詩百篇第8巻35番

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[[詩百篇第8巻]]>35番* *原文 Dedans l'entree de Garonne & Bayse&sup(){1} Et la forest&sup(){2} non loing de Damazan&sup(){3} Du&sup(){4} [[marsaues>marsave]]&sup(){5} gelees, puis gresle & bize&sup(){6} Dordonnois gelle&sup(){7} par erreur&sup(){8} de [[mezan]]&sup(){9}. **異文 (1) Bayse : Blaye 1672Ga (2) forest : Forest 1672Ga (3) Damazan : damazan 1611, Damasan 1716PRc 1981EB (4) Du : De 1672Ga (5) marsaues : mar saues 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1716PR, marraues 1650Mo, Marsaves 1672Ga 1772Ri, marsuaues 1981EB (6) bize : Bize 1672Ga (7) gelle : gesse 1650Mo, gelé 1672Ga (8) erreur : terreur 1590Ro (9) mezan : Mezan 1591BR 1605sn 1611 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Le 1667Wi 1668 1672Ga 1772Ri 1981EB, mesan 1590Ro 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Ma 1627Di 1650Mo 1650Ri 1653AB 1665Ba 1716PR 1720To, Mesan 1840 **校訂  3行目の du marsaves は不自然である(du の直後には&u(){単数の}男性名詞が来なければならない)。  ただし、当「大事典」で確認している範囲では誰も直していないので、ここでも特段の修正は提案しない。 *日本語訳 ガロンヌ川とバイズ川の入り口で そしてダマザンから遠くない森で 沼は凍らされる。次に雹と北風。 ドルドーニュ川は月を間違えて凍る。 **訳について  3行目 [[marsave]] はひとまずラメジャラーやシーバースの読み方に従った。3行目の訳は、 -「3月に種蒔きされた植物が凍らされる。次に雹と北風」 でも文脈には沿っているように思える。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]は、1行目「ガロンヌとブライエの入り口で」((大乗 [1975] p.239。以下、この詩の引用は同じページから。))がまずおかしい。  Bayseが Blaye になっている底本に基づく訳だから仕方ない側面もあるが、その場合でも、Blaye は例外的な読みをする地名なので「ブライユ」と読む。  同3・4行目では実証的にも読みが分かれている[[marsave]]と[[mezan]]がそのまま「マルサーブ」「メザン」と表記されており、意味不明になっている。  もっとも、これは[[テオフィル・ド・ガランシエール]]や[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳でもそのままになっており、解釈も示されていない。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]は、細かい固有名詞の表記を除けば十分に許容範囲内である。  3行目「凍れる海の発見 つぎに雹と北風」((山根 [1988] p.))は、現在ではほとんど支持されていない読み方だが、もとは[[エドガー・レオニ]]が提示した読みである。 *信奉者側の見解  20世紀前半までで解釈していたのは[[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)のみである。  もっとも、そのガランシエールは自分が改変した原文を元に、ガロンヌ川とその河口の港町ブライユ、そして近くのドルドーヌ川 (Dordone) が凍結する恐れがあると述べるにとどまった((Garencieres [1672]))。  ドルドーヌはドルドーニュ (Dordogne) の誤記だろう。  20世紀後半以降も、目ぼしい解釈はほとんどない。  [[セルジュ・ユタン]]はフランス南西部での雹や暴風の予言としているだけで、補訂した[[ボードワン・ボンセルジャン]]もそのまま踏襲した((Hutin [1978], Hutin (2002)[2003]))。  [[エリカ・チータム]]も言及されている地域での季節外れの天気の描写とするにとどまった((Cheetham [1973], Cheetham (1989)[1990]))。  [[その日本語版>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]では、20世紀末にヨーロッパを襲う大寒波の予言と拡大解釈されていた。  それに影響されたのか、[[藤島啓章]]は2000年に起こるポールシフト(極移動)によって、各地の気候が激変することの予言と解釈していた((藤島 [1989] pp.176-177))。  [[パトリス・ギナール]]は、22世紀から23世紀の気候問題に関する詩とした((Guinard [2011]))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は2003年の時点では、ノストラダムスがアジャン近郊に住んでいたときに体験した寒波ではないかとしていた。  しかし、2010年になると、フランス南西部の悪天候に伴って起きる軍事行動にもとづいた詩と若干解釈を修正した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  当時は小氷期に当たっていたので、真冬でなくとも川などが凍結することは、決してありえない話ではなかったものと思われる。 #googlemaps(){<iframe src="https://www.google.com/maps/embed?pb=!1m18!1m12!1m3!1d1441003.7476516303!2d-0.4178830291401513!3d45.13726837908746!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x47ff7a7475a8138b%3A0x3066517481126e0!2z44OV44Op44Oz44K5IOODieODq-ODieODvOODi-ODpQ!5e0!3m2!1sja!2sjp!4v1590772366392!5m2!1sja!2sjp" width="600" height="450" frameborder="0" style="border:0;"></iframe>} ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
