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[[百詩篇第7巻]]>34番
*原文
En grand regret sera la&sup(){1} gent Gauloise&sup(){2},
Cœur vain, legier&sup(){3}, croira&sup(){4} temerité&sup(){5}:
Pain, sel, ne vin, eaue,&sup(){6} venim&sup(){7}, ne ceruoise,
Plus grand captif&sup(){8}, faim, froit&sup(){9}, necessité.
**異文
(1) la : là 1611
(2) Gauloise : cauloise 1649Xa, gauloise 1800AD 1981EB
(3) legier 1557U 1557B 1568 : leger &italic(){T.A.Eds.}
(4) croira : croit à 1557B
(5) temerité : temeritée 1668
(6) &u(){eaue,} 1557U 1557B : &u(){eaue:} 1568, &u(){eau,} &italic(){T.A.Eds.}
(7) venim 1557U 1557B : venin &italic(){T.A.Eds.}
(8) captif : captifs 1716
(9) froit 1557U 1557B 1568 1590Ro 1597 : froid &italic(){T.A.Eds.}
(注記)1611Bでは省略されている。
**校訂
3行目 venim は中期フランス語では venin と同じで 「毒」 の意味((DMF))。『予言集』では[[百詩篇第2巻48番]]では venin と綴られており、意図的な綴り分けなのか、単なる揺れに過ぎないのかは不明。
*日本語訳
ガリアの人々は大いなる後悔の中にあるだろう。
空虚で軽薄な心が軽挙妄動を信じるだろう。
パンも塩もぶどう酒も水も毒も麦酒もない。
最も偉大な者が囚われる。飢餓、寒さ、窮乏。
**訳について
特に難しい単語も構文も出てこないが、2点だけ補足しておく。4行目冒頭に定冠詞はないが、当時の表現では定冠詞を取らずとも最上級を表現することはあった。[[ピーター・ラメジャラー]]や[[リチャード・シーバース]]が最上級と取っているので、ここではそれに従った。
次に3行目 venim だが、ここで唐突に 「毒」 が出てくるのは不自然である。[[エドガー・レオニ]]はアルコール度数の強い酒類ではないかと推測していた。
既存の訳についてコメントしておく。
[[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。
4行目 「そのうえとらわれ人となり 飢え 寒さ ものの欠乏に苦しむ」((大乗 [1975] p.210。以下、この詩の引用は同じページから。)) は plus grand が訳に反映されていない。 「そのうえ」 というのは plus を比較表現ではなく、「プラス」の意味に解釈した結果かもしれないが、その場合にも grand が訳されていないことにかわりはない。
[[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]はおおむね問題はない。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、単語は平易としつつ、過去に成就した予言なのか、これから的中する予言なのかは分からないとした((Garencieres [1672]))。
匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年) では、「もっとも偉大な者が囚われる」 がフランス革命期のルイ16世と解釈されており、タンプル塔に幽閉されたときの寒さやひもじさが予言されていたと解釈されている((L'Avenir..., pp.15-16))。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、近未来にフランスが経済危機に陥ることの予言と解釈していた((Fontbrune [1938](1939) p.134))。
[[アンドレ・ラモン]]は、1940年代初頭のフランスの情勢を見事に言い当てたと解釈した((Lamont [1943] p.216))。[[エリカ・チータム]]、[[セルジュ・ユタン]]らもドイツ占領下のフランスの情勢と解釈した((Cheetham [1990], Hutin [1978]))。
*同時代的な視点
なんらかの軽率な振る舞いがフランス軍を苦境に陥れるということで、モチーフの系統としては[[百詩篇第3巻24番]]や[[同87番>百詩篇第3巻87番]]などと共通するのかもしれない。
[[ピーター・ラメジャラー]]は『[[ミラビリス・リベル]]』に収録されていた[[偽メトディウス]]の投影と見なした((Lemesurier [2010]))。
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#comment
[[百詩篇第7巻]]>34番
*原文
En grand regret sera la&sup(){1} gent Gauloise&sup(){2},
Cœur vain, legier&sup(){3}, croira&sup(){4} temerité&sup(){5}:
Pain, sel, ne vin, eaue,&sup(){6} venim&sup(){7}, ne ceruoise,
Plus grand captif&sup(){8}, faim, froit&sup(){9}, necessité.
