詩百篇第10巻25番

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[[詩百篇第10巻]]>25番* *原文 Par Nebro ouurir&sup(){1} de Brisanne&sup(){2} passage, Bien eslongnez&sup(){3} el tago fara&sup(){4} muestra&sup(){5}, Dans Pelligouxe&sup(){6} sera commis l'outrage&sup(){7} De la grand dame&sup(){8} assise sur l'orchestra&sup(){9}. **異文 (1) ouurir : ouurit 1716PRc (2) Brisanne : Bisance 1590Ro, Bisanne 1606PR 1607PR 1610Po 1667Wi 1716PR, Nebro le 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To (3) eslongnez 1568A 1568B 1568C 1591BR 1597Br 1603Mo 1772Ri : esloignez &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : eslongnes 1568X, eslonignez 1590Ro, eslognez 1627Di 1627Ma) (4) fara : rara 1611B, fe a 1627Di, fera 1605sn 1627Ma 1644Hu 1649Xa 1716PR, arra 1650Mo (5) muestra : mœstra 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1716PR 1720To 1840 (6) Pelligouxe : Pelligoux 1611B 1981EB, Perigueux 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1720To 1840 (7) l'outrage : l'otraige 1568X 1590Ro, outrage 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To 1840 (8) la grand dame : la dame 1653AB, la Dame 1665Ba 1720To, la grand Dame 1672Ga 1772Ri 1840 (9) l'orchestra : lorchestra 1568X 1590Ro, l'horchestra 1653AB 1665Ba 1720To, l'Orchestra 1672Ga **校訂  1行目、3行目の固有名詞についてはいくつかの誤りが含まれている可能性があるが、諸説あり、確定しているとはいいがたい。3行目 Pelligouxe は Perigueux と同一視されることが多いが、誤りなのか、意図的な綴り替えなのかは不明である。 *日本語訳 ネブロによってブリザンヌへの道が開く。 ずいぶん離れた場所で[[タホ川>テージョ川]]が手本を示すだろう。 ペリグーズでは陵辱されるだろう、 劇場の貴賓席に座る貴婦人が。 **訳について  1・3行目の固有名詞は、とりあえず初出のものをそのまま音写した。その解釈については、「同時代的な視点」の節で述べる。  2行目の後半律は珍しくスペイン語の短文である。el Tago は現代式には el Tajo でタホ川 (当「大事典」ではポルトガル名のテージョ川で基本的に統一しているが、スペイン語つづりであることからこの詩の訳では「タホ川」とする)を指すことに異論はない。問題は残りで、[[エドガー・レオニ]]は「証明する」(make a demonstration)、[[ピーター・ラメジャラー]]は「(テージョ川の)灯台が照らす」(shall the Tagus lighthouse show)、[[リチャード・シーバース]]は「誇示する」(make a show)、[[ジャン=ポール・クレベール]]は「氾濫する」(débordera) でめいめい異なっている((Leoni [1961], Lemesurier [2010], Sieburth [2012], Clébert [2003]))。  彼らは詳しい語注を施していないが、少なくとも手許のスペイン語辞典に fara はない。faro ならば「灯台」の意味である。動詞としては fardar (自慢する、誇示する)の直説法三人称未来形 fardara の語中音消失と解釈できるかもしれない。  他方、muestra は動詞としては mostrar (見せる、表す)の三人称単数現在形、名詞ならば「手本、証明」などの意味である。  