詩百篇第8巻20番

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[[詩百篇第8巻]]>20番* *原文 Le faux messaige par election fainte Courir&sup(){1} par vrben&sup(){2}, rompue&sup(){3} [[pache]] arreste&sup(){4}, Voix acheptees&sup(){5}, de sang chapelle tainte, Et à vn autre&sup(){6} l'empire&sup(){7} contraicte&sup(){8}. **異文 (1) Courir : Couurir 1665Ba 1697Vi 1720To 1840 (2) vrben : vrbe 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668P 1697Vi 1720To 1840 1981EB, vrb en 1650Mo, urbé 1668A, Urbem 1672Ga (3) rompue : rompuë 1605sn 1628dR 1644Hu 1649Ca 1649Xa 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1697Vi 1720To 1840 (4) arreste : arrestee 1572Cr, arrêté 1697Vi 1720To (5) acheptees : achaptées 1590Ro, acheptee/achetee 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1697Vi 1716PR 1720To 1840, aceptées 1649Ca 1650Le 1668A, acceptées 1668P (6) autre : au tre 1611B (7) l'empire : l'Empire 1590Ro 1611B 1644Hu 1653AB 1665Ba 1697Vi 1720To 1840 1981EB, qui l'Empire 1672Ga (8) contraicte : contracte 1627Di 1644Hu 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1716PR, contraincte 1605sn 1649Ca 1649Xa 1981EB, conteste 1672Ga, contracté 1697Vi 1720To (注記)版の系譜の考察のために1697Viも加えた。 **校訂  1行目 fainte を[[ジャン=ポール・クレベール]]は sainte としている(校訂の結果ではなく、最初から原文をそのように引用)。  確かに f と異体字の s (ſ) は紛らわしいが、1568年版などは明らかに fainte と綴っている。  2行目と4行目は韻の踏み方が微妙である。4行目を conteste と書き換えた1672年版([[テオフィル・ド・ガランシエール]]) は、おそらくそれを意識したのだろう。  [[エドガー・レオニ]]によると、1643年ガルサン版では arresté / contracté と書かれているという。[[ピーター・ラメジャラー]]は2010年には2、4行目を受動態で訳しているので、実質的にこの読みを採用したものと考えられる。  詳しくは「訳について」の節で述べるが、当「大事典」としては、contreste の可能性もあると考えており、訳ではそれを採った。 *日本語訳 見せかけの選挙のせいで虚偽の伝令が 都市を巡る。破棄された協約を停止する。 票が買収され、礼拝堂は血塗られる。 そして帝国は他者と争う。 **訳について  1行目は[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、sainte を採用すると 「聖なる選挙のせいで虚偽の伝令が」 となる。  2行目 par urben は変則的な綴りであるが、[[エドガー・レオニ]]はラテン語の per urbem の影響を受けた綴りと見て、through the city の意味とした。この読みは[[ピーター・ラメジャラー]]なども支持している。  4行目は contraicte が難物。  レオニは contracte と読み替えている。語形上はそれが最も自然だろう。中期フランス語でも現代語と同じように contracter は「契約する、結婚する」などの意味であった((DMF))。  受動態に理解しているラメジャラーは4行目を「権力が別人に結び付けられる」(power contracted to another)と英訳した((Lemesurier [2010]))。  [[リチャード・シーバース]]が「帝国が別人の手に移される」と英訳したのも、ラメジャラーの読みに近いといえるだろう。  クレベールは contraint(e) と同一視して、「強制される、拘束される」 の意味に理解した。    さて、中期フランス語では contraster のつづりの揺れで contrester があった。  これは「反抗する」(s'opposer)、「争う」(lutter, combattre) などの意味なので((DMF))、これを採用すると4行目は 「そして帝国が別の(国?君主?)と争う」 という意味になる。  2行目 arreste との韻および3行目後半の「礼拝堂が血塗られる」というモチーフと考え合わせると、あるいはこちらの方が適切なのではないかとも思えるので、上の訳文ではこれを採用した。  なお、[[テオフィル・ド・ガランシエール]]の conteste という校訂を受け入れるなら、「帝国が他者に異議申し立てをする」の意味になり、これはこれで選挙のモチーフにそぐわないわけではない。