**異文
(1) la : là 1611
(2) Gauloise : cauloise 1649Xa, gauloise 1800AD 1981EB
(3) legier 1557U 1557B 1568 : leger &italic(){T.A.Eds.}
(4) croira : croit à 1557B
(5) temerité : temeritée 1668
(6) &u(){eaue,} 1557U 1557B : &u(){eaue:} 1568, &u(){eau,} &italic(){T.A.Eds.}
(7) venim 1557U 1557B : venin &italic(){T.A.Eds.}
(8) captif : captifs 1716
(9) froit 1557U 1557B 1568 1590Ro 1597 : froid &italic(){T.A.Eds.}
(注記)1611Bでは省略されている。
**校訂
3行目 venim は中期フランス語では venin と同じで 「毒」 の意味((DMF))。『予言集』では[[百詩篇第2巻48番]]では venin と綴られており、意図的な綴り分けなのか、単なる揺れに過ぎないのかは不明。
*日本語訳
ガリアの人々は大いなる後悔の中にあるだろう。
空虚で軽薄な心が軽挙妄動を信じるだろう。
パンも塩もぶどう酒も水も毒も麦酒もない。
最も偉大な者が囚われる。飢餓、寒さ、窮乏。
**訳について
特に難しい単語も構文も出てこないが、2点だけ補足しておく。4行目冒頭に定冠詞はないが、当時の表現では定冠詞を取らずとも最上級を表現することはあった。[[ピーター・ラメジャラー]]や[[リチャード・シーバース]]が最上級と取っているので、ここではそれに従った。
次に3行目 venim だが、ここで唐突に 「毒」 が出てくるのは不自然である。[[エドガー・レオニ]]はアルコール度数の強い酒類ではないかと推測していた。
既存の訳についてコメントしておく。
[[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。
4行目 「そのうえとらわれ人となり 飢え 寒さ ものの欠乏に苦しむ」((大乗 [1975] p.210。以下、この詩の引用は同じページから。)) は plus grand が訳に反映されていない。 「そのうえ」 というのは plus を比較表現ではなく、「プラス」の意味に解釈した結果かもしれないが、その場合にも grand が訳されていないことにかわりはない。
[[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]はおおむね問題はない。
*信奉者側の見解
[[テオフィル・ド・ガランシエール]]は、単語は平易としつつ、過去に成就した予言なのか、これから的中する予言なのかは分からないとした((Garencieres [1672]))。
匿名の解釈書『暴かれた未来』(1800年) では、「もっとも偉大な者が囚われる」 がフランス革命期のルイ16世と解釈されており、タンプル塔に幽閉されたときの寒さやひもじさが予言されていたと解釈されている((L'Avenir..., pp.15-16))。
[[マックス・ド・フォンブリュヌ]]は、近未来にフランスが経済危機に陥ることの予言と解釈していた((Fontbrune [1938](1939) p.134))。
[[アンドレ・ラモン]]は、1940年代初頭のフランスの情勢を見事に言い当てたと解釈した((Lamont [1943] p.216))。[[エリカ・チータム]]、[[セルジュ・ユタン]]らもドイツ占領下のフランスの情勢と解釈した((Cheetham [1990], Hutin [1978]))。
*同時代的な視点
なんらかの軽率な振る舞いがフランス軍を苦境に陥れるということで、モチーフの系統としては[[百詩篇第3巻24番]]や[[同87番>百詩篇第3巻87番]]などと共通するのかもしれない。
[[ピーター・ラメジャラー]]は『[[ミラビリス・リベル]]』に収録されていた[[偽メトディウス]]の投影と見なした((Lemesurier [2010]))。
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