以上を踏まえると、レオニ、ラメジャラー、シーバースの訳は何となく根拠が推察できるが、クレベールの訳はよく分からない。この点、スペイン語に詳しい方のご助言をいただければ幸いである。  以上のように、スペイン語と解釈するのが一般的だが、プロヴァンス語と解釈したのが[[マリニー・ローズ]]である。彼女は fara はプロヴァンス語動詞 far の活用形で、フランス語の fera (英語の will do ないし will make) だとし、muestra はプロヴァンス語の mouestre (怪物) から来たと解釈した((Rose [2002c]。ローズの言う語義は LTDF でも確認した。))。これを踏まえれば、「テージョ川が怪物を生み出すだろう」 という意味になる。  4行目 l'orchestra はフランス語では l'orchestre と綴る。orchestra は韻を整えるために語源のラテン語を持ち出したものかもしれない。ラテン語の orchestra は「劇場の元老院議員席」「元老院」「楽隊・合唱隊席」などの意味である((『羅和辞典』))。フランス語の orchestre について DFE には「劇場で舞台と一般席の間にある元老院席あるいは貴賓席。また、舞台そのもの」とある。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  2行目 「道はとじ その時をしるす」((大乗 [1975] p.290。以下、この詩の引用は同じページから。))は根拠がまったく不明である。なお、元になったはずの[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳では、後半がまったく訳されていない。これをスペイン語以外で訳出しようとして、Tago (現代スペイン語の Tajo) をドイツ語 Tag (日) に結び付けるなどしたのではないだろうか。  4行目 「オーケストラにすわっている婦人に」は grand が訳に反映されていない。当「大事典」では貴族を意味すると判断し、「貴婦人」と訳出している。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  1行目 「エブロを通じてブリザンヌへの道がひらかれよう」((山根 [1988] p.322。以下、この詩の引用は同じページから。))は、後述するように、可能な読みの候補。  2行目 「遠くではタゴ川が脅威を示すだろう」 は、まず「タゴ川」をタホとテージョのいずれか、もしくはラテン語名の「タグス川」にすべきだろう。後半は元になったはずの[[エリカ・チータム]]の英訳でも make a demonstration が使われている。デモは確かに「示威行動」とも言うが、「脅威を示す」は訳しすぎではないだろうか。 *信奉者側の見解  基本的に全訳本の類でしかコメントされてこなかった詩であり、数少ないコメントも、ほとんど取るに足らないものである。  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]はオルケストラが劇場の貴賓席の意味であるとコメントした以外は、解釈を投げた((Garencieres [1672]))。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]]は、さる貴婦人に関する詩で詳しくは解釈できないものの、その女性の受難という以上の意味のある予言ではないだろうとした((Roberts (1947)[1949]))。  [[エリカ・チータム]]は当初一言もコメントしておらず、のちには「解釈困難」とコメントしただけだった((Cheetham [1973], Cheetham (1989)[1990]))。  [[ジョン・ホーグ]]はいくつかの地名の候補に説明をつけた上で、ガランシエールのコメントの引用を混ぜているが、そのほとんどは(引用部も含めて)[[エドガー・レオニ]]のコメントの盗用に近い。  [[セルジュ・ユタン]]は、4行目の貴婦人をフランス革命の擬人化とした上で、革命期のサン=キュロットに関する予言とした((Hutin [1978], Hutin (2002)[2003]))。ただし、1行目や3行目の固有名詞については、何も解釈していない。  [[ジョセフ・サビノ]]は全訳本以外で扱った例外的な論者だが、彼の場合、訳すら載せずに原文とヒントだけ示し、インカ帝国最大の財宝のありかを示す詩だから、読者自身で解読してみるとよいと主張していた((サビノ [1992] pp.173-175))。もっとも、彼が1990年代初頭にその解釈を示してかなり経つが、彼やその愛読者によってインカ最大の財宝が発見されたという話は聞こえてこない。 *同時代的な視点  後述する[[ロジェ・プレヴォ]]を除くと、内容上のモデルの提示などを行なっている論者はほとんど見られず、地名の候補自体が多種多様である。  [[エドガー・レオニ]]は内容的な解釈はほとんどしなかったが、Nebro は L'Ebro の誤りでエブロ川のこと、Brisanne はベズナ (Bézenas / Pézenas)ではないかとした (Pelligouxe には触れず)((Leoni [1961]))。  この読み方は[[リチャード・シーバース]]も採用した。シーバースはさらに Pelligouxe はペリグー (Périgueux) ではないかと、疑問符つきで示した((Sieburth [2012]))。  [[ピーター・ラメジャラー]]もエブロとペリグーについては一致しているが、Brisanne はブルターニュ (Bretagne) ではないかとした((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は Nebro はデュランス川の古称ドルエンティア・ネブロドゥヌム (Druentia Nebrodunum) に由来し、Brisanne はその流域の町ブリヤンヌ (Brillanne) とギザンヌ (Guisanne) を混同したものではないかとした。  Pelligouxe については、南仏の伝説上の町としてパンパリグスト (Pampaligouste) という名称があることを指摘した((Clébert [2003]))。  [[ロジェ・プレヴォ]]は南仏のヴァルド派弾圧がモデルと推測した。  ヴァルド派の拠点となっていた小渓谷には 「ヴァルドの城壁」 と呼ばれる地形があり、かつては湖だったという。プレヴォは tago を lago (湖) と読み替え、muestra を「痕跡」の意味に理解している。また、地名には混乱が見られるとして、Nebroはアンブランの古称 ヘブロドゥヌム (Hebrodunum)、Brisanne はブリヤーヌ (Brillane)、Pelligouxe はピエモンテ付近の渓谷プリス (Pelisse)と読み替え、いずれもヴァルド派を庇護したサンタル女男爵ブランシュ・ド・ルヴィ (Blanche de Levis, baronne de Cental) の領地に含まれており、後半の貴婦人に対応するとしている((Prévost [1999] p.170))。 #ref(Brisanne.PNG) 【画像】関連地図。細かすぎて緯度・経度を調べられなかった地名は割愛。なお、エブロ川はバルセロナの南西130 km で、タホ(テージョ)川はリスボン付近で、それぞれ海に注ぐ。 ---- #comment
[[詩百篇第10巻]]>25番* *原文 Par Nebro ouurir&sup(){1} de Brisanne&sup(){2} passage, Bien eslongnez&sup(){3} el tago fara&sup(){4} muestra&sup(){5}, Dans Pelligouxe&sup(){6} sera commis l'[[outrage]]&sup(){7} De la grand dame&sup(){8} assise sur l'orchestra&sup(){9}. **異文 (1) ouurir : ouurit 1716PRc (2) Brisanne : Bisance 1590Ro, Bisanne 1606PR 1607PR 1610Po 1667Wi 1716PR, Nebro le 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To (3) eslongnez 1568A 1568B 1568C 1591BR 1597Br 1603Mo 1772Ri : esloignez &italic(){T.A.Eds.} (&italic(){sauf} : eslongnes 1568X, eslonignez 1590Ro, eslognez 1627Di 1627Ma) (4) fara : rara 1611B, fe a 1627Di, fera 1605sn 1627Ma 1644Hu 1649Xa 1716PR, arra 1650Mo (5) muestra : mœstra 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1650Mo 1653AB 1665Ba 1716PR 1720To 1840 (6) Pelligouxe : Pelligoux 1611B 1981EB, Perigueux 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1650Le 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1720To 1840 (7) l'outrage : l'otraige 1568X 1590Ro, outrage 1627Ma 1627Di 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1720To 1840 (8) la grand dame : la dame 1653AB, la Dame 1665Ba 1720To, la grand Dame 1672Ga 1772Ri 1840 (9) l'orchestra : lorchestra 1568X 1590Ro, l'horchestra 1653AB 1665Ba 1720To, l'Orchestra 1672Ga **校訂  1行目、3行目の固有名詞についてはいくつかの誤りが含まれている可能性があるが、諸説あり、確定しているとはいいがたい。