詩百篇第12巻59番

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[[詩百篇第12巻]]>59番* *原文 L'accord & [[pache]]&sup(){1} sera du tout rompu&sup(){2}: Les amitiez pollues&sup(){3} par discorde&sup(){4}. L'haine&sup(){5} [[enuieillie>envieillir]]&sup(){6}, toute foy corrompue&sup(){7}, Et l'esperance&sup(){8}. Marseille&sup(){9} sans concorde. **異文 (1)pache : pâche 1689PA 1689Ma (2) rompu 1594JF : rompue 1611 1650Ri 1672Ga, rompuë &italic(){T.A.Eds.} (3) pollues : polluës 1627Ma 1627Di 1644Hu 1649Ca 1650Le 1667Wi 1668 1689Ma 1689Be 1691AB (4) discorde : discordes 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1780MN (5) L’haine : L’aine 1627Di (6) enuieillie : euvieille 1672Ga, en vieille 1780MN (7) corrompue 1594JF 1611 1650Ri 1672Ga : corrompuë &italic(){T.A.Eds.} (8) l'esperance : l'Esperance 1627Ma 1644Hu 1650Ri (9) Marseille : Marseilles 1672Ga **校訂  [[エドガー・レオニ]]は3行目 enuieillie を éveillie と校訂しているが、haine enviellieは辞書にも載っている古い言い回しなので、その必要はないと思われる。なお、1605snを参照したように述べている[[ジョン・ホーグ]]はこの部分を esueillie としているが((Hogue [1997]))、1605snにそのような異文は見当たらない。レオニの校訂から「逆算」するようにして古い綴りを捏造しただけであろう。 *日本語訳 合意と約定は全面的に破棄されるだろう。 友情は不和により汚される。 憎しみは根深く、信頼そのものが損なわれ、 そして希望も(損なわれる)。和解なきマルセイユ。 **訳について  3・4行目は、パンドラの箱の神話のように、「信頼そのものが損なわれる。そして希望が(最後に残る)」のように読めなくもないが、その後ろのマルセイユの描写もネガティヴなものなので、その読み方は採らなかった。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  4行目「希望は一致せずマルセーユに」((大乗 [1975] p.313。以下、この詩の引用は同じページから。))は、どういう根拠で訳したものかよく分からない。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳では、And hope also, Marseilles without concord.((Roberts [1949] p.349))とほとんど逐語訳されている(これは[[テオフィル・ド・ガランシエール]]の英訳にそのまま従ったものである)。 *信奉者側の見解  [[ジャン=エメ・ド・シャヴィニー]](1594年)は、1575年、1577年、1585年のユグノー戦争の様子と解釈している((Chavigny [1594] pp.228, 234, 242))。[[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)も似たようなものだったらしく、直前の[[12巻56番>詩百篇第12巻56番]]の続きとだけ注記している((Garencieres [1672]))。[[ジョン・ホーグ]](1997年)も、宗教戦争の予言としている((Hogue [1997]))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、近未来の戦争で、敵がマルセイユへ侵攻してくることと解釈した((Fontbrune (1938)[1939] p.234))。  [[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]](1980年)は、近未来に起こると想定していた第三次世界大戦に先立つ情勢と解釈していた((Fontbrune (1980)[1982]))。  [[川尻徹]](1987年)は、四度にわたる中東戦争の予言と解釈したが、マルセイユがどう関わるのかについては説明していなかった((川尻『ノストラダムス暗号書の謎』pp.113-114))。 *同時代的な視点  [[エドガー・レオニ]]は信奉者たちと同様に、16世紀の宗教戦争の情景だと見ており、実際のところ、描写はかなりの程度あてはまる。  ただし、かなり漠然としており、ノストラダムスの晩年(ユグノー戦争序盤)に描くことも、そう難しいことではなかったと考えられるので、本物なのか、死後に偽造された事後予言なのかについては何とも言えない。 *その他  この詩の番号は、1644Hu 1650Riでは61番になっている。  1672Gaでは52, 55, 56, 59, 62番が、なぜか4, 5, 6, 7, 8番という、不適切な通し番号が振られている。これは1685年版でも直っていない。 ---- #comment