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  2行目 「町に近づくことを阻止され」((大乗 [1975] p.235。以下、この詩の引用は同じページから。))は誤訳。courir (巡る)、rompue (破棄された)、[[pache]](協約、平和)などを省きまくっており、問題が多い。  3行目「声は大きく、鐘は血で鳴り」も誤訳。voix は「声」のほか、「票」の意味もある。acheptees (achetées)は「買われる」の意味なので、1行目の「選挙」と合わせて考えれば、「票」が適切だろう。大乗訳の底本となったロバーツ本のように aceptees (acceptées) を採用すれば、「声が受け入れられる」とは訳せるが、「大きく」というのがどこから出てきたのかはよく分からない (ロバーツは bought を当てている)。  後半の「鐘は血で鳴り」も根拠不明。beffroi (鐘楼)ならまだしも chapelle (礼拝堂)を「鐘」とするのは不適切だし、tainte (染められる)を「鳴る」とするのも全く意味が分からない (ロバーツは tinted を当てている)。  4行目「他のものが規則を争うだろう」は転訳による誤訳を含んでいる。l'Empire (帝国) という原語からすると、ロバーツが使っている rule は「規則」ではなく「支配」の意味なのが明らかであろう。なお、ロバーツは仏語原文を contraincte に改変しておきながら、英訳ではガランシエールの校訂に影響されたのか、 contests としている (ただし、ガランシエール自身の英訳は challengeth = challenged)。例によって、ロバーツの仏語力に疑問符が付く事例である。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  3行目 「買われる声 血塗られた礼拝堂」((山根 [1988] p.258 。以下、この詩の引用は同じページから。))の 「声」 については大乗訳についてと同じ。山根訳の場合、解説で「買われる声」を票の買収のこととしているのに、なぜ訳語で「声」を選択したのか、意味不明である。  4行目「帝国は別のものと結ぶ」は前述のように、しばしば見られる訳し方。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、ほとんどそのまま敷衍したような解釈しかつけていなかった((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀に入るまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]の著書には載っていない。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、近未来の教皇選挙に関する予言としていたが、後の改訂版では「教皇」の文字が消えた(ただし、詩の登場順には変化がない)((Fontbrune (1938)[1939] p.204, Fontbrune [1975] p.218))。  息子の[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は1980年のベストセラーでも晩年の著作でも解釈していない。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)はスペインのフランコについての予言ではないかと解釈した((Lamont [1943] p.281))。  [[エリカ・チータム]](1973年)は神聖ローマ帝国の皇帝選挙に関する予言だったろうとしていたが、具体的な史実には結び付けておらず、後には外れた予言と見なしていた((Cheetham [1973], Cheetham {1989)[1990]))。  [[セルジュ・ユタン]](1978年)は普仏戦争のきっかけとなったエムス電報事件と解釈した((Hutin [1978], Hutin (2002)[2003]))。  [[パトリス・ギナール]](2011年)はUrbenを Ur(s) Be(rli)nと解釈して、1919年1月にスパルタクス団が起こしたベルリン一揆と解釈した((Guinard [2011]))。 #amazon(4003414039) 【画像】ローザ・ルクセンブルク『獄中からの手紙』岩波文庫 *同時代的な視点  具体的なモデルは特定されていない。  上の節で触れたチータムの解釈は、[[エドガー・レオニ]]の解釈を真似たものである((Leoni [1961]))。  他方、1行目を「聖なる選挙」と読んだ[[ジャン=ポール・クレベール]]は、教皇選挙に関する予言と見なしていた((Clébert [2003]))。「見せかけの選挙」(偽りの選挙)と読んだ[[ピーター・ラメジャラー]]も教皇選挙の可能性を示した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  4行目の「帝国」が大文字で書かれていることからすれば、それが神聖ローマ帝国を指している可能性が高い。  神聖ローマ帝国が関わる (直接的に関わるか、動向を注視する)選挙となれば、確かに選帝侯による神聖ローマ皇帝の選挙か、枢機卿によるローマ教皇選挙かのいずれかの選挙において、不正が行われる見通しを示した可能性は高いものと思われる。  宗教改革の原因になったように、当時のローマ教皇庁には腐敗がはびこっていたし、神聖ローマ皇帝選挙でも賄賂は当たり前だった ([[フランソワ1世]]がカール5世に負けたのはつぎ込んだ黄金の量で負けたからとも言われる所以である)。  皇帝だろうと教皇だろうと、どちらの選挙でも不正の見通しを示すのは、当時としてそれほどありえない話ではなかっただろう。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
