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[[シャストゥイユが伝えた百詩篇]]>1番
*原文
Par les Espaignes SILADMER&sup(){1} retourner
Passer les Gades et les monts Pyrénées
D’Hano&sup(){2} punique le culme&sup(){3} destorner
Guillac&sup(){4}, Carces&sup(){5} a Toulouse&sup(){6} emmenées&sup(){7}.
**異文
(1) SILADMER : SILADMCV (Ruzo)
(2) Hano : Arno (Ruzo)
(3) culme : [[Calpre]] (Ruzo)
(4) Guillac : Guilhac (Ruzo)
(5) Carces : carcas (Ruzo)
(6) Toulouse : Toutouse (Ruzo 1975)
(7) emmenées : emmenée (Rollet)
**校訂・語注
1行目のSILADMER の意味は後述。多少の誤記は混じっているかもしれないが、少なくともルソの異文は韻律の面から支持しがたい。
3行目の Hano (Hanno) は punique (フェニキアの、カルタゴの) という形容詞によく合う。Arno は意味不明。逆に後半は culme よりも [[Calpre]] の方が地理的には整合する。他方、culme は古語辞典にも見当たらない。ピエール・ロレは「頂点」と注記し、[[ピーター・ラメジャラー]]もそう英訳しているが、culmination からの推測か。
4行目については、ギラック (Guillac) はフランスに2箇所ある町の名のため、異文の Guilhac を採用する理由がない。他方、ノストラダムスはカルカソンヌを何度も Carcas と綴っているので、Carces はその誤記だろう (フォトコピーを見ると5文字目は潰れており、Carces という読み自体が不当だった可能性もある)。ただし、ラメジャラーがそのままカルセス (Carcès) と読んでいるように、フランスにはカルセスという地名もヴァール県に実在する。
*日本語訳
イスパニア諸邦を通ってシラドメルが戻る、
ガデスとピレネー山脈を通過して。
フェニキアのハンノによってカルペを通れなくする。
ギラック、[[カルカソンヌ]]から[[トゥールーズ]]へと運ばれる。
**訳について
3行目 destourner は現代語で訳すと 「ポエニのハンノからカルペを遠ざける」 だが、destouuner にはかつて「守る」(préserver) や 「妨げる、通れなくする」(empêcher) の意味もあった((LAF))。
*解説
ガデス (Gades) はカディスの古称 (ラテン語名)。
ハンノ (Hanno) は、紀元前5世紀に西アフリカ沿岸に到達したカルタゴの提督ハンノ、紀元前3世紀にハンニバルと対立したカルタゴの将軍の大ハンノなど、複数の候補が挙がる。ただし、ノストラダムスの『予言集』や暦書類(1559年まで)には、ハンニバルへの言及は複数あっても、ハンノへの言及は一例もない。
ラメジャラーは SILADMER をデ・ゼマール (Des Aymars) の不完全なアナグラムであり、Silleur de Mer (海の耕作者) の意味も込められていると推測した。デ・ゼマールとは、農民の子から出世した[[ラ・ガルド男爵]]アントワーヌ・エスカラン・デ・ゼマールのことで、ノストラダムスは『ガレノスの釈義』の献辞をこの人物に宛て、実証的には[[百詩篇集]]でもたびたび言及しているとされる。
この詩は、そのラ・ガルドが1545年に25隻のガレー船を率いてジブラルタル海峡を越える航海をしたあとに、フランスに帰還したことがモデルではないかとした。ハンノは前記の通り、ジブラルタル海峡を越え、地中海世界ではじめてガンビアなどの西アフリカ沿岸部に到達したとされる人物であり、ラ・ガルドの航海が重ねあわされているという(((([[Quatrains Unpublished - Propheties on Line>>http://www.propheties.it/quatrainsunbublished.htm]]))))。
ラ・ガルドのこの航海は[[百詩篇第3巻1番]]のモデルになっているとも言われるので、このモデルの推定が正しいのだとすれば、確かに本人が執筆した可能性が考えられるだろう。
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#comment
[[シャストゥイユが伝えた百詩篇]]>1番
*原文
Par les Espaignes SILADMER&sup(){1} retourner
Passer les Gades et les monts Pyrénées
D’Hano&sup(){2} punique le culme&sup(){3} destorner
Guillac&sup(){4}, Carces&sup(){5} a Toulouse&sup(){6} emmenées&sup(){7}.