3行目 Pelligouxe は Perigueux と同一視されることが多いが、誤りなのか、意図的な綴り替えなのかは不明である。 *日本語訳 ネブロによってブリザンヌへの道が開く。 ずいぶん離れた場所で[[タホ川>テージョ川]]が手本を示すだろう。 ペリグーズでは陵辱されるだろう、 劇場の貴賓席に座る貴婦人が。 **訳について  1・3行目の固有名詞は、とりあえず初出のものをそのまま音写した。その解釈については、「同時代的な視点」の節で述べる。  2行目の後半律は珍しくスペイン語の短文である。el Tago は現代式には el Tajo でタホ川 (当「大事典」ではポルトガル名のテージョ川で基本的に統一しているが、スペイン語つづりであることからこの詩の訳では「タホ川」とする)を指すことに異論はない。問題は残りで、[[エドガー・レオニ]]は「証明する」(make a demonstration)、[[ピーター・ラメジャラー]]は「(テージョ川の)灯台が照らす」(shall the Tagus lighthouse show)、[[リチャード・シーバース]]は「誇示する」(make a show)、[[ジャン=ポール・クレベール]]は「氾濫する」(débordera) でめいめい異なっている((Leoni [1961], Lemesurier [2010], Sieburth [2012], Clébert [2003]))。  彼らは詳しい語注を施していないが、少なくとも手許のスペイン語辞典に fara はない。faro ならば「灯台」の意味である。動詞としては fardar (自慢する、誇示する)の直説法三人称未来形 fardara の語中音消失と解釈できるかもしれない。  他方、muestra は動詞としては mostrar (見せる、表す)の三人称単数現在形、名詞ならば「手本、証明」などの意味である。  以上を踏まえると、レオニ、ラメジャラー、シーバースの訳は何となく根拠が推察できるが、クレベールの訳はよく分からない。この点、スペイン語に詳しい方のご助言をいただければ幸いである。  以上のように、スペイン語と解釈するのが一般的だが、プロヴァンス語と解釈したのが[[マリニー・ローズ]]である。彼女は fara はプロヴァンス語動詞 far の活用形で、フランス語の fera (英語の will do ないし will make) だとし、muestra はプロヴァンス語の mouestre (怪物) から来たと解釈した((Rose [2002c]。ローズの言う語義は LTDF でも確認した。))。これを踏まえれば、「テージョ川が怪物を生み出すだろう」 という意味になる。  4行目 l'orchestra はフランス語では l'orchestre と綴る。orchestra は韻を整えるために語源のラテン語を持ち出したものかもしれない。ラテン語の orchestra は「劇場の元老院議員席」「元老院」「楽隊・合唱隊席」などの意味である((『羅和辞典』))。フランス語の orchestre について DFE には「劇場で舞台と一般席の間にある元老院席あるいは貴賓席。また、舞台そのもの」とある。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  2行目 「道はとじ その時をしるす」((大乗 [1975] p.290。以下、この詩の引用は同じページから。))は根拠がまったく不明である。なお、元になったはずの[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳では、後半がまったく訳されていない。これをスペイン語以外で訳出しようとして、Tago (現代スペイン語の Tajo) をドイツ語 Tag (日) に結び付けるなどしたのではないだろうか。  4行目 「オーケストラにすわっている婦人に」は grand が訳に反映されていない。当「大事典」では貴族を意味すると判断し、「貴婦人」と訳出している。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  1行目 「エブロを通じてブリザンヌへの道がひらかれよう」((山根 [1988] p.322。以下、この詩の引用は同じページから。))は、後述するように、可能な読みの候補。  2行目 「遠くではタゴ川が脅威を示すだろう」 は、まず「タゴ川」をタホとテージョのいずれか、もしくはラテン語名の「タグス川」にすべきだろう。