[[詩百篇第12巻]]>59番* *原文 L'accord & [[pache]]&sup(){1} sera du tout rompu&sup(){2}: Les amitiez pollues&sup(){3} par discorde&sup(){4}. L'haine&sup(){5} [[enuieillie>envieillir]]&sup(){6}, toute foy corrompue&sup(){7}, Et l'esperance&sup(){8}. Marseille&sup(){9} sans concorde. **異文 (1)pache : pâche 1689PA 1689Ma (2) rompu 1594JF : rompue 1611 1650Ri 1672Ga, rompuë &italic(){T.A.Eds.} (3) pollues : polluës 1627Ma 1627Di 1644Hu 1649Ca 1650Le 1667Wi 1668 1689Ma 1689Be 1691AB (4) discorde : discordes 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1780MN (5) L’haine : L’aine 1627Di (6) enuieillie : euvieille 1672Ga, en vieille 1780MN (7) corrompue 1594JF 1611 1650Ri 1672Ga : corrompuë &italic(){T.A.Eds.} (8) l'esperance : l'Esperance 1627Ma 1644Hu 1650Ri (9) Marseille : Marseilles 1672Ga **校訂  [[エドガー・レオニ]]は3行目 enuieillie を éveillie と校訂しているが、haine enviellieは辞書にも載っている古い言い回しなので、その必要はないと思われる。なお、1605snを参照したように述べている[[ジョン・ホーグ]]はこの部分を esueillie としているが((Hogue [1997]))、1605snにそのような異文は見当たらない。レオニの校訂から「逆算」するようにして古い綴りを捏造しただけであろう。 *日本語訳 合意と約定は全面的に破棄されるだろう。 友情は不和により汚される。 憎しみは根深く、信頼そのものが損なわれ、 そして希望も(損なわれる)。和解なきマルセイユ。 **訳について  3・4行目は、パンドラの箱の神話のように、「信頼そのものが損なわれる。そして希望が(最後に残る)」のように読めなくもないが、その後ろのマルセイユの描写もネガティヴなものなので、その読み方は採らなかった。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  4行目「希望は一致せずマルセーユに」((大乗 [1975] p.313。以下、この詩の引用は同じページから。))は、どういう根拠で訳したものかよく分からない。[[ヘンリー・C・ロバーツ]]の英訳では、And hope also, Marseilles without concord.((Roberts [1949] p.349))とほとんど逐語訳されている(これは[[テオフィル・ド・ガランシエール]]の英訳にそのまま従ったものである)。 *信奉者側の見解  [[ジャン=エメ・ド・シャヴィニー]](1594年)は、1575年、1577年、1585年のユグノー戦争の様子と解釈している((Chavigny [1594] pp.228, 234, 242))。[[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)も似たようなものだったらしく、直前の[[12巻56番>詩百篇第12巻56番]]の続きとだけ注記している((Garencieres [1672]))。[[ジョン・ホーグ]](1997年)も、宗教戦争の予言としている((Hogue [1997]))。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、近未来の戦争で、敵がマルセイユへ侵攻してくることと解釈した((Fontbrune (1938)[1939] p.234))。  [[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]](1980年)は、近未来に起こると想定していた第三次世界大戦に先立つ情勢と解釈していた((Fontbrune (1980)[1982]))。  [[川尻徹]](1987年)は、四度にわたる中東戦争の予言と解釈したが、マルセイユがどう関わるのかについては説明していなかった((川尻『ノストラダムス暗号書の謎』pp.113-114))。 *同時代的な視点  [[エドガー・レオニ]]は信奉者たちと同様に、16世紀の宗教戦争の情景だと見ており、実際のところ、描写はかなりの程度あてはまる。  ただし、かなり漠然としており、ノストラダムスの晩年(ユグノー戦争序盤)に描くことも、そう難しいことではなかったと考えられるので、本物なのか、死後に偽造された事後予言なのかについては何とも言えない。 *その他  この詩の番号は、1644Hu 1650Riでは61番になっている。  1672Gaでは52, 55, 56, 59, 62番が、なぜか4, 5, 6, 7, 8番という、不適切な通し番号が振られている。これは1685年版でも直っていない。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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