「ノストラダムス・メッセージ」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ノストラダムス・メッセージ」(2013/12/12 (木) 18:36:05) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
『&bold(){ノストラダムス・メッセージ ソ連体制崩壊 ― 第三次大戦篇}』 は、1991年に角川書店から刊行された[[ヴライク・イオネスク]]の著書。日本語版監訳者は当時筑波大学教授だった[[竹本忠雄]]である。
*構成
-ノストラダムス暗号とイオネスク解読 - 日本語版監修・翻訳者序
第一部 核超大国時代 - 第二次大戦後の世界
-第一章 ソ連の新戦術 - 壊乱、詐術、スパイ
-第二章 核エネルギー探査とスパイ活動の激化
-第三章 スターリン支配下の国々の抑圧と殉難
-第四章 ソ連外交のもたらした四つの危機
-第五章 ヴェトナム戦争
-第六章 その他の現代諸事件(一九六〇 - 一九七〇年代)
第二部 ソ連体制の崩壊と第三次大戦
-第一章 概観
-第二章 先駆症状 - イラン危機
-第三章 挑発とテロリズムの拡散
-第四章 天安門事件 - 中国人学生の蹶起と悲運(一九八九年春)
-第五章 「ブカレストの翻訳者」と独裁者
-第六章 ベルリンの壁崩壊、ルーマニア革命、そして・・・・・・ゴルバチョフの死
-第七章 終わりの始まり
-第八章 一九九一年六月 - ソ連体制崩壊の時
-第九章 第三次大戦もし起こらば・・・・・・
第一部は 『[[プロレタリアの時代に関するノストラダムス・メッセージ>Le Message de Nostradamus sur L'ère prolétaire]]』(1976年) の第七部と第九部を再編集した内容といえる。ただし、むしろ角川書店版の第一部は、同じイオネスクの著書でも 『[[ノストラダムス 世界の秘史>Nostradamus L'histoire secrète du monde]]』(1987年)の第7部にも対応しており、第二部は『ノストラダムス 世界の秘史』 第8部に対応している。このため、どちらかといえば、『ノストラダムス 世界の秘史』 の第7部と第8部に、天安門事件や東欧革命の解釈などの新情報が挿入されているのが角川書店版と見るほうが、対応関係は分かりやすいと思われる。
ついでに述べておくと、巻末には「世紀別ノストラダムス文献目録」というリストがあるが、これも 『ノストラダムス 世界の秘史』 のほうに準拠したものになっている。そのことは、1976年以降の文献がかなり含まれていることからも、容易に理解できるであろう。
角川版の著作権表示は原書名が Nostradamus Message となっているが、原書の英語版などは実在しない。また、著作権表示の年は1990年になっている。これらの奇妙な表示は、既存の原書を大幅に加筆した新たな書き下ろし作品に近いという認識によるものだろうと思われる。
実際、イオネスクは筑波大学で1991年4月に行なった講演で 「『ノストラダムス・メッセージ』は、一九七六年の初版本の十一年後に増補版がパリで刊行されました。(略) 今回、日本で出ました翻訳は、私にとって、その後に解読されたテクストを大幅に加えた第三番目の出版ということになります」((『ノストラダムス・メッセージII』p.253))とコメントしていた。
いずれにしても、全体に占める未来解釈の比重が大きいといえ、このあたりは、日本では未来解釈ばかりがもてはやされた傾向によるものだろう。
**続編に関する構想
訳者の竹本自身は『プロレタリアの時代に関するノストラダムス・メッセージ』の他の箇所も訳出する希望を持っており、当初の案ではフランス革命から第二次世界大戦までをまとめた巻 (原書の第四部から第六部に対応すると思われる) と、「科学技術・時間循環論篇」という巻 (原書の第一部から第三部および第八部に対応すると思われる) も出そうとしていた((『ノストラダムス・メッセージ』pp.18-19))。この構想どおりに刊行されれば、イオネスクの処女作の全貌が訳出されることになったわけだが、実現には至らなかった。
日本では1993年に『[[ノストラダムス・メッセージII]]』が刊行されたが、これは未来予測や日本についての予言解釈を中心とする書き下ろしに近いものであり、当初の構成案には存在していなかった (ただし、『ノストラダムス・メッセージII』の巻末付録には、「科学技術篇」と重なる要素が含まれる)。その 『ノストラダムス・メッセージII』 では、三部作のラストにあたる近刊として 「フランス革命 - 第二次大戦篇」 が予告されていた((『ノストラダムス・メッセージII』カバー裏見返しおよび p.22))。この時点で、方法論的な色彩が強い 「時間循環論篇」 の刊行は断念していたものと思われるが、 「フランス革命 - 第二次大戦篇」 の刊行すら実現しなかった。
一応、日本語版監訳者である竹本の単著 『[[秘伝ノストラダムス・コード]]』(2011年) は、実質的に 「フランス革命 - 第二次大戦篇」 をかなりの程度補完する内容となっている。