[[詩百篇第8巻]]>20番* *原文 Le faux messaige par election fainte Courir&sup(){1} par vrben&sup(){2}, rompue&sup(){3} [[pache]] arreste&sup(){4}, Voix acheptees&sup(){5}, de sang chapelle tainte, Et à vn autre&sup(){6} l'empire&sup(){7} contraicte&sup(){8}. **異文 (1) Courir : Couurir 1665Ba 1697Vi 1720To 1840 (2) vrben : vrbe 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668P 1697Vi 1720To 1840 1981EB, vrb en 1650Mo, urbé 1668A, Urbem 1672Ga (3) rompue : rompuë 1605sn 1628dR 1644Hu 1649Ca 1649Xa 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1697Vi 1720To 1840 (4) arreste : arrestee 1572Cr, arrêté 1697Vi 1720To (5) acheptees : achaptées 1590Ro, acheptee/achetee 1606PR 1607PR 1610Po 1627Di 1627Ma 1644Hu 1650Ri 1653AB 1665Ba 1697Vi 1716PR 1720To 1840, aceptées 1649Ca 1650Le 1668A, acceptées 1668P (6) autre : au tre 1611B (7) l'empire : l'Empire 1590Ro 1611B 1644Hu 1653AB 1665Ba 1697Vi 1720To 1840 1981EB, qui l'Empire 1672Ga (8) contraicte : contracte 1627Di 1644Hu 1650Le 1650Ri 1653AB 1665Ba 1667Wi 1668 1716PR, contraincte 1605sn 1649Ca 1649Xa 1981EB, conteste 1672Ga, contracté 1697Vi 1720To (注記)版の系譜の考察のために1697Viも加えた。 **校訂  1行目 fainte を[[ジャン=ポール・クレベール]]は sainte としている(校訂の結果ではなく、最初から原文をそのように引用)。  確かに f と異体字の s (ſ) は紛らわしいが、1568年版などは明らかに fainte と綴っている。  2行目と4行目は韻の踏み方が微妙である。4行目を conteste と書き換えた1672年版([[テオフィル・ド・ガランシエール]]) は、おそらくそれを意識したのだろう。  [[エドガー・レオニ]]によると、1643年ガルサン版では arresté / contracté と書かれているという。[[ピーター・ラメジャラー]]は2010年には2、4行目を受動態で訳しているので、実質的にこの読みを採用したものと考えられる。  詳しくは「訳について」の節で述べるが、当「大事典」としては、contreste の可能性もあると考えており、訳ではそれを採った。 *日本語訳 見せかけの選挙のせいで虚偽の伝令が 都市を巡る。破棄された協約を停止する。 票が買収され、礼拝堂は血塗られる。 そして帝国は他者と争う。 **訳について  1行目は[[ジャン=ポール・クレベール]]のように、sainte を採用すると 「聖なる選挙のせいで虚偽の伝令が」 となる。  2行目 par urben は変則的な綴りであるが、[[エドガー・レオニ]]はラテン語の per urbem の影響を受けた綴りと見て、through the city の意味とした。この読みは[[ピーター・ラメジャラー]]なども支持している。  4行目は contraicte が難物。  レオニは contracte と読み替えている。語形上はそれが最も自然だろう。中期フランス語でも現代語と同じように contracter は「契約する、結婚する」などの意味であった((DMF))。  受動態に理解しているラメジャラーは4行目を「権力が別人に結び付けられる」(power contracted to another)と英訳した((Lemesurier [2010]))。  [[リチャード・シーバース]]が「帝国が別人の手に移される」と英訳したのも、ラメジャラーの読みに近いといえるだろう。  クレベールは contraint(e) と同一視して、「強制される、拘束される」 の意味に理解した。    さて、中期フランス語では contraster のつづりの揺れで contrester があった。  これは「反抗する」(s'opposer)、「争う」(lutter, combattre) などの意味なので((DMF))、これを採用すると4行目は 「そして帝国が別の(国?君主?)と争う」 という意味になる。  2行目 arreste との韻および3行目後半の「礼拝堂が血塗られる」というモチーフと考え合わせると、あるいはこちらの方が適切なのではないかとも思えるので、上の訳文ではこれを採用した。  なお、[[テオフィル・ド・ガランシエール]]の conteste という校訂を受け入れるなら、「帝国が他者に異議申し立てをする」の意味になり、これはこれで選挙のモチーフにそぐわないわけではない。  既存の訳についてコメントしておく。  [[大乗訳>ノストラダムス大予言原典・諸世紀]]について。  2行目 「町に近づくことを阻止され」((大乗 [1975] p.235。