**異文
(1) SILADMER : SILADMCV (Ruzo)
(2) Hano : Arno (Ruzo)
(3) culme : [[Calpre]] (Ruzo)
(4) Guillac : Guilhac (Ruzo)
(5) Carces : carcas (Ruzo)
(6) Toulouse : Toutouse (Ruzo 1975)
(7) emmenées : emmenée (Rollet)
**校訂・語注
1行目のSILADMER の意味は後述。多少の誤記は混じっているかもしれないが、少なくともルソの異文は韻律の面から支持しがたい。
3行目の Hano (Hanno) は punique (フェニキアの、カルタゴの) という形容詞によく合う。Arno は意味不明。逆に後半は culme よりも [[Calpre]] の方が地理的には整合する。他方、culme は古語辞典にも見当たらない。ピエール・ロレは「頂点」と注記し、[[ピーター・ラメジャラー]]もそう英訳しているが、culmination からの推測か。
4行目については、ギラック (Guillac) はフランスに2箇所ある町の名のため、異文の Guilhac を採用する理由がない。他方、ノストラダムスはカルカソンヌを何度も Carcas と綴っているので、Carces はその誤記だろう (フォトコピーを見ると5文字目は潰れており、Carces という読み自体が不当だった可能性もある)。ただし、ラメジャラーがそのままカルセス (Carcès) と読んでいるように、フランスにはカルセスという地名もヴァール県に実在する。
*日本語訳
イスパニア諸邦を通ってシラドメルが戻る、
[[ガデス>カディス]]とピレネー山脈を通過して。
フェニキアのハンノによってカルペを通れなくする。
ギラック、[[カルカソンヌ]]から[[トゥールーズ]]へと運ばれる。
**訳について
3行目 destourner は現代語で訳すと 「ポエニのハンノからカルペを遠ざける」 だが、destouuner にはかつて「守る」(préserver) や 「妨げる、通れなくする」(empêcher) の意味もあった((LAF))。
*解説
ガデス (Gades) は[[カディス]]の古称 (ラテン語名)。
ハンノ (Hanno) は、紀元前5世紀に西アフリカ沿岸に到達したカルタゴの提督ハンノ、紀元前3世紀にハンニバルと対立したカルタゴの将軍の大ハンノなど、複数の候補が挙がる。ただし、ノストラダムスの『予言集』や暦書類(1559年まで)には、ハンニバルへの言及は複数あっても、ハンノへの言及は一例もない。
ラメジャラーは SILADMER をデ・ゼマール (Des Aymars) の不完全なアナグラムであり、Silleur de Mer (海の耕作者) の意味も込められていると推測した。デ・ゼマールとは、農民の子から出世した[[ラ・ガルド男爵]]アントワーヌ・エスカラン・デ・ゼマールのことで、ノストラダムスは『ガレノスの釈義』の献辞をこの人物に宛て、実証的には[[百詩篇集]]でもたびたび言及しているとされる。
この詩は、そのラ・ガルドが1545年に25隻のガレー船を率いてジブラルタル海峡を越える航海をしたあとに、フランスに帰還したことがモデルではないかとした。ハンノは前記の通り、ジブラルタル海峡を越え、地中海世界ではじめてガンビアなどの西アフリカ沿岸部に到達したとされる人物であり、ラ・ガルドの航海が重ねあわされているという(((([[Quatrains Unpublished - Propheties on Line>>http://www.propheties.it/quatrainsunbublished.htm]]))))。
ラ・ガルドのこの航海は[[百詩篇第3巻1番]]のモデルになっているとも言われるので、このモデルの推定が正しいのだとすれば、確かに本人が執筆した可能性が考えられるだろう。
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