*反響
奥付は1991年2月10日となっている。
その時期には、湾岸戦争がすでに開戦しており、日本ではノストラダムスへの関心も高まっていた。また、1980年代末からの東欧革命による共産主義体制総崩れの只中に当たっており、ノストラダムスを引き合いに出すまでもなく、ソ連体制の破綻は時間の問題と考えられていた。
そのような中で刊行されたこの本は、刊行に合わせてテレビ特番が企画されていた。それは3月末にフジテレビでの深夜番組 『3日でわかるノストラダムス』 として、イオネスクも出演する形で放送された((『ノストラダムス・メッセージII』p.237))。また、『女性セブン』1991年6月6日号には、訳者の竹本忠雄に対する1ページのインタビュー記事が載った((同誌、p.122))。
1991年8月にいわゆる「8月革命」が起こり、ソ連情勢が緊迫したが、この時点までに3万5000部が発行されており、事件を踏まえて更なる増刷が決定したという((『サンデー毎日』1991年9月8日号、p.38))。8月革命時には、角川書店にも若い読者たちから的中したという電話がいくつもかかってきたらしい((同上))。
そのあと、角川書店の編集部は、この本のPRをマスコミ各社にFAXしたらしいが、そこにかぎカッコつきで「ゴルバチョフの『死』」と書いてあったことから、『サンデー毎日』1991年9月8日号では
-「ゴルビーを“殺して”しまった角川書店『ノストラダムスの商魂』」
などという見出しで揶揄された。
*書誌
:書名|ノストラダムス・メッセージ
:副題|ソ連体制崩壊 ― 第三次大戦篇
:著者|ヴライク・イオネスク
:訳者|竹本忠雄
:版元|角川書店
:出版日|1991年2月10日
:注記|
**外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire)
:Titre|Nosutoradamusu Messêji (i.e. Nostradamus Message)
:Sous-titre|Soren taisei houkai - Daisanji taisen hen (traduction / De la fin du régime soviétique jusqu'à la Troisième Guerre Mondiale)
:Auteur|Vlaicu IONESCU
:Traducteur|TAKEMOTO Tadao
:Publication|Kadokawa shoten
:Lieu|Tokyo, Japon
:Date|le 10 février 1991
:Note|
----
#comment
『&bold(){ノストラダムス・メッセージ ソ連体制崩壊 ― 第三次大戦篇}』 は、1991年に角川書店から刊行された[[ヴライク・イオネスク]]の著書。日本語版監訳者は当時筑波大学教授だった[[竹本忠雄]]である。
#amazon(4048930079)
【画像】 『ノストラダムス・メッセージ』カバー
*構成
-ノストラダムス暗号とイオネスク解読 - 日本語版監修・翻訳者序
第一部 核超大国時代 - 第二次大戦後の世界
-第一章 ソ連の新戦術 - 壊乱、詐術、スパイ
-第二章 核エネルギー探査とスパイ活動の激化
-第三章 スターリン支配下の国々の抑圧と殉難
-第四章 ソ連外交のもたらした四つの危機
-第五章 ヴェトナム戦争
-第六章 その他の現代諸事件(一九六〇 - 一九七〇年代)
第二部 ソ連体制の崩壊と第三次大戦
-第一章 概観
-第二章 先駆症状 - イラン危機
-第三章 挑発とテロリズムの拡散
-第四章 天安門事件 - 中国人学生の蹶起と悲運(一九八九年春)
-第五章 「ブカレストの翻訳者」と独裁者
-第六章 ベルリンの壁崩壊、ルーマニア革命、そして・・・・・・ゴルバチョフの死
-第七章 終わりの始まり
-第八章 一九九一年六月 - ソ連体制崩壊の時
-第九章 第三次大戦もし起こらば・・・・・・
第一部は 『[[プロレタリアの時代に関するノストラダムス・メッセージ>Le Message de Nostradamus sur L'ère prolétaire]]』(1976年) の第七部と第九部を再編集した内容といえる。ただし、むしろ角川書店版の第一部は、同じイオネスクの著書でも 『[[ノストラダムス 世界の秘史>Nostradamus L'histoire secrète du monde]]』(1987年)の第7部にも対応しており、第二部は『ノストラダムス 世界の秘史』 第8部に対応している。このため、どちらかといえば、『ノストラダムス 世界の秘史』 の第7部と第8部に、天安門事件や東欧革命の解釈などの新情報が挿入されているのが角川書店版と見るほうが、対応関係は分かりやすいと思われる。
ついでに述べておくと、巻末には「世紀別ノストラダムス文献目録」というリストがあるが、これも 『ノストラダムス 世界の秘史』 のほうに準拠したものになっている。そのことは、1976年以降の文献がかなり含まれていることからも、容易に理解できるであろう。