[[詩百篇第8巻]]>35番* *原文 Dedans l'entree de Garonne & Bayse&sup(){1} Et la forest&sup(){2} non loing de Damazan&sup(){3} Du&sup(){4} [[marsaues>marsave]]&sup(){5} gelees, puis gresle & bize&sup(){6} Dordonnois gelle&sup(){7} par erreur&sup(){8} de [[mezan]]&sup(){9}. **異文 (1) Bayse : Blaye 1672Ga (2) forest : Forest 1672Ga (3) Damazan : damazan 1611, Damasan 1716PRc 1981EB (4) Du : De 1672Ga (5) marsaues : mar saues 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1716PR, marraues 1650Mo, Marsaves 1672Ga 1772Ri, marsuaues 1981EB (6) bize : Bize 1672Ga (7) gelle : gesse 1650Mo, gelé 1672Ga (8) erreur : terreur 1590Ro (9) mezan : Mezan 1591BR 1605sn 1611 1628dR 1649Ca 1649Xa 1650Le 1667Wi 1668 1672Ga 1772Ri 1981EB, mesan 1590Ro 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Ma 1627Di 1650Mo 1650Ri 1653AB 1665Ba 1716PR 1720To, Mesan 1840 **校訂  3行目の du marsaves は不自然である(du の直後には&u(){単数の}男性名詞が来なければならない)。  ただし、当「大事典」で確認している範囲では誰も直していないので、ここでも特段の修正は提案しない。 *日本語訳 ガロンヌ川とバイズ川の入り口で そしてダマザンから遠くない森で 沼は凍らされる。次に雹と北風。 ドルドーニュ川は月を間違えて凍る。 **訳について  3行目 [[marsave]] はひとまずラメジャラーやシーバースの読み方に従った。3行目の訳は、 -「3月に種蒔きされた植物が凍らされる。次に雹と北風」 でも文脈には沿っているように思える。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]は、1行目「ガロンヌとブライエの入り口で」((大乗 [1975] p.239。以下、この詩の引用は同じページから。))がまずおかしい。  Bayseが Blaye になっている底本に基づく訳だから仕方ない側面もあるが、その場合でも、Blaye は例外的な読みをする地名なので「ブライユ」と読む。  同3・4行目では実証的にも読みが分かれている[[marsave]]と[[mezan]]がそのまま「マルサーブ」「メザン」と表記されており、意味不明になっている。  もっとも、これは[[テオフィル・ド・ガランシエール]]や[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳でもそのままになっており、解釈も示されていない。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]は、細かい固有名詞の表記を除けば十分に許容範囲内である。  3行目「凍れる海の発見 つぎに雹と北風」((山根 [1988] p.))は、現在ではほとんど支持されていない読み方だが、もとは[[エドガー・レオニ]]が提示した読みである。 *信奉者側の見解  20世紀前半までで解釈していたのは[[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)のみである。  もっとも、そのガランシエールは自分が改変した原文を元に、ガロンヌ川とその河口の港町ブライユ、そして近くのドルドーヌ川 (Dordone) が凍結する恐れがあると述べるにとどまった((Garencieres [1672]))。  ドルドーヌはドルドーニュ (Dordogne) の誤記だろう。  20世紀後半以降も、目ぼしい解釈はほとんどない。  [[セルジュ・ユタン]]はフランス南西部での雹や暴風の予言としているだけで、補訂した[[ボードワン・ボンセルジャン]]もそのまま踏襲した((Hutin [1978], Hutin (2002)[2003]))。  [[エリカ・チータム]]も言及されている地域での季節外れの天気の描写とするにとどまった((Cheetham [1973], Cheetham (1989)[1990]))。  [[その日本語版>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]では、20世紀末にヨーロッパを襲う大寒波の予言と拡大解釈されていた。  それに影響されたのか、[[藤島啓章]]は2000年に起こるポールシフト(極移動)によって、各地の気候が激変することの予言と解釈していた((藤島 [1989] pp.176-177))。  [[パトリス・ギナール]]は、22世紀から23世紀の気候問題に関する詩とした((Guinard [2011]))。 *同時代的な視点  [[ピーター・ラメジャラー]]は2003年の時点では、ノストラダムスがアジャン近郊に住んでいたときに体験した寒波ではないかとしていた。  しかし、2010年になると、フランス南西部の悪天候に伴って起きる軍事行動にもとづいた詩と若干解釈を修正した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  当時は小氷期に当たっていたので、真冬でなくとも川などが凍結することは、決してありえない話ではなかったものと思われる。 #googlemaps(){<iframe src="https://www.google.com/maps/embed?pb=!1m18!1m12!1m3!1d2879514.790216606!2d-1.1267562584638466!3d45.18656664183155!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i1024!2i768!4f13.1!3m3!1m2!1s0x12aaa5519f8d8d15%3A0xedc1881a4b33ded1!2z44OJ44Or44OJ44O844OL44Ol5bed!5e0!3m2!1sja!2sjp!4v1590772591165!5m2!1sja!2sjp" width="600" height="450" frameborder="0" style="border:0;"></iframe>} ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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