以下、この詩の引用は同じページから。))は誤訳。courir (巡る)、rompue (破棄された)、[[pache]](協約、平和)などを省きまくっており、問題が多い。  3行目「声は大きく、鐘は血で鳴り」も誤訳。voix は「声」のほか、「票」の意味もある。acheptees (achetées)は「買われる」の意味なので、1行目の「選挙」と合わせて考えれば、「票」が適切だろう。大乗訳の底本となったロバーツ本のように aceptees (acceptées) を採用すれば、「声が受け入れられる」とは訳せるが、「大きく」というのがどこから出てきたのかはよく分からない (ロバーツは bought を当てている)。  後半の「鐘は血で鳴り」も根拠不明。beffroi (鐘楼)ならまだしも chapelle (礼拝堂)を「鐘」とするのは不適切だし、tainte (染められる)を「鳴る」とするのも全く意味が分からない (ロバーツは tinted を当てている)。  4行目「他のものが規則を争うだろう」は転訳による誤訳を含んでいる。l'Empire (帝国) という原語からすると、ロバーツが使っている rule は「規則」ではなく「支配」の意味なのが明らかであろう。なお、ロバーツは仏語原文を contraincte に改変しておきながら、英訳ではガランシエールの校訂に影響されたのか、 contests としている (ただし、ガランシエール自身の英訳は challengeth = challenged)。例によって、ロバーツの仏語力に疑問符が付く事例である。  [[山根訳>ノストラダムス全予言 (二見書房)]]について。  3行目 「買われる声 血塗られた礼拝堂」((山根 [1988] p.258 。以下、この詩の引用は同じページから。))の 「声」 については大乗訳についてと同じ。山根訳の場合、解説で「買われる声」を票の買収のこととしているのに、なぜ訳語で「声」を選択したのか、意味不明である。  4行目「帝国は別のものと結ぶ」は前述のように、しばしば見られる訳し方。 *信奉者側の見解  [[テオフィル・ド・ガランシエール]](1672年)は、ほとんどそのまま敷衍したような解釈しかつけていなかった((Garencieres [1672]))。  その後、20世紀に入るまでこの詩を解釈した者はいないようである。少なくとも、[[ジャック・ド・ジャン]]、[[バルタザール・ギノー]]、[[D.D.]]、[[テオドール・ブーイ]]、[[フランシス・ジロー]]、[[ウジェーヌ・バレスト]]、[[アナトール・ル・ペルチエ]]、[[チャールズ・ウォード]]の著書には載っていない。  [[マックス・ド・フォンブリュヌ]](1938年)は、近未来の教皇選挙に関する予言としていたが、後の改訂版では「教皇」の文字が消えた(ただし、詩の登場順には変化がない)((Fontbrune (1938)[1939] p.204, Fontbrune [1975] p.218))。  息子の[[ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ]]は1980年のベストセラーでも晩年の著作でも解釈していない。  [[アンドレ・ラモン]](1943年)はスペインのフランコについての予言ではないかと解釈した((Lamont [1943] p.281))。  [[エリカ・チータム]](1973年)は神聖ローマ帝国の皇帝選挙に関する予言だったろうとしていたが、具体的な史実には結び付けておらず、後には外れた予言と見なしていた((Cheetham [1973], Cheetham {1989)[1990]))。  [[セルジュ・ユタン]](1978年)は普仏戦争のきっかけとなったエムス電報事件と解釈した((Hutin [1978], Hutin (2002)[2003]))。  [[パトリス・ギナール]](2011年)はUrbenを &bold(){Ur}s &bold(){Be}rli&bold(){n}と見なし、ローザ・ルクセンブルクらのスパルタクス団が1919年1月に起こしたベルリン一揆と解釈した((Guinard [2011]))。 #amazon(4003414039) &color(gray){【画像】ローザ・ルクセンブルク『獄中からの手紙』岩波文庫} *同時代的な視点  具体的なモデルは特定されていない。  上の節で触れたチータムの解釈は、[[エドガー・レオニ]]の解釈を真似たものである((Leoni [1961]))。  他方、1行目を「聖なる選挙」と読んだ[[ジャン=ポール・クレベール]]は、教皇選挙に関する予言と見なしていた((Clébert [2003]))。「見せかけの選挙」(偽りの選挙)と読んだ[[ピーター・ラメジャラー]]も教皇選挙の可能性を示した((Lemesurier [2003b], Lemesurier [2010]))。  4行目の「帝国」が大文字で書かれていることからすれば、それが神聖ローマ帝国を指している可能性が高い。  神聖ローマ帝国が関わる (直接的に関わるか、動向を注視する)選挙となれば、確かに選帝侯による神聖ローマ皇帝の選挙か、枢機卿によるローマ教皇選挙かのいずれかの選挙において、不正が行われる見通しを示した可能性は高いものと思われる。  宗教改革の原因になったように、当時のローマ教皇庁には腐敗がはびこっていたし、神聖ローマ皇帝選挙でも賄賂は当たり前だった ([[フランソワ1世]]がカール5世に負けたのはつぎ込んだ黄金の量で負けたからとも言われる所以である)。  皇帝だろうと教皇だろうと、どちらの選挙でも不正の見通しを示すのは、当時としてそれほどありえない話ではなかっただろう。 ---- ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

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