる[[1999年7の月の詩>百詩篇第10巻72番]]についても、目前の様々な危機に対して絶望し、無心になって立ち向かうことで人類滅亡を回避できるかもしれないと主張している。 *推薦者  カバーの推薦文は国際政治学者の舛添要一による「&color(brown){あのノストラダムスが『生き残りの法則』を残していた事実に圧倒される!}」と、評論家の竹村健一による「&color(brown){真の生命力を問われる激動の時代に必読の、恐るべきパワーの書!}」の2本である。 *コメント  五島が引用している手紙の中に、&color(red){デュペーブの著書に載っているものは一通もない}。  また、デュペーブの著書にそのまま引用するななどという注意書きもない。無断転載(盗用)が許されないのは当然だが、きちんとした引用ならば当然認められる。  五島が紹介しているエピソードの中に、海外の実証的な伝記で確認できるものは一つもない。  ノストラダムスの実在する手紙では、とにかく諦めるな、希望を持てということを強調しており、&color(red){絶望させて突き放すなどというアドバイスはしていない}((cf. 竹下 [1998] pp.264-265))。  他方で成功したときには、自分が死すべき存在に過ぎないことを思い出して謙虚になりなさいと諭しており、成功のあとにはシレーヌの大破局が待っているなどと脅していない((竹下 [1999] p.103))。  以上からすれば、この著書を貫く&bold(){「絶望しろ」というテーマは、ノストラダムスと全く関係がない}。いわばそれは&color(red){五島勉の人生相談}というべきものであり、その哲学が正しいかどうかを詳しく論じるつもりはないが、甘い希望的観測を捨てることと絶望することは、似て非なるものではないのだろうか。  いずれにせよ、本書は「ノストラダムスが書いたプライベートな手紙が残っている」という事実に触発された二次創作とでも言うべきものであり、ここからノストラダムスの手紙そのものについて理解できることは何もない。 *書誌 :書名|ノストラダムスの超法則 死活の書 :副題|〈迫り来るシレーヌの大破局〉を覆す恐るべき未来バイブル :著者|五島勉 :版元|青春出版社 :出版日|1994年12月1日 :注記| **外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire) :Titre|Nosutoradamusu no chouhousoku Shikatsu no sho (trad. / Les hyper-loix de Nostradamus - Le livre de vie et de mort) :Sous-titre|“Semarikuru Shirênu no daihakyoku” wo kutsugaesu osorubeki mirai Baiburu (trad. / Le Bible formidable pour futur, qui renverse “la grande catastrophe pressante de Sirène”) :Auteur|GOTÔ Ben :Publication|Seishun Shuppansha :Lieu|Tokyo, Japon :Date|le 1&sup(){er} décembre 1994 :Note| ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
 『&bold(){ノストラダムスの超法則 死活の書}』は、[[五島勉]]が1994年に青春出版社から刊行した著書。  同社の新書版「プレイブックス」の一冊として刊行され、1994年の年間ベストセラー新書・ノンフィクション部門第7位にランクインした(トーハン調べ、日販調べとも)。  奥付がその年の12月になっていることを考えると、短期的にかなりの売れ行きを示したと考えられる。 #amazon(4413016297) 【画像】カバー表紙 *内容  序章「大予言を阻止する『ノストラダムスの超法則』 ― 残されていたもう一つの衝撃をはじめて明かす」は導入的な内容である。  ノストラダムスの予言詩集とは別に、プライベートな手紙に驚くべき超法則が隠されていたが、[[ジャン・デュペーブ]]の『[[ノストラダムス:未公刊書簡集>Nostradamus : Lettres inédites]]』(1983年)で復刻された当時の手紙をそのまま紹介することは禁止されているので、自分がエッセンスを取り出して、他の伝記類の情報とあわせて紹介していくと断られている。  1章「ノストラダムス超法則の恐るべき指針!希望を持つな、“絶望と危機感”を持て」は、1554年秋にノストラダムスのもとを訪れた騎士サンピエールのエピソードである。サンピエールはアルル公の末娘を賭けた決闘を前に絶望的なアドバイスを受けたが、それでかえって開き直ったサンピエールは決闘に勝利することができた。ノストラダムスによれば、本来ならば負けるはずだったサンピエールが、絶望することによって運命を逆転させたのだという。  五島はこの話をいくつかの伝記から断片的に見出したといい、そこから絶望しきることで光明が見える可能性を示している。  