角川版の著作権表示は原書名が Nostradamus Message となっているが、原書の英語版などは実在しない。また、著作権表示の年は1990年になっている。これらの奇妙な表示は、既存の原書を大幅に加筆した新たな書き下ろし作品に近いという認識によるものだろうと思われる。
実際、イオネスクは筑波大学で1991年4月に行なった講演で 「『ノストラダムス・メッセージ』は、一九七六年の初版本の十一年後に増補版がパリで刊行されました。(略) 今回、日本で出ました翻訳は、私にとって、その後に解読されたテクストを大幅に加えた第三番目の出版ということになります」((『ノストラダムス・メッセージII』p.253))とコメントしていた。
いずれにしても、全体に占める未来解釈の比重が大きいといえ、このあたりは、日本では未来解釈ばかりがもてはやされた傾向によるものだろう。
**続編に関する構想
訳者の竹本自身は『プロレタリアの時代に関するノストラダムス・メッセージ』の他の箇所も訳出する希望を持っており、当初の案ではフランス革命から第二次世界大戦までをまとめた巻 (原書の第四部から第六部に対応すると思われる) と、「科学技術・時間循環論篇」という巻 (原書の第一部から第三部および第八部に対応すると思われる) も出そうとしていた((『ノストラダムス・メッセージ』pp.18-19))。この構想どおりに刊行されれば、イオネスクの処女作の全貌が訳出されることになったわけだが、実現には至らなかった。
日本では1993年に『[[ノストラダムス・メッセージII]]』が刊行されたが、これは未来予測や日本についての予言解釈を中心とする書き下ろしに近いものであり、当初の構成案には存在していなかった (ただし、『ノストラダムス・メッセージII』の巻末付録には、「科学技術篇」と重なる要素が含まれる)。その 『ノストラダムス・メッセージII』 では、三部作のラストにあたる近刊として 「フランス革命 - 第二次大戦篇」 が予告されていた((『ノストラダムス・メッセージII』カバー裏見返しおよび p.22))。この時点で、方法論的な色彩が強い 「時間循環論篇」 の刊行は断念していたものと思われるが、 「フランス革命 - 第二次大戦篇」 の刊行すら実現しなかった。
一応、日本語版監訳者である竹本の単著 『[[秘伝ノストラダムス・コード]]』(2011年) は、実質的に 「フランス革命 - 第二次大戦篇」 をかなりの程度補完する内容となっている。
*反響
奥付は1991年2月10日となっている。
その時期には、湾岸戦争がすでに開戦しており、日本ではノストラダムスへの関心も高まっていた。また、1980年代末からの東欧革命による共産主義体制総崩れの只中に当たっており、ノストラダムスを引き合いに出すまでもなく、ソ連体制の破綻は時間の問題と考えられていた。
そのような中で刊行されたこの本は、刊行に合わせてテレビ特番が企画されていた。それは3月末にフジテレビでの深夜番組 『3日でわかるノストラダムス』 として、イオネスクも出演する形で放送された((『ノストラダムス・メッセージII』p.237))。また、『女性セブン』1991年6月6日号には、訳者の竹本忠雄に対する1ページのインタビュー記事が載った((同誌、p.122))。
1991年8月にいわゆる「8月革命」が起こり、ソ連情勢が緊迫したが、この時点までに3万5000部が発行されており、事件を踏まえて更なる増刷が決定したという((『サンデー毎日』1991年9月8日号、p.38))。8月革命時には、角川書店にも若い読者たちから的中したという電話がいくつもかかってきたらしい((同上))。
そのあと、角川書店の編集部は、この本のPRをマスコミ各社にFAXしたらしいが、そこにかぎカッコつきで「ゴルバチョフの『死』」と書いてあったことから、『サンデー毎日』1991年9月8日号では
-「ゴルビーを“殺して”しまった角川書店『ノストラダムスの商魂』」
などという見出しで揶揄された。
*書誌
:書名|ノストラダムス・メッセージ
:副題|ソ連体制崩壊 ― 第三次大戦篇
:著者|ヴライク・イオネスク
:訳者|竹本忠雄
:版元|角川書店
:出版日|1991年2月10日
:注記|
**外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire)
:Titre|Nosutoradamusu Messêji (i.e. Nostradamus Message)
:Sous-titre|Soren taisei houkai - Daisanji taisen hen (traduction / De la fin du régime soviétique jusqu'à la Troisième Guerre Mondiale)
:Auteur|Vlaicu IONESCU
:Traducteur|TAKEMOTO Tadao
:Publication|Kadokawa shoten
:Lieu|Tokyo, Japon
:Date|le 10 février 1991
:Note|
----
#comment