後半は元になったはずの[[エリカ・チータム]]の英訳でも make a demonstration が使われている。デモは確かに「示威行動」とも言うが、「脅威を示す」は訳しすぎではないだろうか。 *信奉者側の見解  基本的に全訳本の類でしかコメントされてこなかった詩であり、数少ないコメントも、ほとんど取るに足らないものである。  [[テオフィル・ド・ガランシエール]]はオルケストラが劇場の貴賓席の意味であるとコメントした以外は、解釈を投げた((Garencieres [1672]))。  [[ヘンリー・C・ロバーツ]]は、さる貴婦人に関する詩で詳しくは解釈できないものの、その女性の受難という以上の意味のある予言ではないだろうとした((Roberts (1947)[1949]))。  [[エリカ・チータム]]は当初一言もコメントしておらず、のちには「解釈困難」とコメントしただけだった((Cheetham [1973], Cheetham (1989)[1990]))。  [[ジョン・ホーグ]]はいくつかの地名の候補に説明をつけた上で、ガランシエールのコメントの引用を混ぜているが、そのほとんどは(引用部も含めて)[[エドガー・レオニ]]のコメントの盗用に近い。  [[セルジュ・ユタン]]は、4行目の貴婦人をフランス革命の擬人化とした上で、革命期のサン=キュロットに関する予言とした((Hutin [1978], Hutin (2002)[2003]))。ただし、1行目や3行目の固有名詞については、何も解釈していない。  [[ジョセフ・サビノ]]は全訳本以外で扱った例外的な論者だが、彼の場合、訳すら載せずに原文とヒントだけ示し、インカ帝国最大の財宝のありかを示す詩だから、読者自身で解読してみるとよいと主張していた((サビノ [1992] pp.173-175))。もっとも、彼が1990年代初頭にその解釈を示してかなり経つが、彼やその愛読者によってインカ最大の財宝が発見されたという話は聞こえてこない。 *同時代的な視点  後述する[[ロジェ・プレヴォ]]を除くと、内容上のモデルの提示などを行なっている論者はほとんど見られず、地名の候補自体が多種多様である。  [[エドガー・レオニ]]は内容的な解釈はほとんどしなかったが、Nebro は L'Ebro の誤りでエブロ川のこと、Brisanne はベズナ (Bézenas / Pézenas)ではないかとした (Pelligouxe には触れず)((Leoni [1961]))。  この読み方は[[リチャード・シーバース]]も採用した。シーバースはさらに Pelligouxe はペリグー (Périgueux) ではないかと、疑問符つきで示した((Sieburth [2012]))。  [[ピーター・ラメジャラー]]もエブロとペリグーについては一致しているが、Brisanne はブルターニュ (Bretagne) ではないかとした((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  [[ジャン=ポール・クレベール]]は Nebro はデュランス川の古称ドルエンティア・ネブロドゥヌム (Druentia Nebrodunum) に由来し、Brisanne はその流域の町ブリヤンヌ (Brillanne) とギザンヌ (Guisanne) を混同したものではないかとした。  Pelligouxe については、南仏の伝説上の町としてパンパリグスト (Pampaligouste) という名称があることを指摘した((Clébert [2003]))。  [[ロジェ・プレヴォ]]は南仏のヴァルド派弾圧がモデルと推測した。  ヴァルド派の拠点となっていた小渓谷には 「ヴァルドの城壁」 と呼ばれる地形があり、かつては湖だったという。プレヴォは tago を lago (湖) と読み替え、muestra を「痕跡」の意味に理解している。また、地名には混乱が見られるとして、Nebroはアンブランの古称 ヘブロドゥヌム (Hebrodunum)、Brisanne はブリヤーヌ (Brillane)、Pelligouxe はピエモンテ付近の渓谷プリス (Pelisse)と読み替え、いずれもヴァルド派を庇護したサンタル女男爵ブランシュ・ド・ルヴィ (Blanche de Levis, baronne de Cental) の領地に含まれており、後半の貴婦人に対応するとしている((Prévost [1999] p.170))。 #ref(Brisanne.PNG) 【画像】関連地図。細かすぎて緯度・経度を調べられなかった地名は割愛。なお、エブロ川はバルセロナの南西130 km で、タホ(テージョ)川はリスボン付近で、それぞれ海に注ぐ。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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