2章「あなたの未来は『シレーヌの大破局』か『オロールの幸運』か」では、1555年3月にノストラダムスのもとを訪ねた大物政治家シャルドンが、ノストラダムスの予言どおりにあっさり死んだことをまず紹介し、ノストラダムスは絶望に落ちたどん底の人々にはオロール(暁)の幸運が待っているが、今まで幸せばかりだった人にはシレーヌ(セイレーン、海魔女)の破局が待ち受けていると説いていたと紹介している。  3章「ノストラダムス、愛と性と結婚の秘法 愛されたければ愛されたい気持ちを捨てよ」では、ノストラダムスが10代から20代の若い男女からの恋愛相談を多く受けていたとして、14歳の女学生、17歳のシェフ志望の少年、22歳の商社勤務の女性などの手紙をいくつも例に出し、ノストラダムスはそこでも愛や結婚に希望を持つなと重ねて強調していたことが示される。  4章「『もっとひどい地獄を見よ』 450年前に示されていた経済大乱の病根」も、題名から見当がつくように、会社経営などでもとにかく希望を持つな、無欲になれというアドバイスをしていたことが示される。  5章「『諸世紀』第九巻二〇番の戦慄予知図 もしも彼らが知っていたなら――!」は、ヴァレンヌ事件の予言とされる[[詩百篇第9巻20番]]を引き合いに出し、フランス革命期に国王夫妻がこの予言の警告をきちんと受け止めていたならば運命は変わっていたとして、ここに重要なカギがあると指摘している。  6章「ついによみがえるノストラダムスの魔言秘法 人類を生かしてきた死活の超法則」は、以上のような絶望しきること、無欲になることの重要性をうかがわせるような現実の事件などを多く引き合いに出している。  7章「ノストラダムスの最後の超法則 大予言と秘法の合体から生まれるものとは」は1995年から1999年までの予測をまとめた章で、そのピークにあたる[[1999年7の月の詩>詩百篇第10巻72番]]についても、目前の様々な危機に対して絶望し、無心になって立ち向かうことで人類滅亡を回避できるかもしれないと主張している。 *推薦者  カバーの推薦文は国際政治学者の舛添要一による「&color(brown){あのノストラダムスが『生き残りの法則』を残していた事実に圧倒される!}」と、評論家の竹村健一による「&color(brown){真の生命力を問われる激動の時代に必読の、恐るべきパワーの書!}」の2本である。 *コメント  五島が引用している手紙の中に、&color(red){デュペーブの著書に載っているものは一通もない}。  また、デュペーブの著書にそのまま引用するななどという注意書きもない。無断転載(盗用)が許されないのは当然だが、きちんとした引用ならば当然認められる。  五島が紹介しているエピソードの中に、海外の実証的な伝記で確認できるものは一つもない。  ノストラダムスの実在する手紙では、とにかく諦めるな、希望を持てということを強調しており、&color(red){絶望させて突き放すなどというアドバイスはしていない}((cf. 竹下 [1998] pp.264-265))。  他方で成功したときには、自分が死すべき存在に過ぎないことを思い出して謙虚になりなさいと諭しており、成功のあとにはシレーヌの大破局が待っているなどと脅していない((竹下 [1999] p.103))。  以上からすれば、この著書を貫く&bold(){「絶望しろ」というテーマは、ノストラダムスと全く関係がない}。いわばそれは&color(red){五島勉の人生相談}というべきものであり、その哲学が正しいかどうかを詳しく論じるつもりはないが、甘い希望的観測を捨てることと絶望することは、似て非なるものではないのだろうか。  いずれにせよ、本書は「ノストラダムスが書いたプライベートな手紙が残っている」という事実に触発された二次創作とでも言うべきものであり、ここからノストラダムスの手紙そのものについて理解できることは何もない。 *書誌 :書名|ノストラダムスの超法則 死活の書 :副題|〈迫り来るシレーヌの大破局〉を覆す恐るべき未来バイブル :著者|五島勉 :版元|青春出版社 :出版日|1994年12月1日 :注記| **外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire) :Titre|Nosutoradamusu no chouhousoku Shikatsu no sho (trad. / Les hyper-loix de Nostradamus - Le livre de vie et de mort) :Sous-titre|“Semarikuru Shirênu no daihakyoku” wo kutsugaesu osorubeki mirai Baiburu (trad. / Le Bible formidable pour futur, qui renverse “la grande catastrophe pressante de Sirène”) :Auteur|GOTÔ Ben :Publication|Seishun Shuppansha :Lieu|Tokyo, Japon :Date|le 1&sup(){er} décembre 1994 :Note| ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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